安田自身にも、そういう経験がある、と明かす。

「やっぱり、自分がちゃんと痛い思いをしてきたから。痛い思いをすると、逃げたいんですけど、でも、逃げたとて、もう1回痛いんで。痛い思いを、どれだけ痛い思いとして知るか、だと思います。それらが自分の真実に変わって、自分の栄養になっている。

 全然、疑似体験でいいんです。この『アリババ』と『愛の乞食』が、観る人にとっての本当のストーリーじゃなかったとしても、あなたのなかにある異物をタッチすることのきっかけになる、っていうことだと思うんです」

愛がほしい、とかはない

 ちなみに、「愛の乞食」は唐十郎がエミリー・ブロンテ作「嵐が丘」のヒースクリフに着想を得たタイトルだそうだが、安田自身のなかに、そういう一面はあるか、と問うと、「ええー!? 容易にうんって言われへんな」と笑った。愛を求めるタイプではない?

「その言い方でいいんであれば、僕には、求める理由がない。愛は勝手にリターンしてくるものと考えているので。個人的に、ほしい、とかはない。けど、返ってきたら、ああよかったね、っていうぐらい。ポンって返ってくるものなんて本当に少なくて、返ってきたものの密度が高かったら幸せなだけやと思うんです」

 それはファンとの関係性にもある濃密さかもしれない。

「そうですね。ファンのみなさまとは、僕たちが作り上げた時間があるから、無条件に交換しあってる感じがある。けど、一般的に、世の中みんなが生きてて愛をくれる、って理解して生きちゃダメだと思う」

 痛い思いから逃げずに、自分を受け止めて成長してきた安田は、そう穏やかに笑った。

(編集部・伏見美雪)

AERA 2025年9月1日号より抜粋

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