ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

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第129話:”それ”が見えたら終わり

 ※※※

 

 

 

「ば、爆発した!! 爆発したデース!!」

「ッ……!!」

 

 イクサは顔を上げる。

 谷底にある工場から火の手が上がっている。

 嫌な予感が過った。此処で嘆いている場合ではない。

 

「……ごめん皆。取り乱した」

「ッ……転校生」

「大丈夫。もう、大丈夫だから。行こう」

 

 口惜しさも、無念も、全部胸に抱えたまま──イクサは先へ進む。

 

「急ぎマショウ!! 何だかヤな予感がするデース!!」

「ッ……オーラギアスの反応が、更に強くなっている!!」

 

 ミコの口調は切迫していた。

 呪いのタネは既に、花開こうとしていた。

 

 

 

「……一体、奥で何が起こってるんだ……!?」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──人が虫に嫌悪感を抱くのはなぜか。

 

 昆虫に限らず、”虫”という広い括りで呼ばれる生き物全般に対して、だ。

 

 社会性、あるいは規則性、合理性を持つ一方で──彼らの姿も、知性の方向性も、全てが人類のそれとはかけ離れている。

 

 そして、小さくか弱いイメージとは裏腹に、彼等は驚異的な生命力と繁殖力を併せ持ち、地上を覆い尽くすに至った。

 

 最も身近でありながら、最も人からかけ離れた存在。故に我々はそれらを本能的に恐れるのかもしれない。

 

 既知であり、未知の存在。それが”虫”と呼ばれる生き物である。

 

 古代からその姿を見せていたにも関わらず、進化の過程で完全に人と枝分かれした彼らを──ある者は冗談めかして、こう言った。

 

 

 

 ”虫”の祖先は、遠い昔、宇宙から隕石に乗ってやって来たのではないか? と。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──繭? いや、でも、内部に高濃度のオシアス磁気──!?」

 

 

 

 イデアが分析する間にも、硬化した繭は更に肥大化していく。

 内部で何が起こっているのかは想像に容易い。

 今まさに、オーラギアスは生まれ変わろうとしている。

 これまで数千年もの間蓄え続けたエネルギーを消費し、自らの身体を作り変えようとしている。

 それが多くの虫ポケモンの”進化”に見られる行動に類似していることは言うまでもない。

 仮にもポケモン博士であるイデアは、オーラギアスの息の根を止めるには此処しかない、と判ずる。

 

「上等!! 君を葬るには都合がいい──”ちみもうりょう・じごくえず”!!」

「どぅーどぅる!!」

 

 呼び出した百鬼夜行の大群が繭に向かって大挙する。

 しかし、墨で生み出したそれらは、オーラギアスが放った波動を前に、いずれも掻き消されてしまうのだった。

 所詮はまやかし、墨で作られた仮初の命でしかない。

 

「なら──ポリゴンZ!! 君の出番だッ!!」

 

 すぐさまノータイムでポリゴンZを繰り出すイデア。

 その顔には派手な色の眼鏡が掛けられている。

 体がバラバラになったバーチャルポケモンは、標的を巨大な繭に定めると──極大の粒子砲を解き放つ。

 

 

 

【ポリゴンZの はかいこうせん!!】

 

 

 

 シェルターには風穴があき、周囲のものを蒸発させる程の威力であった。

 事実、プラントの外殻は文字通り消し飛ぶ結果となる。

 だが──それでも尚、繭は傷ひとつつかず、佇んでいる。

 

「か、硬すぎる……!! 今のが効かないのか……!?」

 

