ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

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第121話:目覚め

(厄介なのは、モコモコな1年が出しているエルフーン……ッ!! アレが好き勝手している限り、私に勝機はありませんわね……!!)

 

 

 

【エルフーン かぜかくれポケモン タイプ:草/フェアリー】

 

 

 

 生徒会室の空気が一気に冷え込む。

 がぱぁ、と大顎を開ける髑髏から紫電を迸らせてオシアス磁気が漏れ出す。

 

「キィイイイエエエエエン……ピポポポ……」

「出おったな、オーデータ……ッ!!」

 

 がくしゅうそうち・Oによって洗脳されたイテツムクロは、今やマイヅルの忠実なるシモベ。

 周囲にはお手玉のように霊魂を浮かび上がらせ、髑髏からは冷気が吐き出される。

 寒さに弱いフライゴンはブルブル、と震えあがってしまうほどだ。

 一方、サポートに徹するため、エルフーンはこの状況でも出ずっぱり。

 エルフーンの特性は”いたずらごころ”。イテツムクロの速度を無視して、先制して変化技を撃つ事が出来る。

 

「ハッちゃん、コンビネーションいくよっ!!」

「おうよテマリちゃん!!」

「ハッ……さっきのようには行きませんわよ」

 

 しかし、次の瞬間だった。

 イテツムクロの巨大な赤い眼が光る。

 そしてテマリの胸から青白い光が抜け出すと──そのまま、イテツムクロの手へと吸い込まれていく。

 

「ッ!?」

 

 そのまま、ふらり、と人形のようにテマリの身体からは力が抜けて地面に倒れてしまった。

 何が起こったか理解したハッカは──すぐに彼女に駆け寄り、抱き起すが──返事は無い。

 瞳は虚ろなまま。口をぽっかりと開いてしまい、まるで死んでしまったかのようだった。

 体温も──急激に低下していく。

 

「おい、おいっ!! しっかりせぇ!!」

「るるふーん!?」

 

 エルフーンも心配そうにテマリに近付く。だが、反応が無い。

 

「オーッホッホッホ!! イテツムクロの力は如何かしら? よくよく考えれば、マトモに相手する必要はありませんでしたわ! 魂を引っこ抜いてしまえば……死人も同然!!」

「ッ!?」

 

 イテツムクロの掌でもぞもぞ、と藻掻くように青白い光が蠢く。

 それが何なのか理解した瞬間──

 

「さあ、分かったでしょう? 貴方に選択肢は無──」

 

 

 

「──ストーンエッジ」

 

 

 

 ──岩の刃がイテツムクロを貫いた。

 一瞬の隙、そして正確極まりない狙い。

 急所を刺し貫く一撃を前に、高笑いしていたマイヅルは──目を見開き、唖然となる。

 先程までとは、打って変わって、目を開き。

 

「……俺のテマリちゃんに何晒しとんのやワレ」

「ッあ? あ、ああ、えーと──イテツムクロ!! 何やってますの、”フリーズドライ”ッ!!」

「……震えとる場合か、フライゴン。オーライズ──”ストリンダー”!!」

 

 迫りくる冷気の塊。

 しかし、それさえも突っ切る勢いでフライゴンは飛翔する。

 既に毒々しい色の鎧が纏われており、更に放たれる電撃が凍てつく風さえも溶かしていく。

 

【フライゴン<AR:ストリンダー> タイプ:毒/電気】

 

 すぐさま危機を感じたイテツムクロは大量のシャドーボールで飽和攻撃を仕掛けるが──

 

「当たらない、当たらないですわッ!? そのフライゴン、どんな育て方をしましたのッ!?」

 

 降り注ぐシャドーボールを雷光の如き勢いで避けるフライゴン。

 自分の方にも飛んでくるそれを、涼しい顔で避けることもせずに立つハッカ。

 その腕には、目を覚まさないテマリ。

 彼の怒りに、フライゴンもまた呼応している──

 

「──そもそも、二対一で挑んで来る貴方達が悪いのですわッ!!」

「散々人様洗脳したどの口で言うとんねんボケカス。お前の所為で、何人滅茶苦茶にされとると思うとるんや」

「ッ!!」

「俺ン所にもなぁ、タレコミ何個も来とるんや。友達が様子がおかしいって子がな。皆……オマエの所に行って帰ってきてからって言うとるわ」

「ハッ、うるさい愚民を少し黙らせてやっただけのことですわ!!」

「……反省無しかい。まあええわ、そっちはこの際置いといたる。今俺がキレとるんは……たった1人の幼馴染も守れん、己の不甲斐なさやッ!!」

 

