PrejectRCL ZET REQUIEM:NOVELIZED 01-紅を継ぐ者 小説本文パート
PROJECT RCL ZET REQUIEM:NOVELIZED
第1章:紅を継ぐ者
●文:Hi-GO!
●執筆補佐:めたるす/ゾンリー/らいおね
●挿絵:Hi-GO!/補欠/ててん/トナミカンジ
▼冊子版の通販▼
※冊子版限定で『キャラクターデザイン資料』や『用語解説』
『ゲストイラスト』等のコンテンツが付属します。
※第1章以降は以下になります。
※本作の制作経緯については別途記事をご用意いたしましたので、気になる方はご一読お願いいたします。
キャラクター紹介
▼シエル
▼ブロッサム・シエル
▼アルエット
▼パッシィ
▼ウェクト
▼ロゼ
▼グレイシア
!ご注意!
こちらは
【PROJECT RCL ZET REQUIEM:NOVELIZED 01-紅を継ぐ者】
の小説本文パートのみの記事になります。
挿絵はグレースケールから挿冊子版共にフルカラーとなりました。(2023/12)
『キャラクターデザイン資料』や『用語解説』『ゲストイラスト』等は冊子版のみのコンテンツとなりますのでご了承お願いいたします。
※note限定のコンテンツとして『あとがきコーナー』が付属します。
※EXからカットしたシーンの追加に加え、加筆修正と挿絵の追加を行っております。(EXの同パート部分に対し、約2倍での追加となります。+新規挿絵:6枚)
※誤字、誤表記、ご編集やご感想などお気づきの点が御座いましたら是非下記お問い合わせフォームよりご連絡をお願いいたします。
第1章に関しては『これまでのあらすじ』の一読を推奨いたします。
【データの閲覧に関する諸注意】
FILE:Ⅰ
「ガーディアンのシエル……いくら紅き英雄の意思を継ぐ、といっても所詮その程度なのね……」
金髪のポニーテールの少女に対し、刃を向けながら二つに結った黒髪の少女は呟いた。火の粉が舞い散る中、彼女が纏う純白の衣には煤一つ付いていない。片や金髪の少女は地面に膝をつき、傷を負った姿で、それは両者の力量差を明示しているかのようであった。
「そんなッ……! 全く敵わなかった……」
今、このエリア・ゼロと呼ばれる一帯は業火に包まれ、所属不明の武装集団によって取り囲まれていた。
住民の避難を優先すべく、陽動を一手に引き受けた少女のシエルは対峙した敵の強さに驚いていた。強い、というよりも次元が違う。背負っている覚悟、というべきなのだろうか?
対峙といってもほぼ刃を交えることなく、猛攻に対処する内に気付けば地面に膝を付いていた、というのが現時点での彼女の認識だ。
「あなた達は一体……?!」
白い少女は二つに結った黒髪の片方をかきあげると、刃を突き立てながら溜め息をついた。
「少なくとも今のあなた達にはこの世界は預けられないわ……」
他にも確認出来るだけで数名の侵入者が認められたが、もし一人一人が彼女ほどの力を有していた場合、今の彼女ではとてもではないが太刀打ちする術がない。
そして、現状の被害規模を見るにその確率は非常に高い。
「この世界……? どういうこと……?! 」
そもそも戦乱が落ち着いた世でこのような武装集団が存在していること自体が驚異だった。かつて戦ったネオ・アルカディアの戦士達も総じて屈強だったが、敵はそれに対抗できるだけの力を秘めている。
白い少女が再び口を開く。それは、彼女にとって思いもよらない言葉だった。
「我々は……『ゼロ・リバース』。あの紅き英雄の信奉者である……! 今からこのエリアを我が軍の統治下とさせて頂く……」
一体なぜこんなことになったのか……? 彼女は記憶を振り返る。
◆SCENE2
エリア・ゼロの開拓に合わせ、私設自警団『ガーディアン』が設立されたことに伴い、レジスタンスは解体され、かつてのメンバーは旧レジスタンスベースの維持と管理を委託されていた。
そうしてエリア・ゼロの一角に停まっている飛空艇『ガーディアンベース』内部の研究室で、今日も科学者のシエルは新技術の研究に打ち込んでいた。
ガーディアンベースというのは、自警団の活動のために用意された巨大な空飛ぶ船のことだ。船内部には司令室兼ブリッジに始まり、各メンバーの私室に治療室や貨物室、そしてこのシエルの私設研究室に至るまで、あらゆる設備が揃っている。すべて船単独でのミッション遂行をサポートするためのものだ。
また、ベースで各地を飛び回る最中に偶然発見された『サクラ』という植物の街道への植栽と通常よりも早い栽培にも成功した。そして今、開花真っ盛りの頃合いで暖かい陽気であった。
エリア・ゼロ自体の復興度合いだが、当初は風車をはじめとする木造の建築物が景観の大半を占めていたのに対し、ここ数年の発展を経て、人工素材を取り入れた施設の建造にも着手し始めている。今では民家レベルでも本格的な設備や機材が利用可能なまでに復旧が進んでいた。
戦乱の後の荒れ果てた世の情勢を危惧したシエルは、かつての災厄で猛威を振るったマザーエルフの座標を定期的に確認し、彼女の力が悪用されぬよう、安全確認も兼ねて保護観察をしていたが、その反応が最近消失してしまった。
更に、旧レジスタンスベースとの連絡が途絶えたとの連絡が入ったのは、チームで調査を開始しようとした矢先のことだった……。
