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土曜ドラマ『ハゲタカ』

バブル崩壊後、莫大な負債を抱えた日本にニューヨークからやってきた“ハゲタカ”と呼ばれる外資系ファンドの代表。彼は悪魔か救世主か? 巨額の金が動く日本企業買収劇と人間ドラマが描かれた。

土曜ドラマ ハゲタカ
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NHKだからこそ描けた!

 原作は、真山仁さんの『ハゲタカ』『ハイアウト』。ドラマ化を思い立った訓覇圭チーフ・ディレクター(当時)は、「企業買収がニュースを賑わせるなか、うまくいっている会社がなぜ買われるのか、一生懸命にやってきた人たちはどうなるのか」といった素朴な疑問が出発点だったと語っている。さらに、企業買収が民放では扱いにくいテーマだということも予測がつき、「それならNHKで!」と考え、「剛速球で投げてみた」のが『ハゲタカ』だった。あえて恋愛にふれなかったのも、時代の先端で一番激しく動いている世界だからこそ、そこからは一番激しい人間の感情が見えるに違いない。登場人物の抱える仕事と個人の葛藤でドラマを構成しようとなったのだ。「これはすごい冒険です」としながらも、結果的に「想定していたことの5倍から10倍も役者さんたちが作品を魅力的に演じてくださった」ことで、ストーリーを超えて芝居を楽しんでもらえたのではと自負している。

(制作発表会見より) 左から原作の真山仁さん、西野役の松田龍平さん、鷲津役の大森南朋さん、芝野役の柴田恭兵さん、三島由香役の栗山千明さん
(制作発表会見より) 左から原作の真山仁さん、西野役の松田龍平さん、鷲津役の大森南朋さん、芝野役の柴田恭兵さん、三島由香役の栗山千明さん

“ハゲタカ”役に没頭

 まさに芝居のすごみ、醍醐味をこのドラマで見せつけてくれたのが、主人公のハゲタカ=鷲津政彦を演じた大森南朋さんと、そのライバルともいえる芝野健夫を演じた柴田恭兵さんだ。

 大森さんは「男と男のドラマをやらないか」とのオファーを受けたときは本当に嬉しかったそうだ。「素晴らしいメンバーに囲まれて本当に幸せです」と話し、ことに鷲津と激しくぶつかり合う芝野役の柴田恭兵さんとの共演はうれしかったという。「芝野は鷲津にとって人生を変えた先輩であり、兄貴のような存在であり、あこがれでもある。さらに越えなきゃとか、越えたいと思うライバルでもあって、すごく意識した存在なんです」。大森さんにとって俳優の大先輩でもある柴田さんとの関係は、ドラマの設定に近いと感じたそうだ。ただ、対立する役として役柄の距離があるからと「ファンであることを伝えるのは終わってからと決めていた。撮影中は、企業買収関係のニュースがあると真剣に画面を見たり、すっかり鷲津その人に没頭して演じきったという。

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芝野と鷲津はかつて銀行で上司と部下だった間柄

男の戦い、男たちの思い

 一方の芝野役・柴田恭兵さんも、撮影中は「ハゲタカ対企業再生家なので、お互い演技に支障がないよう距離を置いていたので、撮影が終わったときが楽しみでした」と話している。大森さんのことは「根っこの部分が温かくてさらに悲しみの表現の幅を持った役者だと思います」と印象を語り、いつの時代、どんな会社にも置き換えて見ることができる男の戦いであり、人間ドラマだったと振り返る。

 柴田さんにとって、このドラマでもう一人、楽しみだった共演者が西野治役の松田龍平さんだ。「お父さんの優作さんのいいところをいっぱい持っていますね」と感じた。「優作さんは会うたびに、一緒に何かやろうと言ってくださっていたのに結局できなかった」と語り、ドラマの第2話で、芝野と治の切ないシーンを演じたときには「なんだか優作さんに会えた気がしました」。松田龍平さんも「柴田さんとは、父の葬式か命日でお会いしているんですが、今回リハーサルのとき、肩をがしっとつかまれて『大きくなったな!』と言われてびっくりしました。柴田さんと共演させていただけたのはとてもうれしかったです」と話している。

土曜ドラマ『ハゲタカ』
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    実家の老舗旅館を売却された治(松田龍平さん)は、起業資金を集めるべく工事現場で働いていた(第2話)
松田優作さん 1984年放送『新 夢千代日記』より
松田優作さん 1984年放送『新 夢千代日記』より

原作者も魅きつけた!

