クー・チェンドンもやってきた!日本のロングラン支えたファンに直接感謝伝える『赤い糸 輪廻のひみつ』編
■ギデンズ・コー監督とともにクー・チェンドンもやってきた!
日本での上映権が今年11月30日でいったん切れた映画『赤い糸 輪廻のひみつ』がロングランヒットを記録したことへの感謝の思いを伝えるべく来日した台湾のギデンズ・コー監督。池袋の映画館・新文芸坐では、12月27,28日の2日間にわたって特集上映「ギデンズ・コーの世界」が行われ、大盛況となった。
手前味噌ながら、そのあたりの経緯は拙記事を参照していただきたい。
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12月28日には、2021年の映画『赤い糸 輪廻のひみつ』が上映された。今年の11月30日で日本での上映がいったん終了となり、もう観ることはできないかも、と思われた同作をふたたびスクリーンで鑑賞することができるという“奇跡”に会場は超満員(翌29日18時にも上映あり)。会場には5回、10回は当たり前、中には20回を超えるリピーターも数多く来場、上映中はそこかしこからすすり泣く声が聞こえてきた。
■多くの思い出を手放せない人々に向けて
そして上映後のトークショーにはギデンズ・コー監督と主演のクー・チェンドンが来場。満席の観客からの熱い歓迎を受けて、感激の表情を見せたふたり。「皆さんが愛を持ってこの映画を守ってくださり、そして私たちを台湾から呼び寄せてくれたこと。本当に、本当に嬉しく思います」とコー監督が語れば、チェンドンも「前回はコロナの影響でこの映画の宣伝のために来日することができなかったんですが、今回こうして日本に来られたことはとても光栄で嬉しく感じています」と続けた。
あらためて本作が日本で愛されている理由について「自分でいうのもなんですけど、自分は感情を断ち切るのが難しく、そして諦めが悪い性質なんです。だからこそ何ごともなかなか手放すことができない。自分の人生において、過去の出来事を思い返すことに非常に多くの時間を費やしてきたわけです」と語るコー監督。そうした意味で監督という職業は天職だったといい、「この映画には自分のそうした感情や、複雑にねじれた“絆”をすべて込めました。自分と同じように、多くの思い出を手放せずにいる方なら、きっとこの感情に共鳴していただけるはず」と語った。
また「死後の世界でも迷い続けている」というコンセプトについてコー監督は「自分たちは生きている間でさえ、わからないことや理解できないことがたくさんあるというのに、死んで霊になった瞬間に、あらゆる問題に対する“明確な答え”が得られるんでしょうか? きっと幽霊になっても、同じようにこの世界のわからないことに直面するはずだと思うんです。どこへ行けばいいのか、どうすればより良い幽霊になれるのか。死んだ後も、生前と同じように問題を抱え、考え続けるのだと思う」と説明する。
■鬼頭成とのクライマックスについて(※結末に触れています)
※※※※※※※※ここから物語の結末に触れています※※※※※※※※
本作を観たチェンドンは「僕たちはネガティブな事柄や、解決できない物事に執着しすぎてしまう」といった感想を抱いたという。「劇中の鬼頭成(グイトウチェン)がそうだったように、彼はただ“感謝”を必要としていただけなんです。人生で最も幸せだった一瞬を思い出すだけで、実は多くの執着を手放すことができる。僕たちは些細な誤解に固執してしまいがちですけど、実は身近にあるポジティブなエネルギーを無視してしまっているのだと気づかされました」。
もともとのクライマックスは「シャオルンが鬼頭成を消滅させるシーンは、もっとありきたりな設定だった」と語るコー監督。「それはシャオルン自身の魂を突き刺した矛が、そのまま鬼頭成をも貫くというものです。そうすれば無敵に見える鬼頭成を倒すことができる。それは自分の命を犠牲にして悪鬼を殺すというアイデアだった」と語るも、脚本執筆が後半にさしかかった頃に「妻から妊娠したと告げられました。妊娠検査薬の2本の線を見て、『自分は父親になるんだ』と実感した瞬間、この世界に対して言葉にできないほどの大きな“感謝”の思いが湧き上がってきたのです」。