 フライゴンの攻撃が一層激しくなる。

 その鬼気迫る様に、エルフーンは浮いたまま見ていることしかできない。

 そもそも、指示を出す主人はずっと昏睡状態だ。

 

「ならば、己の不甲斐なさに押し潰されればいいでしょうッ!! たった1人の幼馴染も守れないまま、此処で朽ち果てなさいなッ!!」

「何やとコラ……ッ!!」

「ノブレス・オブリージュ。私のような高貴な者が、責任をもって貴方達愚民を使って差し上げている。むしろ感謝すべきですわねッ!!」

 

 弄ぶように、魂を握るイテツムクロを見やりながらマイヅルは嗤う。

 

「──貴方達愚民の命はッ!! 私の掌の中ッ!! こんなに面白い事は他に無いですもの、オーッホッホッホッホ!!」

「……ほーん。それを聞いて安心したでホンマ。ポケモンの力を人に向けて……何とも思ってへんのか」

「ええ勿論!! ポケモンの力は私の力ですもの!! オーッホッホッホ!! だって、私が育てたポケモンですのよ!?」

「……」

 

 きゅっ、とハッカはサンバイザーを握り締める。

 

「おおきに」

「?」

「容赦なく、ブチのめせるわ」

「ハッ、オーライズしたくらいでイテツムクロに敵う訳が──」

 

 地面から氷を穿つ勢いで突き出すストーンエッジ。それを瞬間移動で躱すイテツムクロだが、限界はある。

 逃げても逃げても、そこに追い込まれる形でフライゴンが渾身の”ストーンエッジ”を浴びせることで、一撃、また一撃と被弾が増えていく。

 

「ッ……押されてる? この私が!? 二度も一年生如きに!? しかも、ギガオーライズもしていないフライゴン如きに!?」

「アホう。俺の力だけやあらへん」

 

 イテツムクロの速度が落ちている。 

 見ると──その身体には、大量の綿が塗れついていた。

 

「まさか──あのエルフーン──ッ!!」

「お前がキレさせたのは、俺だけやない。主人をやられたポケモンやッ!!」

 

 ふよふよと部屋を漂うエルフーン。

 さっきまで怯えていたが、孤軍奮闘するハッカとフライゴンを前に心が奮い立ち、主人の指示が無くとも”わたほうし”でイテツムクロを止めていたのである。

 

「ッ……!! イテツムクロ、”フリーズドライ”!!」

 

 しかしそれも長くは続かない。

 エルフーンの身体はイテツムクロが手を翳せば一瞬で凍り付き、地面に落ちてしまう。

 だが、そうして気を取られたのが命取りとなる。

 

 

 

「──”ばくおんぱ”」

 

 

 

 マイヅルは耳を疑った。

 ”ばくおんぱ”はノーマルタイプの技。

 イテツムクロに通るわけがない。

 しかし、フライゴンは爆速でマイヅルに向かって飛んでいる──

 

「ッ!? しまっ──イテツムクロ、早くそのゴミ虫を落としなさ──」

 

 

 

【フライゴンの ばくおんぱ!!】 

 

 

 

 音圧で壁に罅が入る。

 至近距離で浴びせられたそれを前に、マイヅルの耳からは血が噴き出す。

 口からは泡が漏れ、そして白目を剥く──

 

(しまっ──ストリンダーの特性は”パンクロック”──ッ!!)

 

 意識を手放す寸前、漸くマイヅルはハッカの狙いを察した。

 最初からこの男は自分を昏倒させるために、このオーライズを選んだのだ、と。

 

(音技の威力は跳ねあがる。イテツムクロには効かへんけど……人間のオマエには効果バツグンや)

 

 ごしゃぁ、と音を立て、少女の身体が床に勢いよく倒れる。

 そして残るは──指導者を失ったイテツムクロだけだ。

 

(こんなん絶対、イクサに見られたら怒られるじゃ済まんやろなぁ……堪忍な)

 

 ポケモンの力を人間に向ける事に忌避感を持つ友人の事を思い浮かぶ。

 それでも──彼は止まらない。止まるわけにはいかない。

 