◆SCENE3
「ウェクト博士、モデルBのアップデートプランを確認してもらえる? 連絡がつかないみんなを探すためにも一刻も早く仕上げてしまいたいの」
白衣に身を包んだシエルの言葉を聞いて立ち上がったのは最近研究に加わった『ウェクト』という、同じく白衣を纏った長い白髪の初老の風貌をしたレプリロイドだ。頭部には分厚く黒いバイザーをしており、その表情を窺うのは難しい。
「なるほど、このプランなら今までの出力を更に越えつつもエネルギー消費を抑えることができますな。さすがシエル嬢……!」
どうやら彼は稼働時間も相当なもので、なにやらネオ・アルカディアの創設時の出来事も直接見聞きしているという。謎の多い人物だ。
「しかしそうですな。このプランのままですと、全体のエネルギーの持続時間の問題が懸念されますな。何か対策は?」
「痛い所を突かれてしまったわ……私もその点は改善案をまだ練りきれていないの。今のここの設備の限界もあるけれど……」
「心配ご無用、改善案ならもちろんワシの方でご用意させて頂いておりますとも。どれ、ちょっと失礼……」
今二人がやりとりしているのは、『リバースメタル』という装置についての議論だ。既に実用化の段階にも入り、実戦投入もされたものの、改善点は未だ多く、その最適化プランを巡っての話し合いが日夜行われていた。
このリバースメタルはかつての英雄達の力を擬似的に再現し、各地で勃発する紛争への抑止力として投入するための装備として研究が開始された。しかし、現存しない英雄達はデータ不足が著しく、進捗も思わしくなかった。
そこにある日ウェクトがシエルを訪ねてきたことで状況は一変した。なんとあの紅き英雄のオリジナルボディの遺物の発掘調査に成功したという。かつて『オメガ』と呼ばれた英雄の遺物は『聖遺物』と名付けられ、研究成果は飛躍的に向上。リバースメタルの試作機は実用段階に達し、今に至る。
「ウェクト博士、おかげでそろそろ実証実験を開始できるわ」
「承知した。ではリバースメタルを……」
そう言ってウェクトはまるで『サクラ』のような色と形をしたリバースメタルをシエルに差し出す。これからリバース・システムの検証、すなわち戦闘に特化した形態への『変身』を行うことになる。
「ありがとう」
シエルはリバースメタルを受け取った右手を前に突き出し、左手を添えて構えた。
〈適合者確認……〉
〈リバース・システム起動開始……〉
〈トランスフィールド展開……〉
〈システム・スタンバイ〉
リバースメタルから次々と女性の声でシステム音声が放たれる。
「よし……! いきます! リバースッ……オンッ!!」
シエルが叫ぶと、リバースメタルを中心に彼女の周囲が眩しく光り、エネルギーの力場が形成され、ほとばしる粒子がラインを描いて宙を舞う。程なくして彼女の体は紅い花びらを思わせるドレスのようなアーマーに包まれていた。それはさながら、あの紅き英雄を彷彿とさせる。
彼女の変身した姿からこのリバースメタルはモデルB《ブロッサム》と名付けられている。実際、花弁を頭髪にした女性のような形状をしているからだ。
「よし、メタルとボディの同調率は問題なし。出力は最大の7割程度ですかの。ところで、お体の方はいかがですかな……?」
実は見た目こそ人間とほぼ区別がつかないが、シエルは今、機械の体で過ごしている。まず、エネルギー機関『システマ・シエル』の発展系の『システマ・ブロッサム』という大規模エネルギー発生装置の開発にあたり、『マザーエルフ』のような特別なサイバーエルフを組み込む必要があった。そして、その代替案を模索していたところ、生きた人間の肉体をコアとして利用できることが判明した。
「ありがとう、大丈夫よ」
この事実に対し、彼女はレプリロイドの肉体に人格を移し、『ヒューマノイド』化することで、自らの肉体を差し出し解決を図ろうとした。将来的に人とレプリロイドの格差を埋めようという願いもあり、かつて人間であったドクターバイルを機械化したものと同じ技術を用いて人の魂を機械に移しているような状態である。
「むしろ睡眠や食事もいらなくなったし、お陰で無理や無茶が前より効くの。今はこの体になってよかったと思えるわ」
加えて、彼女はかつて『蒼き英雄』の複製体を手掛けたこともあり、そのノウハウはヒューマノイドボディの製作に大いに恩恵をもたらした。モデルBの各部にもその意匠の影響が散見される。
「なにより今すぐにでもみんなを探しにいきたいしね」
こうして、人間としての彼女の体はガーディアンベースに搭載されたシステマ・ブロッサムのプロトタイプにエネルギーコアとして搭載されている。この技術は人とレプリロイドがいつか本当に平等かつ対等に並ぶための礎でもあり、同時に人間を次の段階へと導く進化の鍵でもあるため、生体と機械のボディの双方からできるだけデータを取りながら移植の精度を上げたいというのも実情だ。
「それに、『本体』の方とのリンクは問題ないわ。とても安定してるの……」
そして『ブロッサムの実情は表立って発表できるシステムではない』と判断したシエルによって、128桁の暗証コードを備え、その理論は封印されている。ちなみにガーディアンベースに搭載されているシステマ・ブロッサムはヒューマノイド化したシエルとリンクしており、万が一破壊及び停止した場合、機械の体も機能停止してしまうため、あえてベース内に設置されている。
