PrejectRCL ZET REQUIEM:NOVELIZED 03-絶望の槍 小説本文パート
PROJECT RCL ZET REQUIEM:NOVELIZED
第3章:絶望の槍
●文:Hi-GO!
●執筆補佐:めたるす/ゾンリー/らいおね
●挿絵:Hi-GO!/補欠/ててん/トナミカンジ/のばでぃ
▼冊子版の通販▼
※冊子版限定で『キャラクターデザイン資料』や『用語解説』
『ゲストイラスト』等のコンテンツが付属します。
※第1章と2章は以下になります。先にお読み頂く事を推奨いたします。
◆2024/08/08……ヴァルハラマップを追加
あとがきコーナーにゼニムの過去の姿を追加
キャラクター紹介
▼シエル
▼ブロッサム・シエル
▼オメガ・シエル
▼アルエット
▼パッシィ
▼ペロケ
▼イロンデル
▼ジョーヌ
▼ロゼ
▼グレイシア
▼ウェクト
▼リバース・ナイツ
▼ゼニム
▼ゼットルーパー
▼ゼットール
▼ネージュ
▼ラファール
▼ダイン
▼グレイシス
!ご注意!
こちらは
【PROJECT RCL ZET REQUIEM:NOVELIZED 03-絶望の槍】
の小説本文パートのみの記事になります。
本章より挿絵は冊子版共にではフルカラーとなります。
(全2章も順次更新いたします)
『キャラクターデザイン資料』や『用語解説』『ゲストイラスト』等は冊子版のみのコンテンツとなりますのでご了承お願いいたします。
※note限定のコンテンツとして『あとがきコーナー』が付属します。
※誤字、誤表記、ご編集やご感想などお気づきの点が御座いましたら是非下記お問い合わせフォームよりご連絡をお願いいたします。
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【人物相関図】
FILE:Ⅰ
空中要塞ヴァルハラのNEブロックの一角、黒光りを発しているはずの通路が真っ赤に染まっていた。
そこに、白い装束に身を包んだ少女――グレイシアは駆け付けたが、内心穏やかではない。以前は敵を斬るのを躊躇していたはずのシエルが突如として豹変した結果、仲間が斬られたというからだ。
ヴァルハラは中央シャフトからはどのブロックにも行き来ができるため到着は早かったが、ゼットルーパーに『変身』した5体の仲間達は四肢を切断され、赤い液体を撒き散らして横たわっていた。
「お前たち、無事か!? 誰か意識のあるものはいるか!?」
思わず彼女は叫んでいたが、返事は無い。
その数秒後、ノイズ交じりの独り言が通路に響く。
「ロ、ロゼ様にモっとお仕エしたかっタ……」
「待っていろ、今行く……!」
近づいて調べてみると、傷は深いものの、電子頭脳などの記憶領域に関しては致命傷にまで至らないようだった。ギリギリの所で剣の軌道を変えた痕跡がある。
「あの娘……まさか、この期に及んで手を抜いたというのか……」
しかし、そうは言いがたい光景を見直し、直感した。
「いやこれは……己の斬撃に抗っている……?」
いずれにしろ、仲間の犠牲を払わずに済んだことに変わりはない。彼女は応急処置を施してウェクトに連絡を取った。
◆SCENE2
一方その頃、シエルはEブロックに潜入し、配備された仕掛けや兵士達に翻弄されていた。
例えば小型の工業用メカニロイドとして名高いメットールシリーズだが、ゼロ・リバースでも改良されて配備されていた。問題はその見た目である。
一見すると、まるで『紅き英雄』の頭部を彷彿とさせるヘルメットが道端に横たわっているように見えるのだ。それが突如顔を出して動き始めるのだから意表を突かれてしまう。おまけに耳にあたる箇所から小型のセイバーまで繰り出す始末だ。
「いくらなんでもッ、『ゼロ・リバース』だからといってやり過ぎじゃないかしらッ……! アルカディアより悪趣味よ……」
攻撃を避けながらも応戦するも、メットの中にこもられるとまるで攻撃が通らない。元が工業用である恩恵であろうが、基本的にはカウンター以外の手段は無いのが厄介なところだ。ちなみに距離を取れば口元からおなじみの光弾も放ってくる。
「さしずめ『ゼットール』というところねッ……!」
攻撃を誘い出してなんとか1体ずつ撃破していくしかない。少量の配備であればやり過ごすことも可能なのだが、ピンポイントで適量配置されているため、下手にやり過ごせば挟み撃ちに合う可能性が高いのだ。
「でも、顔を出していないと攻撃が通らないのは困るわ……」
愚痴をこぼしながらも少しずつ数を減らしていき、注意を引かれていた所で視界の端から何かが迫ってきた。
「なッ……!」
すんでの所でその場から離れ、振り返る。すると迎撃用の針型トラップが壁から突き出ていた。レプリロイド化を果たしたとはいえ、地形から生じる無数の剣先に貫かれては無事では済まない。
「間一髪だったわね……」
しかし息をつく間もなく、地面や天井からも槍を彷彿とさせる鋭利な金属が次々とシエルへと襲い掛かる。さながら過去にデータベースで閲覧した忍者屋敷の仕掛けのように、通路のそこかしこから鋭い殺意が放たれるのだ。
