ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

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第111話:デイブレイク

 ※※※

 

 

 

 

(さっきの天井が落ちた衝撃で装甲にガタが入ってる……!! あれが弱点だッ!!)

 

 

 

 

 パーモットとの格闘戦を繰り広げるAKN-818。

 だが、次第に装甲からは煙が上がり、火花が飛び散っていた。

 一方のイクサも、ハルクジラに続けて、タギングル、マリルリの二匹を戦闘不能に追い込まれるという消耗戦を強いられていたものの、AKN-818の身体を覆う装甲は幾度ものダメージを受けて、既に使い物にならなくなっている。

 文字通りクラウングループの呪縛とも呼べる装甲を破壊する事さえ出来れば、洗脳から解放する事が出来る──そう信じ、イクサは戦い続ける。

 

「エリィィィィスッ!!」

 

 ”はどうだん”が連続して放たれる。

 だが、パーモットも対抗するように拳に電気エネルギーを集中させ、迫りくるそれを正面から打ち返していくのだった。

 しびれを切らせたのか、四匹に分身したAKN-818。だが、既に装甲は限界を迎えており、オシアス磁気を放出する事すらままならず、黒い煙を上げるのみ。

 

(マズい──爆発するかもしれない、すぐにその装甲から解放するッ!!)

 

「パモ様ッ!! ”でんこうそうげき”ッ!! 狙いは装甲の隙間だッ!!」

 

 超高圧の電流を両拳に溜めたパーモットはAKN-818に飛び掛かると、指を装甲の亀裂に差し込み──そこから大量に流し込む。

 ”でんこうそうげき”はパーモットの体内に溜め込まれた電気全てを使い切るほどの威力。

 その電気全てを流し込んだ後、パーモットの体毛は燃え尽きた灰のように白くなってしまうのだった。

 だが、同時にAKN-818も全身から煙を上げると、ばたり、と倒れ込む。

 装甲のランプは消え、完全に機能停止した──

 

「や、やったか……?」

 

 

 

 

「エ……リィィィ……ス……ッ!!」

 

 

 

 

 ──はずだった。

 

 

 ※※※

 

 

 

「ッ……ヌシ様のタイプは水と地面……草技なら一撃で落とせる──」

 

 

 

 そう、コナツは考えていた。考えていたのであるが、現実問題それが出来るかどうかはまた別問題。

 周囲には泥が満ち満ちているのだが、イダイトウが吼える度に泥が隆起してミルタンクの、そしてコナツの行き先を阻む。

 強制的に自らが有利な閉所に敵を閉じ込め、自分は泥の中に潜り込み一方的に攻撃する。 

 困ったことに──これは、コナツの家に代々伝わるイダイトウの戦い方なのだった。

 スマホロトムの図鑑アプリで確認すると、ミルタンクがオーライズに伴って習得したOワザは”タネばくだん”。

 一撃でもぶつけることが出来れば、イダイトウを倒せるだけの威力を誇るが──生成した巨大なタネを投げ付けてぶつけなければならない都合上、遮蔽物が次々に生えてくるこの盤面では通すのが難しい。 

 

(骨も折れてるし、手持ち的に次は無いこの状況──でも、イクサさんもラズさんも諦めなかったッ!!)

 

 全身に迸る痛みに、唇を噛むことで耐えながらコナツは目の前で鰭だけを出して接近してくるイダイトウを睨む。

 

「罷り通ります、よぉッ!! ミルタンクちゃん、泥の柱を足場にしてくださいッ!!」

「みるめぅっ!!」

 

 一気にすさまじい脚力で駆け出したミルタンク。

 地面を蹴り、隆起した泥の柱を駆け上がり、それを足場にして空へ飛び出そうとする。

 だが、イダイトウの咆哮で柱は一瞬で元の泥へと戻り、崩れ落ちてしまう。

 しかし。

 

「──どろしゃらぁっ!?」

 

 柱が崩れるよりも、ミルタンクが跳ぶ方が早かった。

 上空から打ち下ろす形になれば、泳ぐイダイトウの姿が一瞬で丸分かりだ。

 更に、空中に飛んでいる間は得意の”じしん”は通用しない──

 

 

 

「Oワザ”タネばくだん”ですっ!!」

 

 

 

 生成したタネを、ミルタンクはイダイトウ目掛けて打ち下ろす。

 それを、泥の柱で防ぎ、間一髪直撃を避けたヌシだったが──

 

「やはり、その装甲が邪魔なんですね、ヌシ様」

 

