ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

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今回は短めです。これにて長かった七章も終わり……


第119話:”オーラギアス”

 ※※※

 

 

 

「──先に目覚めたか。オーラギアスが」

 

 

 

 クラウングループCEO・アカシアは、技研から受けたその報せを元に、すぐさま隔離された実験棟へと向かった。

 ハザードマークの付いた防護壁を何度も超えた先にあるガラス張りの建物。

 その中に──ごろん、と転がった黒い球状の物質。

 それを見て、何処かがっかりしたようにアカシアは言う。

 

「……やはり力は全盛期のそれには遠く及ばんか。フーパが居れば、全盛期のオーラギアスを呼び出す事が出来たのに」

「アカシア様、それでは手筈通りに」

「ああ。餌やりの時間だ、オーラギアス。……これ以上、がっかりさせんでくれよ」

 

 黒い球状の物質は、実験棟の最奥。

 更に強固な防護壁で隔離された場所へと運び込まれる。

 だだっ広い、まるでバトルフィールドのような場所。

 そこに置物のように佇む黒い球体。

 そして──地下からリフトでせり上がってくる形で運ばれてくるのは、見るも無残な龍の骸2セットだった。

 ボロボロに朽ち果てており、既に原形など留めていない。

 

「……オーラギアス。久しぶりの食事だ。サイゴク地方をかつて滅ぼしかけた厄災……竜骸、ヒメマボロシとヒコマヤカシ」

 

 しかし、部屋の装置からオシアス磁気が注がれると──二つの竜骸は音も無く浮かび上がり、再び竜としての姿を象っていく。

 

「……食わねば、お前が食われるぞ」

 

 

 

 

「──しゅわああぁぁぁぁぁぁぁんッ!!」

「──ひゅわああぁぁぁぁぁぁぁんッ!!」

 

 

 

【ヒメマボロシ げんむポケモン タイプ:ドラゴン/ゴースト】

 

【ヒコマヤカシ げんむポケモン タイプ:ドラゴン/ゴースト】

 

 

 

 

 ──サイゴク地方に伝わる厄災。

 それは、竜骸と呼ばれる対の呪物が引き起こした大災害。

 サイゴク山脈を貫くとされる霊脈は、度々外からドラゴンポケモンを誘き寄せ、死に至らしめた。

 そうして死んだポケモンは命の在り方を歪められ、黄泉帰ることがあるという。

 余程、無念だったのか、無限に飛翔する竜の番は、幻夢に飛翔する竜の骸と化した。

 最早理性も記憶も失ったか、彼等は暴れ出し──サイゴクに甚大な被害を齎した。

 かつてのサイゴクのキャプテン達は、ヌシポケモン総出で竜骸を鎮め、そして丁重に葬り、祀った。

 この事件がきっかけで、いがみ合っていたおやしろは協調路線を取るようになっていったのだという。

 それから500年近く、竜骸は音沙汰もなく眠っていたのだが──此度、クラウングループはこの竜骸を半ば合法的に接収。

 オシアス磁気を浴びせれば、いつでも復活できる状態にまで復元することに成功してしまった。

 その結果、今顕現しているのはサイゴク地方最大の厄ネタ。それが二匹。

 相手を眠らせ、夢の世界に誘う能力により、地方丸ごと一つを滅ぼす事が出来る伝説の災厄ポケモン達である。

 それに相対するのは──うんともすんとも言わない球体。

 

「えーと……アカシア社長? これ本当に大丈夫なんですか?」

「この程度の獲物を捕食出来ない程に弱っているならば、俺は……新しいオーラギアスを捕らえに行くだけだ。フーパの力があれば、それも可能だ」

「一匹ずつでも良かったのでは? もしもこれ、暴走でもしたら……危ないのは我々ですよ?」

 

 カメラのモニターで監視している研究員は怯えすら見せている。

 オーラギアスではなく、二匹同時に顕現した竜骸を前に。

 

「……何、答えはすぐに出るさ」

 

 二匹の竜骸は、目の前に転がる球体を見るなり──ぎょっとしたように顔を見合わせ、そして──同時に攻撃を浴びせる。

 生前から得意とする念動力によって生み出された攻撃だ。

 ヒコマヤカシは極光を、ヒメマボロシは霧を凝縮させた弾を、同時に──オーラギアス目掛けて放つ。

 