当たれば腕部や脚部への致命傷は必至だが、まだ先に戦いが控えている以上、ここで深手を負うわけにはいかないだろう。
「悪いけど、こんなところで生け花になる趣味はないのよ……!」
そして回避に意識をそらされた瞬間、ゼットルーパーがショートセイバーを振りかざしながら勢いよく距離を詰めてくる。
「この配備をした人は本当に性格が悪そうねッ……!」
思わず想像の人物にまで愚痴が及んでいた。それはともかくも、ゼットルーパーを無力化しなければならない。またシステマ・オメガの力に頼るか、それとも……と逡巡したが、とりあえずは一太刀浴びせて間をつなぐ。
「増援が来ないうちになんとかしないと……」
ふと、ゼットルーパーの頭部の後方に髪の毛のように動力パイプがあることに気づく。もしかしたら、あそこを断ち斬れば敵を無力化できるかもしれない。
「ごめんなさい! 先に謝っておくわ!」
加速してから空中に飛び上がり、敵の後方に落ちる軌道の中で動力パイプを断つ。途端にゼットルーパーのモノアイの発光は消え、見事その場で機能停止した。
「これならいけそうね! 単機だと比較的ありがたいのだけど……」
そこに再び針のトラップが襲い掛かる。だが、そろそろ慣れてきた頃合いだ。配置するタイミングの法則でもあるのだろう。
グレイシスのナビゲートによると、Eブロック深部の制御室にリバース・ナイツの1人が待ち構えている可能性が高いとのこと。だが、すんでの所で4体のゼットルーパーに前方を塞がれてしまった。おまけに後方では鋭い針がせわしなく伸縮を続けている。
「まるで前門の虎、後門の狼ね……なんとかならないかしら……」
「シエルさん! 後方のトラップを利用できませんか?」
グレイシスから通信が入る。たしかに敵をおびき寄せて罠で無力化するのであればなんとかなりそうだ。
「わかったわ! やってみるわね!」
フェイントの斬撃を繰り出すと後方に加速して罠の前に敵をおびき寄せた。案の定つられてこちらに移動してきたところを1体目は足払いでトラップの中へ案内する。続けて2体目はセイバーで同じく後方へ。3体目は心で謝りつつも、武装した右腕を斬り飛ばした。
「さて、残るはあと1体……」
先ほどと同様に加速して宙を跳ねる。空中で逆さまになりながらも確実に『視て』敵の頭部の動力パイプを切断することに成功した。
「悪いけど、通してもらうわ」
そう言いながら着地するとシエルは制御室のゲートへ足を進めた
◆SCENE3
「シエルさん、やはり銃は使わないのですか?」
ふいにグレイシスが話しかけてきた。
「ええ、知っての通りゼロ・リバースの殆どのレプリロイドには銃が効かない事が報告されているわ。メカニロイドならまだわからないけど、何かしらの対策を施されていると思っていいでしょうね」
「あのウェクトという科学者の仕業でしょうか? それにしても厄介な……」
防弾に特化した装甲と光学エネルギーを減衰させる装置の組み合わせ。このような策と技術を実現するとなると、ウェクトに絞られてくるのは仕方がない。
「恐らくはそのようね。彼らは純粋な近接武器による決闘をお望みのようだから……どのみちモデルB状態でのバスターの再現は未完成だったからむしろ助かったわ。敵の出方も斬り合いと最初からわかっているしね」
『紅き英雄』のバスターは、レジスタンスのメンバーが使用していた量産型のバスターショットに対し、ゼットセイバーをカートリッジにすることで出力を上げる運用をしていた。
それはイレギュラーな運用法でもあり、本来のバスターを用いなかったためにデータ不足なのだ。もちろん同じ形式で運用することも可能なのだが、モデルBのセイバーはカートリッジとしての相性が良くないらしく、望んだ出力に届かないのが現状だ。
「それなら良いのですが……他のメンバーが心配です。皆が近接戦闘に優れている訳でもないですし、有効な武器も限られます」
「私の方で新装備としてバスターとセイバーの両方を使えるものを配備しているわ。とはいえリバース・ナイツクラスには太刀打ちするのは難しいといわざるを得ないわね。バスターも牽制程度には役に立つでしょうけども……」
「……つまりは短期間で打てる手は打ったということで、あとは作戦で上回るしかないということですね。事実、ここまで潜入は成功していますからシエルさん達の陽動と制圧が上手くいけばそれだけ成功率も高まります」
「えぇ。……それじゃあそろそろゲートを通過するわ。恐らくリバース・ナイツの誰かが控えているはず……」
そう言うとシエルはセイバーを握りしめ前に進んだ。
◆SCENE4
漆黒のゲートを通過すると扉は閉まり、ロックが掛かった。
眼前には壁面と床が黒で統一された空間が広がり、外周には針の山が敷き詰められている。重厚感を放つ内装は、さながら決戦の舞台を彷彿とさせ、一歩足を踏み入れただけで空気が引き締められるかのようだった。
