【深淵の話】オタクの心が落ち着いた話


 私は、無意識領域のことを深淵と呼んでおりまして、そこには怪物なんていなくて、ただもう1人の自分がいるだけだというのが持論です。理想化された幻想の自分を見ている人こそ、深淵に蓋をしたまま生きてしまうので、本当の自分との整合性がつかなくなって永遠に苦しむ愚かなことをしてしまうわけですが、そういうのそろそろやめていこうよ、というのは思っています、でもまあ幻想は楽しいし、深淵見るのはしんどい。それも知っています。強制はしないけど、でも同じ失敗と苦しみをずっとぐるぐるやっている人は、そこでひたすら苦しんでるなら自分の心の深くまで行って見ておいで、と思っています。
 深淵の行き方は、心がしんどい時が一番行きやすいです。なぜその事象が自分の心の負担になっているのか徹底的に追求していく旅をすれば、深淵に辿り着けます。どうせ苦しいならやってみるのもいいと思います。
 苦しさに負けて引き返してくる人はあまりにも多いけれど、それはそれで私はその人の人生だと思います。自分の力で行くことしか出来ない、誰の手も借りられない場所ですから。

 人の無意識世界を具現化したものが、ファンタジー小説だと私は思います。

  例えば私がファンタジー作品の中で一番評価しているのがゲド戦記ですが(ジブリ作品じゃなくて原作限定)、長い年月を必要とする物語であり、旅に出る人物に変化はあるけれど、自分の影を知る、呪いの元を断つ、そして本当の世界を取りもどす…と、冒険の旅に出ては一つずつ課題を乗り越えていき、最後に主人公が全ての鎖から解き放たれて終わりを迎える物語です。
(今年ようやく最終巻の翻訳が出版されましたが、本当に清々しい終わり方でした)
 ゲド戦記で起きることは本当に心の深層を旅する時に通過するものと同じだなと私は思っています。そういう体験をしてきました。

 その人によって旅路の過程は違うのかもしれないけれども、冒険に出て、たくさんの苦難を潜り抜け、そして最も大切なものを失うことで世界を取り戻す、これがファンタジーの王道であり支持されるのは、人は無意識領域においてこれが真理だと知っているからではないかなという気がします。
 そして、最も大切なものを失わないで何かを得られるはずがない、というのは重要なところだと私は思っています。

 これまでの深淵の話はこちら。

 2025年はインフルエンザでぶっ倒れるところからはじまって、しかしタダでは起き上がりはしないということで目標を定めて、ここに書いた通りにオタクが悪意なんかに負けるかと思ってやっていたわけですけど、半年を超える手前で、もうこの気持ちが根本から折れそうになることが起きました。
 割と後ろから殴られたに近い感覚だったな…いや、そういう場所から殴られることってあるんだ?本当に???というくらい、想定していなかった衝撃でした。
 表に見える場所では全く交流がなかった相手なので、誰にも特定ができないから書いてしまうけど、その人は私に対して何かしら負の感情があったのだろうと思っています。
 この事態が起きて、やっぱり、この世に信じられるものなんて何にも無いのかもしれないなと思いました。私が光だと思ったものは、偽物だったのかなと。
 そう思って、1人でしょぼくれていた時にかけて貰ったのが、この一言。

「信じる道があるというのは素晴らしいことですよ」

 この世には、会ったこともない私のことを見ていてくれて、私の心を理解してくれる人がいるのだなと思いました。そして、言葉は人をひどく傷つける道具であろうと、私にとっては光なのだとも思いました。
 でも、信じる道というのは、本当にこれなんだろうか? 進み続けていいのか? 
 始めたことを何の説明もなく投げ出すのはあらゆる意味において負けを意味することなので、絶対に嫌です。もしも投げ出すとするなら、とてもくだらない意地だとしても、明確な理由がなければなりません。
 私が信じたものが偽物か本物かどうかは、自分で突き止めるしかありません。

 夏の間は、苦しい日々だったような気がします。あんまり思い出したくな いというのが正直なところでしょうか。
  色々考えました。考えて考えて、思い詰めた時に、この世には完全に私を満たせるものは何もないということもわかりました。どれだけ探し求めても、完全なものを得ることはできない。それだけはわかりました。
 私が心の底から欲しかったものは、ずっと探し求めてきたものは、なんだろう?

 夏の終わりに、東北へ旅をしました。行ってみたかった東北で、震災の傷跡と、復興の光と影と、美しい海を見ているうちに、自分の心を取り戻していったように思います。
 帰ってきてしばらくしてから、私は私の大好きな文章を読み返してみました。
 私が信じたものは、信じた時のままの輝きがありました。生きるということは、迷いがたくさんあって、分岐もたくさんあって、何を選ぶのが正解だったのかはわからないし、間違いもたくさんしてきました。たくさんの苦しみがありました。それでも私はここにこうして生きていて、誰に否定されようと、私の内側ではこれが正しく完全な善きものだと認めることができたのです。ずっとここにあったのに。
 なんでこれが外側にあると思っていたんだろうね?
 今も、あの海を思い出す旅に、私の中にある光を確かめることができます。

 それでも、傷が癒えるのには時間が必要だったと思います。もう記憶も薄れたし、乗り越えたんだろうなぁと思った途端に揺り戻し的な事象があったりもしましたが、なんだかふとした時に、ああもういいや、といような、気持ちを全て手放せるようなことがありました。久々に見た最大の敵の姿(私が無数に記事書いてきてみんなわかると思うのでここでは敢えて名前書かない)が全然幸せそうに見えなくてびっくりしたというか、あれ?と思って。
 私が真剣に戦ってきた相手というのは、こんなもんだったっけ? こんな人に推しの出鱈目言われてショック受けてきたんだなぁ…と思ったら、なんだ、くだらない、と気が抜けてしまったのです。もちろん何一つとして許していませんから、最後まで記事は書くし、この人が引き起こしたデマと中傷のデータは取り続けますが。
 この時に、私の心を揺るがせた相手の本当の姿って、こんなものかもしれないな、と思ったのです。もしかして、光を見つけられなかった人かもしれない、そう思いました。他人に苦しみを与えることで自分を満たそうとしても、それは一時であって、根本から満たせるものではありません。それでも、そうしなければ自分の心を保てなかったのかな、と。
 許しはしません。でも、それは、未来永劫において私は相手と何の関わりも持つつもりがない、という意思の意味であり、感情はなくなりました。そこには立ち枯れた木のようなものが残っているだけです。それもやがて、風が吹いて少しずつ朽ちていくのだろうと思います。

 やっと、心に風が通り抜けるようになった気がしました。まだとても風通しがいいとはいえないかもしれないけど、私の心の中で止まっていた空気は動きはじめました。私の深淵に積まれた呪いは、この風によって少しずつ朽ちていけばいいのだと思います。

 たくさん失ったものはありますが、私の中には光が残りました。これは紛れもなく、私だけが見える私だけのものであり、そして私の中では決して失われることがない、確かなものです。

 ここまで長い月日をかけて、揺るぎない場所にようやく辿り着きました。多分こういうのって、本当は親が子への愛情として与えてくれるものだと思うんだけどもさ。まあいいや、与えられなかったものは、自分で掴んでこその我が人生というものなのでしょう。
 この場所がある限り、私はどんな旅にも出ることができます。

 2026年も推し活その他色々、頑張ります。

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読み方:あい/魚拓&文字書き職人のオタク/推しは東大先端研教授・池内先生&東京外大教授・篠田先生
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