ワイ、コブラ部隊に入隊できたけど追い出された 作:ワイやて!?
「フィアー!フィアー!」
「何故飛ぶたびにその掛け声なんだ!何故俺を騙したんだ!」
「叫ぶ理由は昔に言っただろう!それと、俺が何を騙したと?」
「サバイバル術であったキノコだ!毒だったぞあれは!」
「それは知らん!いや、資料が間違ってただけだろう!?」
「何故間違った資料を俺に!」
「分かるか!分かる、はずもない!」
ツッコミどころは多いが互いの命を奪い合う戦いは続いていた。
赤外線センサーを用いて的確にザ・フィアーを狙うザ・ワイに対して飛び回りながらもボウガンで罠へ誘い込むように打ち込んでいく。
一手違えばどちらかが死ぬ、明るくなり始めた森でそう予感していた。
短いようでとても長い攻防、一秒一瞬が互いの体力を削る戦いであったが…………
「ぐうぅ!?」
「やはりそうだ。光学迷彩というものは高度な機械が無ければ使えない。そして、機械というのは高度であるほど重くなる傾向がある」
スタミナの差が勝敗を決した。
ザ・フィアーが纏う光学迷彩は重量が一般の装備よりも遥かにあるため並大抵の体力で数分程度の運動で息切れを起こすほどコストがかかる。
むしろザ・フィアーほどの者であったからこそ何時間も木の上を飛び回り継続して戦えたのだ。
「いくらお前ほどの実力であろうとそれを纏いながら激しい運動は毒だ。そこで晒した1秒の隙を俺は狙い撃てばいい」
「く、くくく、流石と言ったところか。その観察眼だけは見ものだな」
ライフルを数発受けて血を流すザ・フィアー。年を取ったこととかつて教えを乞うてきた男が自分を超えようとしていることに感情がざわつき始める。
「答えろ、何故あのような輩に核を渡した。何故、ボスは亡命した?何故…………俺を置いていったんだ!」
彼は叫ぶ、己から止められない疑問が噴出するかのように言葉として出してしまう。
それだけショックが大きかったのだろう、あの時のスネークのように。
ザ・ボス最期のミッション。ザ・フィアーもただの亡命と聞かされていたが薄々察しは付いている。
我が子ともいえる仲間を見捨てるというのはどれほどの
祖国のために死ぬというのはどれほどの
最愛の弟子に
かの愚行で計画を狂わされたのはどれほどの
置いていくことにどれほどの
その先に
ザ・フィアーとて
「疑問に思うならば、答えは自分で見つけるといい!」
そう言い切りグレネードが付けられた矢を数本も一度に放つ。
爆発範囲からローリングで回避するが、その先にはトラップが何重にも仕掛けられていた。
爆発か、落とし穴もしくは振り子のように襲う棘付きの丸太か。
ザ・ワイの選択は素早かった。
「うおおおおおおおおお!」
選んだのは落とし穴であった。
一度落ちれば再度登ることが難しいよう中は脆く作られており、その下に敷き詰められているのは無数の鉄杭だ。
しかも入念に毒も塗られてあるという仕様上、一度落ちれば助かる見込みがない。
「ふん、落ちたか。これで少しは楽になる…………ああ、そうだ、楽になる」
落とし穴に近づき確実に落ちていったことを確認したザ・フィアーはどこか残念そうに呟く。
こうもあっさりと終わってしまえばどこか物悲しくなるもの。ザ・ソローのように死者と会話できない彼は落とし穴に背を向けた。
次に迎え撃つのは最後の弟子。既にかなりの消耗をしてしまっているが負けるつもりは無い。
むしろ仕留めるという意気を込めてボウガンに矢を再装填する。
疲労を少しでも回復させるためにその場で立ち止まり、装備の点検や周囲の罠を再度どう仕掛けるか考えた。
その僅かな隙がザ・フィアーの最期の油断となる。
ダァン!と銃声が森に響き、静けさを取り戻したと思って戻ってきた鳥たちが再度飛び立つ。
「な、あ…………」
背中から胸を撃ちぬかれたザ・フィアーはよろけながら振り返る。
「ザ・フィアー、確かに落とし穴はよくできていた。疑問の余地もなく脱出が不可能なほど弱く脆い穴だということを俺は疑わなかった」
そこには作動した落とし穴の少し横からザ・ワイが上半身を出していた。
「あれに落ちて、生きていたというのか!?」
「そうだ」
「
「掘り進めたからだ」
貫通力の高い
「落とし穴の内部が脆くなるようお前から教わった。だからあえて内部の壁に突っ込むようにして掘るように手を引っかけることができた。ここは森だ、木々が深く根を張り、俺が落ちきる前に掘り進んだ先の命綱として掴むことができた」
