ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第17話:全面衝突

 考える。

 考える。

 考える。

 ポケモン廃人に出来ることなど、それだけだ。

 敵がどれほど強くとも、ポケモンである限り弱点は必ず存在する。

 それはタイプ相性的なものだけではなく、ステータス、特性、その全てを総合した上での弱点が存在する。

 件のゲッコウガは、通常種とは違い毒を使いこなし、そしてカメレオンの如く周囲に溶け込む性質を有する。

 だが、もしも通常種とステータスの傾向が然程変わらないのであれば──弱点は間違いなく、耐久が低いこととなる。

 そして、あのストライクも一撃一撃が破滅的な威力を誇り、まともに打ち合えば勝ち目は無い。

 しかし虫タイプであること、草タイプであることはスマホロトムの図鑑機能で確認済みだ。

 タイプ相性としての弱点が多すぎるのである。

 問題は──此方のポケモンとは、ステータスがあまりにも水を開けられていることであった。

 この世界の過酷な環境がそうさせたのか、それともそれだけ長い間戦っていたからか練度がずば抜けているのか。

 あるいはその両方か。

 単純なレベルだけではない。相手を殺すための戦いを幾度となく経験し、そして積み上げられてきた鋭敏な感覚と技は、メグルのポケモンを遥かに凌駕している。

 メグルはまだ、トレーナーになって1年程度しか経っていない。

 過酷な冒険と戦いで手持ちのレベルは急激に上がっていったものの、それでも何年もポケモンを鍛え上げてきたトレーナーに実力は及ばない。

 そんな相手と戦うならば、此方も手段を選んではいられない。

 使えるものを何でも使わなければならない。

 

「イヌハギ。話がある」

「……」

 

 一通り、イヌハギから此処までのヒャッキの事情を聞いたメグルは──そのついでと言わんばかりに、彼に頼みごとをした。

 

「オーパーツを俺に貸してくれ。テング団の持っている──オーパーツを」

「……オーライズ、お前は使えるのではなかったのか?」

「色々あってな」

 

 それが、オーライズの解禁だった。

 アルカが持ち出したオージュエルは未だに彼の腕輪に嵌めこまれている。

 だが、オーライズに必要となるオーパーツを彼は持っていない。

 理由は2つ。 

 必要となるのが、サイゴクのおやしろに祀られている御神体であること。

 そしてもう1つは──かつてイデア博士によって複製されたコピー品は、何かがあってはいけないので全て処分されたことであった。

 彼の作った力に頼るのがイヤだった──それ以上に、博士の事を思い出すのを忌避したメグルもまた、オーライズの事を忘れるようにしていた。

 しかし今、最早そんな事を言っている場合ではない。

 タイプ相性をひっくり返すオーライズは、この戦いで勝つためには必要だ。

 ステータスの差をタイプ相性で補う事が出来るからである。

 

「分かった。キャプテン達は良い顔をせんだろうが……テング団が抽出したオーラで作り出したオーパーツがある。それを渡そう」

「ありがとう。助かるぜ」

「……だが、大丈夫なのか?」

「何がだよ」

「今の貴様は相当憔悴しているように見えるがな」

 

 メグルは気付いていない。

 しかし、彼の目には濃い色の隈が彫られていた。アルカが居なくなったことは、彼が思っていた以上に彼のメンタルに罅を入れていた。

 

「……ケガの状態もさることながら、その状態でクロウリー達に勝てるかどうか──」

「うるせーうるせー……やるっきゃねえだろ」

 

 一つだけ言えることがあった。

 いずれにせよ、どんな結果になったとしても、此処で自分が立ち上がらなければ一生後悔するであろうことは分かっている。

 だから立ち上がらなければならない。相手がどれだけ強かったとしても。

 

「……某は貴様らを死なせんように命を張るだけだ」

「イヌハギ──あんがとよ」

「某たちはもう、間違える訳にはいかんからな。だが──ひとつだけ懸念点がある」

「……何だよ?」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「メグル殿!! 戻ってきたでござるか!?」

「もう平気だ。それより状況は?」

「急いで、あいつらを止めねえと、とんでもねえポケモンが目覚めちまうんスよ!!」

 