 ──すぐさま地面に急降下し、自らの背後に泳いで接近したミルタンクに気付かなかった。

 

「……ミルタンクちゃんは、すいぎゅうポケモン。泥地で泳ぐのが得意──それでもヌシ様には及ばない、及ばないはずなんです」

 

 装甲は頑強さと従順さをイダイトウに与えた。

 だが、最大の強みと言える水中での敏捷性を犠牲にしてしまった。

 機械の重い身体では、素早いミルタンクに対応し切る事が出来ないのである。

 

「──おうちに帰りましょう、()()()()()()()()

「ど、どろっしゃらぁ……!!」

 

 

 

【ミルタンクの タネばくだん!!】

 

 

 

【効果はバツグンだ!! イダイトウは倒れた!!】

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

「ま、けた……?」

 

 

 

 ギガオーライズが解除され、過重負荷が一気に襲い掛かる。

 目から黒い紫電が消え、カラントは崩れ落ちた。

 そこに──ラズは駆け寄る。

 

「……ハ、ハハ。結局負けか。オーデータポケモンを使ったのに。結局オマエは、只のセキタンザンで勝ってみせた。追いつけなかった……結局」

「……バカ野郎」

 

 ラズは首を横に振り、呟いた。

 

「……ポケモンバトルの勝敗決めんのは、ポケモンの強さだけじゃねえ。トレーナーの強さだ。ずっと──言ってただろうが。付け焼刃のオーデータの強さ、ギガオーライズの強さに胡坐掻いてるテメェが俺に勝てる訳がねえ。」

「ッ……」

「それに、簡単に追いつかせるわけねえだろが。地下に籠ってる間だって、俺は必死で鍛錬重ねてたんだからな。今の俺こそ、今までの俺の中で最強だ」

「……結局、分からされただけだった。僕じゃあ、お前に遠く及ばなかったのを」

「……一つだけ聞きてぇ事がある」

 

 ラズは──力無く横たわるカラントに目線を合わせ、問うた。

 

「お望みの寮長の立場に返り咲いて、俺を捕まえるなら──もっと安全なやり方は幾らでもあったはずだ。何でテメェ自らが前に出た。俺のナンバーツーとして知略を重んじていたテメェが」

「確かに最初は舞い上がっていたさ。邪魔なツクバネは消えて、お前ももう居ない。生徒会のいう事を聞いていれば、それで良い。だけど──」

 

 

 

 ──正直、カラント先輩にラズ先輩程の求心力があるかって言われるとなあ。

 

 ──無いよなあ。ラズ先輩が邪魔だったんだろうけど、正直バカな事をしたよなぁ、委員会の連中は。

 

 ──僕はラズ先輩の時の方が良かったよ。カラント先輩は堅苦しいし。

 

 ──しかもカラント先輩、数の暴力でラズ先輩ボコしただけだし。

 

 ──正直あの人ら寮の恥部だから、さっさとラズ先輩に帰ってきてほしいよ。カラント先輩、生徒会の言いなりだし。

 

 ──あっ、カラント先輩ッ!? い、いや、今の話はですね……そんじゃ俺ら忙しいんで失礼しまーす!!

 

 ──……。

 

 

「この数日間、まだ何もしていないのにオマエと比べられて、こんな言葉を聞かされる僕の身にもなってみろ……!!」

「……災難だったな」

「同情するんじゃないッ!!」

 

 半分は自業自得であることは言うまでもない。

 

「極めつけには、こんな動画まで出回っていてね」

 

 スマホロトムがケタケタと笑いながら、カラントのスマホから現れる。

 そこに映し出されたのは──凄絶な泣き顔を揃えた女子生徒達であった。

 でかでかと垂れ幕には「ラズ様BIG LOVE」と書かれており。

 

 

 

「ラズ様ーッ!! 早く戻ってきてくだざいいいいいッッッ!!」

「あだしたち、ラズ様ファンクラブは、いづまでもどこまでもたとえ火の中水の中草の中でもお待ちしまずうううううッッッ!!」

 

 

 

「コ、コイツら……」

「お前は……お前の周りに居た奴らからは嫌われていたが、お前に惹かれた生徒達からは慕われていたみたいだ……ッ!!」

「……好かれるような事をした覚えはねぇ。俺はオマエの言う通り、好き勝手にやってきただけだからな」

「ああそうさ──納得がいかないッ!! 納得が、いかない……ッ!!」

 

 

 

「ラズさんっ!!」

 

 

 

