ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

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第132話:クラウングループの最期

 ※※※

 

 

 

「ギュラルルルルルルル!! ピピピピピ」

 

 

 

 頭部の電球に更に電気を流し込むハタタカガチ。そして、かつての主人を見るなり──何処か愉快そうに口角を上げると、チロチロと鋼色の舌を出し入れするのだった。

 

「”10まんボルト”が来る!! 受け止めて!!」

「オーケー!! 今日は君だ、ニドキング!!」

 

 尻尾をアース代わりにして地面に突き刺し、高圧電流の束を一気にデジー達に向けるハタタカガチ。

 しかし、それを真っ向から受け止めるのはニドキング。

 それによって三人は感電せずに済むのだった。

 だが、敵が苦手な地面タイプと悟るや、ハタタカガチはニドキングを思いっきり睨み付ける。

 

「電気が効かない相手は、”へびにらみ”で麻痺させるわ!! 視線を逸らして!!」

 

 3人はハタタカガチから視線をズラすが、その指示が理解出来ないニドキングは電球蛇の魔眼を直視して身体が痺れてしまう。

 だが、当然これも想定内な訳で──体が痺れたニドキングは、口に含んでいた木の実を思いっきり噛み砕くのだった。

 

【ニドキングは ラムのみ で回復した!!】

 

「ギュラッ!?」

 

 接近するニドキングを前に流石に恐怖を覚えるハタタカガチ。

 足元が赤熱化したのを感じ、すぐさま自身の身体を電光化させようとするが、

 

「”あなをほる”デース!! カクレオン!!」

 

 地面に潜り込んでいたカクレオンに気付かなかったが故に足を文字通り掬われることになる。

 全身を電気に変えるまさにそのコンマ一秒前。

 地底からの攻撃を前にして、遂にハタタカガチはその身体を崩すのだった。

 

「ッ……レモンの言った通り、だったデース……!!」

「単独でのあいつの行動パターンは、私が教えた通りのものよ。開幕で10まんボルトで制圧、それが効かないなら”へびにらみ”で制圧。それも効かないなら、電光化で直接相手に接近して無力化する」

「……えっげつなぁ……」

「特に電光化は、生身の私達に使われたらオシマイ。だから、確実に阻止する必要があった。バジルが打ち合わせ通り、ハタタカガチの不意を突いてくれたおかげよ」

 

 元より主人が居なくとも、行動が出来るようにハタタカガチを特訓していたレモンだからこそ──今のハタタカガチの行動パターンを読み切る事が出来たのである。

 それでも、電撃を受け止める事が出来るニドキングに加え、ハタタカガチに悟られずに接近できるカクレオンの二匹が居て、初めて成り立つ作戦ではあったが、戦闘の主導権は何とか握る事が出来た。

 特性”へんげんじざい”で地面タイプに変わり、最大威力の地面技を不意打ちしたことで、ハタタカガチの体力は大幅に削られている。

 

「カクレオンが潜んでたから、今までは使えなかったけど──これでどうだ!! ”だいちのちから”!!」

 

 ニドキングが思いっきり足を踏み鳴らし、地面が赤熱化する。

 危機を察知したハタタカガチは、すぐさま自らの身体を電光化させて、再び攻撃圏内を脱出する。

 しかし、大きなダメージを受けた後では、電光化は長く持たない。

 再び元の実体を取り戻してしまう。しまうが──ハタタカガチも馬鹿ではない。

 ポケモン達を倒すよりも、後ろで指示を出している人間たちを斃した方が早いことを知っている。

 ごぽごぽ、と音を立てると、思いっきり地面を覆う勢いでヘドロを吐き出すのだった。

 

 

 

【ハタタカガチのヘドロウェーブ!!】

 

 

 

 強烈な悪臭と共に、ヘドロが津波となって押し寄せる。

 ニドキングだけで抑え込める量ではない。ヘドロウェーブは、敵全体を攻撃する程に範囲が広い技だ。

 ハタタカガチ程のポケモンならば、目の前のデジー達まで飲み込む勢いでヘドロを生み出せる。

 

「ちっ、行儀が悪いわね!!」

「カクレオンは避けられるけど、私達が危ないデース!!」

「それも想定内っ!! 行くよニドキング。君の良い所、見せちゃおうっ!!」

 

 しかし、デジーも動じはしない。 

 オージュエルにカードを翳し──ニドキングにオーラを纏わせる。

 

 

 

「ギガオーライズだニドキング!!」

 