 チャチャ姫の言い伝え。

 クロウリー達の動き。

 それらから総合して、オーラギアスが封じ込められている場所が特定される。

 ヒャッキ地方の南に位置する死の渓谷。

 草ひとつ生えない大地に、オーラギアスは封じ込められているという。

 イクサ達の推測では、かつて隕石が此処に落ちたために、辺り一帯が吹き飛んだのではないか──とのことであった。

 そして、この場所はルギアが戻ってくるまでは瘴気で満ちており、とてもではないが人の入れる場所ではないとのことだった。

 他でもないオーラギアスが封じられている大きな証拠である。

 

「オーラギアスの事はイヌハギから聞いてる。虫・毒の癖に、とんでもねえポケモンってこともな」

「急ぎ、大渓谷に向かうが、メグル殿は大丈夫でござるか?」

「ああ。アルカを助けに行くぞ。イクサ達も協力してくれるよな?」

「勿論ですっ! 一緒に戦いましょうっ!」

 

 テング団の拠点から、次々に飛行ポケモンに乗って飛び立つメグル達。

 頑丈さと速度を両立するヒャッキアーマーガアを貸し与えられ、空から大渓谷へと向かう──

 

 

 

「……待ってろ、アルカ。絶対に助けてやる──ッ!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「オーラギアスが復活したら、手が付けられなくなるわ」

「そうなる前に、アルカ様を助け出して、儀式を止めるのですよ」

「ええ。現に──もう敵の姿が見えます!」

 

 メグルもゴーグルで既に、何匹かのタイカイデンが此方へ向かってくるのを確認している。

 その上にはローブ姿の魔法使いの姿があった。

 しかし。

 

「うるせーうるせー、相手が誰だろうが関係ねえよ。全員倒しゃあそれで解決だろが」

 

 ライドギアの手綱を握り締め、メグルは思いっきり降下していく。

 それを見てか、イクサも追随するようにして速度を上げた。

 しかし。

 

 

 

「──行くぞアブソル」

「ふるーるッ!!」

 

 

 

 

 メグルは思いっきり宙に向かってボールを投げる。

 空に飛び出すのは──アブソルだ。

 その光景にイクサは目を疑った。

 アブソルは当然だが、空を飛べない。

 

「ちょっ、何考えてんのあの人──」

 

 そのままアーマーガアから飛び降りたメグルは、アブソルの背中に向かって飛び込む。

 そして、腕輪のオージュエルをなぞった。

 アブソルの首輪が光り輝く。そこには、テング団謹製のアケノヤイバのオーラをコピーしたオーパーツが取り付けられていた。

 

 

 

「ギガオーライズ”アケノヤイバ”」

 

 

 

 久々にその言葉をつぶやくと、アブソルの身体からは青白い鬼火が迸り、そして体毛が翼の如く広がる。

 そのままアブソルに跨ったメグルは、勢いを付けて急降下。向かってくるタイカイデンをあしらうように言い放つ。

 

「なんだアイツ!! 死にに来たのか!?」

「こっちに!! こっちに来るゥ!?」

「テメェらに用はねぇよ。アブソル、”むねんのつるぎ”!!」

 

 アブソルの尻尾がゆらゆらと揺れると、刀の如く大きく伸びて、向かってくるタイカイデン達を一気に撫で切りにしてみせる。

 胴をばっさりと切り裂かれた敵達は、そのまま為す術もなく墜落していくのだった。

 

「フルルエリィィィスッッッ!!」

 

 複数の敵を前にあまりにもワンサイドゲームな戦いを見せつけるギガオーライズしたアブソル。

 それを前に、言葉を失うイクサ達。

 

「メグルさんもオーライズが使えたんですか!?」

「オオワザ無しで、あれだけの数の敵を──!?」

「それにギガオーライズはトレーナーとポケモンの感情でその力を跳ね上げさせる。今のメグルさん、ブチキレてるわね」

 

 敵を皆叩き落としたアブソルは、そのまま着地の瞬間に影の世界へと入り込み、そのまま地面から主人を乗せたまま這いずり出ることで衝突の勢いを殺す。

 そして、続くようにしてイクサ達も敵地に降り立つのだった。

 

「アブソル、ギガオーライズは一度解除だ。負担が大きいだろ」

「ふるーる! ッ……ガルルルルルィィィス!!」

「……ってわけにも行かなさそうだな」

 

 唸り声を上げるアブソル。

 そして、メグルの行き先を阻むようにして彼らは揃って現れるのだった。

 クロウリーの忠実なる幹部・ワスレナだ。

 

「──正面から乗り込んで来るとは怖いねェ~~~!! だから、しっかり此処で潰してやらないとねぇ~~~!!」

 