「ふむ……ワシが気にしておるのは『変身』の負担も含めてのことなんじゃがな……」
シエルは機械の体だからこそ可能なリバースメタルによる戦闘用の形態変化『変身《リバース・オン》』現象の披検体としても、自らの体を差し出しており、同時に私設自警団のガーディアンの司令かつ、切り込み隊長としても日々活躍している。
「お主は慣れない体で、しかも更にあの『紅き英雄』のデータを反映させたリバースメタルによる変身までやってのけておる……今までは騙し騙しじゃっただろうが、流石にそろそろ体を休ませんと、気が気でなくてじゃな……」
〈そうよ、シエル! 目を離すとすぐ無理ばっかりするんだから!〉
突如リバースメタルの内部から声が上がった。
「パッシィ……!」
「ほれ、彼女もこう言っとるぞ?」
パッシィというのは、リバースメタルの中に格納されたサイバーエルフで、かつて紅き英雄を復活させるため、その身を犠牲にして消滅したが、なんとウェクトが遺物と同時に持ち込んだものだ。本人曰く旅の中でたまたま見つけたとのことではあるが現在はリバースメタルのサポートAIのような役割を果たしている。
実際、先ほどの変身時のシステム音声も彼女の声で再生されている。
「言われてみればここ最近関節部の動きや、脚部の動きのバランスにズレは感じるわね……あなたの言うとおりメンテナンスが必要かもしれないわ」
〈ほら! 言った通りじゃない!〉
本来サイバーエルフは、その能力を発揮すると消滅してしまう有限的な電子生命体であった。しかし現在では技術の刷新によって継続的に能力を発揮できるようにもなり、また一方で、レプリロイドにとっての『魂』のような側面が存在することも研究の過程で明らかになっている。
「ワシもこれでも永い間レプリロイドをやっておるからのう、今のお主よりその体のことは解ってしまうんじゃよ。どれ、今日はワシが面倒見るとするかの」
「ありがとう……申し訳ないけどお願いするわ」
〈うんうん、ウェクトの言うとおりね。機械の先輩の言うことは聞いておくものよ〉
シエルもまた、人の身でありながら『魂』の部分をエルフ化して今のレプリロイドとしてのボディに移植しているというのが実態である。とはいえ、体と精神の同調はたやすいものではなく、そういった面でも消耗は免れないのが現状だ。
「リバースメタルの調整ならワシにまかしておけばよい。たまには何も考えず、ゆっくり眠るのも大切なんじゃぞ」
「わかってはいるけど、中々難しいものね……」
〈まだマザーエルフの反応が消えたことが気になってるの?〉
「ええ……レジスタンスベースからの定時連絡が途絶えたのもそれからなのよ……」
「マザーエルフの調査に今まさに出掛けようというタイミングじゃったからの。出端をくじかれたとあっては気の休まらんのはわかる……じゃが……」
〈さすがに休まなきゃダメだよシエル。いくら睡眠がいらない体になったからといって限度はあるんだから!〉
「そうじゃ。なにせレプリロイドはそもそも人間を模して作られているのじゃからな。スリープすることで頭の情報の整理も必要なんじゃよ」
〈はいはい終わり! それじゃシエルおやすみ。私も休もっと!〉
こうして変身を解いたシエルは半ば追いやられるようにボディのメンテナンスを兼ねてカプセルで眠りに入った。
彼女達がなぜリバースメタルの最適化を急いでいるのか、それは新たなる驚異の可能性が浮上したからである……。
◆SCENE4
バイル事変の折、知り合った『ネージュ』という人間のジャーナリスト。今はガーディアンの一員として諜報活動を務めているのだが、彼女の調査報告によると最近エリア・ゼロ以外の集落に異変が起きているという。
謎の空中要塞による各地の制圧……誰が一体どのような目的で遂行しているかまでは掴めず、現場には反転したZのマークが何かしらの形で残されていたという。そして、少なくとも近い内にエリア・ゼロへの侵攻が行われるのはほぼ確実と見られていた。
不幸中の幸いだが、今襲撃を受けている集落の抵抗が続き、まだ陥落するまでには時間が掛かるということで、その残り時間をガーディアンの武装強化に充てることとなっている。既に装備の新調は済み、残すはリバースメタルの調整のみだった。
元々ネオ・アルカディアの残党との小競り合いも絶えない状況だったため、戦力の強化は避けられない事態ではあったが、ここ最近の謎の新勢力の台頭に加え、マザーエルフの反応消失と、旧レジスタンスベースからの連絡も途絶えたことでシエルは忙殺され続けていたのだ。
そんな中の、束の間の休息である――――
FILE:Ⅱ
…………混濁した記憶が甦る。
「――――あの…ごめんなさい」
「――――コピーのエックスを作ったのは私だから…だから」
「――――責任なんか感じる必要ない……」
「――――お前はみんなのためを思ってやっただけだ、あとはオレに任せろ」
「――――ありがとう…私、あなたに出会えたことを本当に感謝してる…」
「――――ネオ・アルカディアなんて倒せなくたっていい…あなたさえ生きていてくれたら…」
「――――死なないで、お願い…ゼロ……………」
◆SCENE2
