ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

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第107話:呉越同舟

【ポケモン重機・AKN-818 タイプ:悪/ゴースト】

 

 

「──多分アレは──確信が持てるわけじゃないけど……!! マリルリ!!」

「りーるぅ!」

 

 

 

 うねるチューブの先端は鋭利に尖り、オシアス磁気を周囲に垂れ流している。

 装甲、仮面、そして搭載された武装でシルエットこそ変わってしまっているが──イクサが推測するに、目の前に立っているのは──

 

「……()()()()()()

「ッ……!! それってレモンさんが言っていた──!?」

「聞いた事があるぜ……サイゴク地方からクラウングループが掠奪したヌシポケモンの一匹、か。制御出来ねえから機械の装甲で覆って洗脳したと見えるな」

「酷い……!」

「まあ、サイゴクのヌシポケモンがどうなろうが俺には関係ねえがな」

 

 突如現れた難敵を前に、渋々とラズも再びボールを放るのだった。

 

(確か話に聞けば、あいつはゴースト/悪タイプだったか。しかし、厄介な特性の所為でガオガエンは出しにくいッ……!! かと言ってフェアリータイプは生憎持ち合わせがねぇ)

 

「此処でやられたら、今まで溜めてきた金がパーだ。さっさと処すぞ──セキタンザンッ!!」

「シュポポポーッ!!」

 

(流石だラズ先輩、アケノヤイバの相性を既に理解してる……!! 先ずはあいつに弱点を突かれない事が最優先事項だ!!)

 

 ──ラズはアレで勉強家だから。色んな地方のポケモンの知識があるのよ。

 

 前にレモンがそんな事を言っていたのを思い出す。

 イクサも──すぐさまコナツに呼びかけた。

 

「コナツさん、あいつがアケノヤイバなら──ザングースは却って不利だ! 弱点を突かれる!!」

「えっ……あ、そうか!! 特性……ッ!! じゃあ、交代です! ミルタンクちゃんっ!!」

 

 彼女も既に、イクサ達から共有された情報でサイゴクのヌシポケモンの事は知っている。

 彼等3人が皆警戒する、その特性は──”あけのみょうじょう”。

 

 

 

【特性:あけのみょうじょう】

 

【明星の加護で闘気が爆ぜる!!】

 

「エリィィィィィスッッッ!!」

 

 

 

 仮面の目の部分から、禍々しい炎が溢れ出す。

 そして、一気に闘気を目の前に凝縮させた仮面の獣は、それを弾にして込めていく。

 問題は、その大きさがどんどん風船の如く膨れ上がっていくことであった。

 

「待って!? で、デカすぎない……!?」

「チッ……!! これじゃあポケモンが避けても俺らが巻き込まれる……ッ!!」

「抑え込みましょう、ポケモンちゃん達で!!」

「テメェが指図すんじゃねえ!!」

 

 

 

【AKN-818の はどうだん!!】

 

 

 

 放たれたそれは、速度こそゆっくりではあったものの、周囲の地形を抉りながらどんどん肥大化していく。

 ポケモンが避けても、イクサ達が無事では済まない程のサイズだ。

 それを前に、マリルリ、ミルタンク、そしてセキタンザンの3匹は──同時に”はどうだん”に対して迎撃の姿勢を取る。

 

「”アクアブレイク”で受け止めろッ!!」

「”こっちも、”アクアブレイク”ですっ!!」

「”ハイドロポンプ”だッ!! セキタンザンッ!!」

 

 巨大な水の柱が”はどうだん”を受け止め、更に二匹による渾身の一撃が”はどうだん”を押し返す。

 すぐさまそれは爆音を立てて、入り口を破砕。

 がらがらと音を立てて鋼の壁が崩れ落ちた。これで窮地は脱した。しかし──

 

 

 

「エリィィィィス……ッ!!」

 

 

 

 ──その隙に天井を駆け上がり、イクサ達の後ろに回り込むAKN-818。

 背中のチューブからオシアス磁気が噴出され、4つの影を作り出す──

 

 

 

【AKN-818の デュプリケート”擬”!!】

 

 

 

「高濃度に圧縮したオシアス磁気で、分身を作っただとォ!?」

「”はどうだん”は囮、本命はこっちか!?」

 

