ワイ、コブラ部隊に入隊できたけど追い出された 作:ワイやて!?
正直あれだけやってヴォルギン生存は無茶があったかと思いましたが、皆さんヴォルギンの生命力信じすぎです。後の燃える男だから言いたいことは分かるんですけどね!
音もなく歩く兵士の姿がいた。
彼のコードネームはザ・ワイ、永遠の疑問を基にしたコブラ部隊の1人である。
グロズニィグラードにてヴォルギンを打倒したと思っていながら地下通路を歩いていた。
この道に何かあると予感があった。
様々な疑問を解いて、それでもなお解ききれぬ疑問を抱えてきた彼の勘は一種のレーダーのように精密であった。
ただここを歩けば誰かに出会える、そう思っていると同じように前から人影が向かってくる。
暗い地下ではあるが、白いその姿はやけに目立つ。
だからこそ、彼女が戦場に居るという証明であった。
「ボス…………」
「戻ってきたのね」
カツカツと足音を隠さないその姿勢は、まさに戦場の華。
ザ・ボスが待ち構えているであろうことは予測していた。
「狙いは『賢者の遺産』だったんですね、ボス」
「……………………」
沈黙は肯定、特にザ・ボスほどの人が情報を明かせない時はアタリという経験はよくあった。
「これは、あくまで俺の予想です。足止め程度に聞いていきますか?」
「……………………話してみなさい」
ザ・ワイの茶番に付き合ってくれることに安堵した彼は、静かに語りだす。
「ボスの任務は偽装亡命、本来ならこの地に味方と偽り潜入してこのグロズニィグラードと呼ばれる地に配備されている兵器群の支出の出処を探るはずだった。ザ・ボスという肩書だけならともかく、コブラ部隊という伝説の英雄たちまで付いてきたら覚悟が違うと認識される筈」
あくまで予測ではあった。ただ、この亡命先が戦争過激派であるヴォルギン大佐という戦いの為なら容赦はしない男の下であるなら話は別。
先の大戦の英雄がついて戦争を起こそうものなら、間違いなく彼らが存在しているというだけで各国は警戒するだろう。
だが、戦争をしたい者にとっては喜んで引き込むだろう。
特に、ザ・ボスというブランドは計り知れない。第二次世界大戦が終結した後は各地に飛び回り様々な技術を教え込んだ者達を抱え込んだり、コネクションを利用した水面下での取引を一方的に行うことだって出来る。
そして何よりも。
「ザ・ボスこそが『賢者達』のメンバーである…………正確にはその身内に近い判定でしょう。だからこそ『賢者の遺産』の存在を知り、そしてヴォルギンも『賢者達』に通じているメンバーの一人。だからこそ亡命がスムーズに進んだ」
ここまで見ると任務は順調であった。
このままヴォルギンの懐でじっくりと『賢者の遺産』を探せばいい。
その筈だった。
「誤算が生じましたね。コブラ部隊を、ボスの命を捧げなければならない事態が発生した」
そう、ソコロフ設計局に核ミサイルが撃ち込まれた。
予想外の出来事、ヴォルギンがあそこまで愚かだったとはザ・ボスの眼をもってしても見抜けなかった。
この時点で
「奴の軽はずみな行動のせいでアメリカとソ連の両国の緊張が高まり、そして奴は、ヴォルギンはその罪をボスに着せた!」
ダン、と彼は通路の壁を叩く。
「この時点で疑問しか湧かない!何故、ボスに罪を着せる程度で逃れられると思ったのか!何故、両国どちらとも一切の利益がないのに撃ったのか!」
ザ・ワイの怒りが吹き荒れる。
「愛国心?そんなもので大量殺戮を行う理由となるのか!?いや、人によっては覚悟を決めるような一大事であるのかもしれない…………だが!」
ぶん、と勢いよく腕を振るように振り向き語り続ける。
「これを仕組んだのはCIAだ!亡命も!核発射も!そしてコブラ部隊の死も!状況が揃いすぎている、全てボスを抹殺するように仕組まれている!」
「……………………」
「そうでなければ、こうはならなかった!教えてくれ、ボス…………俺は、俺はどうすればよかったんだ!」
