ウクライナに困難な判断迫るトランプ氏 和平協議、袋小路の可能性も

喜田尚

 ロシアのウクライナ侵攻をめぐるウクライナのゼレンスキー大統領と仲介役の米国のトランプ大統領との28日の首脳会談でも、両国の合意は得られなかった。焦点となったのは、ロシアが占領するウクライナ領土の扱いだ。強気なロシアの要求を背景にトランプ氏がウクライナに妥協を求める構図は変わらず、和平協議は袋小路に入る可能性もある。

 トランプ米政権は今年1月の発足以来、侵攻される側のウクライナにロシアへの領土割譲を迫ってきた。これに対し、ウクライナ軍とロシア軍が対峙(たいじ)する現在の前線で戦闘をやめ、領土の帰属問題についてはその後の外交交渉で解決するというのがウクライナ側の立場だ。

 トランプ氏はこの日の首脳会談後の会見では「難しい問題だ」としたものの、「正しい方向に進んでいる」と述べ、米ウ間の合意への自信を見せた。

国民が支持するのは領土割譲なしの和平案

 米メディアの報道によると、米国は11月に28項目の和平案を示した。同案は、現在ウクライナが掌握する東部ドネツク州の北西部からウクライナ軍が撤退して非武装化し、同州全体とルハンスク州の東部2州、南部クリミア半島を「事実上のロシア領」と認めると規定。他の南部の2州は現状の前線で「凍結する」とした。

 ロシアの主張に大幅に寄るこの案を受け入れがたいとするウクライナは、その後米側と協議を重ねた。ゼレンスキー氏は今月、28項目から修正した20項目が作成され、領土問題にはウクライナが主張する案と、ドネツク州を含む東部ドンバス地方を非武装化して「自由経済圏」にする二つの案が検討されていると説明していた。

 ただ、後者はなおウクライナの領土割譲が前提とみられる。ウクライナの世論調査で72%の国民が同意できるとしているのは、事実上ロシアの占領を容認しつつも領土割譲は認めない和平案だ。ゼレンスキー氏が会談前、米国との合意後に和平案を国民投票にかける考えを示した背景にはこうした事情がある。

国民投票のための停戦も否定

 ゼレンスキー氏はこの日の会見で「我々の社会にとって難しい問題だ」と極めて困難な判断を迫られていることをにじませた。しかも、トランプ氏は会見で、ゼレンスキー氏が国民投票実施の条件とした最低60日の停戦を「(一時的な)停戦はない」と否定。「プーチン氏はその点について強い思い入れがあるようだ」とし、ここでもロシアの立場を受け入れる姿勢を見せた。

 ゼレンスキー氏は会見で投票のための停戦には触れなかった。さらに「国民投票か議会での採決」と選択肢を広げたのも、会談で示されたトランプ氏の意向に配慮したためとみられる。

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この記事を書いた人
喜田尚
国際報道部
専門・関心分野
欧州、旧ソ連地域、民主主義、難民問題など人間の安全保障
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    佐藤優
    (作家・元外務省主任分析官)
    2025年12月29日21時3分 投稿
    【視点】

     12月下旬に私がクレムリン(ロシア大統領府)筋から得た情報では、ロシアの和平交渉に対する認識は以下の通りです。 「トランプ米大統領は、ロシアの主権を尊重するとともにロシアの行動原理をよく理解している。しかし、EU指導者は、ハンガリーとスロヴァキアを除いて、ロシアの行動原理を理解していない」  プーチン大統領を含むロシア指導部のトランプ氏に対する信頼感は極めて強いです。

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