ワイ、コブラ部隊に入隊できたけど追い出された 作:ワイやて!?
グロズニィグラード、ソコロフが誘拐されシャゴホッドという核搭載戦車を開発している本拠地。
そして、ザ・ボスがそこに居る。
クラスノゴリエ山頂上でグラーニンを殺害した一連の流れを見ていたスネークはEVAから渡された鍵を使いグロズニィグラードの地下壕へ侵入しようとしていた。
扉を開けようとした瞬間、大地震が発生した。
「うわああああっ!?」
「な、なんだ!?」
「爆発か!?どこから!?」
「助けてくれえええええ!」
地震を経験したことがない兵士達が一斉にパニックになる。
山が揺れてハゲワシが飛び立つレベルのことが起きていると悟ったスネークは急いで地下壕へと入り込む。
扉を開けた瞬間にすごい熱気と煙が吹き出すが、ここで止まれば周囲の兵士に見つかってしまう。
煙でむせながらもスネークは駆け足で階段を降り、爆発の中心地へ到達した。
「これは…………少佐」
『私に聞かれても困る。だが、ここで戦闘があったことは間違いない』
「ザ・ワイか?」
『恐らくな。奴が何を持ち込んだかは知らんが、これほどの爆発が必要となるのはコブラ部隊以外ありえないだろう』
ほとんど崩壊して綱渡りよりも脆く細い道しかなくなった地下壕の変わり果てた姿を眼にしたスネーク。
どのような兵器を用いたらここまでの破壊を行えるのか。
拳銃を構えながら進むスネーク。いつ崩れるか分からないためやや早足になってしまう。
「…………これは」
『何か見つけたか?』
「何か燃えたようなものが残っている。なんだこれは」
『ふーむ、こいつはギリースーツか?コンクリのように見えるが、実際はハリボテ。もう少し中を開けないか?』
「やってみよう」
スネークは一度足を止め、シギントの助言通りに燃え残った残骸を探る。
中には石に偽装したものや、岩に偽装できる外装がどんどん現れる。
残念なことに、殆どが焼けているため再利用は難しそうだった。
『なんというか、こいつは特殊なギリースーツだ。どんな時にもあらゆる場所に擬態できる道具と言ったところか。確かにこれがありゃ敵に見つかるわけもない』
「見た目に反して結構軽そうだな」
『これがあれば、潜入任務は滅茶苦茶楽になったってのに、今じゃぼろきれ同然か』
「いったい誰がこれを持ち込んだ?」
『少なくとも今残っているのはザ・フューリー、ザ・ボス、そして…………』
「ザ・ワイか…………」
今のところ全く正体がつかめない幻の隊員に困惑するしかなかった。
存在を確認できたのは廃墟でオセロットを狙撃した際の一瞬のみ。
いや、あれすら確認できたかどうかすら怪しい。事実、一度も姿自体は見たことないのだから。
「となると、戦っていたのはザ・ボスではないだろうな」
『それはどうして?』
「ザ・ボスならこのような爆発を起こさせる前に倒している」
『なるほど、それほど腕は信頼しているってことか』
「となれば、ここでやられたのはザ・フューリーか」
『だといいがな。だが、油断するなよ。死んだと見せかけて実は生きていたなんて展開もあるからな』
「そのような展開は映画だけにしてほしい」
使えないと分かったギリースーツは捨てておく。そして再び足を速めて先へと急ぐ。
ガラガラと今からでも崩れそうな地下壕を走り抜く。
『急げスネーク!今すぐにでも崩落するぞ!』
「分かっている!」
少佐に言われるまでもなく、こじ開けられた形跡がある扉からグロズニィグラードへ向かう。
全ては任務のために、ソコロフの救出、シャゴホッドの破壊、そしてザ・ボスの抹殺。
これを成さねば新たに世界大戦が開かれる。核戦争を回避するためにも彼女の死は絶対だ。
憂鬱な気持ちになりながらも、気持ちを切り替えてスネークは任務を進めていく。
「……………………どこだ、ここは。何故俺は迷子になっている」
一方その頃、ザ・ワイはがっつり迷子になっていた。
人気のない所にソ連兵がやってきてはCQCで捕まえ尋問、そして首を絞めて気絶を繰り返していたがグロズニィグラードは非常に広すぎた。
全部の施設を巡っていては時間が足らない。更にザ・ボスも移動している可能性が非常に高いため入れ違いになっている。
下手に気絶させた兵士を増やしすぎると警戒が常に上がってしまう。
ジャックには申し訳ないが囮になってもらおうかと邪心していたが、持ち前のスニーキング術で周囲を観察し続けていた。
「……………………何故、こうも戦力が多い?」
いつまで経っても見つけられないなら仕方なし。気分転換に別の事を考える。