爆音が静寂を引き裂いた。
「起きて……! シエルおねえちゃん起きて……!」
まどろみの中、少女の声が響いた。
「ん……アルエット……?」
カプセルの中でシエルが目を覚ますと、助手のレプリロイドのアルエットが叫んでいた。元々レジスタンスを結成する過程で保護した妹のような存在だったが、今では彼女の研究やガーディアンの活動も手伝ってくれている頼もしい存在だ。
「大変なの、いきなりエリア・ゼロが攻撃を受けてるの……!」
「何ですって……!」
その言葉でシエルの意識は一気に覚醒した。恐れていた事態がついに訪れたのであった。そしてアルエットも含め、戦う力の無い住人達の避難を最優先すべく思考を巡らした。なにより敵の戦力と目的の確認が重要だ。そのためには敵の陽動の必要がある。
「アルエット、聞いて。今から私が敵を引き付けて囮になる。その隙にエリア外の避難地点までみんなを誘導してあげて……!」
「そんな……いくらおねえちゃんでも一人じゃ無理だよ……」
〈大丈夫よアルエット、私もいるんだから安心して!〉
パッシィも目を覚ましたのかアルエットを元気付ける。ちなみに彼女は普段はアルエットお気に入りのぬいぐるみを生活用ボディとして用いており、端から見るとぬいぐるみと会話をしているシュールな光景だ。
「その通りよ。今エリア内のメンバーとも連絡がついて、状況が見えてきたわ。敵はエリア全域でも5、6体程度。派手に火をつけたり破壊をして回っているけど、現時点では脅しの範疇ね。本気で攻撃してる訳ではないみたい」
「それじゃ、ここに来たのは破壊以外で何か目的があるってことなのね……」
「そうね。だからこそ、早期に体制を立て直す必要があるわ。今、他のガーディアンのメンバーも各自囮になって陽動してくれているみたい。これなら……」
通信端末のログから一通りの状況を把握したシエルは、自分も陽動に出ることを表明し、事態に対しての指示も一通り促すと、後は各自の判断に委ねるとした。
「それじゃあアルエット、気を付けてね。私も極力無理はしないようにするから、避難の誘導が終わったらこのガーディアンベースで待機をお願い」
〈アルエット、一人でもがんばるんだよ……! それじゃ、私はシエルをサポートするからもういくね!〉
そういって、パッシィの意識はリバースメタルの内部へ移動していった。
くたびれたぬいぐるみを抱き上げ椅子に座らせると、アルエットは目線を合わせるようにその場に座り込んだ。
「おねえちゃん……」
◆SCENE3
ガーディアンベースから飛び出すと、目の前には戦闘型の汎用ロボット『メカニロイド』が待ち構え、あたりに火を放っていた。彼女は持ち出したリバースメタルを構え、再び変身する。
「いくよパッシィ!」
〈まかせてシエル! 適合者確認……!〉
「リバース・オンッ!」
紅いドレスに身を包まれると、彼女は転送された白い柄を握り、緑色に光る刃を展開した。いわゆる『光学兵器』に該当するそれは、紅き英雄がかつて振るっていた伝説の十の武具のひとつ『セイバー』を復元、扱いやすく出力を改良した代物だ。
セイバーは並のレプリロイドであれば手にしただけで腕が吹き飛ぶレベルの代物なので、安全性を考慮して相手にヒットする瞬間のみ出力が最大化するような調整を施す必要があったのだ。
ベースの周りは既に火に包まれつつあり、せっかく花を咲かせたのサクラの木の葉も今まさに火が移ろうとしていた。
「今は悩まない……!」
そうつぶやいて彼女はサクラに背を向けて一撃のもとにセイバーで敵を真っ二つに切り裂き、単身街道を駆け出した……。
◆SCENE4
そして今、彼女は白い衣装を纏った少女の前で膝をついている。
街道を駆け上がり、迫るメカニロイドを退けながら、敵の一人がいるであろう場所まで辿り着くと、ふいに奇襲を受けたのだ。つまり陽動は見破られており、むしろ待ち伏せされていたといっていい。
黒髪の少女は奇襲に成功するやいなや、サイバーエルフを呼び出し融合した。いわゆるエルフが消滅しない『サテライト型』のエルフで、融合した彼女は8本もの宙を舞うビームの剣を同時に操った。
『エイトブランド』と呼ばれるそれは、データベースによれば旧大戦で『紅き英雄』が用いていた記録もある聖遺物らしい。一体どこからそんなものを仕入れたのか引っかかるが、それ以上に踊るように滑らかな動きの中で放つ一撃一撃は重く、更に8方向からの同時攻撃であっという間にシエルを窮地に追い込んだのだ。
「それにしても……『八相刃雷』を受けて膝をつく程度で済むなんて運がいいのね……頭にくるわ」
『ゼロ・リバース』を名乗る彼女たち武装集団はあの『紅き英雄』の意思を継ぐ者だという。シエルをなにより困惑させたのはその言葉だった。うぬぼれかもしれないが、その英雄の意思を継いできたのは共に戦い抜いた自分たちだと思っていたからだ。
それが、あろうことか、全く見ず知らずの集団が彼を信奉し、破壊活動を行っていることが信じられなかった。これでは『彼』は建前のために担ぎ出されたようなものだ。それは『彼』を間近で見てきた彼女にとって許しがたいことだった。
「この世界を預かるなんて大きく出たわね。あなた達に『彼』の意思を継ぐことが本当にできるというの……?」
「できるかどうかではなく『やる』。それが我ら一同の存在意義であり、その証明でもある」