「さぁて。オマエにもいい加減目ェ覚ましてもらうで」

 

 イテツムクロはフライゴン目掛け飛ぶ。

 しかし、速度が落ちている以上、最早先程のように弾幕で圧倒することは出来ない。

 ならばと、幽霊特有の姿を消すことによる撹乱で、フライゴンを惑わそうとするが──

 

「Oワザやフライゴン!! かき鳴らせ、オーバードライブ!!」

 

 フライゴンの羽根が羽ばたくと同時に、高周波と電撃が辺りに飛ぶ。

 こうなれば、影に潜んでいても意味は無い。イテツムクロは追い出され、そのまま弾き出されてしまう。

 そして出てきたところに──

 

 

 

「”りゅうせいぐん”ッ!!」

 

 

 

 ──突如、部屋に現れた大量の隕石が弾幕となり、イテツムクロに浴びせられる。

 1つ1つが怒れる竜の猛進に匹敵する流れ星は、その身体を砕いていく。

 そのままふらふらと何度か浮かび上がろうとしたイテツムクロだったが、何度か何かに抗うようなしぐさを見せたかと思えば、ごろん、と転げたかと思うとそのまま倒れてしまうのだった。

 

「……ん、あれ……?」

 

 同時に、ハッカの腕にずっと抱かれていたテマリもまた、目を覚ます。

 ぼんやりした頭で最初に目に入ったのは──未だに鬼気迫る表情が抜けないハッカだった。

 

「ッ……ハッちゃん!? 何してはるん!?」

「あ、ああ、悪い!! テマリちゃん、いきなりブッ倒れるから心配したでホンマ」

「!? な、なにがあったん!? こ、これどうなったん!?」

「見たら分かるやろ、完全勝利や完全勝利。ほな、さっさとレモン先輩のボール探すで」

 

 そう言って笑って誤魔化すハッカを、何処か心配そうに見つめるしかテマリには出来なかった。

 イテツムクロも、そしてマイヅルも倒れている。

 

「ハッちゃん……?」

 

 

 

「──これは一体何事だ!?」

「あっ」

「あっ」

 

 

 

 その時だった。

 生徒会室の扉の方から声が聞こえてくる。

 一瞬、ギョッとして身を固めたハッカとテマリだったが──程なくして、その緊張は解かれることになった。

 

「君達が……生徒会を制圧したのか? 恐ろしい才能だな……輝いているよ!!」

「あっ……」

「ああ……」

 

 声が更に一段階トーンダウンする二人。

 そこに立っていたのは──

 

 

 

「──まあ良い! いろいろと手間が省けた! 感謝するよ!」

 

【シャイン・マスカット<パンイチのすがた>】

 

 

 

 げ ん こ つ

 

 

 

 燦然と輝くボクサーブリーフ姿の男に、背後から拳骨を見舞う大男。

 無論、そんな事が出来るのは、彼と対等の寮長しか居ない。

 

 

 

「テメェはッ!! 後輩の前くらいッ!! 服を着ろッ!!」

「ラズ先輩まで居るやんけぇ……」

「うちらだけやとツッコミ足りへんかったからおおきに……」

「感謝するのそっちかよ!?」

 

 

 

 ──寮長二名、生徒会室に現着。

 

「でも、何で二人共今更学園に来たんや……!?」

「今更って……まあ、反論のしようがねえが」

「順を追って説明するとしようか。今、我々に何が起こっているかをね」

「だから服を着ろテメェはッ!! 女子の前だぞッ!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──時は、一日前に遡る。

 オオヒメミコが眠りについた後、病院の精密検査からバジルとゼラが戻って来た。

 結局、ガーベラとイデア博士も傷の具合があまりよろしくなく、そのまま入院という形になった。

 その代わり、飛行船にはクランベリグループから帰って来たシャインとラズも居合わせる。

 そして、イクサ達は、オオヒメミコから得た情報をそのまま4人に話すことにした。

 

「……オーラギアスに、滅んだ古代オシアス文明……か」

「古の文明ッ!! お宝のロマンデース!!」

「バジル先輩はそう言うと思った……」

「長らく会ってなかったけど、あんたら何にも変わりなくって安心したわ」

「Yes! ゼラ先パイが居たからヘーキデシタ! こっちはこっちで色々情報集めてたけど……流石に古の文明だとかオーラギアスには負けるデース」

「……正直、信じ難い」

 