 ──デュプリケート。

 それは、アケノヤイバが得意とする専用技だ。

 自身の影に力を注ぎ込み、3つの分身を作り出して相手を攻撃する技。

 だが、機械に覆われた身体では流石に元と同じ芸当は出来なかった。

 故に──悪辣なるクラウングループは、オシアス磁気によって分身を構成させることで、疑似的にこの技を再現したのである。

 よって、どれが本物でどれが偽物かは一目瞭然だ。

 しかしこの技の恐ろしさは、分身全てが本物と同等の戦闘能力を持つことである。

 分身たちは”はどうだん”を押し返したことで疲弊した3匹のポケモンに襲い掛かり、日本刀の如く鋭利な尻尾で切りつけに掛かる。

 ポケモン達も組みかかって応戦するが、殴りつけても、オシアス磁気で構成された分身には全く手応えが無い。

 

「話に聞いていたよりも、速度は遅い……影に溶ける移動も使ってこない……なのに、強いです……!!」

 

 オシアスのキャプテンとして研鑽してきた今までがウソだったとは思わない。

 だが、その文化はサイゴクのそれと比べれば如何に形骸化していたかがよく分かる。

 特にこの、1000年生きた化生を、向こうのキャプテンは如何にして制御してみせたのか。

 あるいは──ポケモン本来の強みを殺さなければ、制御することが出来なかったことの恐ろしさが身に染みる。 

 そして分身たちとポケモンを戦わせている間に、残る本体は無防備になったイクサ達に詰め寄る──

 

「いつの間に!?」

「エリィィィィス!!」

 

【AKN-818の ”あくのはどう”!!】

 

 悪意を込めた波動が周囲に拡散する。

 それを防ぐ手立ては彼等には無く、瓦礫さえも塵のように巻き上げる衝撃で吹き飛ばされてしまうのだった。

 イクサは瓦礫に突っ込み、起き上がろうとするが──頭をぶつけたからか、どくどくと血が流れている事に気付く。

 すぐさまハンカチで出血箇所を押さえるが、意識が遠のきそうだった。 

 

「あっぐ……!!」

「オイ、貧乏人ッ!! 死んでねえか!?」

「……何とか……!!」

 

 イクサは息も絶え絶えに返すが、その言葉はラズには聞こえていない。

 幸い向こうは軽傷で済んだのだろう。体育会系らしい筋肉質な身体は、この程度ではびくともしないようだった。

 そして、コナツの姿をイクサは探す。

 いない。見つからない。

 

「まさか……!!」

「クソッ!!」

 

 吹き飛んだ瓦礫の山を見やる。

 そこから──腕だけが見えていた。

 それを見つけるなり、ラズは走り出し──思いっきり力を込めて瓦礫の山を退かす。

 幸い潰されてはいなかったものの、全身に傷を負ったコナツがぐったりとしていた。

 すぐさま引き上げると、ラズは彼女を背中に負ぶった。

 

「しっかりしろや……手間ァ掛けさせやがって!!」

「コナツさん……!!」

「喚くな、息はあるッ!! それより、目の前のアイツをブッ潰すのが先だッ!! ……俺ァ嫌だぞ、テメェらの巻き添えで死ぬのはな!!」

 

 戦闘を通し、元のような熱が戻ってきたのか。非常時故に元来の性格が見えてきたのか。

 それは定かではない。しかし──ラズはそれでも冷静に敵を見据え、叫ぶ。

 

「おい貧乏人ッ!! あの分身共は直に消える、オシアス磁気は空気中じゃあ長くは持たねえ、媒体がねぇなら拡散するッ!! そこから反撃だッ!!」

「は、はいっ!!」

 

 分身たちが消え失せる頃には、既にマリルリたちは満身創痍であった。

 攻撃しても手応えの無い分身を前に、幾ら攻撃しても無駄な事だ。

 その上、イクサ達は”あくのはどう”による直接攻撃を受けたことで、指示もまともに通せない。

 だが、それでも声を振り絞り──叫ぶ。

 

「マリルリ!! 本体だ!! 本体を狙うんだ……!! ”アクアジェット”!!」

「セキタンザン……機械部分は熱に弱い、炙り焼きにしろ(かえんほうしゃ)ッ!!」

 

