ワイ、コブラ部隊に入隊できたけど追い出された 作:ワイやて!?
「傷を見せろ」
開口一番これである。
スネークを最後の戦いへ見送った後に脱出機で準備をしていたEVAに唐突にかけられた言葉である。
驚きながら振り返ると、そこには装備の大半を失い歩く要塞から薬箱へランクダウンしたザ・ワイが居た。
とっさに銃を構えようとしたが、バイク事故を起こした際に倒木の枝で貫かれた脇腹が痛み押さえてしまう。
それを察知していたのか既に包帯と消毒液を手に近寄って来るではないか。
「…………脱出を阻止しようとするわけではないのね」
「……………………クビになったからな」
「えっ?」
「俺はもう、コブラ部隊じゃない」
苦虫を嚙み潰したような顔をしながら、目出し帽なのに眼だけで分かった、苦しそうに言った。
本当にクビになったのかと聞きたいが、余計な嘘をつくようなタイプではないということは知っている。
今になって彼との交流を思い出したスネークがここにたどり着くまで少々話していたのだ。
変なやつという印象は確固たるものとして残してはいるが、誠実な面を持つということも理解はできた。
「感染しては手遅れになる。ジャックも治療はできるが軍で学んだ程度だ、専門家が見た方がもっと治りが早くなる。とにかく見せろ」
そういえば元衛生兵だったことを思い出し、彼の言うことも一理あると考えなおして承諾した。
事実、一度助けられているのだ。この期に及んで真の目的のことも察しているであろう彼に下手をうって消されるよりも受け入れて素直になっておくのが一番である。
抵抗したところで、ザ・ボスと渡り合える実力者にEVAが色仕掛け以外で敵うはずがないのもある。
一度、操縦マニュアルを再確認する作業を止めて事故で負った傷を見せる。
「内臓は避けている………だが深いな。縫い方も拙い?何故?いや、ジャックがやった跡だな。あいつも怪我したのか?」
「ええ、思いっきり木にぶつかったと言ってたわ」
「…………骨折した状態でザ・ボスに勝つつもりか?」
事実、細かい骨が折れているスネークは添木素材と包帯で固定したまま最後の戦いへ挑んでいる。
ザ・ボスも被曝による病で全盛期と比べたら弱っているとはいえ、勝てるかどうか少し心配になった。
一度縫合した跡を清潔な医療用ハサミで切り、切れた糸を抜いてから消毒して再び縫っていく。
「案外、痛くないわね」
「重傷を負ったことでアドレナリンが分泌されて痛みを誤魔化してるだけに過ぎない。もう少しすると痛みがぶり返してくる。念の為これを飲んでおけ」
「これは?何の薬?」
「抗生剤だ。万が一そこから菌が入って全身に回れば死ぬ、それを予防する物だ」
豆知識ではあるが、抗生剤自体は20世紀初頭から利用された歴史があり、第二次世界大戦中に量産できるペニシリン系の抗生物質が開発されている。
そのような歴史的背景もあり、ザ・ワイはどれほど装備を失っても包帯と縫合糸、抗生剤だけは絶対に手放さない。
これさえあれば、救える命はあるのだから。
と、治療を終えた彼は薬を渡して後部に備えられている座席へと向かっていく。
本気で脱出に同行するのか?そう思ったEVAであるが、持ち帰ったところで問題は殆ど無いのではと一瞬考えてしまった。
元コブラ部隊、ザ・ボスの弟子、スネークの兄弟子、この激戦となった地をほぼ無傷で潜り抜けた猛者。
最終的な任務は『賢者の遺産』の強奪と関係者の抹殺であるが、流石にザ・ワイを殺せるほど自惚れてはいない。
むしろ自分の命と引き換えにスネークを彼にけしかけるくらいしか倒す方法がないのでは?
現時点のEVAは諦めた。
上への報告もザ・ワイという存在がいるという言い訳もある程度通用する、かもしれない。
普通にコブラ部隊の1人と戦闘になったら、普通は避けるものなのだ。
そう自分に言い聞かせて諦めたEVAは再び操縦マニュアルと向き合うのであった。
「…………………………………………」
「…………………………………………」
「ねえ」
「…………………………………………」
「…………………………………………」
「貴方達、何か言ったらどう?」
「…………………………………………」
「…………………………………………」
どうしよう、この重苦しい空気。
片や師弟を超えた愛を育んだ相手を殺し、片や大事な家族を見殺しにした男。
互いに思うことは『クソ任務が、上は本当に何考えている!』である。
スネークが戻ってきたということはザ・ボスの死が確定したという事。彼女と同じ部隊かつ上司であり家族であったザ・ワイに後ろめたい気持ちはある。
対してザ・ワイもスネークがザ・ボスにとって家族を超えた感情を向けられているのも理解しており、彼女が軍人であることを死ぬほど理解しているため、殺したことをとやかく言うつもりはない。
互いに互いを思いやる気持ちがあるため終始無言になり一緒に外を眺めるのは致し方のない事なのだ。
「仲がいいのやら悪いのやら。ともかく脱出するわよ!」
いつまでも黄昏れる男二人を意図的にスルーして脱出機を動かしはじめる。
エンジンが点火し、徐々に加速して湖から離れ始める。
ようやく任務が終わる、求めていた答えを得られて、それでも晴れぬ思いを抱えて。
「貴方たち、大丈夫!?」
脱出機が飛行を始め、EVAが声をかけたことにより再起動する2人は扉を閉める。
互いに一度、顔を合わせてから操縦席と後部座席に移動しようとした時だった。
ダン!ダン!ドゴン!
二発の銃声と一つの爆発音、それと同時に脱出機が傾き機体が揺れる。
「スネークっ!」
轟音が響いている中でもよく通る声が三人の耳に入る。
窓の外を見ると
「オセロット!?」
「まだだっ!」
この期に及んでしぶとく生きて立ち向かってくるオセロットに感嘆するザ・ワイではあるが、彼が何をしようとしているかすぐに察したため即座に扉の方へと走る。
だが、オセロットの方が早かった。扉に体当たり、その勢いで扉が破壊され解放される。
その衝撃で扉を押さえようとしたザ・ワイがひどく弾かれ壁へ叩きつけられる。
心身ともに疲労がたまっていた彼はぶつかって床に倒れこんでから動かない。
思わぬ負傷にスネークは目を見開くが、その直後にオセロットが飛び込んでくる。
フライングプラットフォームによる衝突からの飛込であったため再び機体が揺れ、その侵入を阻止できなかったスネークはオセロットと向き合うことになる。
確かに生きていることは知っていたとはいえ、ここまで執念深く追いかけてくるとは思いもしなかった。
そして、一度外した装備を乗り込んできたオセロットが拾っていることに気づいたスネーク。
無情にも装備はオセロットの手により外へ投げ出されて湖の中へ水没していった。
このままではやられる、スネークは即座に格闘戦に移る。
任務は生きて帰ってこそ達成となる。
EVAもろとも死ぬわけにはいかない。そのような思いでスネークは戦う。
ボスの死を無駄にしないために、引き留めることをしなかった兄弟子に報いるために。
ワイ「ぐえー、気絶したンゴ」
蛇「(本当に気絶したのかこいつ?)」
EVA「(本当に気絶したのかしら?)」
山猫「(頼む起きるな俺の正体に気づくな寝てろずっといやずっとは不味いからこれが終わるまでは!)」
この脱出機内の全員がスネークの敵であり味方と考えたら拷問部屋の時と同じくらい笑ってはいけない空間では?そう作者は訝しんだ。