消えゆく「県民手帳」 今年は3県で廃止決定 ご当地色豊かな情報満載で人気もデジタル化で逆風
「県民手帳」に逆風が吹いています。各県で発行されている県民手帳は、ご当地色豊かな情報が満載されて県民に愛されてきましたが、山口県、奈良県、富山県では、2026年版を最後に発行を中止するそうです。廃止が相次ぐ背景に何があるのでしょうか。(朝日新聞withnews・山野拓郎) 【画像】ご当地色豊かでバリエーションも豊富な「県民手帳」とは
県民の歌、リンゴ品種、方言まで網羅
県民手帳は、各県の統計協会などが発行している手帳です。普通の手帳として使えるだけでなく、ご当地色豊かな様々な情報が掲載されていることでも知られています。また、表紙や素材にも各県ならではのこだわりが詰まっています。 たとえば茨城県民手帳は、表紙に伝統工芸品「西ノ内和紙」を使用。「茨城県民の歌」も掲載されています。青森県民手帳は、「青森まめちしき」や「ひとこと方言」に加え、りんごの品種紹介がフルカラーで掲載されています。 起源はいろいろな説がありますが、例えば長野県では、統計調査にあたる人たちが使っていた手帳が使いやすいと評判になり、一般販売するようになったそうです。 各地で地元の人たちに長年愛されてきた県民手帳ですが、近年、県民手帳の発行を取りやめる県が相次いでいます。
山口、富山、奈良で発行終了
山口県統計協会が発行する山口県民手帳は、県選出の国会議員、県議会議員、県市町二役名簿から県庁の電話番号一覧表、印紙税額一覧表、計量単位換算表まで詰め込んで税込み660円という手帳ですが、2026年版を最後に発行を終了することを決めたそうです。 協会の事務局を担う県の担当者は、「ご利用者の減少や経費の増加など、さまざまな事情による苦渋の決断となりました」と苦しい胸の内を明かしました。 山口県民手帳は、「統計の普及啓発」を目的に昭和29年(昭和30年版)に初めて発行されました。様々な統計情報が手帳にまとめられていました。発行開始当時は、統計データの閲覧は市町村役場や図書館、県庁などの限られた場所でのみ可能であったため、「携帯できる統計情報」として重宝されたそうです。 しかし、かつては入手するのが一苦労だった統計情報も、今ではスマホですぐに調べることができます。近年は部数が落ち込み、平成29年(2017年)版は2万部でしたが、最終となる令和8年(2026年)版の発行部数は1万2500部だそうです。 廃止の決断に至った理由については、以下のような要因があるそうです。 ・スマートフォンなどの普及により、スケジュール管理や統計資料の入手がデジタル化。 ・民間手帳の人気もあり、販売数が減少し、今後も増加は見込めない。 ・収支は赤字基調。印刷・運送コスト増加、資金繰りも厳しい。 「統計情報はインターネットで広く公開されており、県民手帳の役割は終えたとの判断に至りました」 富山県民手帳も来年版で発行を終了します。発行元の富山県統計協会の事務局である県統計調査課の担当者によると、スマホの普及によってスケジュール管理のデジタル化が進む時代背景などを考慮し、70回目の発行に当たる来年版を持って区切りをつけることになったそうです。40年前は4万4千部が出ていましたが、最後の発行部数は1万3千部だそうです。 奈良県民手帳も2026年版をもって発行を終了します。奈良県統計協会がホームページで発表しました。発表によると、奈良でも「手帳離れ」が進み、販売数が年々減少していたそうです。県民手帳の役割が一定の区切りを迎えたと判断し、発行終了の決断に至ったとのことです。