 すぐさま、3匹は本体目掛けて突撃する。

 しかし、AKN-818は装甲の一部をパージさせて盾の如く宙に浮かせてみせる。

 そして突っ込んできたマリルリを受け流し、セキタンザンの炎もいなしてみせる。

 だが盾は赤熱化したことで機能が鈍化したのか、地面に落ちてしまうのだった。

 

「今です……っ!! ミルタンクちゃん、”じゃれつく”攻撃ですっ!!」

 

 ラズの背中で──息を吹き返したコナツが精一杯に叫ぶ。

 オロオロとラズに抱えられたコナツを見ているだけだったミルタンクは、その声で一気に目つきが変わった。

 主が行けというならば、行かぬ選択肢はない。

 思いっきり、馬力のままに地面を蹴り突貫する。

 赤熱化した盾は不具合を起こしたのか動かない。

 そして装甲化された身体では敏捷性に難があるのか、ミルタンクの攻撃をモロに喰らってしまい、AKN-818は引き下がる。

 

「てめぇ、大丈夫なのか!?」

「……生きてますよ……それより、ポケモンちゃんが頑張ってる時に、私が寝ていられるわけがないでしょう……!!」

「言っただけはあるな。根性あるじゃねーか……ッ!!」

「効いてる!! やっぱりフェアリータイプが弱点だっ!!」

「3匹がかりで押してればいつかは勝てる……問題はあの分身技──後は、あの巨大”はどうだん”か」

「それなら僕に任せて下さい。マリルリなら距離を詰められる」

「……足引っ張んじゃねえぞ」

 

 再び”はどうだん”を圧縮させ、チャージに入るAKN-818。

 だが今度はもう何が起こるのか理解しているマリルリは先んじて地面を蹴って、

 

阻止するんだ(アクアジェット)ッ!!」

 

 AKN─818の頭部に横から頭突きを見舞う。

 やはり、速度が落ちた弊害はあまりにも大きく、集中が乱れた敵は”はどうだん”を中断してしまうのだった。

 こうして態勢を崩してしまえば、最早マウントポジションを取ってしまうだけ。

 だが、それでもまだ足掻くかのようにAKN-818はオシアス磁気を大量に噴出し始めるのだった。

 

「エリィィィス!!」

 

 突如、ポケモン重機の周囲に高出力のパルスシールドが展開された。

 そして頭上にはオシアス磁気によって構成された巨大な剣が五本、一挙に生成される。

 

「何だありゃあ……!?」

「オオワザ──!!」

 

 ──アケノヤイバのオオワザは、”あかつきのごけん”。

 

 ──解除する方法は、アケノヤイバ本体を叩くことかな。影に潜ると、解除されちゃうからね。その分、発動時間が短いから弱点技を叩き込み続けなきゃいけない。

 

 しかし、本来ならば無防備となるはずの本体が、装甲のパルスシールドによって守られてしまっている。

 これでは攻撃が届くどころではない。明らかに電気のようなものが迸っており、水タイプの3匹では分が悪すぎる。

 

「おい、どうやったら止められる!!」

「本体に攻撃出来れば──!! でも、アレってどう見ても電気──」

「バカが!! 攻撃する方法は技だけじゃねえ!! セキタンザン、天井に向かって”SLブレイク”で跳べッ!!」

 

 思いっきり足に力を溜めたセキタンザン。

 そのまま天井目掛けてロケットの如く飛ぶ──

 

「暴れろッ!! セキタンザン!!」

 

 爆ぜるような音が二度聞こえたかと思えば──天井が音を立て始める。

 そして、突き抜けた穴からセキタンザンが降って落ちてくると、すぐさまラズはそれをボールに戻した。

 

「逃げるぞ」

「えっ、でも──」

「早くポケモンを戻せや!!」

 

 コナツを背負ったままのラズ、そしてイクサ、ついでに脚力に自信があるミルタンクは、走ってその場から脱する。

 入り口は瓦礫で塞がれていたものの、ミルタンクが”アクアブレイク”で吹き飛ばしたことで道はすぐに空くのだった。

 間もなく、オオワザを放とうとしたAKN-818であったが──

 

 

 

【AKN-818の あかつきの──】

 

 

 

 ガラガラガラガラガラガラガラガラッ!!