 ショートしたポリゴンZは、力尽き、その場に落ちてしまう。

 自分のパーティの中で考えられる限りの最大火力を以てしても、オーラギアスの繭は傷つかない。

 その事実を前にたじろぎながら、イデアは──見届けるしかなかった。

 繭に亀裂が入り、”それ”が生まれる様を。

 オシアス磁気は更に強烈に漏れ出し、イデアとドーブルを風圧で吹き飛ばす。

 数千年もの間、オシアスの大地を蝕み続けた呪いは今、完全に発現した。

 めきめき、と音を立てて、細長い脚が繭から伸びる。 

 そして食い破るようにして一気に、それは転がり落ちた。

 大きく肥大化し、膨れ上がった腹には、鉱石のようなものが伸びている。

 支えるのは、細くも鋭利で、屈強な足。

 頭部は──硬い鉱石の甲殻に覆われており、表情を伺い知ることなど出来はしない。

 言ってしまえば、”それ”は蜘蛛の如き虫であった。

 しかし、見上げる程に巨大な虫の姿をしていた。

 ”それ”が現れた時、オシアスが終わる鐘の音が確かに告げられたのである。

 

 

 

 

「ヲヲガギガガガガガガガガガッッッ!!」

 

 

 

 さしものイデアとドーブルも、その威容を前に立ち竦むしかなかった。

 ヌシポケモン以上の覇気、そして身体から留め止めなく溢れ続けるオシアス磁気。

 ヨイノマガンには及ばないにせよ、6メートルは優に超えるであろう巨体。

 その殆どを占めるのは、オーラギアスが溜めに溜め込んだオシアス磁気を貯蔵するタンクでもある、巨大な腹部である。

 

「は、ははは、随分と大きなアリアドスが出てきたじゃないか……!! 何処をとってもアリアドスとは似ても似つかないけど……!!」

 

 確かにそこらへんに生息する毒蜘蛛が一瞬脳裏に過りこそしたものの、ハッキリとそれは異質で異常な生物であると断言出来た。

 幾らタイプが同じだからと言って、パルデア中に居る電気グンカンドリと、カントーの伝説の雷鳥を混同する者は居ないだろう。

 生命としての強弱で敢えて”格付け”するのであれば、皆前者よりも後者の方が格上である、と断言する。

 同様に。

 仮に今目の前で蠢いている”それ”が本当に毒蜘蛛のポケモンだったとして。

 イデアからすれば、油断をする理由など、何処にも在りはしない。

 尤も、”それ”は宇宙から来た生命体。

 たまたまイデアがよく知る”クモ型ポケモン”にパーツが部分的に似通っていただけでしかない。

 つまるところ、地上のどのポケモンとも一致しない完全新種とも言える多脚の怪物がそこに立っていた。

 

「ヲヲヲヲヲヲヲヲッ!!」

 

(参ったな。一旦引くか? ……いや、こいつをプラントの外に出すわけにはいかない)

 

 イデアは、それでも交戦への決意を固める。

 このオシアスの呪いを、子供たちに触れさせるわけにはいかない。

 彼等では、この悪意の集合体に勝てるはずがない、と断じる。

 それほどまでに強大で、そして凶悪だ。

 オオミカボシが可愛く見える程の、怪物だ。

 幾たびも修羅場をくぐってきたはずのイデアだが、今回ばかりは鳥肌が止まらないのである。

 本能的に目の前のポケモンが規格外であることを直感していた。

 

「はぁーあ、仕方ないね……来いよチャレンジャー。サイゴクで一番強いポケモン博士が相手だ」

「どぅーどぅる!!」

 

 

 

【野生のオーラギアスが 現れた!!】

 

 

 

 鋼の如き甲殻に覆われた脚を地面に突きさしながら、オーラギアスは迫る。

 動きは鈍重そのもの。鉛の如く。

 タイプが何かは分からないが──それでも、出し惜しみする理由にはならない。

 ドーブルは早速全身の墨を解放し、己の身に纏うのだった。

 間もなくシルクハットや紳士服が墨で構成され、完全解放状態に至る。

 

「……センセイ、あの巨体を沈めるなら──これだ!! ”キノコのほうし”!!」

「どぅッ!!」

 

 一瞬で肉薄したドーブルは大量の胞子をばら撒く。 

 それを吸い込んだオーラギアスは──がくん、と脚を折り、そのまま沈黙してしまうのだった。

 