「なら、あなた達には『彼』がどういう人かわかった上でこんなことをやっているのよね……?」
滲み出る、怒り混じりの困惑。
対照的に少女は淡々と言葉を紡ぐ。
「否。これは『彼』の意思だ。我々は従っているに過ぎない」
「『彼』の意思……? 一体どういうことなの……」
「それをお前が知る必要はない。なぜなら出来損ないの貴様は今、ここで私に討ち取られる運命だからだ……」
そう言い終わると彼女は再び武器を構えた。
「ふふ、世界の『再生』の手始めに相応しい」
瞬間、同時に8つの剣が宙を浮きながらシエルに向かって突き付けられた。現状を挽回する策はなし。まさに窮地といってよかった。方々で陽動を努める仲間とも連絡は取れそうにない。
せめて時間が稼げれば……そう思った矢先、どこかで聞き覚えのある声が響いた。
「そこまでだ、グレイシア」
その声の主は紅くたなびく衣と装束を身に纏い、金色に輝く髪が揺れていた。
「……?!」
シエルは我が目を疑った。なぜならば瞳に映し出された姿は衣装や髪型は違えど、かつて共に闘った紅き英雄に酷似していたからだ。
この望まぬ再会に彼女は身震いしつつも、なぜ、と言葉を発する前に彼の声がそれを遮る。
「先に部下の非礼を詫びよう……誤解を受ける前に断っておく。我は貴女の知る『彼』ではない。しかし、確実に紅き英雄の座を受け継ぎし者である」
「それは……何を根拠として言っているの……?」
「我が『それ』を求められたからだ……」
「説明になっていないわ……」
「貴様! ロゼ様の前だ! そのような戯言をのたまうとは無礼な!」
間髪入れずにグレイシアが声を挟み込む。
「ロ……ゼ……?」
その名を聞いたシエルは更に困惑した。一体なんの冗談なのか。よりにもよって彼女が最も尊敬する人物を想起させ、なおかつ揶揄するような名前を名乗ること自体が不愉快だった。
「よせ、グレイシア」
彼女を制して彼は口を開く。
「そう、いかにも我は剣帝ロゼ。紅きこと修羅の如し、その刃の届かぬ処の無いと知れ。そして、この世界の礎となる者だ」
シエルの中で不協和音が響いた。あの『彼』の映し鏡のような存在に、最も口にして欲しくない、虚像で塗り固めたかのような言葉の数々。
「貴女に刃を向けたことは謝罪しよう。できれば乱れきった世の『再生』のため、我らに力を貸して頂きたい」
「このエリア・ゼロの惨状を見て言える言葉とはとても思えないわ。少なくとも私の知っている『彼』はこんなことは……」
「秩序なき今の世界は単なる善意ではまとまらん。各々立場も状況も異なるからだ。そしてそれらは圧倒的な『力』によってのみ収束するのは自明のこと」
「でもそれは……かつてのネオ・アルカディアやバイルと変わらない……力と恐怖による支配なんて二度とごめんだわ……!」
「確かに先の事変を身をもって生き延びた貴女の言い分も一理ある。ならばこの『力』をもって証明してみせよう。我の覚悟を―――」
彼は翡翠に輝く結晶を取り出すと、それは力強く輝き始めた。
「まさかあれは……リバースメタルのコアの集積体……!?」
「ロゼット・オン――――――――――」
あたり一面が光に包まれ眩しく煌めく中、ほとばしる粒子がラインを描く。そこには、紅き装甲を纏った英雄の姿があった。
「このエネルギー反応は……まさか……!」
しかし、その姿は紅き英雄のそれとは違い、鋭角的な肩の甲冑に上半身は包まれ、背部からは羽のようなものが突出し、頭部は紅い装甲と目を覆う緑のバイザーで表情は伺い知れないものとなっていた。
「この刃こそ英雄の証。また強きこと最強の証――――ロゼ・ザ・セイヴァー、参る……」
彼が構えた手にはあの紅き英雄が愛用したそれに酷似しつつも、柄の両端から光輝く刃を携えた『両剣』が握られていた。
「話し合いはここまでとさせて頂く……!」
「来る―――」と思った瞬間には間合いを詰められていた。
〈シエル!危ない!〉
あまりの疾さに意識が追い付かず、パッシィの声で正気を取り戻すも、敵は武器を振りかぶる瞬間だった。
「疾きこと風の如く―――」
とっさに武器を構え、防御の態勢を取ったまではよかった。が……
「駆けること雷霆の如く―――」
ロゼが限界まで振りかぶった両剣は、今まさに眼前に振り下ろされる最中だった。
「ぐっ……! あっ……ッ!」
防御態勢を取っていたため、相手の剣撃を正面から受け止めることとなったが、それは想像以上のものだった。両端に刃を生やした剣撃はつまるところ2連の威力を一撃で叩き付けるに等しい。
彼女自身、直接その身に受けることはなかったが、きっと『彼』の剣撃もこのレベルのものであったことが想起され、その倍の衝撃を正面から受けてしまったことを後悔する。
〈シエル!まずいよ! 今ので腕が!〉
「わかってる!次は受けられない……!」
そう。腕への負担はとんでもない域に達してしまい、そのフレームにまでダメージは浸透していた。この窮地を脱するには……
「攻撃するしか、ない!」
裂帛の気合を込め、咄嗟に下段から斬り上げた。
「いい判断だ」
しかしそれは精密な動きによって文字通りの紙一重でかわされてしまった。これでは後がない。
「ならば!」と、振り上げた剣を斬り下ろした。2連撃だ。
瞬間、敵もまた斬り払いで対抗する。
