第19回花井美春を溶かしたのは暖かな南條愛乃 メロロンと向き合えた1年

聞き手・照井琢見
写真・図版
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 放送中のアニメ「キミとアイドルプリキュア♪」(ABCテレビ・テレビ朝日系、日曜朝8時30分)のキャストが月に1度、思いを語る連載「キミとキラッキランラン」。12月末は、妖精のメロロンとキュアキッスを演じる花井美春さんに聞きました。

 キミプリがいよいよクライマックスに近づき、2025年は終わろうとしています。振り返ってもらうと、メロロンが「ねえたま」と呼ぶプリルンを演じる南條愛乃(なんじょうよしの)さんが、この1年の支えになったそうです。

    ◇

暗い暗い氷を溶かしたのは……

 年末はいつも、地元の北海道に帰省しています。家族と一緒に温泉に行って、1年をしめくくるんです。雪が降っていたら、露天風呂で雪見温泉ができるのも、楽しみの一つです。

 今年を振り返ると、本当に濃い1年でした。

 キミプリの放送が始まるころに、「わんだふるぷりきゅあ!」(2024~25年)に出演した先輩方が「1年って本当に早いよ」と言葉をかけてくださったんですね。

 私は正直なところ、「言っても1年って長いですよ」と思ってしまったんです。今までは1クール3カ月放送の番組が多かったので……。でも実際に始まって無我夢中で演じていると、時間の過ぎ去るスピードは速かったです。

 収録が始まったころは、メロロンと、キュアキッスのことが分からなさすぎて、「これでいいんだろうか」と不安を抱きながら、演じていました。この時点ではメロロン自身が自分のことを明確に分かっていなかったから、向き合うのが難しかったのかなと、今になって思います。

 お芝居もそうですが、キミプリの収録現場に行くこと自体にもドキドキしていました。私自身が人見知りな性格で、最初はあまり皆さんとワイワイと話をすることもできなかったんです。

 まわりの皆さんは、本当にあたたかく接してくださるんですけど、どうしても私が一歩を踏み出せない。素がなかなか出せない、そんな自分も嫌だなあと思いながら、アフレコに臨んでいました。

 私が現場ですごく緊張していたのをくみとって、プリルン、そしてキュアズキューンを演じる南條さんが、「いつでも相談乗るよ」と話しかけてくださいました。

 よく2人でご飯に連れていっていただきます。大先輩なのに、その場では友達として接してくださって、先輩後輩の気を使う関係ではなく、相談しやすい空気を作ってくださるんです。

 メロロンのお芝居に自信が持てないことをお話しすると、「自分も思い通りにいかないことはいっぱいあったよ」と、南條さんの経験や、気の持ちようを一つ一つ話してくださいました。

 本当に優しくて、大好きで大好きで大好きなお姉ちゃんです。メロロンにとってのプリルンみたいな存在ですね。一緒におそろいのアクセサリーを作って、毎週一緒につけています。

 そうやって収録を一つひとつ積み重ねるごとに、キャストさんやスタッフさんとのコミュニケーションが徐々に密になっていって、だんだんと現場に行くことが心から楽しみになっていきました。

 自分が現場を好きになっていくにつれて、メロロンやキッスとの関係も一緒に深まっていったように思います。

 メロロンは最初、「この線から、ねえたま(プリルン)以外は入ってこないで」といった姿勢で、うたちゃんたちを拒絶する部分もありました。

 私は皆さんを拒絶まではしていないですけど(笑)、心を開いていくメロロンに、花井自身の気持ちを一緒になって乗せていくことができたような気がします。

心がはじけた場面

 第30話「プリキュア!キラッキラン・フォー・ユー!」(8月31日放送)は、自分の中で分岐点というか、メロロンについての理解が深まる大切な回でした。

 メロロンは、伝説のハートキラリロックの力で、闇のカプセルに閉じ込められてしまいます。キュアキッスに変身するために、メロロンが封印したのは「ねえたまとの未来」でした。

 カプセルのなかで、メロロンはもう一人の自分、ダークメロロンに出会いました。ダークメロロンは「ねえたまはあの子たちが奪うメロ」と言って、メロロンを闇に取り込もうとしてきます。