 ちゃっ、と”おっかな石”を指に挟んで投げ上げるワスレナ。

 しかし──既にその時にはアブソルの姿は消えており、空中に石が投げられた瞬間にそれらは砕け散っていたのだった。

 

「いっ──速!?」

 

 眼前に突如現れたアブソルに、ワスレナが対応できるはずもない。そのまま、尻尾に薙ぎ払われて、岩盤へと叩きつけられてしまうのだった。

 

「いっちちちち……こりゃあ手痛いのを貰っちゃったねェ……!!」

 

 崩れた岩盤から何とか這い出てくるワスレナ。

 魔法の力で防御したからか軽傷で済んだが、明らかにこれまでとは異なる出力を放つアブソルに慄いているようだった。

 記憶魔術は不発に終わる。

 

「”むねんのつるぎ”でブッタ斬れッ!!」

 

 マシェードの身体を──刀の尾が貫いた。

 そのままブン、と振り回してみせると、地面に思いっきり脳天を叩きつけてやる。

 ゴム毬のように跳ね飛んだマシェードは、そのまま動かなくなるのだった。

 

「ギガオーライズ……話には聞いていたけど、此処までとはねェ~~~!! だが、時間は稼げた……!!」

「ッ!!」

 

 ワスレナの右手には”おっかないし”が握られていた。

 それが砕け散ると黒い靄が現れ、次々と形になっていく。

 現れるのは、タイプ:ゼノ。 

 ミッシング・アイランドでかつて激突した相手だ。

 

「バギュオオオオオオオオオオオオォォォンッ!!」

「……今度はそいつか……!!」

「ジュペッタ、シャドークローなのですよッ!!」

 

 しかし、黒炎の竜の進軍を阻むようにして無数の影の爪が襲い掛かる。

 

「……成程ねぇ……仕留め損なったんだねぇ、アイツ」

「メグル様、先に行くのですよ……!」

 

 迎え撃つはヒメノとジュペッタ。

 傷は疼くが、借りは返さねば気が済まない。

 しかし、それを見てワスレナは更に追加で”おっかな石”を砕く。

 

「さぁて、おじさん大盤振る舞いしちゃおうかねぇ!!」

 

 靄が現れ、宙に浮かぶ狐のようなポケモン、そしてそれを従える少女の姿が現れた。

 

 

 

「……姉さんは何処。姉さんは……ッ!!」

「アルネ……!」

 

 

 

 メグルからすれば忘れようとしても忘れられない相手。

 アルカの妹──テング団三羽烏の一人、アルネ。そして、その相棒のフーディンだ。

 破綻した倫理観と、圧倒的な技術力を併せ持つ恐ろしい科学者であり、そして──ギガオーライズの力を振るい、メグル達を苦しめた強敵だ。

 結局、キリとメグルに追い詰められ、最期は機密保持の為に自爆を選び散った彼女。

 しかしその姿は彼の脳裏に深く刻まれることになるのだった。

 そしてヒメノにとっても因縁の相手だ。彼女が連れたヒャッキタルップルによって、相棒のミミッキュが凍らされてしまったからである。

 この三羽烏は圧倒的な力を誇っており、タイプ:ゼノも随伴している以上、ヒメノだけで戦える相手ではない。

 だが──

 

 

 

「──今度はフーディン? 次々相手が変わるのはキライじゃない」

 

 

 

 ──稲光が天から降り注ぐ。

 それを、お札を大量展開することで弾き返すフーディン。

 アルネは物憂げに上空を見上げた。そして目当てのものが見つかったかのように笑みを浮かべる。

 

「姉さん? ()()()──ッ!」

「メグルさん。イクサ君が先行してる。さっさと追いついて頂戴。こいつらは、私の獲物よ」

「チッ、数が多いねえ……! だが逃しは──」

 

 ワスレナがメグルの方に目を向けた途端。もう彼の姿は無かった。

 鬼火を爆発させて加速したアブソルに跨ったメグルは、疾風の如き勢いでその場を去っていく。

 

(あんがとよ、この恩は忘れねえ!)