わずかに触れた敵の剣先が斬撃を受け流す。
「もらった!」
弾かれた反動を利用しての横薙ぎで3連撃。
腰を落とし低い位置へ斬撃を誘導する。
これはほぼ回避不能な一撃だ。
「見事……! だが……ッ!」
相手もまた反動を利用して次の攻撃に入っていた。
「轟くこと鬼神の如し―――」
更に、ここにきて武器の形状が優劣を決めた。刃が2つあるロゼの斬撃が、わずかに早く届いてしまったのだ。
「――――――――ッ!!!!」
悲鳴に成らない悲鳴をあげてシエルは再び地面に膝をつけた。その右腕は武器ごと二の腕から斬り飛ばされていた。
〈シエルゥ!〉
「あぐッ……!……大丈夫……とは言えないけど、生身だったら即死だったわ……」
腕と武器を同時に失い、まさに万策尽きようとしていた。ここからどうあがいても挽回する余地がない。おまけに周囲は敵だらけで逃げることも難しい。
更には逃げられたとして、どこまで逃げるのかだ。少なくともこのエリア内にとどまっている限りは状況は変わらない。
「ここまでだ。剣は口ほどに物を言う。生身の体を棄て、機械の身になってまで世に尽くすその度胸は買うが、しかしどうだ……?『彼』に比べて剣技はまるでなっていない」
予想外にもロゼが武器を下ろし、戦いは終わりを告げた。同時にその闘気も冷めていく。
「なるほどな、そのような剣では何かを壊すことも殺すこともできはしない……この期に及んで敵に情けをかけるとは……自殺行為に等しいな……」
変身を解くと、まるで彼女の何かを見透かしたようにロゼは言う。
「ッ……それは……!」
「貴様、本当の意味で死合ったことが無いのだろう……? その力ではあくまで対象の無力化が精々といったところか……?」
一瞬刃を交えただけでそこまで見抜かれてしまった。そう、彼女には敵を倒したり殺すような意思は無い。あくまで抑止力としての力であって、対象の無力化さえできればよかったのだ。
圧倒的なまでに相手の命を終わらせることに対しては無頓着であり、そういった意味での緊張感は非常に欠けていた。
「あの戦場を生き延びた貴女ならば我が軍と共に世を平定できるかと思っていたが……とんだ見込み違いだったようだ……『彼』の紛い物以下だな」
そのある種の覚悟の無さ、信念の薄さはいつか強敵と対峙した時に白日の下へ晒される危険をはらんでいたが、よりにもよってこのような男が相手とは想像もつかなかった。
彼女の中を様々な葛藤が駆け巡っていく。『彼』の意思を継ごうと剣を手に取ったものの、あくまで護るための剣であると言い聞かせ、今まで決定的な局面は回避してきたからである。
少なくともこれまで自分の手は血に染めてこなかった。これが今の『ガーディアン司令官 シエル』の真実なのだ。
「ちがう……わ、たし……は……」
〈シエル! 彼の言葉を真に受けちゃダメ……!〉
パッシィの言葉をよそにこれまでの戦いに関してのあらゆる記憶や感情が彼女の頭をよぎり、逡巡していた。
「なるほど、よもや気付いていなかったとは。貴様の剣には決定的に覚悟が欠けている……これではとどめを刺すことすらできん。せめて志だけでも対等でなければ我が命を奪うに値しない……」
「私は、みんなを……守らないと……」
彼女は半ば錯乱しかけていた。これまで積み上げたものがこれまで信じたものと同質の力によって打ち砕かれたのだ。その喪失は伺い知れない。
「ロゼ様! この者の始末は私にお任せを……!」
間髪入れずにグレイシアが刃を携えて会話に割り込む。
「ロゼ様がお手を汚すことはありませんが、この女、このまま生かしてよい道理はありません。ここで止めを刺すべきです……!」
「自らに臆したか……よい、グレイシア。好きにしろ」
「ご配慮痛み入ります……!」
「だが、そのリバースメタルの制御中枢を司るサイバーエルフは興味深い。彼女がここまで持ちこたえたのもそのお陰だろう。是非持ち帰り解析したいものだ……」
「仰せのままに……!」
グレイシアは刃を構えたがシエルは一向に気付く様子がない。頭を垂れ、ひたすら地面を見つめている。
〈シエル! 気を確かにして! このままじゃ殺されちゃう!〉
「そんなことよりパッシィの方が……!」
ようやく自我を取り戻しつつあったシエルだが、しかし時すでに遅く、今まさにグレイシアが刃を首に向けて振り下ろす瞬間であった。
「ッ……! ロゼ様!」
グレイシアが叫ぶと同時に横に跳び跳ねると空中から銃弾の嵐が降り注いだ。
「シエルおねえちゃん! 助けに来たよ!」
それはアルエットの声だった。避難を終え、飛空艇ガーディアンベースにて救援に駆け付けたのだ。そして、その手にはぬいぐるみが握られていた。
「シエルさんを早く中へ!」
空中から降り立った数名のガーディアンのメンバー達は弾幕を張りながら敵を牽制しつつシエルを収用しようとする。
「パッシィ! 急いでぬいぐるみの中へ!」
タイミングよく発生した隙を伺ってシエルがすかさずパッシィを逃がそうとする。
ベースのハッチ近くにいたのが幸いし、パッシィはすぐさまアルエットの懐のぬいぐるみへとボディを移動した。
「アルエット! 早くベースの奥へ!」
シエルが叫んだ瞬間―――――
「おやおや、それは困りますのぅ……」
気付くと、なぜかアルエットはガーディアンベースの『内部』で捕らえられていた。