 その時だった。たったっ、とコナツが駆け寄ってくる。

 後ろからは、既にオーライズを解除したミルタンクが、目を回して口から泡を吹いているイダイトウを背負いながら走ってくる。

 向こうは──終わったか、とラズは胸の中で安堵の息をつくのだった。

 

「……何とか取り戻せたみてーだな。イダイトウ」

「はいっ……! ヌシ様はボールに入れられないので、早く治してあげたいのですが……!」

「ポケモンの容体が最優先だ。安全な所に行くぞ」

「おい、話はまだ──」

()()()()()カラント」

「ッ……」

「積もる話は幾らでもあるだろうからな」

「……僕はお前を裏切ったんだぞ」

「身内の()()()を赦せねえような器の小せぇ男になった覚えはねぇよ」

「ッ……」

「そりゃあオーデータ・ロワイヤルの後は──学園に行けなくなるくらい絶望したし、こうして全部投げ出したさ。でもな……俺はやっぱり、お前らを憎むことだけは出来なかった」

 

 自分に原因があることなど、百も承知だったし──それ以上に、ラズは身内への愛情はとても強かった。

 故に、かつての仲間達を憎むくらいならば、自ら表舞台から去って消えようとしたのである。

 もう身体に力が入らないカラントは──首を横に振る。

 目に浮かぶのは、初めて対面した日の事だった。

 

 

 

 ──オマエ、カラントって言うんだろ。新入生で一番頭が良いって。オマエ、俺の子分になれよ。

 

 ──俺はオシアスで一番の社長になる男だ。オマエは……その側近になる。どうだ、やってみないか?

 

 

 

(そういうところだ、ラズ……お前のそういうところが、昔からキライだ……)

 

 

 

「エリィイイイイイイイイイイスッ!!」

 

 

 

 その時だった。

 耳を劈く咆哮が響く。

 ラズとコナツは辺りを見回し、それがイクサの戦っていた方から聞こえてきた、と察する。

 

「何だ!?」

「……アケノヤイバの鳴き声、ですよね」

「ああ」

 

 嫌な予感。

 額に汗が伝う。

 ラズはボールの1つを投げた。

 そこから飛び出したのは、人型の虎のようなポケモンだった。

 赤々とした体毛、ニヒルに口元に浮かべられた笑みは悪役レスラーのようだ。

 

【ガオガエン ヒールポケモン タイプ:炎/悪】

 

「……ガオガエンッ!! カラントとコナツを頼むッ!!」

「ラズさん、私も──」

「イダイトウの手当が出来るのはテメェだけだ」

 

 イダイトウはボールに入り、休む事が出来ない。

 あくまでも野生ポケモンであるヌシポケモンの縛りから逃れることができないのだ。

 

「……それに、怪我人に連戦させられるわけねえだろが」

「……無理はしないでくださいね」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「戻って、パモ様……!!」

「ぱもぉ……」

 

 

 

 

 AKN-818を構成していた装甲は崩れ落ちていき、徐々にそれは本来の姿を現す。

 イクサは腰を抜かしそうになった。

 アブソルに似ているとされていたが、その威圧感は想像以上だ。

 全身は黒い毛皮に包まれており、首元と尻尾には紫色の鬼火が灯っている。

 まるで鳥の羽根の如く広がる体毛、そして日本刀の如く鋭利に突き出した角。

 刀神の異名を排するに相応しい化身がそこに立っていた。

 アケノヤイバ。

 古くよりサイゴク地方ではそう呼ばれてきたヌシポケモンだ。

 

 

 

「エリィィィィィスッ!!」

 

 

 

【アケノヤイバ みょうじょうポケモン タイプ:悪/ゴースト】

 

 

 

【特性:あけのみょうじょう】

 

【アケノヤイバは明星の加護で闘気が爆ぜる!!】

 

 

 

 パーモットを、不意の一撃で斃したアケノヤイバは音も無くイクサに詰め寄る。

 

「ッ……サーナイト!! 次は君だッ!!」

「らーっ!」

 

(というより、もうサーナイトしか居ない……!! ギガオーライズを切ってでも、此処でアケノヤイバを倒──)

 

 

 

【アケノヤイバの シャドーボール!!】

 

 

 

 イクサも、サーナイトも、そこで立ち止まってしまった。

 先程までとは比べ物にならない量の影の弾幕が空中に浮かんでいる。

 

「な、なんだこれ……!?」

 