「あ、あれッ……? ま、まさか、こんな簡単に眠るなんて……!!」

「どぅどぅ……」

「まあいっか……このまま”フレアドライブ”!!」

 

 全身を火の玉に変えた一撃。

 たとえオーラギアスが硬い甲殻に身を包んでいても、燃え盛る炎の前では焼かれるしかない。

 本当に相手が虫タイプならば──であるが。

 

 

 

【効果はバツグンだ!!】

 

 

 

 図鑑アプリは──確かに、そう知らせた。

 しかし。

 特性を”ちからもち”に変え、攻撃力を跳ね上げた上で、弱点を突いた渾身の一撃。

 だが、全くと言っていい程、オーラギアスに響いた様子が見えない。

 当のオーラギアスは”キノコのほうし”によって未だに眠っており、ダメージを受けたかどうかすら分からない。

 

「お、おかしいな、僕、弱点は突いたんだよな……!?」

 

 手応えが無いのだ。

 たとえ相手が同格の巨体を誇るハガネールだったとしても、今の一撃を受ければ全身に延焼することは避けられない。

 だが、オーラギアスの甲殻は表面こそ少し焦げてはいたものの、肝心の内部に全くダメージが入っていない。

 当のドーブルも、あまりの堅牢さを前に当惑しているようだった。

 

「要塞か、こいつは!! センセイの攻撃で響かない奴は初めて見たぞ……!?」

 

 

 

「ギャリリリリリアアアアアアアアアアアッッッ!」

 

 

 

 崩壊したプラント中にオーラギアスの咆哮が響き渡る。

 それを前に、ドーブルも立ち竦み、イデアも怯んでしまった。

 

【ヌシ咆哮:ポケモンは怯んで動けない!!】

 

「ッ!?」

 

 それが命取りとなった。

 オーラギアスの脚からは、地面を走るようにしてオシアス磁気で造られた糸が幾何学模様を描いて広がっている。

 

「マズい、センセイ!! 避けるんだッ!!」

「どぅ、どぅ……!!」

 

 

 

【オーラギアスの どくどく!!】

 

 

 

 糸から一気に猛毒の液体が噴き出した。

 一瞬、動きが止まっていたドーブル、そしてイデアはそれを全身に浴びてしまう。

 皮膚から吸収され、一気に体内を駆け巡る毒。

 間もなく、身悶えする程の苦痛が彼等を襲う。

 

「がっ、あああ……!?」

「どぅ……!!」

 

 そして、重い身体を引きずっていたオーラギアスは、プラントの瓦礫に口から吐いた糸を噴きつけると、それを引き戻す勢いで巨体を一気に滑らせる。

 圧倒的質量差。このままでは両方共押し潰される。

 察したドーブルは、蹲ったイデアを抱えると、そのまま全力で地面を蹴ってその場を脱するのだった。

 瓦礫に激突したオーラギアスだったが、持ち前の頑丈さの前では衝突のインパクトは意味を成さず。

 そのまま逃げたドーブル目掛けて正確に糸を飛ばす。

 

 

 

 糸は一瞬でワイヤーの如く硬化し、ドーブルの身体を貫くのだった。

 

 

 

 

「どぅッ!?」

 

 

 

 

 痛みによってドーブルは地面に落ち、転げまわる。

 当然、抱えられていたイデアも地面に投げ出されるのだった。

 

「ヲヲヲヲヲヲ……!!」

 

 そのままガパァッ、と大きな口を開け、オーラギアスはドーブルの身体に噛みついた。

 巨大な牙はドーブルを貫き、そこからエネルギーを吸い取っていく──

 

 

 

【オーラギアスの きゅうけつ!!】

 

 

 

「いけないッ!! センセイ、フレアドライブ!!」

 

 オーラギアスの口は一気に炎に包まれた。

 流石に面食らったのか、ドーブルを吐き出すのだった。

 

「ッ……センセイ、センセイっ!!」

 

 ふらふらの身体で、イデアはドーブルに駆け寄った。

 しかし、身体の傷は既に墨によって埋められており、大したことはない、と言わんばかりにドーブルは首を横に振る。

 それでイデアは気付いた。先程までオーラギアスが使っていた捕食波動が何時まで経っても来ない、ということだ。

 

(どの道、あれが来たら避けようがない。だけど、使ってこないのは……成体になったことで、食性が大幅に変化したから……!?)

