ワイ、コブラ部隊に入隊できたけど追い出された   作:ワイやて!?

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気付いたら10話です。ここまで続いたことに感謝。


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「ん?音がした?」

 

 クラスノゴリエ山、グロズニィグラードに繋がる山であり重要な守りでもある場所である。

 

 無論、侵入者がないよう警備兵が立っているのだが…………

 

「風が吹いただけか?」

 

 人が来なさすぎて警戒がおざなりとなっている。

 

 はっきり言って退屈な任務ではあると思われる。よく分からん禿鷹が飛んでいて気味が悪く、なんなら戦闘ヘリまで飛んでいるためそこまで必要かと思われていたりする。

 

 なお、スネークは誰にも見つからず山頂にある小屋に到着しているし、それを追いかけるザ・ワイも完全に走っているもののすごい速さで通り抜けているため音に気づいても振り返った時点で結構離れているので発見されていない。

 

「ぜえ、はあ、ジャックは山頂か?何故山頂…………いや、もしかしたらこの先にボスがいるかもしれん」

 

 高山故に吹き抜ける風で足元の砂は飛んでいる。足跡での追跡は森よりもはるかに難しくなっているという事で。

 

 ただ、麻酔銃で眠らされた兵士が他の兵士からギリギリ見えない位置に隠されており、スネークが間違いなくここへ来ているという確信はあった。

 

 今、ザ・ワイは選択を迫られている。

 

 このまま山頂まで行くか、道中で見つけたグロズニィグラードへ繋がっていそうな扉を抜けるか。

 

 扉の方は鍵がかかっており、しかしザ・ワイのピッキング技術で開けることが可能であり、山頂への道はあるがその先は不明であるため、どちらかの選択を間違えたらスネークを完全に見失う。

 

 ただし、スネークもグロズニィグラードへ向かうため、先回りして待つということも可能である。

 

 ただし、別のルートを使えば待ちぼうけを食らうことになるが。

 

「…………よし」

 

 ザ・ワイはグロズニィグラード地下壕行きの扉(間違った選択肢)を選んだ。

 

 カチャカチャカチャと本来であるならば専用の鍵がなければ開かない扉を手慣れた手つきで開ける。

 

 ザ・ワイは衛生兵であり工作員でもある。むしろどの兵科ができないのかと言えるくらい技術を習得している。

 

 一体何が彼をそこまで駆り立てるのか。

 

 そうこうしているうちに鍵が開き、巡回している兵士に気づかれる間もなく扉の中に入り、内側から鍵をかける。

 

 スネークだって鍵を開けて入ったら閉めるだろう、そうすればたとえ気づかれたとしても敵兵が入ってくるまで時間を稼ぐことができる。

 

 なお、スネークは敵地の建物に入る際は一度も鍵をかけてない模様。

 

 こうしてグロズニィグラード地下壕へと侵入したザ・ワイ。

 

 地下壕は最低限の灯りしかなく、そこまで使われていないらしい。

 

 その証拠に餌があまりないはずなのにコウモリが生息しているのだ。

 

 恐らくどこかに小動物が通れるような抜け道があり、湿気が籠る洞窟のように丁度いいねぐらになっているのだろう。

 

「……………………」

 

 しれっとソ連兵の食糧庫からレーションを一食借りたため不要な捕獲はしない。

 

 重装備で動ける身体能力をしているとはいえ、余分な荷物を増やすわけにはいかない。

 

 彼が最高のパフォーマンスで動けることを考え重量を計算し尽くしているのだ。

 

 足音を立てず、この寂れた地下壕にも巡回している兵士がいないか周囲を警戒しつつ、鹵獲したハンドガンにサイレンサーを付けて歩いていく。

 

 光量があまりにも少ないため暗視ゴーグルの電源を入れ、敵影がないか確認していると自分ではない誰かの気配を感じた。

 

 いや、感じたというべきではない。

 

 向こうは全く隠す気が無いのだ。

 

 ごおっ!と彼が歩く通路の横に眩い炎が迸る。その炎を認識した瞬間にザ・ワイは即座に暗視ゴーグルの電源を切る。

 

 暗視状態で明るすぎるものを目にすれば視界がしばらく焼け付いてしまうための緊急措置である。

 

 そして、この火炎が一体誰が使うかはすぐに予想がついた。

 

「ザ・フューリー!」

 

「お前が先に来たのか、ザ・ワイ!」

 

 通常の火炎放射器と比べたら何十倍もの威力を誇るものを振り回すのは1人しかいない。

 

 コブラ部隊所属、無限の憤怒のコードネームをもつザ・フューリーである。

 