 それまでメロロンは、うたやみんなが友達として迎えてくれる姿勢でいてくれたのに、素直になれなかった。ずっと後悔し続けていたと思うんです。

 「メロロンが許せないのは……メロロンメロ!!」

 「お友達になりたいって……言ってくれたのに……」

 「もうお友達って……言ってくれたのに……!」

 「ずっとホントの気持ちを伝えられなかったメロロンメロ!!!!」

 もうここで、このセリフでやっと気持ちを爆発させることができる。ようやく素直に叫ぶことができた場面で、私もすっきりしました。今までずっと「友達になりたい。……でも無理メロ」と、思いをおさえつけてきた鍵が外れたというか、心がはじけたシーンでした。

 収録前にいただいた映像を見て、3回ぐらい泣きました。収録前に泣いておかないと、本番で泣いてしまうなと思って。涙をからしてアフレコに臨んだはずなのですが、それでも涙が出そうになりました。

 この場面を乗り越えたメロロンは強いぞと、うれしくなりましたね。

目覚める時が来た

 ただメロロンとしてずっと気がかりだったことに、やっと答えが出たのは、みんなでキラキランドに行った第44話「キラキランドのひみつ!」(12月14日放送)でした。

 女王ピカリーネ様が「あなたは闇の広がりを止めるために産み落とされた申し子」とメロロンに告げました。

 メロロンはずっと「みんなのようにキラキラできない」と悩んでいて、それはダークイーネに言われたように「自分が闇の子だから」だと思っていた。でも実はそうではなくて、自分は生まれながらの救世主だと知った。

 たぶん、信じられない気持ちだったと思います。でも徐々に実感へと変わっていって、お姉様が全てだったメロロンに、自分自身の強い意志が生まれていくのを感じました。

 最後に「私もキラキランドを、みんなとの未来を守りたい。これからも、お姉様と、みんなと一緒にいたい。私、アイドルプリキュアになって良かった」とほほえむ姿が、神々しくて、格好良く見えたんです。

 キュアズキューンと一緒に歌う「Awakening Harmony」という曲には、《目覚める時が来たね/ホントの自分になる/満ちる運命》という一節があります。第44話のこの場面を見てから聴くと、歌詞の意味がより深く伝わってきて、鳥肌が立ちます。

 キミプリは敵をやっつけるのではなくて、ライブを通して、歌でキラキラになってもらう物語です。歌にメッセージ性もすごくある。小さい子に歌に込められたメッセージはまだ分からなくても、歌自体はずっと覚えていると思うんですね。

 小学生のころに見た「ふたりはプリキュア」(2004~05年)のことは、今でも思い出せます。

 ほのかちゃん(キュアホワイト)が、闇の空間に閉じ込められてしまうエピソードがありました(第42話「二人はひとつ! なぎさとほのか最強の絆」〈04年12月5日放送〉)。

 そこで、なぎさ(キュアブラック)が、敵に今まで見たことのない形相で飛びかかっていく場面があったんですね。

 ほのかのために、どんなに強い相手にもぶつかっていく姿に、見ると涙が出ます。かっこよすぎて。

 ほのかちゃんも、闇にのまれて息も絶え絶えなのに、なぎさが絶対に助けに来てくれると信じている。

 ふたりの強い絆が感じられて、大人になっても大好きなシーンとして、ずっと覚えています。

 10月にパシフィコ横浜であった「キミとアイドルプリキュア♪LIVE2025 You&I=We're IDOL PRECURE」では、キュアキッスの格好をしてくれる子がすごく多かったんですね。

 キッスは難しい言葉やポエムを言うので、小さい子に魅力を伝えるのが難しいのかなと思っていました。でも、ライブでの光景をみて、キッスの魅力は伝わっていたと感じました。

 歌詞の難しい「Awakening Harmony」も、みんな客席で歌って踊ってくれていました。いつか大きくなったときに、あの歌に込められたメッセージはこんな意味だったんだ、と思い出してくれたらうれしいですね。

プリキュアの縁、必要な時に

 こうしてまわりの皆さんの助けを得て、メロロンやキュアキッスと1年向き合うことができました。

 キミプリが放送している朝、SNSで感想を見るのも楽しみにしています。キッスがかわいいとか、かっこいいとか、お褒めの言葉をいただけて、それも自信につながっています。

 難しいと思っていたキャラクターを、自信を持って演じることができるようになった。人見知りだった私が、皆さんと現場を楽しみたいと思えるようになった。自分の成長も感じています。

 南條さんがよく、「プリキュアの縁は、自分が必要なタイミングで来るんだよ」と教えてくださるのですが、本当にそうだと思います。

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