 

 虫ポケモンの中には、進化すると食べる量が大幅に減ったり、あるいは全く食べ物を口にしなくなる種類も存在する。

 宇宙の生き物であるオーラギアスに、地球のポケモンの道理を当てはめるのは大きな落とし穴が存在する気もしたイデアだったが、現状オーラギアスはこれまで使って来た捕食波動による分解を使ってこない事から──オーラギアスそのものの性質の変化を察する。

 これだけ姿が変わっているのだから納得は出来る話ではある。

 

(捕食に特化し、エネルギーの蓄積に特化した幼体から、戦闘に特化した成体というべきか。ポケモンにおける成体の役割は、圧倒的なパワーによる自らの種の生息圏の拡大、そして()()……おい待て)

 

 過った最悪のシナリオに、イデアの顔は毒とは関係なく青くなっていく。

 

(繁殖!! そうなると、あのバケモノが更に増える可能性があるのか? 冗談じゃない!! いや、宇宙から来た生き物が地球の生物同様に増えるのか? いや、だが、最悪の可能性は常に考慮せねば!!)

 

 イデアは毒に侵された身体で立ち上がる。

 鞄に入っていた”なんでもなおし”の注射を自身とドーブルに打ち込み、再び立ち上がった。

 

(これじゃあ先陣切って此処をブッ壊した意味が無い!! あいつはやっぱり、此処で始末しなきゃダメ──)

 

「ごふっ……!?」

 

 ──胃の奥から鉄の味を感じたイデアは次の瞬間、咽せ、地面に赤黒いものを吐き散らしていた。

 体に力が入らない。そのまま崩れ落ちるしかない。

 ドーブルもまた、ぜぇぜぇと肩で息をしている。

 毒を消す為に打った”なんでもなおし”が効いていないのである。

 

(な、”なんでもなおし”が効かない……!? そうか!! 宇宙から来たコイツの毒は、未知の毒!! ”なんでもなおし”が効かないのか!!)

 

 視界が霞む中、イデアは空元気だけで起き上がる。

 それならば、猶更オーラギアスは止めなければならない。

 捕食波動を振り撒き、無差別に周囲を分解していた幼体とは別次元の厄介さだ。

 既に生命の維持に必要なエネルギーを全て自前で用意できるようになった今のオーラギアスは、生ける毒の宝庫と化した。

 星を蝕む呪いにして、毒。

 それこそが──この巨大な”蟲”の姿が齎す災厄。

 

「ヲヲヲヲヲヲヲヲ……!!」

「センセイ、何が何でも止めるぞッ!! ”ちみもうりょう・じごくえず”!!」

 

 尻尾を地面に突き立て、大量のポケモンが呼び出される。

 大手を振り、それらはオーラギアスに雪崩れ込んでいく。

 鏡の羽根を持つアーマーガアが咆哮し、オーラギアスに竜巻を放つ。

 だが、それは全て展開された蜘蛛の巣状の障壁によって阻まれてしまった。

 火山の如き茸を背負うパラセクトが大量の噴石を浴びせる。

 だが、それを受けても尚、オーラギアスは平然としており、逆に大量の糸で貫いて掻き消してしまった。

 二匹の氷の竜は方々から大量の冷気を浴びせ、トドメに頭上に氷の林檎を落とす。

 だが、しばらくすれば、何が起こったか分からない様子でオーラギアスは再び動き出した。

 終いにはオーラギアス以上の体躯を誇るカバルドンをドーブルは呼び出し、押し潰そうとするが──あろうことか、カバルドンの巨躯は押し負け、そのまま転がされてしまう。

 そうして次の怪異を呼び寄せようとしたところで、ドーブルの身体から墨が離散した。

 時間切れだ。

 