「シエルおねえちゃん……」
それも、あのウェクトによって。
「ウェクト! どういうつもり!」
「ひざまづけ! ロゼ様のご尊顔の前であるぞ!」
突如叫んだ彼はアルエットを連れながらハッチを飛び降り、ロゼの方へ歩みを進めていた。そして、あまりの唐突さにガーディアンのメンバー達も身動きが取れない状態だった。
「手はず通りだな、ご苦労だった。しかしなぜこのエルフの報告をしなかった……? 判っていれば優先的に確保したものを……」
「これは失敬。失念しておりましてじゃ」
「遅いぞ! このノロマ! ロゼ様を待たせた上に報告漏れか!」
そうウェクトにロゼは皮肉を交えながらも労いの言葉をかけていた。グレイシアは相変わらずだが。
「手はず?! ウェクト! あなたまさか最初から……!」
「聞け……ワシは元々『紅き英雄』に連なる立場でな。この世界の行く末を二人の後継者をもって天秤にかけていたのじゃよ……!」
「世界の行く末……? 後継者……? どういうこと?!」
「つまるところ、誰が『紅き英雄』に代わり、この先の世界を導く救世主に相応しいかを見極めておった! そして、今回は我がロゼ様に軍配が上がった……そういうことじゃッ……! 小娘ッ!」
「私と彼を天秤に……? そんな身勝手な……!」
「うぬぼれるな! 確かに手引きはしたが、この襲撃を退ければお主にも機会はあった。じゃが、まるで期待外れもいいところ……間近で手塩にかけて力を授けたのにも関わらずな!」
「そんなことのためにリバースメタルや聖遺物を……それよりアルエットを離しなさい!」
「バカめ! それはできぬ相談じゃ! パッシィはお主の力の差をみて今まであえて報告せんかったが、ロゼ様がご所望とあらば話は別……! そしてこの子がぬいぐるみを離さんのでのう、このまま一緒に来てもらうまでじゃ!」
腕に捕まれたアルエットは必死にパッシィを守るようにぬいぐるみを抱き締めているが、抵抗虚しくその身を運ばれるだけだった。
「シエルおねえちゃん、パッシィは私が守るから……!」
「ダメよ! アルエット! 早くそこから逃げて!」
「シエルさん! 直ちにここを離れましょう! アルエットさんのことはわかりますが、今はベースが墜ちたら終わりです!」
シエルの叫びも虚しく、ガーディアンのメンバー達に彼女が担ぎ込まれるとベースは地上から一気に高度を上げていく。
「必ず迎えに行くから! 待っていて……! 約束よ……!」
そう言い終わる前にハッチが閉じると、ベースは一気に加速し、その場を離脱した。
「ロゼ様! 船ごと墜としましょう! この屈辱は許しがたい……」
ロゼを守りながら状況を静観していたグレイシアが懇願する。
「おお怖い怖い……のう、お嬢ちゃん」
ウェクトはアルエットの方を見ながら大袈裟に怖がってみせる。
「よい、興が削げた……どのみちエリア・ゼロは我が軍の手に堕ちたのだ。反撃しようにもその術もあるまい」
黄昏を映す真紅の瞳に微かな熱が宿る。
「我々には成すべきことがある……たとえ、その存在が偽りだったとしても」
彼は飛び去る飛空艇を見つめながらそう言うと身を翻してこの場から去っていった。
◆SCENE5
燃え盛る街を飛空艇から見つめながらシエル達は悲嘆にくれた。美しかったサクラの花は灰と化し、真っ黒に染まった幹からは煌々とした赤い炎が立ち上っていた……
しかし、今はひたすら空高く、あてどもなくどこかへ彷徨いながらただ逃げることしかできない。そんな自分達がもどかしかった。
――――彼女達がかつての戦いの果てに『ゼロ』から見出だした希望は1日にして潰えたのだから。
やがて飛空艇は悲しみを振り切るように彼方へと姿を消していき、その空は悲しみを映し出すかのように漆黒に染まっていた。
◆SCENE6
――――人知れず海面にそびえ立つ紅い天空の城。
『ヴァルハラ』と呼ばれる深紅の花を模した要塞。
8枚ある内の1枚が欠けていたが、今まさに花弁のひとつがそこに収まろうとしていた。そう、花弁のひとつひとつが巨大な飛空艇であり、その一隻に乗船していた『王』が戻ったのであった。
そして、花弁の中央にそびえ立つ塔の内部に存在するカテドラルには次々と集まる者達の姿があり、今まさに帰還した王の演説が始まろうとしていた。
空間の中央にして最上段となる祭壇には王を守る紅き『守護騎士』6人が並び立ち、奥の扉が開くと、そこには金色の髪に紅き衣を纏った王である青年……『ロゼ』が鎮座し、傍らにはグレイシアとウェクトも並び立っていた。
「我が信奉者たる『レゾナント』達よ、ゼロ・リバースの中枢たるヴァルハラへよく集まってくれた」
青年が立ち上がり演説を始めると、この場に集まったレゾナントと呼ばれる者たちは一糸乱れず頭を垂れる。凍てつくような沈黙が流れる中、青年は言葉を続けた。
「世界はかつて、蒼き英雄と、紅き英雄の活躍によって数々の災厄を免れてきた……そして諸君らも知るとおり、蒼き英雄により新たなる国家が誕生し、今日までの歴史を歩んできた」
「しかし、愚かにも世界は紅き英雄の存在を歴史の闇に葬り、亡き者としてきた……蒼き英雄と勝るとも劣らないその功績にも関わらずだ。結果、それが世界の秩序のバランスを崩壊させたともいえる」
