コメ政策が先祖返りを強めている。農林水産省はコメなどの需給や価格の安定を図る食糧法に、コメの「需要に応じた生産」という減反の決まり文句を明記する方針を固めた。石破茂前政権は増産の方針を掲げたが、高市早苗政権の鈴木憲和農水相は農家に配慮し方針を戻した。鈴木氏は減反回帰を否定するが、生産調整で米価を維持したい狙いが透け、額面通りに受け取る向きは少ない。
価格下落恐れる農家に配慮
農水省が24日、省内の審議会で示した食糧法の見直し案では「政府は需要に応じた生産を促進すること、生産者は需要に応じた生産に主体的に努力すること」を法定化。需給見通しの情報提供については、国や自治体に責任があるとする。
「需要に応じた生産」は、米価維持のため作付けを減らす減反の常套(じょうとう)句だ。政府は1970(昭和45)年に減反を始めたが、2018(平成30)年に廃止。だが、その後も生産量目安の提示などにより事実上の減反が続いた。「需要に応じ」生産量を減らしてきた。
だが農水省が需要を見誤り、令和の米騒動を招いた。石破前政権は8月、供給拡大で価格の安定を図る方向に転換。しかし10月になり、高市政権で農水相に就いた鈴木氏は「需要に応じた生産が原則」として、コメ余りによる価格下落を恐れる農家に配慮し、巻き戻しに動いた。
減反には当たらないと主張
ただ鈴木氏は減反には当たらないと主張する。12月19日の記者会見で、需要に応じた生産は「生産者らが主食用米の需給動向などを踏まえて自らの経営判断で作付けを行うこと」と説明した。
また、現行の食糧法に残る「生産調整の円滑な推進を図る」という規定にも言及し、「事実上、形骸化している」として削除する考えを示した。
一方で「供給過剰なのに主産県が増産すると、国全体のコメ生産を不安定にする」とも指摘。強制力はないが、政府の需給見通しを踏まえた生産が望ましいとの認識を示し、生産を調整したい考えをうかがわせた。
「産地に圧力」報道で火消し
こうした中、農水省が産地に生産調整の圧力をかけたとの報道も浮上した。秋田県の地元紙、秋田魁新報によると、農水省は23(令和5)年、県にコメを増産しないよう要求。生産が拡大した場合は、転作に関する交付金を減らすとも告げたという。
鈴木氏は23日の会見で火消しに追われた。当時は新型コロナウイルス禍でコメの需要が減り、県産米の需要を考慮した上で、どう生産を進めるか意見交換したと説明。「圧力をかけた認識はない」と釈明した。
報道の通りであれば、減反は廃止し、需要に応じた生産で生産者らが自らの経営判断で作付けをしているとの農水省の主張は説得力を失う。消費者に負担を強いるだけでなく、生産者の意欲をそぎかねない政策は、持続可能性に疑問符が付く。(中村智隆)