“1000円”着服で退職手当“1200万円”が「ゼロ」に…バス運転手への処分、最高裁が適法と判断したワケ【弁護士が選ぶ2025年注目判決】
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松井弁護士「行為に対して処分が相当といえるか」
この判決に対し松井弁護士は、「着服は犯罪行為ですが、1000円は刑事裁判なら実刑になるような金額ではなく、男性はお金を返しています。それで賃金の後払い的性格もある退職手当、それも1000万円を超える金額がゼロになるのは、重い処分だなと率直に驚きました」と話す。 その理由について、「何を重視するかという価値判断や、感覚的な部分も含みますが…」と前置きしつつ、松井弁護士はこう説明する。 「極端な例ですが、たとえば1000円を横領して『死刑』と言われたら、多くの人が『重すぎる罰だ』と感じると思います。このように、やってしまった悪いことに対しては、その行為に相当な処分がされて然るべきだと思うところ、今回の判決は、行為に対しての処分が釣り合わないのではと感じました」 最高裁判決では、公務員による公金着服という職務への影響や組織の信頼を損なう結果が重視された。公務員に求められる厳格な服務基準が、判断の基盤になったといえるだろう。 松井弁護士も、懲戒処分の取り消しなどを求める労働裁判では、民間企業で働く人よりも公務員のほうが厳しい判決が出やすいと指摘する。 「たとえば、市営バスと変わらない公共性を持つJRや東京メトロのような民間企業で同じようなことが発生した場合、『全額不支給』にはならなかったかもしれません。 これには、市などの行政の判断に関して裁判所が用いてきた、『社会通念上著しく妥当を欠いて、裁量権の範囲を逸脱し、またはこれを乱用したと認められる』場合には違法になるという判断枠組みが影響していると考えられます。つまり、よほど乱暴な判断だと労働者側が立証できなければ、適法になる可能性が高いのです」
「(他の裁判の)判決への影響は大きくはない」が…
今回の判決は、今後の労働事件の裁判にも何らかの影響を及ぼすのか。 松井弁護士は、「裁判所が全く新しいことを言い出した訳ではないので、弁護士の実務や判決への影響は大きくはないと思います」という。 しかし、最高裁の判断だ。「これまで以上に、労働者とくに公務員の利益よりも、業務への影響や信頼の毀損を重視して裁判所が判断する傾向が強まる可能性はあるのではないかと思います」(松井弁護士)
弁護士JPニュース編集部
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