疑問、ただただ疑問、しかしそこには多くの感情が含まれていた。
「彼らも、任務のためとはいえ俺と戦い、そして殺された!俺が殺した!何故!?彼等は死ななければならなかったんだ!」
怒り、恐怖、痛み、悲しみ…………散っていった仲間の感情が彼の中を終わりなく渦巻く。
しかし、そこには一切の喜びはない。
「ボスもそうだ!ずっと、ずっと国の為に、皆のためにその身を犠牲にしてまで戦ったのに、この仕打ち!」
そして、遂に本音が漏れ出る。
「ずっと搾取され続けていた!何もかも搾取され続けていた!名声、友、そして愛も!ソローを殺すことになったのも!アダムスカを誘拐されたのも!全部奴らだ!『賢者達』の陰謀にずっと巻き込まれていた!ボス、何故だ!それほどにもなって、そのような身体になってでも
ザ・ワイは知っていた。
昨夜のザ・ボスとの決闘でのこと。銃器や爆弾を使用しつつ戦っている中、CQC合戦になった際に彼はザ・ボスの顔に軽い一撃を与えたのだ。
顔面とはいえ、威力を殺されて軽い裏拳のようなものだ。
はっきり言うとダメージにすらならない代物であったのだが、ザ・ボスはその程度の攻撃で鼻血を出していた。
よく観察しなければ見えない箇所、白い歯にも歯ぐきからの出血がみられており、その症状が出ていることに一瞬愕然としてしまった。
「フューリーは宇宙の事を話していました。ザ・ボスも宇宙に行ったようなことも…………」
「……………………」
「ボス、どれほど被曝しているんですか?その症状は被曝者が発症する白血病の易出血状態だ!核実験の被曝だけでなく、宇宙へ行った際の被曝までしている!アメリカは何を考えている!一度被曝したから大丈夫?そんな馬鹿でも分かるようなことを疑問に思わず送り出すか!いや、それすらもボスの抹殺に動いていたとしか思えない!」
地下通路に響く声で叫んでも、兵士は1人もやってこない。
疑問に思いつつも感情が湧き上がる彼にはありがたかった。
これも全てザ・ボスが手を回していたからだろう。
「俺が、俺が悪いのか…………?何もかも、あの時から全て…………」
今にも崩れ落ちそうになっているザ・ワイであるが、過去の後悔が全て押し寄せてきてなお頭の何処かは常に冷静だった。
ザ・ボスがいつ構えようと対応できるくらいに、自分でも嫌になるほどあらゆる状況に対応できるようになってしまっていた。
「何故だ、何故なんだ、ボス…………!」
ゆっくりと
昨夜の続きが今始まるのか、再び、今度は本気の命の取り合いが始まるのか。
たった10秒程度、しかし数時間とも思える間が流れる。
そして…………
「……………………!?」
ザ・ボスは手から
いつ放たれるか分からない銃に目がいっていたザ・ワイは驚愕し、一瞬気を削がれてしまった。
かぁん、と高く鈍い音が響いた瞬間にはザ・ボスが目の前まで接近していた。
そして一瞬の隙をついてCQCをザ・ワイにかけ…………
「………………………………ボス?」
抵抗しようとした彼を投げるのではなく。
「もういいのよ、私の息子。戦うことはない」
優しく抱きしめた。
「ずっと考えていた。あなたが私たちのそばにいていいのか」
大切に触れるように、ゆっくりとザ・ワイが握る銃とナイフに手を伸ばす。
突然の行動に混乱し、疑問により硬直した彼の手から武器を奪うのは容易い作業だった。
「あなたはとても優しい。大義ではなく、誰かのために動けるのだから」
そして静かに離れたザ・ボスは続ける。
「あなたに残すわ。私が伝えられなかったこと、伝えることができないこと」
聞きたくはない、今度こそザ・ボスが完全に破滅するような気がして、二度と会えなくなるような気がして。
「この5年、私が何をしてきたか」
「ボス…………」
これは、愛国者が愛しの息子に送るもう一つの『
家族の下へ帰るために、彼を真に解放するために。
奇人で変人で質問がしつこい男だった。
しかし、間違いなく愛されていた。誰かのために感情を出せる彼は愛されていただけの話です。