 

 

【ヒコマヤカシの ラスターパージ!!】

 

【ヒメマボロシの ミストボール!!】

 

【効果は バツグンだ!!】

 

 

 

 ごろん、ごろん、と転がる球体。

 結局、死んだようにうんともすんとも言わないままだ。

 

「……期待外れと言わせんでくれよ、オーラギアス」

 

 アカシアは吐き捨てるように言う。

 

 

 

「……その穢れた竜たちを、浄化してみせろ。お前なら容易いはずだ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「フーパは、オシアスの迷宮そのものってどういう意味ですか?」

「言葉通りだよ。フーパは、自らの力全部でオーラギアスを地下に封じた。その時、フーパの力はオシアスの地下全部に拡散することになった」

「迷宮が異空間になってるのって……」

「フーパの力は今も尚、迷宮を生み出し続けているということだ」

 

 とんでもなく荒唐無稽な話であった。

 しかし、ポケモン達が住まう地下に現れた異空間の迷宮群の正体は、これくらい荒唐無稽で無茶苦茶なものでなければいけないのかもしれない、と三人は何処か納得してしまっていた。

 

「……それで? オーラギアスと、今のオシアスの危機とやらはどう関係あるのかしら?」

「関係アリだ。アカシアという男を知っているか?」

「……クラウングループのCEOよね。謎に包まれた男よ」

 

 イクサも、アトムの父親でもあるアカシアという男についてはよく知らない。

 ただ一つ言えるのは、恐ろしい程の辣腕を振るう優秀な経営者としての顔と、冷徹な支配者としての顔を両方併せ持つ男ということである。

 あの息子にして、この父親あり、と言われても納得が出来る。

 しかし、同時にアカシアはあまり表舞台に顔を表さない。故に、その素性もあまり分からないのだ。

 

「アカシアは、オーラギアスを既に手中に収めている。アレが覚醒するのは時間の問題だ」

「えっ……!?」

「ちょっと待ちなさい、話が急すぎるわ!! 何でクラウングループの社長が、オーラギアスを持っているのよ!?」

「信じるか信じないかはオマエ達に任せるとするよ。……ふぁあ、久しぶりにテレパスを使ったから、妾は疲れたわ。どの道、今すぐどうにか出来るものではない。ヤツがオーラギアスを何処に隠しているか、妾にも分からんのだからな」

「肝心な事を聞いてないんだけど!?」

「続きは明日だ、明日……これ、久々にやると結構疲れるからな。だが、現状で必要な情報は伝えたぞ」

 

 ミコは大欠伸をすると、そのまま眠たそうに瞼を閉じてしまう。

 

「……クラウングループのCEOアカシアは……オーラギアスを目覚めさせようとしておる、ということだ」

 

 そのままオオヒメミコも、ミコも機能停止してしまう。

 久しぶりのテレパスで疲れてしまったのだろう。

 イクサ達は──顔を見合わせる。とてもではないが信じられない情報の連続。

 古代オシアス王朝の末路に、オーラギアスなる謎のポケモン──かどうかも疑わしい存在。

 三人の頭は情報の多さにパンパンであった。

 

「大体、フーパって何!? そんな滅茶苦茶なポケモン、居るの?」

「居るよ」

 

 イクサの言葉に、レモンもデジーも彼の顔を思わず見た。

 

「何で言い切れるのかしら?」

「僕が居た世界では、ポケモンはゲームの中の存在でした。その中に、確かにフーパというポケモンは居るんです。能力も……ほぼ、ミコさんが言ったのと同じです」

「ウソでしょ……? ゲームの存在を信じろって言うの?」

「いや、今更かもよ? ポケモンは不思議な生き物だもの。それに、貴女もイクサ君が異世界人であることを信じてるじゃない」

「そうだけどぉ……」

 

(それだけじゃない)

 

 イクサは思い出す。

 自分をこの世界に連れてきた──青白い腕、そして金の輪。

 その特徴に一致するのは、やはりあのフーパである、と。

 

(でも、オシアスの迷宮そのものになっているはずのフーパが、どうやって僕をこの世界に連れてきたんだ? そも、どうしてレックウザのカードを欲しがったんだ……?)