「ッ……戻ってくれ、センセイ」

「どぅ!?」

「それ以上は危険だ……ボールにいれば、君は助かる」

「どぅ!! どぅ──」

「大丈夫、諦めてなんてないよ。諦めて、堪るもんかよ……!!」

 

 倒れながらもボールに戻ることを拒否していたドーブルだったが──イデアは構わず、彼を戻した。

 

「ッ……あったまってきたなぁ!! 此処まで、此処まで追い詰められるのは何時ぶりだっけかぁ!!」

「ヲヲヲヲヲ……」

「第二ラウンドだ、オーラギアス──!! ガチグマ、君の出番──」

 

 ぐらり、とイデアの言葉はそこで途切れ、視界も真っ黒に染まった。

 蜘蛛の巣に囚われた蟲の死骸の如く、イデアは倒れ伏せる。

 

「……あ、ぐ、うご、け……!!」

「ヲヲ……」

 

 ざっ、ざっ、とオーラギアスはその巨体を引きずり、何処かへ去っていくのが分かる。

 しかし、何処へ向かっているのかなど、博士には知る由もなかった。

 

 

 

 彼はもう、目が見えなかった。

 

 

 

 オーラギアスは、以前とは違う。もう、弱った獲物に興味を示しはしなかった。

 あくまでも、戦闘中に消耗したエネルギーを敵から吸い取るだけに留め、積極的な捕食行動を行わなくなった。

 故に、完全に機能停止した”敵”を捨て、そのまま去っていく。

 

「に、逃げるな……クソッ……!! 逃がすか……ッ!!」

 

 イデアが抱えるのは無念。

 サイゴクに住まう人々やポケモン達の踏み躙られた思いだ。

 オーラギアスは、ある意味で全ての元凶。

 此処で逃せば、また新たな災禍を生む。

 

 

 

「僕は……此処で、くたばるわけには、いかないんだ……!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──イデアは、幼いころからキャプテンになるべく修行と勉強を重ねていた。

 特に目的があったわけではない。

 ただ、遠い祖先がキャプテンになろうとしたがなれなかったのが無念──といった記述を残していたらしく。

 それ以降家の人間はキャプテンを目指したり──目指さなかったりしたらしい。

 しかし生まれた場所を「クソ田舎」と断じていたイデアにとっては、目指したいものなどキャプテンくらいしかなかった。

 今思い返せば、若さ特有のとんだ視野狭窄も良い所であったが、致し方ないところである。

 事実、イデアは自らのトレーナーとしての実力に自負があったし、なるべくして自分はキャプテンになるだろうと思っていた。

 気が付けば、サイゴク伝統の風習と試練である”おやしろめぐり”も、あっさりと終わらせる程の実力を手に入れていた。

 だが、結局その望みも──すぐさま断たれることになる。

 生まれ育ったシャクドウシティのヌシが選んだのは、自分よりも少し年下の少女だった。

 むしろ、自分等最初から目にも入っていないようだった。

 

「……はぁーあ、センセイ。ほんっと、世の中クソだよね、クソ」

「どぅーどぅる」

 

 イデアにとって唯一の慰めは、家で代々飼っている不思議なドーブルだけだった。

 結局、シャクドウの大学でポケモンの勉強を本格的に始めたイデアだったが、モチベーションなど上がるはずもなく。

 小屋で適当に論文を読み漁る日々が続いた。

 そんな彼にとって、もっと劣等感を刺激することになったのは──

 

 

 

()()ーッ!! 起きてるーッッ!?」

「……博士じゃないんだけどなぁ、僕は」

「大学に通ってるんだから、いつかは博士になるんでしょ」

「ならないよ。勉強くらいしかやることないだけさ」

 

 

 

 ──キャプテンに就任した少女・ユイが毎日のように小屋に通い詰めてくることであった。

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