 腕を組んだゼラの言う通りであった。

 この事を聞いても、真っ向から信じられる人は正直少ないだろう、とイクサは考える。それ程までに突拍子が無く、そして──荒唐無稽と言える話であった。

 

「でも状況証拠は揃ってます。それに──」

「それに……何だ? イクサ」

「……いえ。信じたいんです。ポケモンの事は」

「……そうだな」

「そうと決まれば後は簡単ね──学園に帰るわよ、皆」

 

 全員は頷く。

 クランベリグループが用意した、イクサ達が無実であるという証拠があれば、全校生徒の前でアトムの主張を崩す事が出来る。

 そうなれば、生徒会のこれまでの対応には何一つとして正当性が無くなる。 

 そして生徒会の実力行使に対しても、此方が所持している3つのギガオージュエルと、これだけの人数の強豪トレーナーが居れば対抗できる。

 というわけで、その日は傷と疲れを癒すべく、全員は早めに休むことになったのである。

 ──しかし。

 

「……興奮冷めやらぬ、ってこういうことなんだろうなあ」

 

 その日、イクサは結局寝付けず、甲板に出てしまっていた。

 空には無数の星が明るく瞬いている。

 砂漠が広がるオシアスでは、星の光を妨げるものも少ないのだ。

 見上げると──元の世界での日々が、どんどん遠のいていくようだった。

 

(少し、居座るつもりが……とんでもない事になっちゃったな)

 

「ぱもぉ?」

 

 隣にいるパーモットが不思議そうにイクサの顔を見あげる。

 

「……パモ様。綺麗だよね、星空」

「ぱもぱもっ!」

「……ずっと、こんな穏やかな時間が続いてほしいのにって思っちゃうよ」

「ぱもぉ」

 

 座り込み、星を眺める二人。

 思い返せば──今まで、沢山の出来事があった。

 

「ねえ、パモ様」

「ぱも?」

「僕のワガママに、付き合ってくれるかな。最後の……ワガママになるかもしれないけど」

 

 そっ、と手を重ねる。

 自分よりも小さく、しかし──誰よりも頼もしいその掌に。

 

「一緒に、戦ってほしい。最後の瞬間まで」

「ッ……ぱもっ!!」

 

 今更だった。

 パーモットにとっては、イクサの傍で戦えるのが、何よりの喜びなのだから。

 

「……不思議だ。シンクロしてなくても分かるよ。今の君の気持ち」

「ぱもっ!」

「自分の力を……鍛えた技を、試したくって仕方ないんだ。こんな時だってのにね」

「ぱもぱもっ!」

「……そうだね。結局僕らは似てたみたいだ。似た者同士」

 

 ふたりは笑い合う。

 きっと、今度も大丈夫だ──そう確信させられた。根拠のない自信かもしれない。

 これで本当に終わりかもしれない。

 それでも、諦めはしない。これまでもそうだったから。これからもそうするだけの事だ。

 

 

 

「──人間は……不思議だ。星空は、そんなに良いモノか? 寝る間を惜しむほどに」

 

 

  

 不意に聞こえてきた声に、イクサとパーモットは振り返った。

 そこには──ミコが立っていた。

 

「ミコさん。寝たんじゃなかったの?」

「……胸騒ぎ、というのだろうな。妾のサイコパワーに引っ掛かるものがあったのだ。おちおち寝てもいられん」

「……何か感じるの?」

「そうだな、例えば──」

 

 きらり。

 

 天が、更に一際明るく瞬いた気がした。

 そして、夜空にほうき星が幾つも駆けていく。

 

「っ……うわぁっ!! すごいすごいっ!! 流れ星だっ!!」

「ぱもぱもっ!!」

「オシアスに来てから初めて見た気がするよっ!! 何を願おうかなぁっ!! えーと、伝説のポケモンに会えますように? いや、オシアスの迷宮全部制覇出来ますように!?」

「ぱもぉ……」

「あっ……そうだ。皆と一緒に──帰れますように」

 

 星に願わずには、いられない。

 イクサは──欲張りなありったけの願いを、流れ星に込めていく。

 そして天体ショーはまだまだ続いた。

 空は明るく輝く。

 次々に光が──飛行船に向かって落ちてくるのが見えた。

 ふわりふわり、とそれは光り輝き、イクサ達の前に現れる。

 