【ニドキング<ギガオーライズ> タイプ:毒/地面】

 

 

 

 オシアス磁気が突き刺さり、強固で刺々しい鎧を身に纏ったニドキング。

 その頭には月の輪の如き紋様が生み出されていた。

 襲い掛かるヘドロの波を前にして、ニドキングもまた──大量の水の波を生み出す。

 

「なみのりで押し返せ!!」

 

 大質量には大質量、と相場が決まっている。

 ヘドロの波を押し流すようにして、大量の水がヘドロウェーブを押し流す。

 幾ら電撃でも、大質量の塊を押し流すことは出来ない。すぐさま身体を電光化させて空中に逃げたハタタカガチは難を逃れる。

 そして、そのまま空中で姿勢を変え、大口を開けてニドキング目掛けて飛び掛かるのだった。

 

「”ふいうち”デース!! カクレオン!!」

 

 直後、側頭部に強烈な蹴りが加わる。ハタタカガチの攻撃の軌道は逸れ、明後日の方向へと墜落。

 しかしそれでも闘志は失わないのか、身体を電光化させ、一瞬でレモンの眼前にまで迫った。

 

 

 

「ッ──レモン!!」

「──やっぱりそうきたわね」

 

 

 

 僅か、距離は50cm程。ハタタカガチが電撃を放てば確実に黒焦げになる距離だ。

 自身の特性を知り尽くし、後ろから指示を出すこの少女が、最大の脅威である、とハタタカガチは断じたのである。

 当然ニドキングとカクレオンが追いつけるはずもない。電球が輝く中、レモンは──叫ぶ。

 

 

 

()()()()()()()()ッ!!」

「──ッ!?」

 

 

 

 洗脳され、過去の記憶は洗い流されたはずだった。

 目の前の少女は、今となっては只の脅威でしかないはずだった。

 しかし、それでも自身を前にして怯え一つ見せずに立ち向かうこの少女の凛とした声を前に、ハタタカガチは思考が途切れた。

 そして、気が付けば蜷局を巻き、少女の前に頭を垂れていた。

 ハタタカガチは自身が何をしているかすら分からなかった。

 此処は戦場、確実に相手に隙を晒す行為であったにも関わらず──

 

「……ごめんなさい」

「!?」

 

 その声で我に返ったハタタカガチは再び電球を発電させ、目の前のレモンを焼き殺そうとする。

 だが、もう遅かった。ギガオーライズしたニドキングがハタタカガチの真下の地面を赤熱化させている。

 レモンは思いっきり、後ろに跳ぶ。

 逃がさないとばかりに大口を開けるハタタカガチだったが、地面が爆ぜたことで大きく吹き飛ばされ、ごろごろと転がるのだった。

 幾らオーライジングで防御と特防が上がっていると言えど、タイプ一致の4倍弱点を二度も受ければ一溜まりもない。

 ハタタカガチの電球からは光が消え失せ、そのままオシアス磁気は霧散していくのだった。

 

「……ハタタカガチっ!!」

 

 

 

 ──()()()! かしずきなさいっ!

 

 ──()()()

 

 ──ギュラルルルルルル……ピピピピ

 

 ──おいおいレモン、何処でそんなの覚えたんだい。ピカチュウもハタタカガチの頭に乗っかるんじゃないよ……。

 

 ──カチュ? 

 

 ──お父さんっ。かがちね、こういうととぐろをぐるぐるーってまいてくれるの!

 

 ──ポケモンは対等なパートナーだ。そんな使用人に命令するみたいな……。

 

 ──ぎゅらるるるるる♪

 

 ──お前が良いなら、良いか……ハタタカガチ。

 

 

 

「……ごめんなさい。ずっと、迎えに行けなくて」

 

 レモンは、ハタタカガチに駆け寄る。

 彼女の声を聞いてか、電球蛇の目に一瞬、光が灯った。

 デジーとバジルの顔が蒼褪めるが──もう、心配には及ばなかった。

 ハタタカガチは甘えるような声を出すと、レモンに頭を擦りつける。

 

「会いたかった……貴方にずっと……本当に、ごめん……!!」

「ぎゅらる……」

「ごめんなさい……ハタタカガチ……」

「……一件落着、デスかね」

「うん……」

 

 ハタタカガチの洗脳は解かれた。

 レモンは持っていた新しい空のボールをハタタカガチの頭にくっつける。

 電球蛇は、彼女の手元へと戻っていく。

 

