写真提供/ 吉川祐介

インターネットは「限界別荘地」の救世主となるか

それでも秋南さんは、今の嬬恋村の状況は面白くなってきている、と実感している。嬬恋村は平成16年9月の浅間山噴火によって一時期観光産業が冷え込み、長い地価低迷の時期と重なったこともあり不動産価格はかなり下落してしまった。

しかし今は、インターネットも普及し、嬬恋村でも光回線を引くことが可能で、テレワークの拠点としてももちろん、通常の生活においてもネットの利便性を活用できる環境が整えられた。

すずらん村管理事務所ではもともと管理業務のほかに、電球や電池など別荘内で使用する消耗品や食品の販売、自転車の貸し出しなども行っていた。今は近くにコンビニがあるのでそういった物販は行っていないが、コンビニに限らず、今では嬬恋村のような山奥でさえ、ネット通販の恩恵を十分に受けられることができるようになった。

それ以前の話として、今では田舎の別荘地の物件探しすら、インターネットを利用して容易に情報が集められる時代だ。かつての別荘ブームは今は見る影もないが、別荘地の利用を取り巻く現状は必ずしも後退ばかりしているわけでもないというのが、嬬恋村の別荘地のど真ん中で生まれ、50年暮らし続けてきた秋南さんの見立てだ。

開業当時から今も残る管理事務所の看板。物販やレンタサイクルを行っていた時代の名残
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移住に成功するのは「人付き合いを避けず孤立しない」人

さて、そんな秋南さんに、管理人としての視点で、これから移住を検討している方へのアドバイスを聞いてみた。秋南さんがまず口にしたのは、おおらかな気持ちを持って移住に望んでほしい、とのことだった。

別荘地と言っても田舎なので、想像外のトラブルというのは当然起こりうる。嬬恋村には安い中古物件もあるが、普通に考えて、無料だったり数十万円程度で売られている古い別荘が、そのまま使えるはずがない。

トラブルを避けたいなら不動産会社や工務店に頼んで修繕するのが一番王道で、それをせずなるべくセルフで行うなら、何か問題に直面するたびにストレスを抱え込むのではなく、むしろ不具合を改善していくのを楽しむくらいの気持ちでやったほうが良いと思うし、そういう方のほうが長く別荘を使うとのことだった。

別荘地といえど田舎で暮らすという点は変わらず、予期せぬ問題に対処するおおらかさが欲しい、と秋南さんは語る

これまで理想を持って移住してきたものの、結局早々に転出してしまう方を何度も見てきたという秋南さん。移住に失敗する人に共通してみられるのが、必要以上に人付き合いを避けて孤立してしまっていたという点だ。

慣れない移住生活で、例えば樹木一本伐採するにしても、独断や独力ではどうにもならない問題も出てくることがある。無理に濃密に付き合う必要はないにしても、そこは管理人としてアドバイスできることもあるので頼ってほしい、とのことである。

またもうひとつ、昨今は不動産会社を通さず個人売買のような形で物件を購入する方も増えているが、場合によっては売買の際に十分な説明(不動産会社の「重要説明事項」にあたるもの)が行われていないために、ひどいケースでは、管理費が必要であることすら知らず購入してしまった方もいるらしい。

個人間売買は、ネットの普及もあって今後ますますポピュラーになっていくかもしれないが、別荘地には管理費はつきもので、管理費の滞納によって水道を利用する権利が失われる恐れもあるので、その点は十分に注意してほしい、とのことだった。

すずらん村も含めて、現在の別荘地は多かれ少なかれ課題を抱えているものだ。そうした別荘地の問題点を指摘する報道も少なくない。それでも、おそらく今後も別荘地を移住先として選択する方は出てくるだろう。秋南さんは今後も、別荘地の「限界化」をこれ以上進めないための新しい取り組みを模索してきたいと語っている。

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