 

「あっ、あああ、一瞬で逃げられたぁぁぁーっ!?」

「そういうわけなので。そいつらの相手はヒメノ達が務めるのですよ」

「せいぜい持ちこたえて頂戴ね」

「……だが、人間というのは己の中に巣食う恐怖心にはそう簡単には勝てない──怖いねぇぇぇーっ!!」

 

 タイプ:ゼノが咆哮し、そしてギガオーライズしたフーディンが辺りに燃える粉塵を撒き散らす。

 飛び出したハタタカガチは、タイプ:ゼノに喰らいつく。

 そして、ジュペッタはヒメノとレモンを抱きかかえたまま、影の世界へ逃げ込む。

 次の瞬間──爆音が鳴り響いた。炎の粉塵が前触れもなく爆ぜたのである。

 何とか難を逃れたレモンとヒメノだったが、その威力を目の当たりにして言葉を失う。

 

「あれでオオワザでも何でもないってマジかしら?」

「マジマジのマジなのですよ……!」

「”しきがみらんぶ”」

 

 パンパン、とフーディンが手を叩けば、今度は魚のように宙を大量の御札が飛ぶ。

 そして、その一つ一つがタイプ:ゼノと組み合うハタタカガチを狙って飛んで行く。

 

「──ハタタカガチ、撃ち落としなさい!! ”10まんボルト”ッ!!」

 

 電撃を放ち、タイプ:ゼノ諸共周囲の御札を焼き尽くすハタタカガチ。

 しかし、御札の数は途切れる事が無い程に多く、それらはヒメノやレモン達の方にまで飛んで行き──爆発する。

 それに吹き飛ばされ、彼女達は地面に転がされるのだった。

 速い。そして数が多い。対応が出来ない。

 

「ッ……三羽烏……強敵ね! まだギガオーライズ切りたくないんだけど、私……!」

「ならば、ヒメノが切札を切るのですよ。ギガオーライズはぎりぎりまで取っておくべきなのです」

「切札?」

 

 ヒメノは腕輪をレモンに見せつける。そこには虹色に光り輝く石が埋め込まれていた。

 

 

 

「──ジュペッタ。メガシンカ、なのですよー♪」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──同時刻。ヒャッキ地方沿岸付近に浮かぶ黒船内部はテング団の団員達によって占拠が完了していた。

 その立役者となったのは、イタズラウサギであった。

 

「……デジー殿の開発した”催眠君1号”のおかげで、船内の敵達はおおむね制圧でござる」

「ホント、廃材からよくもまあこんなものを作れたッスね」

「ふふーん、ボクは天才なのですっ!」

「何でも良いッスけど、アルカさんが居ないか探すッスよ!」

「ひどくない!?」

 

 事実、天才であることは否定できない。胸を張る小さなウサギ少女の作った催眠ガスを撒き散らす小型マシーンは、船員たちを概ね無力化するに至ったのである。

 こうして戦わずして捕まった捕虜たちを解放することに成功したのである。

 しかし──部屋の隅々まで探索していく彼らを、クロウリー一味がただで帰すはずもない。

 忍者特製ガスマスクを着け、船内を強行突破して探索を行う彼らに──燃え滾るハンマーが不意に背後から襲い掛かる。

 それを受け止めるのは、キリが後ろ手から出したモンスターボールから飛び出した──メテノであった。

 

 

 

【デカヌチャンの ヒートハンマーッ!!】

 

 

 

「まだ戦える者が居るでござるか!?」

「──ふぁーあ。急に眠くなったと思ったら……侵入者かい」

 

 

 

 インパクトで吹き飛び、天井に衝突して装甲がパージされるメテノ。

 それを見て愉快そうに笑うのは──クロウリー一味の突撃隊長・ミネルヴァだ。

 

「……今この船に充満してるのは、ガチグマでも寝る、ヒャッキ産キノコの胞子ガスなんだけどぉ!?」

「……あ? もしかしてオマエ達の仕業かい!? あたしが眠くなったのはぁ!?」

「何でコイツは平然と起きてるんスかぁ!?」

 

 無論。ミネルヴァはガスマスクなど着けてはいないのである。

 

「はっ、ちっこいのに受け止めて貰ったみたいだけど……可哀想に、吹き飛んで行ったよ。次はお前達だ!!」

「どうだか」

「あ?」

 

 デカヌチャンを狙い──宝石の光が壁に跳ね返りながら飛ぶ。

 それは的確にデカヌチャンの目と手を撃ち抜き、そのまま彼女を悶絶させるのだった。

 パワージェム。生成した宝石の光をレーザーのようにして放つ技。

 メテノは装甲が割られただけで、依然健在だ。

 

 

 

「……メテノ。此処からが勝負どころでござるな」

「しゃらんしゃらんら」

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