 男と男のぶつかり合い、骨太のドラマを熱演した俳優陣。その完成試写を見た原作者の真山仁さんは、「原作の『ハゲタカ』は、1997年から物語が始まっているので、表層的には時代のギャップはあります」としながらも、「その中にいる人間の葛藤は今も当時も変わらないものだと思います」と話している。そして、自分の生きたい方向性をきっちりと出していく鷲津と、組織の中でどう生きていくかを大切にする芝野の葛藤。そんな時代を超えた普遍的なものが、ドラマの中でもしっかりと描かれていると感じたそうだ。たとえ原作とは違う場面があったとしても、「原作の言葉に込めた思いはしっかりと伝わってきた。それはうれしかったです」。さらに、「自分の作品が原作であることも忘れて見入ってしまいました」と、出来上がりに満足しているようだった。

原作者 真山仁さん
原作者 真山仁さん
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土曜ドラマ『ハゲタカ』
街に降る一万円札は、つかもうとすると消えてしまう… “金”に振り回される現代社会を暗示するような、印象的なエンドタイトル

ステラNHK名作座 コラム
日本を買い叩く!男の真実

ペリー荻野

 米投資会社日本代表・鷲津(大森南朋)は、「腐ったこの国を買い叩く!」と、かつて自分が勤務した三葉銀行から不良債権を買い付ける。鷲津の元上司柴野(柴田恭兵)は額面数億円の債権の大半を「1円」と値をつけられ、愕然とするが、それは「死にかけた獲物(企業)に群がるハゲタカ」と言われる超ドライな外資系ファンドと家族的経営体質の日本企業との熾烈な戦いの始まりだった。

 多角経営に失敗した老舗旅館、オーナー一族に私物化された玩具メーカーなど、弱体化した企業を必死に守ろうとする芝野と対立する鷲津。さらにつぶれた旅館の息子西野(松田龍平)がIT企業トップとして巨額資金を手に争いに参加してくる。逆転に次ぐ、逆転。芝野に「あなたは私なんだ」と言った鷲津の真実がやがて明らかになる。そして響く銃声!

 バルクセール、ホワイトナイトなど専門用語と「誇りで飯が食えますか」「お金を稼ぐことが悪いことでしょうか」といった強烈な言葉が心に残る。伝説の経営者役の菅原文太の存在感はさすが。マネーゲームの中で、仕事、企業、人生の本質を問う力作だ。

文/ペリー荻野

土曜ドラマ 『ハゲタカ』 【2007年放送】

バブル崩壊が招いた悲劇を背負った人々が彩る、重厚な人間ドラマ。「企業買収」ビジネスをめぐる男たちの野望と葛藤、そして挫折と希望を浮き彫りにする経済エンターテインメント!

原作:真山仁 脚本:林宏司 音楽:佐藤直紀

みんなのコメント

  • 2007年毎週このドラマを見るために頑張って1週間仕事をしていました(笑) ドラマも映画もDVDを買い、何度も観て何度も感動し、何度も涙をためています。 人生No. 1のドラマ。 再放送も観ています。 何度観ても与えられるものがあり、何度観ても前に進む力をもらえる。 ドラマを作った全ての人に感謝します。mookororinさん
  • 素人でしたが金融の世界に引き込まれました!「腐った日本を買い叩く」という台詞が心に残る一方で、実は惰性や慣習に甘えた企業を健全に再生していく鷲津に心惹かれました。 NHKにしかできないシリアスかつ堅実な内容で、名作だと思います! このドラマのお陰でこれまで興味のなかった経済や社会のことを勉強するようになり、人生が豊かになりました。まささん
  • とにかく引き込まれます。 出演者の方の表現が繊細で、登場人物のちょっとした感情の揺れがスッと伝わってきます。それだけに、主要登場人物が直面する現実は、それぞれかなりシビアなものばかりで、心を抉るような辛いシーンも多いです。 それでも、彼らが抱えるものを抱えながら、凛と前を向くところが味わい深いです。 内容は重いのですが、観終わった時に、清涼感が残る稀有な作品だと思います。フサタカさん
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