 

 

 

 ──崩落した天井と共に降ってきた瓦礫の山に押し潰されてしまうのだった。

 幾らパルスシールドと言えど、大質量の前では無力。

 オオワザが飛んでくることはなく、イクサ達は部屋から脱することが出来たのである。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「テメェらの所為で……エラい目に遭ったぜ……こんな事はこれっきりにしとくれよ……ッ!!」

「……そんな事言って、何だかんだ助けてくれたくせに」

「るっせぇ!! あいつを処理しねえと、俺の身も危ねェだろが!! しかも多分アイツ、まだ生きてるだろうからな」

「死んでたらそれはそれで困りますよ。1000年生きてたヤツだし、あれくらいじゃ死なないでしょうけど」

「……ごめん、なさい」

「黙ってろ、瓦礫の下敷きになってたんだ、どっか折れてるかもしれねぇ」

 

 4番街はかつて、大規模居住区として開発が進んでいたものの、今は寂びれてしまっている。

 ゴロツキ達の溜まり場であり、不法居住者も少なくないが、摘発する者は誰も居ない。

 

「ま、誰でも住めるが……居心地は最悪。電気も水道も通ってねえ。サービスってもんからは無縁だ」

「お風呂とかどうしてるんですか?」

「数日に一回、ネカフェで済ませてるよ。頭が痒くて仕方ねえ」

 

 恐らく数か月は切ってないであろう伸びきった髪ならば無理もない話であった。

 

「……意外と逞しいんですね」

「本当に口が減らねぇな」

「いいや、ラズ先輩の凄さが……少しだけ分かりました」

「……」

「助けてくれて、ありがとうございます」

 

 あれだけ無気力に振る舞っていたのにも関わらず、いざ戦闘になれば機転を利かせてオオワザを阻止する頭脳。瓦礫を退かすだけのフィジカル。

 それを目の当たりにしたイクサは、改めてレモンがライバル認定する相手というだけはあったのだ、と思い知らされる。

 

「……俺の住んでる部屋にコイツを寝かせる。寝る時しか使ってねえが、おかげさまで毛布くらいはあるぜ」

「助かります」

 

 そう言って、ボロアパートの鍵を開け、ラズはコナツを中に運び込んだ。

 衛生状況は最悪。怪我の手当てをするにはあまりにも心もとない。

 強いて言うなら頼りになるのは、道中で買い込んだ貴重な水と、イクサが持ち込んだ救急グッズだ。

 

「……つーか、オメーも頭ァケガしてるじゃねえか。マリルリに水で流して貰ってこい。固まると髪がガビガビになる」

「そうします」

「俺ァ、このアマの手当しとく。昔、ゼラに色々教えて貰ったんだ」

「良いけど……喧嘩しないで下さいよ」

「しねーよ」

 

 イクサは立ち去り、汚れた流し場で傷口を洗いに行くのだった。

 それを認めたラズは──未だに痛みで呻くコナツを見下ろし、大きくため息。

 もう、オシアスの面倒事に付き合うつもりはなかった。何もかも捨てて、他所の地方でトレーナーとしてやり直すつもりだった。

 自分の実力ならばどこへでも行けると思っていた。

 だが結局、自分のサガからは逃れられないのだと実感する。

 

「さっきは──ぶってごめんなさい」

「……痛みはどうだ」

「……何とか。アバラが少しだけ痛みます」

「ケッ、無茶するからだ。見た所、レモン程強そうにも見えねえしな、オマエ。……いや、失言だった。あいつ程強いヤツなんて早々居て堪るか」

「……」

 

 つーかレモンもレモンだ、とラズは愚痴る。

 

「あいつが一番つえーんだ。体も、心も、ポケモンも。あいつが一緒に居りゃあ……」

「レモンさんは……ポケモンを全部奪われて」

「ッ!? ハタタカガチもか!?」

「……」

「クソッ。アトムの奴に一人で挑んで……ってところか。あいつもバカだぜ」

「……私は貴方のそういうところ、好きじゃないです。必死に立ち向かってる人をバカみたいに言うのは」

「あいつだって、勝てる戦いじゃねえのは分かってたはずだ」

 

 オーデータポケモン3匹掛かりでも、オオミカボシを倒すことは出来なかった。

 それどころか、足元にも及ばなかった。

 

「もう……抗う気力って奴が削がれちまったんだよ」

「……でも、戦わなきゃ取り戻せないでしょう」

 

