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【関係者が本当に実行したい戦略づくり_ファシリテーション実践事例_JAXA】 短期集中合意形成タスクフォース


こんにちは。「組織開発」という理論的根拠を大切にし、ファシリテーションサービスとHRBPサービスを提供している神吉徹二です。

今回は、お手伝いしている事例を共有・解説していきながら、ファシリテーションの実践(組織開発の実践)について、解像度を高めていければと考えています。

共有する意図は、「ファシリテーションの威力はまじですごい。もっと世の中に広がっておくれ。」という思っているからです。

今回、ご一緒したJAXA新事業促進部の方々にもご了承を得て、実践した内容を共有します。

事例の後に理論的観点での解説も付けています。

(結果がまず知りたい!という方は、「成果」と「コメント」欄を先に読んで下さい。)

では事例に進みます。

この事例は、どんな人が読むと参考になるか?


1.急速なビジネス環境の変化に対して、部門の垣根を超えた「組織全体」としての推進力を高めたい。

2.変革のためには社内の多数の関係者を巻き込む必要がある。旧来的な根回しによる調整ではなく、より現代的・生産的な方法を知りたい。


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事例:短期集中合意形成タスクフォース


要約サマリ:宇宙産業全体の課題整理と未来への具体策をキーマンで合意する


技術や研究成果が社会変革につながる現代において、技術起点で価値提供を目指す組織が「どの領域に注力するか」は、事業計画であるとともに未来への意志表示です。今回は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の新事業促進部/研究戦略部/経営企画部/人事部/宇宙戦略基金事業部の部長、課長を含むタスクフォースメンバー11名の新戦略策定の合意形成を支援しました。キーマン11名から見た宇宙産業全体の課題整理や注力領域の設定、実行体制を含めた打ち手を決める対話の「場」と「論点」のデザイン、そして参加者が本音で話し合い、合意形成するまでのご支援を行いました。


実際背景:「各部門」のケイパビリティを、企画部門全体の「総合力」へと統合したい


社内には複数の企画部門が存在し、それぞれ社会的に価値のある活動を展開しています。変化のスピードが高まる宇宙産業において、部門ごとのパフォーマンス発揮に加え、組織全体としてのさらなる価値提供とプレゼンス向上の方向性を模索・検討されていました。事務局の新事業促進部では、企画を担当する複数部門に多様な関係者がいることから、効率的かつ本音の合意形成まで到達することの複雑さ・難易度の高さを懸念されていました。そこで、「組織開発」領域の客員として従事している神吉がタスクフォースの活動もご支援することになりました。


取り組み:全 5 回の本音の話し合いを通じ、価値の再定義と注力領域の合意形成へ


新事業促進部の事務局と協働し、1回2時間×全 5 回(3 カ月間)のミーティングを通じた戦略的な対話&合意形成コンテンツを設計・実施しました。
主なステップは以下の通りです:
1.「市場の見立て」共通化:市場全体のバリューチェーン × ステークホルダー ×プレイヤー詳細を構造化し、2025年と2028年の市場ニーズの変化について認識合わせ
2.「フォーカス領域」の明確化:市場の見立て × 社内の技術の重なりから、2028年までに価値創出すべき戦略領域を抽出
3.「打ち手と実現体制」の具体化:戦略を実行するための組織体制や打ち手を具体的に検討
4.「キーマン」による合意形成:すべてのステップを5つの部門のキーマンで話し合い、具体的で納得感のある方向性を形成

この一連のプロセスは、新事業促進部からの相談に基づき協働でデザインした、いわば「腹落ち」をともなう合意形成のためのオリジナルコンテンツです。外部環境や自社技術に関する関係者の認識の共通点と相違点を可視化し、すり合わせの対話を行い、戦略的意思決定ができるプロセスを進めていきました。

成果:キーマン全員の腹落ちと、組織全体としての推進力へ


キーマン全員による具体案の合意を得て、タスクフォースは終了。1か月後には、役員への報告も無事に完了しました。4か月経った2025年8月現在、事務局の方々は手戻りなく戦略を進め、具体策の実現に向けた詳細論点に対峙する忙しい日々を過ごしているとのことです。

タスクフォース事務局のコメント:


「事務局として経営に提言するときも、その他の関係者をさらに巻き込むときも、『私たちが真に提供すべき価値は全5回で決めたあれだ』というのが確立できており、ブレがない。通常は、経営からそもそも論を問われゼロから考え直すこともあるが、キーマン達と議論した結論だから、自分自身も他者も納得感が高く、手戻りしない」


「本来は、意思決定のゲートとしてくぐり抜けなければならないキーマンを、今回は内部に入れて検討できたことが大きい」


タスクフォースメンバーのコメント:


「自分たちだけの場合は、すぐに詳細な視点に入ることがよくある。ポイントポイントで、全員で俯瞰した後に、詳細に入り、また最後は俯瞰するという流れが納得感につながっていた」


「普段は当たり前のこととして流れてしまう内容も、あらためて考えるように問いが設定され、その場でも『それはどういう意味ですか?』と問われることで、頭が体系的に整理できた感覚がある。タスクフォースメンバーの顔色や様子を見ながら、言いたい事のサポートもしてもらった」


