ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

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第124話:覚醒

 アカシアが去っていった後。

 妾は激昂するロータスを抑えるので精一杯だった。

 

「ッ……あの男……!!」

「やめんか! これでは何のために潜入したか分からんではないか!」

「だけど、ポケモンを殺しに使うだなんて……!」

「落ち着け。オーラギアスを捕らえれば、奴の計画は全部御破綻だ。死ぬよりも酷い目に遭わせてやれるぞ」

 

(とはいえ、大企業の社長ともあろう男が、異界から来た怪しい研究員の話を鵜呑みにしてオーラギアスに辿り着いた……というのは聊か出来過ぎた話だ)

 

 他にも情報源があったのだろう、と彼女は判断する。

 オシアスはかつて、オーラギアスによって滅んだが──それでも、住んでいた人間が全て死に絶えたわけではない。

 辛くも生き残った、あるいは辺境の地方で災厄を見聞きしたものが口伝したとしてもおかしくはない。

 問題は、迷宮ばかりを探索していた妾達は、それを調べる暇など無かった事なのであるが。

 

「先回りして、オーラギアスが保存されているであろう場所に向かえば良かろうて。どうせ、オマエのレックウザが居れば、万が一の事があっても問題は無かろう」

「それもそうだね……腸煮えくり返ってるけどさ」

 

 そんなわけで、妾達は工場の奥へ奥へ、と進んでいった。

 え? 内部はどうだったかって? 絶対潜入の時の役に立つだろうって? わざわざ話す必要があるかソレ。

 どうせ今となってはブッ潰れた工場だぞ。役に立ちはせん。

 明らかに重要そうなものを保管してそうな頑強な鉄扉があったが──この際だし、思いっきり破壊してやることにした。

 警報音が鳴り響く。だが、さっさとオーラギアスをとっ捕まえて逃げれば、それで話は終わりのはずだった。

 妾達を待っていたのは、オーラギアスではなかった。

 

 

 

「な、なんだこれ……」

 

 

 

 幾つものコードに繋がれた、魔人の石像。

 それが、硝子の部屋の中に置かれていた。

 骨董品ではない事は一目で分かった。何故ならば、妾はそれを知っている。

 

「フーパ……」

「えっ!? これが!?」

「……奴はオシアスの地下と一体化しているはずだ。何故ここに……」

 

 そこまで考えたところで、妾の中には一つの仮説が浮かぶ。

 フーパは確かに全魔力を使ってオーラギアスを退け、その力諸共オシアスの地下に封じ込めたものの、残った体は抜け殻となったのではないか? と。

 現に、今目の前にいるフーパからは意思のようなものは一切感じられない。

 問題は意思は無くとも、あの怪物染みた魔力も微小だが感じられる事。

 すぐに妾達は、石像となったフーパを調べてみた。しかし、うんともすんともフーパは動かない。

 

「……何でこんな事に?」

「さあな。奴も規格外のポケモンだ。自らの身体から、自らの力を切り離したことで、残ったものが……コレなのやもしれん」

「もしかして、こないだ調べたイッシュ地方の龍の話と似たような感じ?」

「まあ、そういうことも……ある!! くらいだな」

 

 大した情報は得られなかった。そもそも、今のこやつが金の輪を作り出せるかどうかも不明だった。

 だが、いつまでも長居できるはずもなく。

 

 

 

 ──警報が、鳴り響く。

 

 

 

「コラッタ共……よくもまあ、我が社の機密中の機密を嗅ぎつけて来たな」

 

 

 

 残念でもないし当然の結果だが、CEOのアカシアが直々に妾達を迎えに来た。

 勿論、奴の私兵が周囲を守る。

 恐ろしい数のポケモンが我らを襲う。

 

「……ああ、やっぱりこうなるか」

「取り囲まれちゃったけどどうする?」

「やるしかなかろうて!!」

 

 しかし──妾達の敵ではない。あっという間にトレーナー諸共蹴散らしてしまったがな。

 

「な、なんだこいつら、強すぎる……!!」

「う、動けない……」

「ほうれ見たか。練度が違うのだ、練度が」

「残りは貴方だけだ。CEO・アカシア!!」

 

 その様子を見て、流石のアカシアも感心したようだった。

 

「少しはやるようだ。オーデータポケモンも一緒か。面白い、少し話をしようではないか」

「……答えろ。こいつは何だ?」

「フーパ。オシアスのとある村で言い伝えとして残っていたポケモンだ。今は力を失っているがな。発掘した俺達が有意義に使わせて貰っている」

「ポケモンを道具扱いか。全く反吐が出るね」

「使えるものは何でも使う。それが俺のポリシーでな」

 

(当時を知らねば、その程度の理解か。流石にフーパの力がオシアスの迷宮そのものになっていることには理解が及んでなさそうだ)

 

「俺は長らく、此奴の力を研究し、異界からものを呼び寄せる実験を続けていた。そうしているうちに、とある研究員に出会ってね」

 

 

 

 ──た、助けて下さい! 私は怪しいものじゃないんですぅ!!