 ラズに包帯を巻いて貰いながら──彼女は、キッと彼を睨む。

 

「……私は、キャプテンなんです。オシアスのヌシポケモンをお世話する」

「……あんたが? 随分と若いな」

「父は忙しいですから。私が代わりに」

「……大変だろ。ヌシの世話に、オオワザの修行。それを普段の生活と並行してやるんだ。めんどうくせぇと思った事はねーのかよ」

「ありますよ、何度も。牧場の手伝いも、お店の手伝いも、全部やらないとだから。……でも、皆……大事な宝物です。もし、両親が死んだら……私が継がないといけないものだから」

「宝物ねぇ」

 

 ラズはキズぐすりを彼女の腕に塗り込みながら──目を伏せる。

 

「俺にだってあったさ。裏切ったし……裏切られたけどな」

「ッ……」

「あんたらは良いじゃねえか、クラウングループをぶちのめしゃあ、まだ戻ってくるかもしれねえ」

 

 しかし──離れた寮生達の心は、もう二度と戻って来ない、とラズは確信していた。

 同時に、いつ裏切るか分からない連中をどうして近くに置いておけるのか、という気持ちも当然あった。

 

「それでも、レモンさんやシャインさんは……貴方を心配してましたからぁ」

「だろうな」

 

 一通りの手当てを終えた後、ラズは──顔色も変えずに「まあ、どうでも良いんだがな」と続けるのだった。

 

「……またそんなことを言って。怒りますよ」

「良いだろが別に。テメェは俺のオカンか何かか。大体本当なら、テメェら見捨てて俺だけ逃げても良かったくらいだ」

 

 我ながら何してんだかな、と彼は続ける。

 

「……全部どうでもいいって思ってる人が、此処まで親切にしてくれるはずがないですよ」

「勝手な事を抜かすんじゃねえ」

「貴方はきっと、傷ついた心を誤魔化す為に……”どうでもいい”って言葉を使ってるだけなんです。只の自分勝手な人とは違う」

「知ったような口を利くな。手当が終わったらさっさと、あの貧乏人と一緒に地上へ帰れ。あの化け物と戦うにしたって……?」

「どうしました?」

「何だ? この音……」

 

 ざざざ、と波打つような音が何処からともなく聞こえてくる。

 マリルリがイクサの頭を洗い流している音かと思っていたが──そうではないようだった。

 

「いや、私も聞こえます……まさかこれは……!!」

 

 アパートの壁を伝うようにして。

 水が流れるような音が聞こえてくる。

 

「おい逃げるぞッ!! さっきのアイツじゃねえ!! 貧乏人を呼べ!!」

「は、はいっ……!!」

「いや、無理して立つな!! 足を捻挫してる、俺が負ぶう!!」

「ごめんなさい!!」

「謝るなッ!! いちいちウゼェ!!」

 

 コナツの腕を引っ張り、彼女を背中に担ぐ。

 

「で、でもあれは──間違いないですッ」

「知ってるのか!?」

「何かあったんですか!?」

 

 異変を聞きつけたのか、髪がずぶ濡れのままのイクサが飛び出してきた。

 

「襲撃だッ!! とっとと閉所から逃げるぞ!!」

「ええ!? でも、そんな気配は──」

「気を付けてください!! あの子は……私が一番知ってる相手ですっ!!」

 

 

 

 バキバキバキィィィッ!!

 

 

 

 窓を食い破り、それは部屋の中に入ってきたようだった。

 既に一目散にアパートから飛び出した後で、イクサ達がその姿を見るのは外に出てからになったが──

 

「魚……!? デカい魚のポケモン!?」

「……まさか、こんな所で再会するなんて……!!」

 

 ──階段を駆け下り、町へと飛び出す。

 だが、追手は凄まじい速度で地面を泳ぎ、イクサ達を追う。

 泥が津波の如く押し寄せ、周囲を飲み込んでいく。

 それを操るのは一匹のポケモン。

 その全身は機械の装甲に覆われ、頭部もバイザーに包まれてしまっている。

 しかしなじみ深いコナツは、その姿を見て一瞬で誰なのかを看破した。

 

()()()ですっ……!!」

 

 

 

「ドロッシャラアアアアアアアアーッッッ!!」

 

 

 

【イダイトウ(オシアスのすがた) でいぎょポケモン タイプ:水/地面】

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