やがて、中央に佇む紅い影がひとつ視界に入る。
シエルは意を決してそこまで跳躍した。
「思ったよりは早かったな」
静寂を割って冷淡な声が空間に響いた。
「あなたは……絶槍騎のゼニムね」
「記憶にとどめて頂いて光栄だ」
深紅の装束に『つぼみ』のように尖った頭部。顔を覆ったマスクの奥で鋭い瞳がこちらを見つめている。シエルは身構えながら言葉を選んだ。
「……デスマッチ、という事でよろしいのかしら?」
「察しがいいようで助かる。いかにもその通りだ」
マスクから発せられる声に一段と鋭さが加わる。
「――どちらかが倒れるまで戦いは続く。逃げ場は、ない」
やはり周囲に巡らされた針はそういうことだった。できるのであれぱ戦いは回避したいが、難しいのは承知で尋ねてみる。
「私はあなたからその武器さえ手に入れられれば、ここにはもう用はないわ。そういうゲームでしょう?」
「それも間違ってはいない。俺の意思でこの部屋のロックを解くことも可能だ。そこの制御パネルでも同じことはできる」
不意に嘲るような声音が響いた。
「だが、俺がそんなことをすると思うのか?」
「確かに、あなたはゲーム以上に私闘をお望みのようね……」
「そういうことだ。悪いが、付き合ってもらうぞ……」
すると、ゼニムは手にした槍を構えた。指から柄に光が注がれ、先端には既に緑色に光るビーム刃が発生している。これは戦いの始まる合図と捉えていいだろう。セイバーを握る手に力を入れる。
「シエルさん! 気をつけてください! 確実に来ます!」
グレイシスも注意を促す。
「絶槍騎《ぜっそうき》ゼニム・ザ・ランサー、参る!」
「ガーディアン司令官……シエル、いきます!」
武器を構えるとゼニムから瞬時に攻撃が放たれた。しかし、シエルは確信をもって来るであろう3連撃をかわし続けた。
「む、俺の連撃をいきなり見切るとは」
「トリプルロッド。かの英雄が用いた武器のひとつね。名前の通り、3連まで伸縮するのは知っているわ。あなた達がなぜこの武器を復元できたのかは判らないけど、性能はお見通しよ」
「面白い。ならば試させて頂こう!」
ゼニムは苛烈に突きを繰り返す。軌道は全てシエルの頭部に集中していたため、かわすのも防ぐのもたやすい『はず』だった。
「なに、この速度……!?」
「俺は元々槍使いでな、生まれてこの方こいつの使い方しか知らん。イレギュラー戦争もお陰で生き残ることができた」
3連撃が終わる前に次の座標へ更なる連撃が立て続けに迫ってくる。まるでほぼ残像だ。これでは防戦一方で身動きが取れない。攻撃の機会を探ろうとしていると、後ろに針の絨毯が迫っていた。またしても背水の陣である。
「かつて俺はあの『紅き英雄』に憧れた。同じ戦場を駆け、数々の戦いに勝利し、どんな事があっても必ず生きて帰って来た」
攻撃の中でも彼は会話を止めなかった。それにシエルも応答する。
「そう……あなたもかつての戦争を見てきたのね……」
「しかし、戦うほどに思い知らされるのだ。いくら俺が武勲を立てようとも、彼の前では霞んでしまうのだと」
「確かに、彼は太陽のような存在ね。あの光は強烈過ぎるわ……」
「左様。努力や成果といったものを超えている。人々に望まれているのだ、存在そのものが。だからこそ俺は『嫉妬』した……!」
「わかるわ。私もそういう人を見てきたから……」
レジスタンス時代の元司令官の姿が彼女の頭をよぎった。
「気休めを言うなッ……!」
一瞬槍の軌道に迷いが見えた。今だ! とシエルは大きくしゃがみこみ、足払いでゼニムを針の絨毯へと吹き飛ばした。
「なんとッ!?」
更に追い打ちで斬撃を見舞ったが、ゼニムはそこにいなかった。
「……油断したぞ、小娘。仮にも『紅き英雄』の力を継ぐ者……侮っていたことは詫びよう」
そう言うゼニムは槍を地面に突き立て、掴まることで難を逃れていた。だが、瞬時にシエルは次の動きを察知した。
「来る!」
予想通り槍の伸縮を利用してゼニムが大きく空中に飛翔する。
「当たってッ……!」
その瞬間をシエルは逃さなかった。
「何?!」
対空の斬撃は見事にゼニムの上半身にヒットした。再び部屋の中央に着地したものの、ダメージは隠せていない。
「くふ……やりおるな……この動きまで読んでの事だったか……」
「トリプルロッドはその特性を利用して跳ねることもできるわ。あのシチュエーションならあなたは確実にそうすると思って」
「なるほど……俺は武器を使っているのではなく、未だ『使われている』ということか……だが!」
凄まじい気迫と共にゼニムは槍の柄を正面に向けて構え直す。すると、指先が緑色に輝き、エネルギーが柄に注がれたことでビーム刃がもう片側からも発生し始めた。
両端の刃を目にしたシエルの脳裏をよぎるのはエリア・ゼロでの光景。剣帝の連撃を前に膝を屈した自身の姿を即座に頭から振り払ったシエルは、眼前の敵を冷静に対処すべく意識を集中させる。
「ここからは発展系の型《オーバードライブ》でいくぞ!」