「……二人共、私のワガママを聞いてくれてありがとう」

「礼には及ばないデス! レモンの無茶を聞くのは慣れてるのデ!」

「ま、信じてたわよ。夏合宿であれだけハタタカガチと模擬試合した貴方達なら、やってくれるでしょうってね」

「私達結局本気のレモンとカガチには勝ててないんデスよ」

「あの、ところで、浸ってるところ悪いんだけどォ……」

 

 デジーは相も変わらず青い顔のまま、燃え盛るオーラプラントを指差した。

 

「……転校生達さぁ、あの中に入っていったんだよね? ヤバくない?」

「……助けに行くわよ。もう足手纏いにはならないわ」

「あれ、助かるんデスかね?」

「言ってる場合があったら足を動かす!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 パーモットの掌が、イデアの胸に押し当てられ、生体電流が流し込まれる。

 心臓は再び活性化し、僅かだが人体はエネルギーを取り戻す。

 一度、二度。

 それを流し込み、反応が無かったものの──三度、生体電流を流し込むと、どくん、と心臓は鼓動を取り戻し、イデアは咳き込むのだった。

 

「ゴホッ、ごふっ……!?」

「や、やった、生き返った……!!」

 

(SVでは覚えられるポケモンが居なくなった技だけど……オオヒメミコが覚えていてよかった……)

 

 イクサはへたり込み、オオヒメミコの方を見やる。

 

「大丈夫? ミコさん」

「大丈夫なわけが無かろうが……これが、奴の……オーラギアスの新たな力……!! 生身の人間が受けて良いものではないぞ」

「ごめん、これしか思いつかなかったから……」

「だが、これで良い。良い決断だったぞ、イクサよ」

 

 ミコはオオヒメミコとしての身体をボールの中に戻すと、苦しそうに言った。

 そして、始終を見届けたゼラもまた、驚嘆した様子で言った。

 

「……サイコシフト。初めて見たぞ」

 

 ”サイコシフト”は、自身のかかった状態異常を相手に押し付ける技だ。

 イクサは、他のエスパーポケモンの中でも上位の力を持つミコならば、この技を応用する事が出来ると考えたのである。

 人間のイデアが受ければ致命傷になるこの毒を、ポケモンであるミコに肩代わりさせる、という形で。

 しかし問題点があるとするならば、この技は非常に習得するポケモンが限られるということであった。

 

(SVでこの技はリストラされてたし、オシアスでも覚えるポケモンは居なかった……正直賭けだったんだよな。ミコさんが”サイコシフト”を習得できて助かった)

 

「治せないなら、ポケモンに押し付ければ良い……か」

「人間が毒を受けるよりは、遥かに良いですから」

「しかも、妾ならばこの毒を解析できる。こやつの取った選択は最適解だ。かなり苦しいが……本体をボールに収めていれば少しはマシだぞ」

「……やはりお前は……レモンが認めただけの事はある」

 

 そして、とゼラはイデアの方を見やった。

 すぐさま持っていた救急セットを開き、彼の応急処置を始める。

 一命をとりとめただけで、まだまだ予断を許さない状態には違いない。

 

「このまま安全な所に避難させたいが……オーラギアスは?」

「うむぅ……それが、どうやらこの施設からどんどん遠ざかっているようだ。大方、地下に穴を掘って逃げたか」

「そんな力が奴にあるのか?」

「……あるよ」

 

 ぼそり、とイデアが言った。

 イクサは目を見開き、彼に呼びかける。

 

「博士!! 良かった……!!」

「あーあ……無茶なんてするもんじゃないね……」

「何故一人で突っ走っていったんですか。僕らと合流していれば──」

「それについての言い訳は後々するよ……それよか、オーラギアス。あいつはヤバイよ。アカシアたちを喰らった後に、急成長してね」

「急成長?」

「ああ。ポケモンの進化、ともまた違うのかな……でっかいクモみたいな姿になって……センセイやガチグマでも勝てなかった」

「ッ……妾の知らぬ姿だが……あいつは、未知の生物。何を隠し持っていてもおかしくはないか」

「どちらにせよ、深追いは危険だ」

「そ、そうだっ!! レモンさん達を助けに行かなきゃ!! ハタタカガチとまだ交戦してるはず──!!」

「いや、それよりも先に──俺達の方が危ない」

 