そしてその時に、感謝こそがこの世の巨大な憎しみを溶かすことができるのだと気付いたといい、そこでシャオルンが「お礼を言い、それによって悪鬼である鬼頭成が仏のような悟りを開き、自らの恨みを理解する」というクライマックスに書きかえられた。「現場でクー・チェンドンはずっと膝をつき、感謝を伝え続けていました。編集の時にそのシーンをもう少し短くしようとも試みたのですが、短くすると観客がその場の空気に没入するための“時間”が足りなくなってしまう。そう感じたので、あえて長くひざまずいているバージョンを採用した」。
それを聞いたチェンドンも「この作品の脚本は何度も書き直されましたが、最初のバージョンでは、クライマックスの大きな障害は台湾の大地震でした。その後、監督が話したように、彼自身の人生に新しい命が授かったことなど、さまざまな経験を経て今の形になった。どちらのバージョンも深く感動できるものでした。“恐れを知らぬ自己犠牲”と“感謝による再生”。これらは異なる物語のようですが、自分にとっては同じもの。“より良い自分になって未来に向き合う”という本質は変わっていないからです」と補足する。
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■クー・チェンドンの父母が出演している理由
一方で、シャオルンの愛犬「阿魯(アルー)」についての質問も。阿魯との共演を振り返ったチェンドンは「この犬の俳優は非常にプロフェッショナルでした。われわれの指示を理解する賢さがあるんですけど、仕事以外のときは甘えん坊で人懐っこい。飼育員さんがいないときはとても遊び好きな一面もあって。そのギャップには驚かされました」と述懐。するとコー監督が「犬を飼っている方ならご存知だと思いますが、犬に『ずっと顔を舐め続けて』とお願いするのは至難の業です。だから、クー・チェンドンの顔に犬が大好物のミートソースをたっぷり塗ったんですよ」と監督が明かし、会場内からは驚きの声が。
これにはチェンドンは「アレルギーなんて心配している余裕はなかった。ただ『食べられちゃうんじゃないか』と本気で怖かったんです。ワンちゃんがミートソースに興奮して、すごい勢いで舐めてくるんですから」と振り返り、会場は笑いに包まれた。
さらに劇中にはチェンドンの実の両親が出演しているということで、そのふたりについての質問も。するとコー監督は「チェンドンのお父さんは『あの頃、君を追いかけた』で全裸出演してから、『あの映画がヒットしたのに俺の裸も貢献している』とずっと言い続けてきたんです。だから会うたびに『次はいつ俺を出すんだ?』と聞いてくるので、本作でその願いを叶えることにしました」とキャスティングの経緯を説明。だが、彼のセリフが「来世も君を見つける」といった愛の言葉を告げるものだったということもあり、「そうした言葉を彼の奥さん以外の女性に言うのは少々気まずいので、お母さんも一緒に呼んで出演してもらったのです」とその裏側を明かした。
これに対してチェンドンは「父は僕のことを毎日お気楽に仕事をしていると思っていたようですが、撮影後に二人ともひどい風邪で寝込んでしまい、『息子の大変さがようやく分かった』と言っていました。僕の苦労が少しは伝わって良かったです」と笑いながら付け加えた。
そんな大盛り上がりのイベントもあっという間に終了の時間に。コー監督は「これからも私たちの作品を応援してください。来年、僕たちの最新作『功夫(原題)』を持って皆さんと再会し、分かち合えることを願っています」と呼びかけると、チェンドンも「自分の作品が国境を越えて観てもらい、愛されるのは本当に幸せなこと。監督が言った通り、来年もまた新しい作品とともに、皆さんと交流できることを楽しみにしています」と再訪を誓い、イベントを締めくくった。