「磐梯電鉄不動産」の開発分譲地にある空き家。(千葉県富里市。2023年7月、筆者撮影)

「空き家」というものへの拭えない思い

社会に出てからは、出費を抑えるために可能な限り賃料の安いアパートを選んでいたが、どこでも好きなところに暮らせると思うと、すぐに引っ越したくなってしまう性分で、結局20代半ばころまでは、半年に一度ほどのペースで引っ越していたのではないかと思う。ひとつでも多くの知らない町で暮らしてみたかったのと同時に、「物件」そのものへの関心も強く、やがて、どんなにボロくても良いから、戸建ての家に住みたいという希求は年々高まっていった。

おそらくその頃から、空き家というものの存在に次第に疑問を感じ始めたのだと思う。

もちろんその当時は、まだ今とは違い、「空き家問題」と呼ばれるほど社会問題として認知されていなかったが、一方で、すでに山間部の小規模自治体では、離農農家の空き家の増加が目立っており、ほとんど前例もない中、手探り状態で空き家バンクを開設する自治体も出始めていた 。空き家バンクというものは、今でこそ比較的都市化が進んだ数多くの自治体でも広く取り組まれているが、元々は不動産市場が形成されていないような過疎自治体において、不動産業者に変わって行政が空き家の紹介・案内・流通の支援を行い、増加する空き家の流通を促進させるために始められた施策である。

【写真:1980年代に九十九里沿岸北東部で乱売された建売別荘の調査のために訪問した千葉県匝瑳市の分譲地。数棟の別荘が使用されないまま放置されている。(2023年6月撮影)】

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しかし当時の僕は、そのような空き家にかかわる複雑な事情に目を向けていたわけでもなく、ただ短絡的に、せっかく家があるのに使わず放置するなんてもったいない、と考えていただけに過ぎなかった。実際そんな思いで、長野県のある小村で、空き家バンクを利用して家屋を譲り受けた(相続未登記が障壁となり所有権の移転登記はできなかったが)こともあった。

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