 

 ──なんと、この世界! オーデータポケモンが居るのですね!? となれば、逆説的にオーラギアスも存在するはず……!

 

 ──オーラギアス? オーラギアスとは何だ。

 

 ──全てのオーデータポケモンの祖とも言える存在──!! それが、オーラギアスなのですよ!!

 

 ──ギアス磁気の根源たるオーラギアスは、オーデータポケモンを生み出した存在……! そして自身も素晴らしいエネルギー炉となるのです!

 

 ──私は元の世界で、それを研究していましてね……!!

 

 

 

「……調べていくうちに、類似の伝承を口伝する村や、遺跡が発見された。何なら、迷宮の奥には滅び去った太古の王朝と思しき遺跡もあったぞ」

 

 恐らく、重機と数の暴力で迷宮をひっくり返して探したのだろう。何より驚いたのは、かつての王朝が迷宮の異空間に残っていたことだ。

 

(フーパの記憶から、かつての王朝の遺跡も異空間として再現されたのか……はたまた別の奇跡か……! 迷宮は()()()()()()()だからな……! 常識など通用せんか)

 

「俺の中でオーラギアスの存在は確実なものになった。そして長い時をかけ、俺はオーラギアスを発掘することに成功したのだ!」

「オーラギアスで何をするつもり?」

「あの研究員はオーラギアスを無限エネルギーの動力炉にするつもりだったらしいが……俺は、奴の力を研究するうちに、分解能力に辿り着いた。あらゆるものをオシアス磁気として分解できる能力に」

 

 辿り着いてはいけないモノに辿り着いてしまいおった。

 そこに気付いてしまったら、もう全てがお終いだ。こうなってほしくないから、さっさと回収したかったというのに。

 

「物騒だね。戦争の兵器にでも使う気?」

「違うな。俺は──美しい世界を実現したいだけだ」

 

 アカシアは仰々しく手を広げると、叫ぶ。

 

「需要と供給は作り出すもの、ということだよ! クラウングループが全世界の経済を握る為に必要な事だ!」

「作り出す? 意味の分からんことを言うな」

「分からんか? オーラギアスの力を増幅させれば、オシアスの主要企業共を秘密裏に消し飛ばすくらいは容易いということだ。奴らが拠点にしている町諸共な」

「んな──!?」

 

 正気かこいつ。いや、正気ではない。

 妾があれほど恐れたオーラギアスの力を、あろうことかハナから町を消し飛ばす為に使おうというのだ。

 

「ポケモンの力で町を消すのか!! 一体何の恨みがあってそんな事を!!」

「違うな。これだから需給の仕組みも分からんゴミは──経済が麻痺し、生活が滞った時、持たざる人々は自然と何に縋るようになる? ()()()()()()()()()()()()()

 

 心底愉快そうにアカシアは言った。

 

「──クラウングループは国際的大企業。だが、世界を支配するには程遠い。いずれ、全ての地方の全ての民がクラウングループ無しでは生きていけんようになる。オシアスはその第一号になる」

「バカらしい。王にでもなるつもりか? 滑稽だな」

「先ずは間引こうと思ってだな。我らに従属的な企業だけを残し、それ以外を──消す」

「……最悪のマッチポンプだね」

「何とでも言え。どうせお前達は生かして返さん。オーラギアスの──餌食になって貰うッ!!」

 

 アカシアがボールを投げると現れたのは──オーラギアスであった。

 カジュアルに最終兵器を持ってくるでない。しかもどっからどう見ても目覚めているではないか。

 冬眠から目覚めた直後で飢餓状態になっているガチグマの如しであった。

 こうなってしまうと、もうアカシアを始末してもオーラギアスを始末するところまでワンセットになるのが確定してしまっていた。

 倒れた部下たちを一瞥すると「お前達、逃げるなよ。これは命令だ。全員、そこで待機してろ」と告げ、アカシアが前に出た。

 