即座に槍を振り回し始める。突きと違って軌道が大きく、両刃のため、近付くことも困難だ。当たれば致命傷は免れず、確実に2連撃をもらうことになる。
「なんとか距離を取らないと……」
「甘いわ!」
瞬間、柄の長さが伸び、更にリーチが伸びてしまった。トリプルロッドの特性を活かした変則的な攻撃だ。すんでの所で回避するも、これを続けられたら先ほどの防戦の二の舞だ。
「そう、俺は奴に『嫉妬』した。そして今もなお続いている……だが奴は歴史の表舞台から姿を消した!」
いつしかゼニムの仮面の口元は排熱作用のためか紅く歪みを帯びた表情をしており、黄色の眼光は妖しく揺れ動いていた。
「私は詳しくはないけれど、1度目の封印の事かしら……」
依然、槍による斬撃の嵐が止まらない。一歩、また一歩と後退を余儀なくされる。
「しかしどうだ? 戦場から姿を消したのに、依然として奴の影響力は衰えなかった。むしろそのせいで神格化すらされていた……」
「そうね、『英雄』ってそういう人の事を指すと思うわ……」
「わかるか……? そんな戦場で武勲を立てる惨めさが……追うことすら許されない太陽の輝きの眩しさが……」
「目標を失ってしまったのね、かわいそう……」
彼女の言葉は届いていないのか、ゼニムは槍を頭上で回転させ始める。その勢いに巻き込まれ腰のローブは吹き飛んでいき刃に触れると跡形もなく消えた。これでは風圧で舞い上げられてしまいかねない。一方で胸元はがら空きだ。
「だが、妖精戦争で俺は破壊され、目覚めた時にはネオ・アルカディアが台頭し、不自然なくらいに奴の面影は消されていた……まるで最初から存在しなかったようになァ……!」
瞬間、彼の頭部は開花するがごとく展開を始める。『つぼみ』を思わせるスリットの紋様は翠緑に輝き、辺りを電子の花びらが舞う。頭髪は彼の怒りを体現するかのようにエネルギーを帯び出した。やがて髪に宿った力は光の奔流となり、周囲へと拡散していく。その光景はさながら左右に広がる翼のようでもあった。
「まさか向こうも強化形態……?! くっ……もう限界ね……」
自らに命の危険が迫る中、相手の命を奪うことに未だ躊躇しながらもシエルは一つの決断を下す。
「システマ・オメガ、スタンバイ……!」
頭部のバイザーが降り、顔を覆う。ここからはどうなるか彼女にも判らないが、先に進むためにもできうる手は尽くすべきだった。
「俺は太陽を失うわけにはいかないんだよォ……届かないからこそ、この槍を握ってるんだよォ……! なのにィ! 復活したと聞いたら奴はまたこの世からいなくなっていやがった……」
本能的に姿勢を低く、左手を床について駆け出す構えをシエルは取った。偶然にもシステムと動きがシンクロしている。
「だから、リバースの連中を知った時は驚いたぜェ……奴を忘れられない奴らがこんなにいるなんて思いもしなかったからよォ……」
タイミングを見極めると一気に加速した。
「そして極めつけはロゼ様、だ。最初は悪い冗談としか思えなかったが、俺にとっての太陽はまた輝き始めてくれたって訳だ……」
「くらえぇーッ!!」
全力の加速と、斬撃を一撃に重ね、ゼニムは更に上半身に傷を負った。先に受けた傷と合わせて胸は×の字に切り裂かれているが、なおも武器の回転は止まる様子がない。
「だから、今度はここで槍を振るおうってな。二度と俺の太陽に手出しさせないためになァ……」
とうとうこちらに回転させた武器が振り下ろされようとしていた。
「そんでよォ……モネアみたいな独占欲が強い奴はソリが合わねぇんだわ……なんでも自分のモノにしようとしやがるからよォ……ガキのツラして戦場で『女』を出すんじゃねェ、ってよォ……」
既にシエルの身体はシステムによって勝手に動きだし、相手の首に狙いを定めていた。
だが、彼女はそれに抵抗し……
「『太陽』は、いつだって……ッ」
ギリギリの所で剣を左手に持ち替え斬撃をコントロールした。
「心の中で輝いているわ……!!」
一閃、その一撃はゼニムの両腕を斬り裂いた。武器の回転は止まることなく、腕ごと空中に打ち上げられ、やがて地上に落下すると床に突き刺さった。
「ガぁハッ……アンタぁ……強えェなァ……」
ゼニムは天を仰ぎながら倒れると、腹部から針の山に突き刺さった。
「なるほど……結局俺は自分の中に太陽を見出せていなかったみたいだぜ……」
彼から意外な言葉が漏れたので、システムが解除されたシエルも自然と応答した。
「本当は『嫉妬』じゃなく『尊敬』したかったんじゃ……?」
その言葉は思いがけず彼の本心に突き刺さった。長年積み重なった想いではあるが、その根元は決して負の感情ではなく、純粋な『憧れ』から来るものだったことをようやく思い出せたのだ。
「かもしれねェ……あの人は本当に強くて……格好よかった……」
目を細めながら憧憬の念に浸った後、彼はシエルに顔を向けた。
「いいぜ……この俺のトリプルロッド、持って……いきな……」