結び:組織としての解像度の高い未来はキーマン同士の「主観」から描かれる


組織内で共通の未来像を描くには、市場環境のデータなどの客観的な情報以上に当事者同士の主観の対話的すり合わせが非常に意味を持ちます。
当然ながら、データや情報を共有し、論理的に分析する作業は、未来を考える点で必要不可欠なステップです。しかし、客観的な「正しさ」だけで話し合いが終了してしまうと、キーマン自身が感じている葛藤や迷いを含めた「私はこう思う」という主観が表現されず、関係者同士が解像度の高い未来を描くことにはつながりません。
参加者同士が主観を共有し合うプロセスと客観的な視点で物事を俯瞰するプロセス。これらを往還する中で、自分たちが納得できる解像度の高い未来像が描けること改めて確信しました。戦略の実行力は、「正しさ」よりも当事者が信じる「もっともらしさ」でドライブされることを目の当たりにしました。


解説:本事例は、どういった理論体系に支えられているか?


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企業組織として、変化が激しいビジネス環境に適応していくためには、これまでの方法論とは異なる向き合い方が必要になります。こういった正解がない組織的挑戦を、ロナルド・A・ハイフェッツは「適応課題」と概念づけました。
(「適応への挑戦」と翻訳される場合もあり、個人的にはそちらの方が分かりやすく好きです。)

ハイフェッツは、適応課題をリーダーシップの観点から論じているのですが、組織として適応に挑戦するための阻害要因の1つ目に、次を上げています。

何らかの変化を起こすには、みずから解決策を示し、みずからが先頭に立って指揮するという行動様式を改めなければならない・・・(中略)・・・適応に挑戦するには、リーダーと部下が一体となり、持てる経営資源を活用し、部門や階層を超えて問題解決のために学び合い、あらゆる階層に存在する知を結集させていく必要がある。

ロナルド・A・ハイフェッツ(1997) The Work of Leadership (邦訳:リーダーシップの新しい使命)


要は、昨今のビジネス環境化では、「誰か1人が現実の全体像を全て理解していてその課題を解ける、という認識を改めるべし!」と言っています。

ファシリテーションは、今回のような適応課題への挑戦に非常に相性が良く、プロジェクトメンバーの異なる意見が場に安全に表現され、各人の尊いナレッジと多様な認識の視点が連結されることを担保します。

尚、関係者が集まり、「ああでもない、こうでもない」と葛藤と未来への希望が混在しながら進むその場は、まさに組織としての新しい価値が生まれるプロセスを定式化したSECIモデルそのものです。

関係者が一同に集まる場が設定され_共同化(Socialization)、
各々の考えを対話して見える化し_表出化(Externalization)、
知識がつながり新しいアイデアになり_連結化(Combination)、
組織に実装される_内面化(Internalization)ためのスタートが切られる。

野中郁次郎(1996,2020) 「知識創造企業」 SECIモデルを元に筆者記述


対話と合意形成から、戦略の実行に移る局面(Internalization)で非常に重要なことがあります。

それは、組織は「正しさ」よりも当事者が信じる「もっともらしさ」で動いていく、という現実です。組織心理学の大家であるカール・E・ワイクは、組織として「分からなさ(=多義性)」にあふれている外部環境に実行を伴って適応し続けるためには、「環境認識への組織としての腹落ち=センスメイキング」が重要であることを述べました。

ワイクは、センスメイキングの複数ある特徴の1つに、

センスメーキングとは・・・中略・・・正確性よりも、もっともらしさ主導のプロセスである。

カール・E・ワイク(2001) 「センスメーキング イン オーガニゼーションズ」

と述べています。

今回ご提示した、適応課題/SECIモデル/センスメイキングの各理論は、企業を変革したい多くの人が1度は学ぶものです。それらの実践が、「ファシリテーション」と非常に相性が良いことが少しでもご理解いただければ本当に嬉しいです。

最後に、適応課題という概念を日本に紹介されたと言っても過言ではない、埼玉大学の宇田川准教授が、企業変革が進まない構造的無能化への対応を具体的にのべている部分を引用して終わります。

経営陣が変革が進んでいないことに気づきにくい場合もあろうし、それをどこから考えればよいのかがわからず、手をつけていないこともあるかもしれない。この状況を変えていくには、コーポレート部門が経営のファシリテーションを行い、全社戦略などの経営の重要事項について、コンセンサスを構築する必要がある。

宇田川元一(2024) 「企業変革のジレンマ -構造的無能化はなぜ起きるのか-」


ファシリテーションを使って、人間臭く、自分たちの「らしさ」を大切にして組織を良くしていきましょう!!経営のファシリテーション、組織における(重要だけど進まない)課題解決のファシリテーションにご興味がある方は、ぜひお声がけください!!!一緒に、この世界観を広めていきましょう!!


<株式会社HR andについて>

HR and は「合意形成の質は、実行の質」を証明するために存在する、ファシリテーション型HRBPサービスの会社です。「ファシリテーション」「組織開発」を軸に、企業の経営者・事業責任者と経営企画部門や人事部門のリーダーやご担当者の方に向けて、ソリューションを提供しています。 詳しくは HR and の公式サイト(https://hr-and.jp)をご覧ください。

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コメント

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宇宙に繋がるファシリテーション🚀のステキな記事でした。 野中先生のハナシまで出てきてビリビリきました⚡️ 構造的無能化、大組織の問題だと考えがちですが、小規模組織でもプチ無能化は起こっているなぁと改めて考えさせられました。ありがとうございましたー!

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