「さあやれ、オーラギアス。手始めに奴らを捧げてやる」

「ヲ、ヲヲヲヲ……!!」

 

 久方ぶりに相対したオーラギアスを前に、妾はかつての記憶を思い出していた。

 圧倒的なオシアス磁気の量。そして、全てを分解せしめる絶望。

 対抗できるのは、奴から生まれた妾のみだ。

 

「下がっておれ、ロータス。此処は妾がいく」

「でも──」

「でももへったくれもない! 妾ならばオーラギアスに消されはせん!! 大人しく見ておれ!!」

 

 とはいえ、妾もオーラギアスと直接戦うのは初めてだ。

 何が起こるのかはさっぱり分からんまま、戦闘は始まった。

 しかし。

 

 

 

「な、なんじゃ、こやつ……ッ!!」

 

 

 

 恐るべき堅牢さ。

 妾のサイコイレイザーが通りもせぬ。

 幾らバツグン技と言えど、甲殻を貫けねば意味が無い。

 そして、放たれるオシアス磁気の弾幕は、妾の意識を一撃で刈り取る。

 奴のオシアス磁気が流し込まれ、昏倒しそうになる。

 確かに我々オーデータポケモンは、奴の捕食対象からは外れる。

 オシアス磁気で守られているからだ。

 だが──奴の持つオシアス磁気は、妾達を屈服させるに足るほどの濃度だった。

 圧倒的質量で殴られているような、そんな感覚。

 

「ミコちゃんっ、今助けるッ!! レックウザ──”ガリョウテンセイ”!!」

 

 しかし、そこに割って入ったのはロータスのレックウザだ。

 奴の一撃は、オーラギアスの硬い甲殻に僅かながらヒビを入れることに成功した。

 そして妾は、そこにサイコイレイザーを集中して叩き込むことで──

 

 

 

「ヲ、ヲヲヲヲ、ヲヲヲヲヲ!?」

 

 

 

 ──遂にヤツに対し、有効打を与える事に成功したのだった。

 

「よっしっ!! やった!! あいつ、苦しんでる!!」

「礼は言わんぞ。奴は毒タイプ──このまま畳みかければ……」

「情けないな、オーラギアス。食事の時間だ」

「ヲ、ヲヲ……」

 

 オーラギアスの視線が、転がっている他のポケモンやトレーナー達に向かう。

 さっき妾達が叩きのめした連中だ。しかしオーラギアスからすれば、

 

 

 

「ヲ、ヲヲヲ」

 

 

 

 ──弱った獲物の集まりにしか見えなかった。

 

 

 

 

 

【オーラギアスの ザ・シング・エックス!!】

 

 

 

 

 オシアス磁気を練り込んだ弾丸が、横たわったポケモンや人間たちを蜂の巣の如く撃ち貫く。

 たちまち悲鳴が上がった。体が熔け、オシアス磁気となって分解されていく人間やポケモン達。

 

「やっ、やめっ、助けてくれぇぇぇぇーっ!!」

「アカシア社長!! アカシア社長ーッ!!」

「ひぎぃっ、身体が、身体が熔ける!! 体が、無い!! 無いいいいいいいいい」

 

 すぐさま止めようとするロータスだったが妾は止めた。

 捕食中のオーラギアスからは、王朝を滅ぼしたあの波動が漏れ出していたからだ。

 妾も現に、攻撃を何度も叩き込んだが、捕食して得られるエネルギーの方が圧倒的に多いのか──奴を止められなかった。

 抵抗する間もなく、アカシアの部下たちは空気中へと霧散していき、粒子となっていく。

 その地獄のような光景をアカシアは一人、ほくそ笑んで眺めていた。

 仮にもボールでオーラギアスを従えているからだろうか。奴自身は、オーラギアスの攻撃を受けることは無かった。

 そうして霧散したオシアス磁気を──オーラギアスは、啜るようにして吸収すると、一際、また一際その身体が大きくなった。

 

「こいつ……! 自分の部下をオーラギアスに食わせたのか!?」

「何を言っている。むしろ奴らは光栄に思うべきだ。オーラギアスの糧となり、新たなオシアス誕生の礎となったのだから」

「イカれてる!! 人もポケモンも……命を何だと思ってるんだ!?」

「再三言わせるな。礎だ。新しいオシアスのな」

「……お前は……お前だけは、生きていちゃいけないッ!!」

 