言い終わるとゼニムは気絶した。あくまで上半身への斬撃と腕だけ切除してダメージは最低限に抑えたので、爆発など、命に関わることは無いだろう。
そして、触れた武器を通して記憶《メモリー》が流れ込んでくる。
◆SCENE5
かつてその戦士は戦乱の中にいた。
槍を使うことを得意とする彼は止めどなく発生するイレギュラーとの終わり無き円舞曲《ワルツ》に対し、ひたすらにあがくことで生き残ってきた。
戦争、平和、革命とはいったもので周期は確かに存在する。しかし、その傍らには常に『紅き英雄』の影があった。どんなに成果を挙げても、必死に任務を果たしても彼の存在の前にはたちまち霞んでしまう。そんなことが終わり無く続いていた。
この3拍子が支配する世界の中で彼はやがて英雄に嫉妬した。同時に自らを酷く惨めに思った。力量の差なのか、武名の差なのか、とにかく埋まらない差は忠実に職務を守る戦士としての心を確実に蝕んでいった。
そんな中、『紅き英雄』が仕留め損ねたイレギュラーを彼は撃破した。しかし、周囲は『紅き英雄』を称賛、彼の功績もそのお陰なのだと揶揄した。更に英雄は、それらを気に留める様子もなく次の戦場へ向かっていったのだ。
残された彼は苦悩した。なぜなら撃破したイレギュラーは無傷だったのだ。つまり、英雄は戦局に関与していない。確かに自身の力で撃ち取ったはずなのだ。しかし英雄が存在するだけで数多の成果が吸われていく。そんな感覚に陥っていた。
英雄達の存在は毒だと彼は思い至った。その名声の裏に自分のような存在が犠牲となり、その立場を得ているに過ぎないのだと。そしてその事実に甘えて見てみぬフリをしているのだと。
だがそんな折、メディアを通して回ってきた『紅き英雄』の言葉が彼に更なる追い討ちをかける。曰く、正義の味方でもなければ英雄と名乗ったこともないそうだ。
この事が彼の辛うじて残っていた自尊心を粉々に砕いた。そんな理不尽があるものかと。強くて、優しくて、オマケに高潔で。自分の立場も気に掛けずひたすらに世のため人のためにイレギュラーを狩る存在であると。
悩み続けた彼にとうとう終わりの日が訪れた。ウイルスによるイレギュラー化だ。耐性のせいか通常より発症が遅くなったようだ。
当時、既に時代は妖精戦争に突入していたが、作戦を中断して周囲の仲間を一瞬でスクラップにすると、彼は仲間のものも含めたありったけのサイバーエルフをインストールした。そしてその身に沸き上がる衝動に身を委ねて『紅き英雄』を目指して駆け出した。
今なら彼を倒せるのではないか? 自分のような名声の踏み台にされた存在のために一矢報いることができるのではないか? そんな思いが彼を支配し、混戦の中で『紅き英雄』の隙に乗じて襲い掛かることに成功した。
しかし、初撃はかわされ、同時に呆気なく一刀両断された。
英雄は、全ての動きが洗練されていた。
上半身と下半身を切り離され、地面に倒れた彼を戦争の影響で生まれた酸性雨が襲う。卑怯な手段で尚且つ返り討ちにあってしまった事実。これ以上なく惨めで、一撃たりとも許されなかったその強さにますます嫉妬した。戦ってみて初めて英雄の真価というものを思い知ったのだ。
しかし実際は、初撃をかわされたものの、その槍の衝撃だけで『紅き英雄』の装甲に確実にダメージを与えていた。それはその後の戦いにも尾を引く結果となったのだが、彼の意識はそれを知ることはなくそのまま途絶えていった。
その後、秘密裏にボディとAIは収容され、ウェクトの手でゼロ・リバースの一員としてその無念は再び世に放たれることになる……。
一通りの記憶を覗くと武器を握り締めながらシエルは意識を取り戻した。体感に反してかなり短い時間だったようだ。
「ありがとう。頂いていくわ。いつか、同じ『太陽』が見られるといいわね……」
そう言い残すと制御パネルに向かい、ロックを解除したシエルは次なるSEブロックへと立ち去るのだった。
◆SCENE6
数日前……アルエットはヴァルハラの中央シャフトの上部に囚われていた。塔のようにそびえ立つその場所はロゼを始めとした組織の中核となる存在のみが出入りを許されている。
照明も暗く、窓も紅黒いスモークがかった状態のため、ひたすらに暗い空と雲が見えるだけだった。
定期的にエネルギーの供給はされるものの、最低限の量のため、仮にここから出られたとしても脱出するような元気は無い。あくまでも『人質』としてのみ生かされているような状況だ。
「はぁ……シエルおねえちゃん……」
彼女はため息をつきながら独り言をもらした。これで何度目だろうかと自問する。今はシエルの救出を待つしかないからだ。
〈もう、気持ちはわかるけど弱気になっていちゃダメよ。敵の思うツボなんだから……〉
一緒に捕らえられたパッシィが話しかける。ただし鳥籠のような装置に閉じ込められてひたすらに解析をされている状態だ。ちなみにぬいぐるみは検査のため、取り上げられてしまった。
「うーん、それにしてもパッシィが目当てなら私は逃がしてくれてもいいと思うんだけどなぁ……」