 それら全てが誘導するようにサーナイト目掛けて飛んで行く。

 すぐさま「かげぶんしんッ!!」の合図で姿を分裂させて全て避け切るサーナイトだったが、地面に降り立つと共に先程までそこに居たアケノヤイバが何処にもいないことに気付き、辺りを見回す。

 

「あいつ、何処に行ったんだ!? まさか──」

 

 既に事前情報で知ってはいた。

 アケノヤイバは影の中に潜り込んで移動する能力を持つ、と。

 だが、先程までの動きとは全く違う敵を前に戸惑ったイクサは、それに対抗する手立てを打つのが一瞬遅れた。

 刃の獣は既に、サーナイトの足元に移動し、影から姿を現す。

 

「サーナイトっ!! 後ろだ!!」

「らっ!?」

 

 重い体重がサーナイトにマウントを取る。

 ”ムーンフォース”で反撃を試みる彼女だったが、日本刀の如き形へと変化した尻尾に肩を貫かれ──痛みで絶叫する。

 そして至近距離で口から”シャドーボール”を生成したアケノヤイバは、動けない獲物目掛けてそれをぶつけるのだった。

 煙が上がる。

 効果は抜群。

 だが、特防が高いサーナイトは一撃では倒れず、反撃を試みるが──それを潰すかのように何度も。何度も何度も何度もシャドーボールが放たれる。

 

「や、やめろッ!!」

 

 イクサは思わずボールを握り締めて駆け出していた。

 だが、その前に残る彼のボールから何かが飛び出す。

 

 

 

「ぼうぼうっ!!」

 

 

 

 カルボウだ。

 慕うサーナイトが一方的に嬲られているのを見ていられなかったのである。

 そのまま火の玉の如き勢いでアケノヤイバへと突っ込んでいくが──力量差は明白。

 尻尾に薙ぎ払われてそのまま何処かへ弾き飛ばされてしまうのだった。

 

「ああっ、カルボウ!?」

 

 そして、サーナイトへの興味も失ったアケノヤイバはぐったりと動かなくなった彼女の首を噛むと──そのままボロ雑巾のように放り投げる。

 そうなると、後に残るのは──不用意に自らに近付いてきた人間だけというわけで。

 沈むように足元の自らの影へと溶けていく。

 

 

 

「ッ……」

 

 

 

 その瞬間、イクサは死を覚悟した。

 背後には尻尾を刀の如く硬化させて振り上げたアケノヤイバが立っていた。

 

 

 

「セキタンザンッ!!」

 

 

 

 だが、その一閃はセキタンザンがイクサを抱えて飛び出したことで避けられる。

 イクサは自分が放心していたことに気付き、そして──斬撃の余波で近くにあった廃ビルが真っ二つに切り裂かれたのを見て顔を青くするのだった。

 

「おい貧乏人ッ!! しっかりしろッ!!」

 

 ラズの声が聞こえてくる。

 地面に降りたイクサは、助け船が来たことに安堵しつつ──アケノヤイバの方を再び見やった。

 

「ッ……どういうこったこりゃあ、アイツ……」

「分かりません、壊れた装甲を脱ぎ捨てるなり暴れ出して……!! サーナイトとカルボウがやられて、まだボールに戻せてなくて」

「目が明らかに正気じゃねえ、ありゃあオシアス磁気による暴走だな……ッ!!」

 

 迷宮に長く潜ると、ポケモンが暴走を始める──それは、オシアス地方に住まう者の常識だ。

 そして、長い間装甲から発せられるオシアス磁気に漬けられていたアケノヤイバは、制御装置である装甲から解き放たれた途端に、自らの意思に反して暴れ狂い始めたのである。

 無論、今度は装甲による素早さの低下は無い。そして、全ての能力を取り戻してしまっている。

 状況はハッキリ言って最悪と言っても良い。

 流石のラズも、圧倒的な力と手数を振るう上に特殊能力まで持ち合わせるアケノヤイバを前に焦りを隠せなかった。

 確実に倒せるという保証が全く見えない上に、こちらが倒されて全滅する未来すら見えている。

 

「コイツを野放しにするわけにはいかねえ……ッ!! 町が滅茶苦茶になる……ッ!! だけど……アイツにマウントを取れるようなポケモンが居ねえ」

「……一匹だけなら、居るんですけど」

「ッ! そんなポケモンが居るなら、先に出せッ!!」

「……」

 

 イクサは、ボールを1つ──ラズに投げ渡した。

 それを受け取った彼は、半透明のカプセルに映り込むポケモンを見て言葉を失う。

 

 

 

「お、オマエ、()()()を何処で……!!」

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