高齢者とのゆったりダナン旅(から緊急帰国した話)③なぜか始まるお仕事編
毎話多くの人に読んで頂きありがとうございます。この経験が人のお役に立てるかどうかは極めて微妙ですが、海外で急病って超イヤ!という話です。
Day3 ここでまさかのお料理教室
ひとまず病院は予約できましたが、午後の受診まで時間があり、もともと午前に料理教室を予約していたのでとりあえずおばちゃんと2人で行くことにしました。
こんな状況で?とも思いつつ、どうせ受診までは寝かせとくしかないし、寝てる分には症状ないし…という極めて現実的な判断により、おじちゃんにスマホを握らせ、料理教室へ…。
牛肉のフォーと揚げ春巻き、パッションフルーツのスムージーを作ります。(こんな状況でパッションフルーツのスムージーを?)
牛豚の合い挽き肉に細かく刻んだタロイモ、鶏がらスープを加えてこね、そしてこのちいちゃいタマネギとネギの中間ぽいspring onionを中央に乗せてクルクル巻きます。
一旦春巻きを揚げ、フォーもとスムージーも準備。
調理を終え、いざ実食。
あ、揚げ春巻きが異様に美味しい…。
細かく刻んで合い挽き肉と混ぜたタロイモがかなりデカいポイントな気がしますが、日本ではなかなか手に入らないので今度海老芋とかでやってみたい。
フォーも出汁の雑味が少なくて美味しかったなあ。フォー用のおすすめスパイスも教えてもらいました。
やっぱり料理をすると無心になれるので良い。
そしてこんな時こそパッションフルーツのスムージーを飲んだ方が良い。ちょっと心が落ち着きます。
とはいえ現実に向き合わねば。
Day3 病院(テラ)へ───
一時間半程度で料理教室を終え、ホテルに戻ります。
おじちゃんはベッドで休んでいる分には特に変わりなかったとのこと。歩行も可能ではありますが、念の為ホテルで車椅子を借りて(Can I borrow a wheelchair?とか言えば大抵持ってきてくれる)、Grabを呼んでクリニックへ。階段昇降を要するホテルに泊まってなくて良かった。
まずはクリニックにパスポートを提出。
問診票みたいなのはなくて、まず看護師さんにバイタルを測ってもらい、診察にきてくれた先生に症状を説明。
これは万国共通の話ですが、受診する前には
①メインの症状(一番の困り)とそれに伴うサブ症状
②症状が始まったタイミング、発症様式(突然出たのか、段々悪くなってきたのか)
③症状が良くなる/悪くなる因子(安静にしてれば症状はない/歩くと息が切れる、など)
④治療中の疾患、既往歴、現在の常用薬
をまとめておくと良いです。
日本であればそれも問診の中で医療者側が聴取していきますが、海外旅行先では伝えるべきことを整理しておいた方が無難です。(よほど言語に自信がない限りはchatGPTでもGoogle翻訳でもいいので↑を翻訳しておいて、そのまま見せるのが吉)
幸いにもバイタル(血圧や脈拍、酸素飽和度)は安定しており、私は初手から自分が医療者であることを明かした上で、先生に簡単な経過と症状について説明しました。
先生は私よりちょっと年上ぐらいの朗らかな外科系救急医。ニコニコしながら「あなた循環器内科医でしょ?」と聞いてきました。バレとる。
私はおじちゃんの症状を説明する時に「Orthopnea(起座呼吸)はないです」と言ったのですが、「"Orthopnea" なんて単語使うの医者の中でも循環器内科医だけだよ!(笑)」とのこと。ウケる。確かに。
そして先生からフランクに「よし、とりあえず採血と心電図とレントゲンかな?採血の項目どうする? 」と聞かれ、私が決めるのオモロいな…と思いながらいくつか見たい採血項目をオーダーしてもらいました。
そして検査を終えたおじちゃんを処置室に寝かせていたところ、早速先生が心電図を持ってきて、「これどう思う?」と聞いてきます。普段の救急外来すぎる。
ハアー虚血(狭心症や心筋梗塞)とか肺塞栓(いわゆるエコノミークラス症候群)だったらイヤだな~でもあるあるだよな~と思いながら心電図を見ると、
アッ、なんか虚血ぽくも肺塞栓ぽくもない。
けど、なんか変。
アレ、これ電気的交互脈では?
教科書には出てくるけど10年医者やってて実臨床ではまだ見たことのない心電図。
先生がどう思う?と聞いてくるのも無理なくて、おそらく専門医じゃなければようわからん、と思って終わるやつ。
こんな異国で、しかも身内の心電図として見る心電図としては想定外だったため、一旦写真を撮って職場のグループLINEに投げます。
同期からは即「なんか、電気的交互脈だね」という返事が返ってきました。
なんか、電気的交互脈だよね。
電気的交互脈というのは心臓の周りを覆っている心膜の中に水がたまる、心嚢液貯留状態の時にたまに見られる心電図です。心嚢液貯留というのは専門医として働いていて年間数例見る程度の疾患(というか所見)。
そして心筋梗塞や心筋炎に続発して心嚢液がたまることもあるのですが、今回の心電図はそれっぽくない。
採血データもまだ出ないし、ウーン、エコーお願いしようかな…と思っていたら看護師さんが処置室にいそいそとエコーを運び入れ始めました。
おやグッドタイミング、と思って眺めていたところ、先生から「ねえ、心臓の超音波ってできる?」と。
エコーを?私が?
先生は「僕外科医だし心臓のエコーはわからないから、自分であてていいよ」とエコーのプローべを渡してくれます。いやこっちとしても自分で見たい気持ちはあるけど、ベトナムで心エコーを?? 全然ウケてる場合じゃないが、やっぱりウケてしまう。
現地の病院で「カラードップラーどれだ?これか?」とかブツブツ言いながらエコーあてて、(色んなバイト先であらゆる種類のエコー使いまくっててよかったナ、ベトナムでもエコー当てられるし…)と思った なぜベトナムでエコーを?
— O次郎 (@oooooooojiro) October 30, 2024
早速当ててみると
ワハハ、心嚢液たまってま〜す
やはり心嚢液貯留はありありですが、心臓自体の動きはメチャ良好でやっぱり心筋梗塞ぽくはない。ついでに弁膜症もないし(重症の)肺塞栓ぽくもない。
そうこうしているうちに採血データも出て、やはり心筋梗塞でも肺塞栓でもなさそだな〜という結果でした。その二つが疑われるようならもう四の五の言わずに現地で即入院ですが、とりあえずそれらの疾患は否定的。
心嚢液がなんらかの理由で急速に貯まった場合、心臓が外から押されて血液が拍出できなくなり、血圧がべらぼうに下がったり脈拍があがったりする心タンポナーデという状態になり、緊急で心嚢液を抜く処置が必要になります。
が、おじちゃんはバイタルも極めて安定しており、心タンポナーデとは言えない状況。おそらくゆっくり心嚢液がたまってきて、少しずつ息切れが出ていたところに前日長く歩いたことでいよいよ症状が顕在化してきたものと思われました。
とはいえ、早いうちに入院して心嚢液を抜き、原因の精査をする必要があります。そして専門医(私)の見立てでは、最低でも2週間は入院でしょうな〜という感じ。
かと言ってベトナムで入院するわけにもいかないし、呑気にもう一泊してる場合じゃない。
そう、このまま日本に帰るしかない。
帰国を32時間ほど前倒すことに決めました。
初めての緊急帰国、果たして無事に帰国できるのか…トホホ…
(つづく)


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