このようなやり取りは幾度と無く繰り返されていた。敵の士気を削ぐもの立派な作戦だが、見習いオペレーターを捕まえて何か情報を得ようとしてもそれほどのものにもならないはずなのだが。
〈アルエット、ロゼのねらいを考えたことある?〉
「全然わかんない……」
〈ずばり、あなたよ……〉
「え? どうして?」
〈あなたがいればシエルは必ず助けに来るわ〉
「そんなの、当たり前じゃない」
〈だからよ、あなたを捕まえて焚き付けてるのよ。もう一度、今度こそは本気で戦ってもらうために〉
「……そんなことあるかなぁ……?」
〈あなたは自分の価値を低く見積もりすぎよ〉
「さすが、ご名答だな」
〈でしょう? ってえぇ~ッ?!〉「えッ?! なんで?」
なんとそこにはロゼが立っていた。いつの間にか部屋に入っていたようで、少しばつが悪そうだ。
「すまない、気配を消すのはつい癖でな……」
〈確かに『彼』も忍者部隊の隊長だったという逸話も……〉
「だが、言わんとしていることは正しい。我は彼女と再び相見えるためこのような回りくどいことをしている。そのためとはいえ、2人には窮屈な思いをさせてしまって申し訳ない……」
「えぇ……あぁ……はい」
〈あら、意外ね〉
待遇とは裏腹にロゼの態度は非常にへりくだったものだった。
「実際本意ではないのだ……小さな戦士君、何か望みがあれば遠慮無く言ってくれ」
「えっと……わかりました、とりあえずソファーがほしいです!」
「承知した。ただしエルフ君、キミの存在は我……いや私のためにどうしても必要なのだ。無作法ながら解析をさせて頂いているのは部下の意向もありそのためだ」
〈ふーん……って既にこの中に入れられてるんですけど!〉
「私は組織を統べるものだ、今はまだ倒れるわけにはいかない。そういう時期なんだ。私の持つロゼットストーンはまだ完璧ではない……制御が非常に難しいのだ」
〈まあいいわ。あなたが変身した時の異常な出力、あれは意図したものでは無いってことね〉
「エルフ君、キミはリバースメタルの制御中枢に使われていたね。それを見て確信した。1人ではなく2人で変身中の処理を分散させることで負担を軽減できると。あの力はそれほどまでに厄介だ」
〈そもそも無理があるのよ……『聖遺物』はいわばレプリロイドそのもののデータ量に相当するわ。それを1人で制御しようとしたら2人分の処理が必要になる。あなたのようにそもそも本体のスペックが高ければその負担は更に大きくなるわ〉
「やはりそうか……データ解析自体サイバーエルフの専売特許だ。レプリロイドやそれに類するものと相性が良いのは理解していたが盲点だった。今はサイバーエルフも貴重だ。新たに生み出す技術も一部に残るのみで、かつてのアルカディア時代のような隆盛は望めまい……」
「えっと……ロゼ……さんでいいですか?」
恐る恐る、といった様子で、アルエットは尋ねる。
「構わない」
「その……お体よくないんですか? 聞いてると無理に変身しているように感じました……」
「まあ……そんなところだ。ロゼットストーンは未知数なところが多い。下手に扱えば暴走もありえる。こちらも万全な状態で再びシエル嬢と雌雄を決したいのだ」
「あの、なんでおねえちゃ……じゃなくて司令官と戦うことにこだわっているんですか?」
「なるほど、確かにその通りだな。私闘のために多くを巻き込んでいる。理解が追い付かないのは当然だろう」
ロゼは顎に手を当て、考える姿勢を取る。思考自体は一瞬のため、あくまでも彼女と対等に会話をしているという一種のポージングにすぎない。
「組織としては新たな統治体制を世に築くため。個人としては『紅き因縁』に決着をつけるためだ」
「因縁……?」
「『紅き英雄』の後継者としてどちらがふさわしいかハッキリさせるためだ。バカバカしくはあるが、私の存在意義に関わる以上、捨て置けない事情でな……」
「あの人……はまだ帰ってこないけど私はずっと待ってます……だから代わりになろうとする人がいるのもちょっとわかります。いつ帰ってきてもいいような世界にしておきたいから……」
「!……そうだな。全くその通りだ。彼が舞い戻る事もありえよう。その時に備えて世界を平定しておく必要がある」
「ロゼさんはあくまで平和を実現したいのね。私、勘違いしていたかも……」
「今の世のあり方はまさに乱世だ。過去には世界で戦国時代というものが幾度と訪れたが今回もまた近い状況だ。アルカディアという大きすぎる力が滅びたからこそ、小さな力がうごめくのは必然。その小競り合いを早期に終結させる必要がある」
「そうですね……そのためには『力』で抑える必要があるってことなんですね……」
「シエル嬢には申し訳ないが、彼女のやり方では時間が掛かり過ぎる……私は各地の集落が纏まるまでに流される血が多くなるのを防ぎたいのだ……」
「でも、皆で話し合う事もできると思います……!」
「しかしながら各々の勢力にも立場や企みがある。それが満たされない限りは止まりはしない……特に人間とレプリロイドでは今や断絶が大きい……」