 燃え盛るオーラプラントは、既に崩落寸前であった。

 爆発に加え、オーラギアスとの戦闘の余波で、既に天井が落ちかかっている。

 倒れているガチグマをボールに戻して回収した後、イデアを抱えたゼラはすかさず腰のボールを2つ放り投げる。

 

「此処は俺に任せろ。インテレオン、”ねらいうち”で火を消せ。クワガノン、”でんじほう”で瓦礫の山を吹き飛ばせ」

 

 インテレオンが退路を阻む炎を吹き飛ばし、そしてクワガノンがそこに高圧電流の塊を叩き込む。

 一瞬で崩れていた瓦礫は蒸発し、脱出口が出来たのだった。

 

「博士は俺に任せろ。行くぞ、イクサ」

「は、はいっ、ゼラ先輩っ!!」

「いっだだだ!?」

「博士どうしたんですか!? まさかまだ毒が!?」

「折れた骨がズレて……ヤバイ……」

「そういえば博士、病院抜け出したんでしたっけ?」

「イクサ君、怖い顔しないでおくれよ……本当に悪かったって……」

「自業自得だな」

 

 尚、当のイデア博士でさえも、世界同時滅亡3秒前であったことなど知る由は無い。

 オーラギアスが居そうな場所を取り合えず爆破しただけである。

 彼の適当さと気まぐれが結果的に世界を救ったことを皆が知るのは、また別の話。

 

「しかし参ったな……火の手が上がりすぎている」

「一体誰が、こんなにしたんだ!? オーラギアスか……!!」

 

(やっば……僕とセンセイがやったって言えない空気になってる……)

 

「そ、そうなんだよ、アイツ……プラントを見境なく爆破してさぁ、困ったヤツだよねぇ」

「……こやつめ」

 

 取り合えずオーラギアスに冤罪を押し付けることにした博士だった。尚、エスパーポケモンであるミコには全てバレているが。

 だが、それはそれとして、建物が倒壊し始めたことで、行き場は徐々に失われている。

 後は正面から強行突破するしかないのであるが──

 

「イクサ」

「は、はいっ、ゼラ先輩!!」

「最大火力だ。合わせるぞ」

「──はいっ!!」

 

 インテレオン、そして──サーナイトが横に並び立つ。

 両者ともに、パーティの主砲を担うポケモン達だ。

 

「チャンスは一回きりだ。あれを押し流した後、一気に外へ飛び出す」

「了解ですっ!!」

 

 サーナイトが”ムーンフォース”を。

 そして、インテレオンが指先に高圧の水を一気に溜めこむ。

 

 

 

「──”ムーンフォース”!!」

「──”ハイドロカノン”!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ダメだわ、火の手が酷すぎる!!」

「これ、中でまた何か爆発したんじゃない!?」

 

 燃え盛るプラントの中に、再び入ることは叶わなかった。

 あまりにも火の手が強すぎる。

 入れば、自分達が黒焦げだ。熱と煙を前にして、もう近付くことは出来なかった。

 

「……信じるのよ。イクサ君たちなら、帰ってこれる」

「で、でも、あの炎の中だよ!?」

「心配Nothing! ゼラセンパイは……サバイバル科最強のレンジャー、デスよ!」

「そうだけどぉ……!」

 

 

 

 

 どごっしゃあぁぁああ!!

 

 

 

 重い物が吹き飛ぶ音が聞こえた。

 そして、プラントの向こう側から──雪崩れ込むようにして瓦礫が押し流されていく。

 その中から、飛び出してくるのは、イクサ、そして──イデア博士を抱えたゼラだった。

 

「っ……転校生だー!!」

「やれやれ……間一髪ね」

「アレ? 何でイデア博士も一緒に居るデース!?」

 

 そう言い終わらぬ間に、プラント、そして工場は爆音と共に崩れ落ちていく。

 こうして、十数年に渡ってオシアスの裏で野望の限りを尽くしていたクラウングループは、技術の結晶たるオーラプラント、そしてCEOのアカシアの死を以て、完全に潰えることになったのである。

 

「驕れる人も久しからず、か……」

 

 イクサはぽつり、と呟く。

 あれだけの人やポケモンを巻き込み、遂には息子に手を加えるまでに落ちた外道の末路は、結局イクサは見届けることはなかった。

 だが、それでもまだ──何も終わってはいない。

 

 

 

「……でも、とんだ負債を残してくれたよ」

 

 

 

 地下に穴を掘って何処かへと消えたオーラギアスが、まだ残っている。

 オシアスを滅ぼしかねない最後の呪いが、まだ──残っている。

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