ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

124 / 155
第118話:オシアスの真実

「妾の事は、”ミコ”と呼べ。そう呼ばれるのが慣れておる」

「……あの、レモンさん。これって……」

「成程。納得したわ」

「何が!?」

 

 一を見て百を理解したかのようにレモンは言ってのける。

 未だにイクサは理解できていない。目の前にいるロボット少女とオーデータポケモンの関係が。

 

「要するに、エスパーポケモンの高等技能を利用した形ね」

「どういうことですか?」

「意思伝達の為に、言語機能が同じものを乗っ取る技能よ」

「……それってもしかして……」

「ええ。エスパーポケモンの中には、人間と意思疎通を図る為に、その身体を借りてコミュニケーションを取ろうとする者が居るわ」

 

 イクサの頭には──あるシチュエーションが思い浮かぶ。

 

 

 

 ──ピオニー隊長 は 輝きながら 浮いている!

 

 ──てょわわわぁ~ん

 

 

 

(まさかのピオニー隊長案件ってコト!?)

 

 バドレックス、というポケモンが居る。

 「ポケットモンスター ソード・シールド」で登場した伝説のポケモンだ。

 彼は、劇中で主人公たちとコミュニケーションを取る為に、登場人物の1人であるピオニーの身体を乗っ取り、通訳させたというシーンが有名である。

 それと同じ要領で──このオオヒメミコは、ロボットを乗っ取ることで人間とのコミュニケーションを取る事が出来る、とレモンは語った。

 

「流石レモン先輩、あったま良いーっ!!」

「ええ……? ロボットに通訳させるってアリなんですかソレ」

「人間と同じ言語機能、合成音声を有するこの機体を使うことで、妾はオマエ達と会話が可能だ。この現代にもあるだろう、ポケモンを特定の機器に入れて意思疎通が出来る装置が」

「あっ……ロトム図鑑にスマホロトム!」

 

 手になじみ過ぎて、イクサ自身も忘れかけていたが、ロトムを入れた電子機器は言語機能が搭載されていれば人間と喋って意思疎通が可能となる。

 原理としては、このロボット少女”ミコ”はロトム図鑑等の類と同じなのだ、とイクサは漸く納得した。

 

「でも、貴女は一体何処から来たのかしら? 一体何者? その機体は何処で作って貰ったの?」

「そーだよ。全世界の何処にも、似たような仕組みのロボットは無かった。修理するのマージで大変だったんだからねっ!」

「修理出来たデジーは凄いよ本当に」

「でしょーっ! もっと褒めて良いんだよ!」

「妾の素性、か。修理してもらった好だ、教えてやらんこともない」

 

(えらそーだな……)

 

 椅子に座り、ふんぞり返るミコ。

 

「妾の神秘的正体、今のオシアスに迫る危機……そして妾の神秘的正体……」

「二回言ったよコイツ」

「そんなに知りたいか、そーかそーか……」

「早く話しなよ」

「自己肯定感が高いんだね」

「……その説明をする前に古代オシアスの歴史を理解する必要がある。少し長くなるぞ

「浸りすぎでは……?」

「前置きは良いから本題に入ってよ、直してあげたんだから」

「ワクワクしないわね」

「ぐぬぬぬ……それが人の話を聞く態度か貴様ら」

「ポケモンじゃん」

 

 言動1つ1つにマジレスされまくったことで、機械の身体なのに青筋が浮かぶミコなのであった。最早神秘性もへったくれもない。

 

「コホン。……古代オシアス文明の歴史、貴様らは何処まで知っておる?」

()()()()()()()()。貴女の言う古代オシアス文明というのは何年ほど前の事を指すのかしら」

「ざっと2000年ほど前」

「……」

 

(オシアスの地理と照らし合わせると、古代エジプト文明の末期……ってところか)

 

「まあ、聞け。御伽噺のようなものだ」

「……聞こうかしら」

「荒唐無稽、信じられんかもしれんぞ?」

「まあ、昔の伝説にはよくあることでしょ」

「良いだろう」

 