 

 今になって、謎は多く噴出してくる。

 だが、真相を知っているであろうミコは、眠りこけたままだ。

 

「……どっちにしても、クラウングループの野望は止めなきゃいけないから」

「イクサ君……」

「もし、クラウングループが、そのオーラギアスを使って悪さをするなら、また……ミコさんが言ったような事が起こらないとも限らないよね」

「イヤだよ、ボク!! 大事なモノ、全部無くなっちゃうのは……ッ! まだ、ポケモン達や、皆とやりたいこと沢山あるのにっ!!」

「そうね。それに、私も奪われっぱなしは癪だわ」

「……ッ」

 

 3人は頷き合う。

 分からないことだらけの現状だが、意思だけは確固たるものになりつつあった。

 

 

 

「──止めよう。僕らで……クラウングループを……オーラギアスを!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 10分ほどに及び、思いつく限りの技をぶつけられた黒い球体であったが、結局死んだように動かないままだ。

 二匹の竜骸は、疲弊する様子も見せずに技をぶつけ続けるが、それでも尚、球体に異常は何も見られない。

 

「……そろそろだな」

「え?」

 

 研究員たちが怪訝な顔を浮かべる。 

 アカシアは何かを確信したかのように「よく見ていろ」と言い放った。

 

「10年ぶりだ。オーラギアスの()()を見られるのは」

 

 

 

 ぼこ

 

 

 

 ぼこぼこぼこ

 

 

 

 黒い球体状の物質の表面が泡立った。

 まるで、沸騰でもしたかのように、それは──ぐにゃぐにゃと沸き立ち、そして宙に浮かび上がる。

 

 

 

「ヲ ヲ……ヲ ヲラ ギアス」

 

 

 

 

 竜骸二匹はますます警戒を強め、技の集中砲火を行う。

 余波で強化防壁はへしゃげ、亀裂が入り、爆音を立てる。

 しかし──それでも尚、黒い球体は膨れ上がり続け、そして──部屋中に大量のオシアス磁気を噴き出す。

 

「!?」

「実験室内のオシアス磁気、急激に臨界状態!!」

「ヒメマボロシとヒコマヤカシの様子が……おかしくなっています!!」

 

 大量のオシアス磁気が部屋中に充満したことで、それを浴びた二匹の竜骸は狂い悶えるようにのたうち始める。

 技を放つことすらも、もうままならないようであった。

 そうして正気を失った二匹を前に、オーラギアスはふよふよと近付くなり──力を溜めるかのように、身体を収縮させ始めた。

 

 

 

【オーラギアスの──】

 

 

 

 しばらくした後。

 黒い稲光が何度も何度も迸り、モニターには何も映らなくなった。

 研究員たちも、アカシアも、思わず目を覆う。

 そうしてしばらくした後。モニターに映っていたのは──

 

「んなっ……!?」

 

 ──赤い粒子となって分解され、消えていく二つの竜骸。

 そして、その粒子を啜るかのように吸収していく黒い球体の姿であった。

 

「ヒメマボロシとヒコマヤカシの霊体反応……完全に消失しました……」

「あの二匹を、本当に食らったというのか!?」

「……フフフ。良いぞ、オーラギアス」

 

 竜骸たちを一通り”捕食”し終えたオーラギアスの身体は、ぼこ、ぼこぼことまた泡立っていく。

 それを見て、アカシアは面白そうに笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

「……どうやら、今回は……期待以上の働きをしてくれそうだ」

 

 

 

 

 ──第七章「ポケモン廃人と仮面の獣達」(完)

 

 

 

 

 

 

 ここまでのぼうけんを レポートにきろくしますか?

 

 

 

 

 

 

 

▶はい

 

 

 

いいえ




というわけで、此処までご愛読ありがとうございました。これで、七章は完結となります。そしてついに、このシリーズも次回から最終章に入ります。クラウングループトップ・アカシアの野望、そしてついに存在が明かされた謎の生物・オーラギアス。それに対しイクサ達はどう立ち向かうのか。そして、イクサがこの世界にやって来た意味とは?最終決戦は、すぐそこに迫っています!最後まで、イクサ達の戦いをお楽しみに!
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