「それは……乗り越えられないのかな……」
「時間を掛ければいずれは……しかし、その時間こそが問題なのだ。だから私は……」
〈はいはい、そこまで~! キリがないったらありゃしないわ。それぞれ目標は近くても手段が違うということなのだからそこは受け入れましょう。で、今更だけどなんであなたはここへ来たの?〉
「……ちょっとした気まぐれだ。多分、キミ達と話してみたかったんだろうな。同じ英雄を志しながらも真逆の考え方を持った者同士……刃を交えない方法で……」
真剣な眼差しでアルエットを見つめながら彼は言葉を漏らした。
「……ロゼさん、ひょっとして……」
「残念だが今日はここまでだ。また様子を見に来る。ソファーは早速部下に運ばせよう」
踵を返すとロゼは静かに部屋を出た。とはいえ今度は気配を消さず足音が響いている。
きっと彼は思ったよりも冷たい性格では無いのだろう。戦士としての振る舞いも信念があってこそで、自らが戦闘用レプリロイドとして生み出されたことで武力行使に及ぶしか有効な手段を導き出せなかったのかもしれない。とにかく不器用で人のために常に行動している。まるで『彼』のようだという想いがアルエットによぎった。
ゼロ・リバースという名前は本当にその名を表すものなのかもしれない。そんな予感を抱えながらアルエットはひそかにソファーの到着を待ちわびていた。
【第3章:絶望の槍 完】
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note限定 あとがきコーナー
本作を企画し、執筆させて頂きました。Hi-GO!です。
記事をご購入頂いて最後まで読んで頂き、まことにありがとうございます。
ここからはnote限定のあとがきコーナーになります。
冊子版には編集後記というものがあるのですが、そちらは内容そのものより、書籍の編纂まわりの事情を書きましたのでこちらではもう少し内容に沿ったものを書きたいと思います。
◆2024/08/08……あとがきコーナーにゼニムの過去の姿を追加
色々ギリギリでしたが第3章のリリースまで達成できました……!
単純に夏コミから冬コミまでの期間が短いので、どうしても作業時間が圧迫されてしまう事が原因ですね。
と、言い訳はここまでとして、全6章から全10章へと変更になりました。
この第3章も本来予定していた内容の半分となります。本誌にも掲載したのですが、単純にボス戦×2を1つの章にまとめた事によってボリュームがありすぎることが原因でした。
やはり文字数が冊子などのパッケージングのための規定量をオーバーしてしまい、当然挿絵も倍になるので色々と無理が生じるのは目に見えておりましたので潔く半分に分割することとしました。(実は元々1章ずつに独立させる予定であったので単に元通りになったともいえます。)
以下が今後の制作における章分割の方針となります。
第3章→第3章と第4章に分割
第4章→第5章と第6章に分割
第5章→第7章と第8章に分割
第6章→第9章と第10章に分割
このような形で、全話お送りするのにここから倍の時間が掛かってしまう事が誠に申し訳ない次第ですが、どうぞお付き合い頂けましたら幸いです。
さて、3章についてのお話ですが、今回のボス、ロゼ直属の守護騎士『リバースナイツ』の『絶槍騎ゼニム・ザ・ランサー』について、語っていきます。
最初に出会うボスなので、ゼロ要素をかなり意識しています。体型や髪の毛の存在、戦士(ハンター)であった過去はもちろん、二つ名含めてやたら『ゼ』がつくのもそのためです。(命名規則はZXのボスというか、おそらく元になったであろうトライガンからですね。クラスの概念はfateも参照しています。)
前提としてZRはその名前の通り『レクイエム=葬送』を意識しておりますので、ボスのモチーフはゼロを表すような花言葉を持った『紅い花』にすることは企画段階で確定していました。そこへ更に追加要素としてゼロの用いた武器を持たせることで個性付けを意識しました。
※本作ではゼロの武器を『光る救世の武具《セイバーウェポン》』と呼称しています。
指の先端が緑で光っているのは武器にエネルギーを送り込むイメージですね。本来ゼロ用の装備なので規格を最適化した処理の結果のようなニュアンスです。
そのような感じで、基本的にはエックスの要素を分解再構築した四天王と同じコンセプトになります。違いはDNAクローニングではなく、Z-FACTOR係数という独自の指針で選出されたレプリロイドが元から存在するということでしょうか。
ゼラニウムをモチーフにしたことは『ゼ』要素を意識した訳ではなく偶然ですが、花言葉が『君ありて幸福』『尊敬』『真の友情』などで良かったので採用したことが功を奏しました。頭部はトリプルロッドとシルエットが被るように蕾の形状にして尖らせる事で完成しました。