 レックウザが唸り、捕食を終えたオーラギアスに迫る。

 しかし──さっきとは比べ物にならない速度で、奴はレックウザの攻撃を避けると、空中にオシアス磁気の弾丸を作り出す。

 そして、妾の身体を狙い撃つ。

 鉄串にでも突き刺されたかのような痛みだった。

 妾は一瞬で無力化され、地面に膝を突くしか出来なかった。

 

「かはっ……!?」

「ミコちゃん!?」

「……これだけ成長したオーラギアスならば、()()を食うぐらい造作もない。なあ、レックウザよ!!」

 

 それを”しんそく”の勢いで躱すレックウザ。

 だが、オーラギアスの放つ波動は、一瞬で伝説の竜の身体をも包み込んでいく。

 

「なっ……そんな──レックウザ!!」

 

 叫ぶロータス。

 ボールを取り出そうとしたが──オーラギアスの放った弾丸が、ボール諸共あいつの右手を消し飛ばした。

 もうレックウザをボールに戻すことすら叶わない。

 

「ロータス!!」

「ッ……!」

 

 しかし、それでも今度は左手で無記のオーカードに手を伸ばした。

 

「オシアス磁気に分解されるってことは──こう言う事なんだろうッ!?」

 

 オーラギアスに、その身体は吸収されつつあったが──辛うじて、残りはロータスの持っていたオーカードに、レックウザだったものが吸い込まれていく。

 間もなく、そこには──レックウザの姿が刻まれていた。

 

「ッ……そんな」

 

 さしものロータスも、打ちひしがれていたよ。

 長年連れ添った相棒を、こんな形で喪ってしまったわけだからな。

 妾も、ロータスも、オーラギアスの想像以上の力を前に、為す術も無かった。

 思い上がっていた。自惚れていた。

 勝てるかもしれないと思ってしまった。

 それ自体が、間違いだったのだ、と思わされた。

 

「……ヲヲヲヲ……!!」

「逃げよう、ロータス……このままでは、我らも……!!」

「ッ……」

 

 レックウザで勝てないならば、他のポケモンで勝てるはずもない。

 しかし。オーラギアスから逃げきれるとも思えない。

 部分的とはいえ、伝説のポケモンを喰らったオーラギアスは、更に力を増している。

 万事休す。妾達は追い込まれた。

 かく言う妾も既に動ける状態ではない。

 逃げるという選択肢すら、失われていた。

 

「理解が出来たか? 世の中にはどうにもならんものがあるのだ。……だが喜べ、貴様らもまたオシアスの礎になるのだ」

「真っ平ゴメン被る……!!」

「次はロータスと言ったか? お前を喰らってやる。どうせその身体では長くないだろう」

 

 消し飛ばされた右手首から、どんどんロータスの身体は分解されている。

 

「すまん、ロータス……!! 妾が、妾がオーラギアスを探してくれと言ったばかりに……!!」

「……何言ってるんだよ。俺は楽しかったんだ」

 

 苦痛が今も、奴を襲っている。

 そんな中でも、笑顔を絶やさなかった。

 

「きっと、ミコちゃんに出会わなかったとしても、俺は……こうしてコイツと戦ってた気がする。それくらい許せないんだ。今目の前にいる、アカシアが!!」

「今わの際の言葉は、それで十分か? 喰らえオーラギアス」

「ヲヲヲヲ……」

 

 オーラギアスが近付く。

 既に次の捕食行動の準備に入っていた。

 

 

 

 その時。

 

 

 

 

 ぴたり、とオーラギアスの動きが止まった。

 そして、今までうんともすんとも言わなかったフーパの石像の眼が──光った。

 

 

 

「えっ……?」

 

 

 

 そこから先は、あっという間だった。

 突如放たれたサイコエネルギーを前に、アカシアも、オーラギアスも吹き飛ばされてしまった。

 

 

 

「な、何事……!?」

「今度は……」

 

 

 

 抜け殻のはずの、それは──突如として目覚めた。

 宿敵であるオーラギアスを知覚したからかどうかは定かではない。

 しかし確かに、動き出したのだ。

 

 

 

 

「ヴァッハハハハハハハハハハハ!!」

 

 

 

【フーパ(ときはなたれしすがた) まじんポケモン タイプ:エスパー/悪】

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