ソ連兵の装備が全て最新のものであることは散々鹵獲してきたので察することはできた。
下手したらアメリカの物よりいいんじゃないかと思うくらいである。
それを指摘すれば、今のソ連には莫大な資金力があるということに他ならない。
しかし、第二次世界大戦が終結してから時間は経っているが、兵器開発にいそしむ暇はないはずである。
それなのに戦車も相当数並んでおり、一つの基地にしては過剰配備ではないかと疑った。
「政府からの支援?いや、フルシチョフ政権はそこまで戦争に意欲的ではないはず。核戦争を望むようなタイミングでもない。何故、ここまで軍事力を配備できる?」
一体なにを想定しているのか、まるで戦争が起きた際にここを攻められても対応できる戦力を整えているとしか思えない。
現政権もヴォルギン大佐のような超武闘派に資金を流すのかと疑ったが、彼の脳内に一つの仮説が産まれた。
「個人的な資金力、か?」
それならこの配備にも納得がいく。
何らかの支援者がいれば政府の意向を無視してこのような戦力配備も可能となるだろう。
だが、それもただの支援者ではない、もっと薄暗く危ない金を使っているであろう支援者だ。
そんな秘密結社じみたものが存在すると思っているのか?陰謀論の読み過ぎと思われても仕方ないだろう。
しかし、ザ・ワイと深くかかわっている秘密結社のような存在が居る。
「『賢者達』…………!」
忌々しき裏の権力者。ザ・ボスの子を誘拐した謎多き組織。
この規模での資金を出せるのは『賢者達』以外あり得ない。
少なくともザ・ワイにそのような疑惑を抱かせる組織はそれしかなかった。
「いや、別口もあるしフルシチョフが裏で支援してる可能性もある…………どういう流れなんだ?」
ゴソゴソと中腰で隠れながら移動するザ・ワイ。
服装は緑色かつ目出し帽を身につけているため、遠目で見たらソ連兵に見間違えられるかもしれない。
だが、これでも彼らからすると敵である。
「ボス…………どこなんだ…………」
スタミナが減ってきたためザ・ワイはポーチの一つを開けて食糧を取り出す。
グロズニィグラードに来てソ連兵から強奪した謎の黄色い箱。どうやらレーションとは違うようで中にはブロック状のクッキーみたいなものが入っている。
戦場での食べ物は持ち込み以外は基本的に不味い、特にレーションや軍用チョコなど本当に不味い。
ただただ腹を満たすためだけに作られており、不味い理由も食べ過ぎで食料が予想以上に減ることを予防するためである。
理屈は分かるが心情はあまり納得できていない。普通に士気に関わるし、生きる気力を湧かせるためには味覚はとても重要なのだ。
「あむ、あむ、あむ…………っ!?」
中のクッキーを取り出し、口にした途端にザ・ワイの動きが止まる。
口の中に広がる甘味、しっとりとした感触でありながら食べ応えがあり、小腹がすいたら一発で満足できるほどの衝撃。
ここ最近でザ・ボスが亡命した関連以外で衝撃を受けるレベルの完成度にしばらく絶句してしまった。
「な、なんだこれは?何故、美味い?何故、こんなものが世に出回っている?犯罪的すぎる…………!」
ジャングル生活が長かったのもあるが、ザ・ワイは色々な所を駆け回っているため舌はそこそこ肥えている方である。
「これほどのものがソ連の食料?戦場に気軽に持ち運べてこの軽さ、量産ができたら引っ張りだこ…………待てよ、成分は…………何故こんなにも栄養が満点なんだ!?」
捨てようとしていた外箱を拾い直しじっくりと眺めると、そこに書いてあった成分表にさらに驚く。
栄養バランスはこの一箱で賄えており、周知されたら不味いレーションは駆逐されるのではないかとザ・ワイが危惧するほどである。
その食料の名は『カロリーメイト』。時代からするとややオーパーツな食料であった。
「いや、だが、ううむ、やはり戦場でこれが出回るのは…………いや、アメリカは宇宙開発だけでなく、こういうところも負けているのか…………何故…………」
自分で言っておいてなんだが、ザ・ボスの事も一緒に悪く言っているようで妙に罪悪感が湧くザ・ワイ。
久しぶりのまともな食事をこっそり楽しんでいる間に、スネークも到着してライコフ少佐の服を剥ぎ取っているのであった。
またしても何も知らないザ・ワイ。なお、この世界線のカロリーメイトはプレーン味とする。
ちなみにザ・フューリーの自爆による地震で警戒度はさらに上がっている模様。そんな中でギリースーツを失っていても食事を楽しめるザ・ワイの図太さが垣間見える。
え?ザ・ボスに質問攻めしてたのに図太さを語るのかって?
シギント…………細かいことは気にしてはいけない。