 がちゃり、と派手に黒い宇宙服を模した耐火服と背中に背負った燃料タンクを鳴らしながらゆっくりと歩いてくる人影が出てくる。

 

「先、ということはジャックはまだ来ていないのか」

 

「そうだ、ボスの最後の弟子はここにはいない」

 

「では、何故(why)お前がここに居る!」

 

「見て分からないか」

 

 銃を向けられても動じないザ・フューリーは天井に向けて火炎放射器を放つ。

 

 眩く天井にまで届く火炎により、住みかとしていたコウモリたちが逃げ惑う。

 

「憤怒だ!お前はあの時、ボスから落とされた時帰るべきだった!もはやお前には怒りしか湧かない!」

 

「なんだと…………何故(why)!」

 

 ぼとぼととコウモリが落ちてくるが、決して視線はザ・フューリーから逸らさず構え続ける。

 

 流石のザ・ワイでもあの火炎を正面から浴びたら重傷を免れない。

 

「ザ・ワイ、ボスに追われながらもボスを追う男。その真実のみを追求する姿勢には怒りを感じる!」

 

 再びごうごうと火炎放射器を振り回しながら炎を放つ。

 

 巻き込まれないよう隣の通路へと飛び込み炎を回避するザ・ワイだが、横を通り過ぎた熱にたらりと汗を流す。

 

「帰れ!今なら間に合う!何も知らぬ子よ!」

 

「黙れ!お前たちは何を知っている!コブラ部隊は何を考えているんだ!」

 

「今のお前に話すことは無い」

 

 かちゃ、かちゃと足音だけでも圧を感じるザ・フューリーの気配を探りながらザ・ワイは壁に背を付けていつザ・フューリーが飛んできても対応できるよう構える。

 

「お前は知りすぎる、何事にも全てを巻き込み、それが自身の首を絞めていると知らずに!」

 

「何故だ!ならばお前は、コブラ部隊は、ボスは最初から俺を始末していればよかったはずだ!」

 

「疑問ばかり持つお前を理由なく呼べば疑問を抱えて警戒する癖に、一丁前に言う」

 

 疎遠だったザ・ワイを理由なく呼べば確かに警戒はされるだろう。

 

 だが忘れてはならない、彼がコブラ部隊を追うきっかけになったのはコブラ部隊の面々と会いに行こうとしたからである。

 

 特に理由もなく、彼は会おうとしていたのだ。

 

「……………………っ!」

 

「だからこそ自分自身に忠を尽くすお前は、もうコブラ部隊にとって邪魔者でしかなくなった」

 

「……………………」

 

「帰れ!でなければ憤怒の炎で…………貴様を浄化してくれる!」

 

 再び火炎放射器を吹かして周囲を炙り見つけ出そうとするザ・フューリーだが、ザ・ワイは走って対面にある出口へ向かおうとする。

 

「無駄だ!そこにはカギがかけられてある。向こう側からしか開けられん。ボスの下にはいかせんぞ」

 

 扉が開かない音が鳴ったことによりザ・ワイの居場所は把握されたが、ザ・ワイはゆっくりと振り返りアサルトライフルを構える。

 

「なるほど、この先にザ・ボスが居るんだな」

 

 ようやくスネークを追う意義が無くなった。

 

 スネークの任務に関しては間違いなくザ・ボスが関わっていることは察していたが、詳しい場所までは知らなかった。

 

 彼の後を追えばいずれたどり着くと考えていたが、思わぬところで答えを得た。

 

「ありがとう、ザ・フューリー。これで俺はまた先へ進める」

 

「行かせん!進むならばこの憤怒でお前を焼き尽くしてくれる!」

 

 かつての師、かつての仲間、そしてかつての家族。

 

 彼は再び銃を向ける。

 

「いくぞ、ザ・フューリー!」

 

「かかってこい、ザ・ワイ!」

 

 背中のロケットブースターを吹かせてザ・フューリーは空を飛ぶ。

 

 そして火炎放射器を向け―――

 

「飛んだ!?何故(why)!?いや、そもそも爆発物のスペシャリストが何故火炎放射を?何故飛ぶようになった!?」

 

「……………………誰が教えるものか!」

 

 明るく燃える背景に隠された暗い真実を問いただされる。

 

 彼には知られるわけにはいかない、何が真実なのかを。

 

 ザ・フューリーは怒りを以って答えよう。

 

 この世界は疑問と真実で解決できるようなものではない、と。

 





ザ・フューリーがどうして耐火服を着て空を飛ぶようになったのか、みんなで考えてみよう!
ヒントは宇宙開発!ザ・ボスがスネークと長い間音信不通になったのと似たような理由だね!
誰もがお前のように心の中で秘密を抱えず生きているわけではないんだぞ、ザ・ワイ。
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