「しゃらんしゃらんっ!!」

 

 ガラス玉を転がすような音が聞こえた。

 ころんころん、と船の甲板にぶつかるなり、そのまま転げて落ちていく光り輝く星たち。

 思わずイクサは図鑑を向ける。

 

【メテノ ながれぼしポケモン タイプ:岩/飛行】

 

「メテノの群れ、だ……!」

「ぱもぱもっ!」

「……ッ!!」

 

 綺麗だ、という言葉すら出て来なかった。

 思わず見とれる程だった。

 色とりどりの光が、輝き、甲板に降り注ぎ、そして──消えていく。

 流れ星のポケモン・メテノ。

 その寿命が尽きるのは、地上に降り注いだ時。

 コアが大気圏で燃え尽きた個体の寿命は長くない。

 だが、それでも彼らは燃やす。その命を、最期の一瞬まで──

 

「……そっか、だから綺麗なんだ」

 

 ──儚い。しかし、それでも──雄弁に彼らは語る。

 命を燃やすことの美しさというものを。

 その光景を前にして、ミコは──言い放った。

 

 

 

「ッ……思い、出させるなッ!!」

 

 

 

 突如。

 メテノ達が一瞬で全て消え失せた。

 イクサは思わず振り返る。

 ミコの傍らには、彼女の本体たるオオヒメミコがいきり立った様子で甲板を蹴っていた。

 彼女のサイコパワーが、メテノ達を一瞬で消滅せしめたのである。

 

「ミ、ミコさん……!?」

「パモォッ!!」

「ッ……!!」

 

 イクサの戸惑う顔、そして敵意を剥き出しにするパーモット。

 ミコは我に返ったように彼らの顔を見あげた。

 

「す、すまん……すまんかった」

 

 彼女の顔は、機械のそれとは思えない程に怯えが伝わってくるものだった。

 流石のイクサも、怒りよりも先に──彼女を案じる感情が先に出る。

 

「ミコさん、どうしたの……?」

「すまん……メテノ達にも、申し訳ない事をした……だが、あいつらを見ると……羽根が逆立つような記憶が蘇る」

「ッ……どういうこと?」

「オーラギアスは……宇宙からやって来た。その身体構造は……メテノ達とよく似ておるのだ。奴は全身オシアス磁気で出来ておるからな」

 

 メテノの身体は、成層圏の粒子が変異したものだ。

 そして、オーラギアスもまた──同様に宇宙の粒子で構成されている。

 しかし、膨大なエネルギーを内包しているが故に自爆する危険性がある事を除けば──人畜無害とも言えるメテノに対し、オーラギアスは後にオシアス磁気と呼ばれる粒子を内包していた。

 

「……オーラギアスは、メテノによく似たポケモンって事?」

「構造こそ似てはいるが、中身も姿も全く異なるよ。お前達にも話したはずだ。その危険性をな。しかも、メテノのように自然消滅することは、まずない」

 

 まだ、空からはメテノが降ってくる。

 もうミコは、わざわざそれを消そうとはしなかった。少し気分が落ち着いたようだった。

 

「なのに……こいつらが降ってくる時、妾はいても立ってもいられなくなる。なぜか、分からぬが……本能なのかもな。妾達の力の根源は、あの空の先にあるのだから」

「ッ……複雑、なんだね」

「キライだよ。運命も、妾を作り出した人間どもも……オーラギアスもな」

 

 そう言ったミコの顔は、何処か暗い。

 星を憎みながら、星へ還ろうとする己の宿命に恨めしさすら感じているようだった。

 

「オマエもあまり、勘違いするなよ。妾はオマエ達と馴れ合う気は無い」

「わざわざやってきて言うセリフがそれ? むしろ馴れ合いたいように見えるけど」

「やかましいわ。くれぐれも気を付けろ。オマエは危なっかしくて、見ておられんからな」

「あ、そうだっ。えーと、色々ありすぎて言いそびれてたんだけど──」

 

 イクサが一歩踏み込んだその時だった。

 

 

 

「──ッ」

 

 

 

 ミコは血相を変え、急に振り返った。

 その方向を睨み、そして──怯えたように震え出す。

 

「ど、どうしたの、ミコさん」

「……()()()()

「え?」

 

 イクサの方を向き──ミコは呟くように言った。

 

 

 

()()()()()()()()()()()……ッ!!」

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