ちなみに対象へ柄が伸びていくトリプルロッドを装備させたのは彼のメンタリティを踏まえ、届かないもの(ゼロ)へ追い付こうと手を伸ばし続ける部分とのシンクロを意識しての事です。
また、オーバードライブは元々予定のない要素でしたが、シナリオを詰めていくにあたって、ガンヴォルトシリーズのようにボスの戦闘中の形態変化はあった方が盛り上がると思い、採用しました。形状的に武器はツインブレードにしやすいので比較的すぐに変化の方針が定まりましたね。
具体的なデザインにあたってはZXとの繋がりも考えて『O.I.S.』からの引用を髪パーツなどの形状で意識しつつ、ゼロシリーズのデザイナーでもある中山徹さんの『追加積層で強くなるエックスと異なり、ゼロは脱ぐほど速くなって強くなる』というコンセプトを継承しました。(実はロゼとは真逆なんです)
花が開花する=覚醒する、というギミックはゼニムの場合、頭部が蕾の形なのでマッチしたことは幸いでした。服は脱がせつつ髪をビームの羽に見立て、頭部はパーツがスライドして発光することで貧弱になりすぎず、バランスが取れたかなと思います。基本的には排熱しているということで。
話は変わってゼニムの過去の姿ですが、本誌のデザインパートでも話しそびれていたのでこちらにて語らせて頂きます。
初の守護騎士メンバーの過去の姿(変身前)なので、それなりに難産でした。と、いうのも、ロクゼロの記号を備えつつも、過去のキャラクターと被らない配色やデザインラインの提示が求められたからです。ちなみに頭部のデザイン自体は比較的すんなり進行します。問題はボディです。
レジスタンスや人間の格好に寄せすぎると、モブキャラ感が強すぎますし、一般のイレギュラーハンターとしての戦士感が薄いです。かといって、四天王のようなラインは特別なものなので、そちらに寄せると強キャラ感が出過ぎます。そもそもゼロがシンプルなので、情報量の入れ方と色の制限などある程度工夫する必要もありました。
結果、ZXのデザインラインを少し引っ張ることにして、主に肩にボリュームを持たせることとしました。理想としてはエルピスをやや引き算した形なので、良い落着点に落ち着いたと思います。特に腰部から腿にかけての三角ブロックの積層がこれまでのキャラと差違を引き立てているかなと。
※ちなみに、本作でのデザインワークで一番やりたくないこととして、Xシリーズのデザインラインをそのまんま引っ張ってくることです。これだけは回避したい。それをゼロ風に中和したり、意匠として意味のある落とし込みができなければならないと常に考えています。
更に余談ですが、ボス部屋のデザインも挿絵がある以上必要となり、また、ステージの構造などもメンバーに向けて中地する必要もあり、ヴァルハラのブロック単位の見取り図とボス部屋(制御室入口)デザインを行う事となりました。
特にボス毎に部屋の特色は出したかったのでゼニムの場合は部屋の隅に針を配置してデスマッチ感を演出しています。感覚的にはマグマード・ドラグーン戦などが近いでしょうか。
また、部屋のシャッターのデザインも解釈に悩みつつ、今回は真横からの断面図的なニュアンスで描いています。制御パネルは侵入者対策も兼ねて地面に格納できる仕様です。(戦闘開始時に格納されたり、ボス撃破後に戻ったりすると演出的にもいいですね)
後はようやく出せたゼットールです。作風にマッチするか不安もありつつ、しかしゼロの生首がたくさん転がっていたらそれはそれで怖いので、心理的圧迫感を優先して採用しました。というかほかに象徴になるザコが浮かばなかった事も大きいのですが。
前回から登場したゼットルーパー。こちらもまた本作を象徴するザコとして今後の活躍にもご期待ください。(ほとんど斬殺されている気がしますが)
額のクリスタル部分をモノアイに出来たことがデザインをシンプルにまとめる上で一番の功績ですね。髪の毛はパイプとして処理出来て一安心です。どうしてもゼロがシンプルなので彼より情報量を上げないようにしなければいけない制約が勝手に生まれて大変でした。
セイバーはホンモノよりは弱く見えつつも、もしかしたら形態変化するかもしれない…的なニュアンスを残しています。実際なんか回転したり伸びそうですよね。(ほぼ形状はクワガストの腕でもあります)
設定的にはゼロ・リバースの信奉者が量産型のリプロゼットストーンで変身している事になっています。(ただし使いきりで解除できない。この辺はボスも同じです。)
そんなわけで、改めてパンテオンがいかに秀逸なデザインか思い知らされる結果になりましたね。私にできるのは所詮パッチワーク作業であると思い知らされます。
全体的にデザイン談議になりましたがお許しください。元がそちら側の人間なので、どうしても絵で考える性分は中々捨て去ることが難しいようです。
それでは次回は本編第4章のあとがきでお会いしましょう!
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