 くくっ、と少女のように笑ったミコは、一転して真剣な面持ちで告げる。

 

「かつて、このオシアスには栄華を誇った王朝があった。その王朝を支えたのは……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()力を持ったポケモンだった」

 

 宙を舞う金色の輪。

 その中から飛び出すのは金銀財宝に珍しいポケモンの数々。 

 歴代の王様からいたく寵愛されたそのポケモンは、人々の望みを叶えてきたが、次第に──要求がエスカレートした人々の欲望に憑りつかれ、その身体と力は肥大化していた。

 

「そのポケモンの名は──フーパ! と、彼等は呼んでおったのう」

「……何そのポケモン。聞いたこともないわ」

「フーパ……」

「転校生、知ってるの?」

「あ、いや……」

 

(知ってるなんてもんじゃない! ……幻のポケモンだ! 身体のフープであらゆる時空間からモノを引き寄せることが出来るポケモン!)

 

 イクサの知る限り、途方もない力を持つポケモンであった。

 無論、伝説のポケモンを別の時空から呼び出すことも造作もなく、自身もフープをくぐることで別の時空へ簡単に移動できる。

 文字通り規格外の力を持つポケモンである。

 

「さぁて、このポケモンの力に溺れた人々は……次々に望むものを釣り上げていった。フーパがある日取り出したのは──」

 

 

 

 ──異なる時間と空間にある世界から呼び寄せた、異文明の方舟。

 

 

 

「──な、何ですかそれ……」

「その当時のオシアス文明には到底理解が及ばない、鋼の方舟。まあ、オマエ達の言葉で言ってしまえば()()()じゃ」

「何だか急にSFになったわね」

「当然だろう。異なる時間にあるものを呼び寄せたんだからな」

「ねえ大丈夫? 盛ってない? そのフーパってポケモンの力」

「ムカッ」

「盛ってないよ」

 

 イクサは──「続けて」と促す。

 

「転校生……?」

「ふむ。オマエ、なかなか見所があるな。此処までの話を作り話でないと?」

「続けてよ。きっと、僕にとっても大事な話だから」

「良いだろう。続けよう」

 

 ──王の”王朝のさらなる発展”という願いに応え、フーパが呼び出したのは遥か未来の人工島。

 それを、オシアスの海に召喚してしまったのだという。

 当然、人工島に居た民たちはいきなり違う時代の海に飛ばされ、混乱することになるが──やはりそこは超科学の持ち主だったということもあり、すぐにポケモンの仕業であると断定したようだった。

 

「人工島の責任者が現地の文明に興味を持っていたこともあり、交流が始まった。王は、遥か未来の文明の利器の数々に感銘を受け、すぐさま取り入れたいと考えた」

「何だか、此処までだと上手くいってるみたいだけど」

「さて、王朝はポケモン達と共存していたが……この文明では、それが上手くいかなかった。故に、ポケモンの力を再現した存在を彼らは作り出し、新たな生態系を作る実験をしていた」

「まさか……それって」

「そうだ。お前達がオーデータポケモンと呼ぶ我々は……この文明で生まれた存在だよ」

 

 イクサ達は息を詰まらせる。

 かつて、古代オシアスに呼び寄せられた未来の文明。 

 そこでポケモン達に代わる生態系の盟主として再現されたのが──オーデータポケモン。

 

「故に、責任者は生きとし生ける生命であるこの時代のポケモンに強く興味を持った。逆に、王は我々に興味を持った」

「ッ……」

「そこで、責任者は……高い知能とサイコパワーを持つ妾に、両者を繋ぐ親善大使としての役割を課した。それが、この身体だ」

 

 エキゾチックな服装は、オシアスの町に馴染むため。

 言語機能も、現地のものに対応するように調整された。

 人間ではない”造られたポケモン”の立場から、オシアスの町を観察し、そして──人々と交流する。

 しかし、見慣れぬポケモンが徘徊していれば、人々は怖がるため、責任者は”ポケモンを連れた少女”というガワをオオヒメミコに被せたのである。

 少女そっくりの通訳ロボットを随伴させる、という形で。

 しかしそうなると疑問が1つ湧いて出てくる。

 