ゆっくりとSVDを置くザ・ワイが次に取り出したのはどこにでもあるようなものだった。
「スコップ、塹壕を掘るためだけじゃなく隠れるための小さな溝や抜け穴を作るのによく使う。これで落ちない間に地上への穴を掘った」
この男はどこまでも用意周到だった、いや掘り進める速度に関してはおかしい点もあったがコブラ部隊も似たような事どころか水上を走ったり全盛期の成人男性より足が速い老人がいたりと肉体的にも超人揃いの中で付いてきたのだ。
人間1人が通れるような通路となる穴を掘り出す程度、ザ・ワイの手にかかれば造作もない。
そのような相手の死亡確認、否、自爆を確認していない時点でザ・フィアーの敗北は決まっていた。
「最後に答えろ、答えてくれ」
「……………………聞くだけ聞いてやろう」
口から血を吐き出し、肺がやられたことを確信して死が間近に感じるフィアーに向けて、異形のようなゴーグルで見つめながら問う。
「俺は、家族になれなかったのか?」
ちちち、と小鳥が戻ってくる。沈黙が自然のざわめきにかき消され、ザ・ワイの言葉がゆっくりと地面に染み込んでいくような感覚が辺りを包む。
長く、短い沈黙。太陽が木陰からザ・ワイの背中を照らす中、彼は付けていたゴーグルを外す。
「…………答えてくれ」
逆光となって彼の素顔は見えないが、どんな時でも無表情でいることが多かったなとザ・フィアーは走馬灯の如く過去の訓練、共闘、そして生活を思い出す。
『
『何故、腕がそんなに曲がる?肘関節を外しているのか?なんだと、肘の関節が二つある?何故、どうしてそのような関節が出来るんだ?レントゲンとかで撮れたりしないか?気になってしょうがない、今すぐ構造を見せてくれ』
『何故、敵はこのような細工で恐怖する。いや、分からないからこその恐怖?何故、未知を疑問と思えず解明しようとしない?何故、何故…………』
『
質問攻めがしつこいガキがこうまで育った。同じ第二次世界大戦を経験してなお、独りで進み続けられる足を持った人間へと成長した。
「お前ほど…………我儘で、独りよがりで、兄弟の心が分からない末っ子がいるものか」
光の加減で影となった顔を見ることはできなかった。
その顔がいったいどんな表情をしているのか?今まで見たことがない
だが、もう
「ふふふ、ふははははは…………
フィアァァーー!
己の死を悟ったザ・フィアーは自爆した。
自爆と同時に全方位に無数の矢が射出される。
上半身だけを出していたザ・ワイは置いていたSVDとスコップを盾にして即座に防御態勢をとる。
爆風が横を通り抜け、矢が周囲にまき散らされる。
カンカンとスコップとSVDに矢が当たり弾かれる。
ザ・ワイの顔を掠めそうな位置に矢が飛ぶが、どれも一つも当たらなかった。
運が良かったのか、それとも何らかの加護があったのか。
「フィアー…………」
自爆を見届けたザ・ワイはSVDとスコップを下す。
矢が突き刺さり、銃身が傷つき曲がったり、スコップに至っては穴が開きそうなほどのへこみが出来ている。
もう使い物にならない、自分が落ちた落とし穴に投げ捨ててゆっくりと地上へと上がる。
間も無くジャックが来る。フィアーによる戦闘の痕跡は隠せないが、フィアーが誰と戦ったかまでは気づかれないだろう。
想定外のことで時間を取られたザ・ワイは匍匐しながら再び森の中へと消えていく。
「何故だ、フィアー…………何故だ、ボス…………」
最期に彼が感じた恐怖とはいったい何だったのか。ボスは何を考えてこのようなことをしたのか。
ジャックが来る。全ての決着をつけるために彼を追い続ける。
全ては、
〜シークレットシアター①〜
「フィアー…………」
自爆を見届けたザ・ワイはSVDとスコップを下す。
矢が突き刺さり、銃身が傷つき曲がったり、スコップに至っては穴が開きそうなほどのへこみが出来ている。
もう使い物にならない、自分が落ちた落とし穴に投げ捨て地上へと上が…………
「…………ん?」
上がれなかった。
「何故だ、抜けん。おかしい、ここまで通れたのに、何故!?」
ふん!ふん!と力強く体を抜こうとするが全く抜けない。
「
ジタバタしても抜けない身体。刻々と太陽が昇り、鳥たちや蛇、ウサギまでもがザ・ワイの周りに集まってくる。
「何故だ!何故何故何故!ふんっ!んぐっ!ンゴオオオオオオオオ!」
「何やってるんだお前」
「はっ!?」
そしてスネークに発見されたとさ。
〜テーレッテッテェェェェェン!
スネェクイィタァ……(ねっとり)〜
これがやりたいが為に無茶して穴掘りさせました()