「待って頂戴。まるで見てきたかのように話す時点で怪しんでたけど……貴女、それじゃあその身体で2000年近く稼働してたってことじゃない」

「たわけ。幾ら妾でも不可能に決まっておろう。小難しい理屈は挟むが……その2000年の間、妾は休眠状態でな。この身体を保存する術も勿論用意してあったわ」

「なんかもう……突っ込むのはやめよう……どうせオーバーテクノロジーだし」

「そだねー……」

「……話の腰を折って悪かったわ。続けて頂戴。そも、他の研究員たちはオシアスに出向かなかったのかしら?」

「あやつらは、怖がってオシアスの町に降りたがらなかったからな。妾が出向く機会は非常に多かった。全くポケモン遣いの荒い奴等だ」

 

 懐かしむようにミコは語る。何処か、その表情は楽しそうであった。

 

「ねえねえ、どんなことがあったの!? 教えてよう!」

「良いだろう。そうだな、アレは──」

「長くなりそうだから、後にして頂戴」

「むぅ、レモン先輩は風情とか無いなーっ!」

「それで良い。長くなりすぎるからな。本当に……長くなりすぎる」

 

 何処か──ミコの表情は暗い。

 そのまま、彼女は続ける。

 

「……妾は王に近付く機会が何度かあった。だが、その度に王の欲望は更に深まっていくのを感じた」

「……王は何を考えてたの?」

「フーパを使って……我々の力の源を狙っていたのだ」

「力の源?」

「オマエ達は知っておるだろう? 我々の力の源が何なのか」

「えーと……オシアス磁気、ですよね」

「……そうだな。この時代ではそう呼ばれておる。では、その力の源流が何かは?」

「……えっと、迷宮、だよね」

 

 オシアスの地下にある迷宮から、オシアス磁気は現出する。

 それらを利用することで、オシアスの文明は発展し、これまで重機やオーカードのような発明もされてきた。

 オーデータポケモンもまた、オシアス磁気を原動力として活動する。

 だが、そのオシアス磁気が元々どのようなものだったかは──誰も知らない。

 

「我々の生みの親と呼べる存在が舟にはあった。王は、それを欲しがった。まあ当然拒否されていたがな。アレは人の手に負える存在ではなかった」

「……何なんですか? 生みの親? オーデータポケモンって、どうやって生まれたんですか……?」

「全てのオーラの源。オシアス磁気の根源。それはずっと、方舟の中に囚われ、管理されていた。……厳重にな」

 

 ミコの瞳には、恐怖のようなものが映る。

 

 

 

「──その名は”オーラギアス”。故に我らは奴から生まれた粒子を”ギアス磁気”と呼ぶ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──オーラギアス……か。その力さえ手に入れれば。他の国を攻め落とすのも容易くなるだろう。

 

 ──なのに、あいつらは、一向にそれを見せようともせん。

 

 ──やはり、力づくで我らの手中に収めるしかないか。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「……当時のオシアス文明は、人間の精神をリンクさせることでポケモンを強化する独自の術を持っていた」

「ッ……”きずなリンク”か」

「更に、ギアス磁気を使った発明、そしてオージュエルが持ち込まれたことで、今のオーライズ……いや、ギガオーライズに相当する技術すら確立させていた。故に、他国からは”無敵”とまで言われたのだ」

「じゃあ、まさか……攻め込んだんですか? その”オーラギアス”欲しさに……!?」

「いや、攻め込むまでもない。フーパの力で、直接オーラギアスを取り寄せたのだ。そして──反抗した研究員や責任者を、奴らは武力でもって抑えつけようとした」

 

 当然、そうなれば起こるのは全面戦争。

 オシアス王朝に属する兵士やポケモンと、方舟の研究員やオーデータポケモンたちによる一騎打ちだ。

 オーラギアスを取り戻そうとする研究員たちは、オシアス本土に攻め込んだものの、フーパや現地のポケモンの抵抗に遭い、難航した。

 しかし。

 戦闘はあまりにも呆気なく終わりを告げることになる。

 

「オーラギアスが暴走したのだ」

「えっ……」

「無理もない。あやつは今まで試験管の中で厳重に管理されていたからな。外気に触れ、更にオシアス王の欲望に触れたことで、良くない変異をしたのだ」

 

 ミコは目を伏せる。

 

 

 

「──結論から言おう。オシアス文明も、方舟も、現生していたポケモンも……滅び去ったッ!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「な、なんだこれは……? どうなっておる……?」

 

 

 

 その日、ミコが目にしたのは──消失していく王の宮殿。

 そして、跡形もなく消え去っていく町や人々。

 それらは全て、原形もなく分解されていく。

 オシアス磁気で動いていたオーデータポケモンや、ミコだけは──それを逃れていた。

 

「た、助けてくれぇ!!」

「体がっ!! 体が消えるっ!!」

 

 宮殿から放たれていく赤黒い波動。

 それが、周囲のものを消し飛ばし、粒子として分解していくのだ。

 逃れられる物は無い。

 海に浮かぶミコの故郷である方舟でさえも、跡形もなく消えていくのだから。

 

「人が、町が……皆消えている……ダ、ダメだ、助けられん……!! あの王め、目覚めさせたな、オーラギアスを!」

 

 駆け出すミコ。

 しかし、既に宮殿も、王国も粒子となって分解されつつあった。

 そして駆け付けた頃には──

 

「ッ!! ……フーパ!! オーラギアスと戦っているのか……!?」

 

 ──巨大な魔人の如きポケモンと、オーラに包まれて全容すら分からない異形がぶつかり合っていた。

 とてもではないが、ミコが介入できるような戦いではなかった。

 周囲の空間は歪曲し、辺りのものは全て混ざっていく。

 ミコの身体も、周りのオーデータポケモンも、空間の崩壊に巻き込まれていく──

 

「ぬっ、身体が浮く──のわあああああああ!?」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「な、何それ……周りの物全部、生物、非生物問わず、見境なく……粒子に変えて分解したって事!?」

「ッ……ウソであってほしいわね」

「それがオーラギアス……!」

「なんせ、妾もヤツがどういうものかは知らん。だが、妾の居た世界では、オーラギアスが発見されたことで、一気に科学技術が発展したのだ。幸か不幸か、何匹も見つかったが故に研究が進んだ点は多い」

「ウソだろ、そんな化け物が何匹も居るのか……!?」

「このオシアスに流れ着いたのは、そのうちの一匹でしかない。……それでも、取り扱いを間違えれば国ひとつを滅ぼす力があったのだ」

 

 文字通り、世界を根幹から揺るがす物体であることは確かであった。

 全てのオシアス磁気の源にして、全てをオシアス磁気として分解する存在。

 それが、オーラの呪い、オーラギアスと呼ばれる所以である。

 

「そこから先は……覚えておらぬ。気付いた時は、地上に一人、妾は投げ出されていた。辺りには……だだっ広い砂漠だけが広がっていた」

「ッ……フーパは、どうなったの」

「奴は、自分のやった責任を取るためか、あるいは王国を滅ぼした仇を取る為か、自らの力を以てオーラギアスを封じたのだ」

「フーパが何処に行ったのか、貴女は知ってるの?」

「ああ知っておるとも。オマエ達もよーく知っておるだろう」

「?」

 

 ミコは──親指で床下を指した。

 

「どういう意味?」

「文字通りだよ。奴は、このオシアスの地下に居る」

「……迷宮の中に居るんだ」

「いや、違うな。当たらずとも遠からず……まあ、半分は当たっておるが」

「まどろっこしい言い方しないで教えてよ」

「やれやれ、これだから最近の若いモンは……」

 

 彼女は鬱陶しそうに言ってのける。

 

 

 

「今のフーパは()()()()()()()()()()()……いや()()()()()()()そのものだ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。