「ゼロ・リバースは彼の存在を忘れはしない。腐敗したアルカディアの崩壊も、起きて久しいバイル事変も、復活を遂げし『かの英雄』に依るものであるのだから……」
一瞬、場が静まり返った。皆、直近で起こったことにそれぞれ思いを馳せていたのである。
「だが、戦いの果てに『紅き英雄』は再び去り、世界は復興などとのたまい、堕落への道を歩みはじめ、彼の存在を忘れつつある……また愚かな歴史が繰り返されようとしているのだ……」
「そしてまた『イレギュラー』が発生し続ければヒトビトは抗う術を持たない。英雄亡き今、いたずらに破壊と殺戮に巻き込まれるだけだ。それを阻止せんと我らはここに集った。違うか……?」
「そうだ!」「その通り!」と賛同の声が次々こだました。
「今こそ世界は強き『力』によって統一される必要がある。その力の象徴こそが『紅き英雄』であり、その存在によって『秩序と平和』がもたらされるのだ」
「だから我はここにいる。確かに我は映し身にして、かつての『彼』とは異なる在り方をしているだろう……しかし、これこそ諸君らが望んだ果ての『結果』であるのだ……!」
「そう、我は皆が望みに応え、この世界に『再生』した……! セイブ・ザ・リバース!!! 全ては『イレギュラーの排除』と『新たなる秩序』のために……!」
両手を空中に差し出したまま青年は動きを止めると、拍手と共に「セイブ・ザ・リバース!」の掛け声が巻き起こった。そして、声が落ち着くと彼は付け加えた。
「さて、改めて確認しよう。諸君らには戦うための『力』を授けた。是非有効に活用してほしい。この聖遺物から生み出された力に相応しい働きを期待する……」
そしてカテドラルの中は「ロゼット・オン」という叫び声と共に次々と光に包まれていった。
【第1章:紅を継ぐ者 完】
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▼第2章はこちら
note限定 あとがきコーナー
本作を企画し、執筆させて頂きました。Hi-GO!です。
記事をご購入頂いて最後まで読んで頂き、まことにありがとうございます。
ここからはnote限定のあとがきコーナーになります。
冊子版には編集後記というものがあるのですが、そちらは内容そのものより、書籍の編纂まわりの事情を書きましたのでこちらではもう少し内容に沿ったものを書きたいと思います。
今回はようやく第1章リリースということで、企画の焦点がようやく定まった印象です。逆に何か不足していないかと未だに不安に駆られていたりもします。Z-FACTORというパラメータ設定の追加も、スタッフに追加要素を募った結果、実装することになったため、兎に角隙間を埋めたいという欲と不安が表れていると思います。
しかし、前回EXを先行リリースしたことで、ある程度のロードマップが見えたのと同時に、この第1章をいかに退屈させない内容にできるのかも課題でした。既に同じ筋書きを読まれた方にアプローチする必要があるからです。
一応それを見越したのと尺の都合でアルエットとパッシィの場面を前回は全カットしました。おかげで今回の追加シーンはその二人に焦点を当てることができて個人的にもうれしくあります。
文章では気づかなかったのですが、絵にしてみると、ぬいぐるみを手放してヒールを履いたことで少し身長が伸びたように見えるアルエットは魅力的に映りました。口が見えることで意思伝達の力が自然と増したのでしょうね。個人的にはリマスタートラック テロスのドラマパートのアルエットの会話イメージをさらに膨らませた延長上の存在が今回の描き方になります。ゲームよりやや天真爛漫といったところでしょうか?
ここからは本作オリジナルキャラクター語りになりますが、そもそもこの企画、二次創作で続編的立ち位置なのですが、本編でメインキャラが退場しまくったことで、登場キャラはほとんど完全新作と言っていい状況です。設定なども本作に合わせたものにチューニングする必要もあり、非常に手間のかかるものとなっています。
冒頭から登場するグレイシアはある種1章のシンボルたるキャラクターとなってくれました。冒頭に彼女を登場させたのは執筆補佐のゾンリーさんが先に何か大きな出来事を提示したほうがよいという意見を組んでの事でした。おかげで1章における全体の道筋も固まった気がします。高圧的で高飛車なキャラクター造形はゼロのビジュアルとも相性が良いと感じました。意外にレヴィアタンを除くといそうでいないというのもポイントですね。
ウェクトはまだお披露目程度ですが、二面性のあるキャラクターということはご理解頂けたかと思います。シエルを案じる彼も本物ですし、ロゼに寝返った時の態度も本物です。その時その時の趣旨を全うできる方なんだと思います。とはいえ、袂は分かれたので今後どう立ち回るのか私も書くのが楽しみです。
そしてロゼです。彼のゼロっぽくて全く違う、というキャラクター造形を理解してもらうにはあえて大仰に振舞わせるほうが芝居がかって解りやすいかなと思い、このような口調になりました。私が好きな王なり首領なりのキャラ性がいろいろ混じって反映されている気がします。
そういう大衆の願望の詰め合わせみたいなキャラなので、それで合っている気もしますが、いざ書いてみると現状一番カリスマ性を感じるので、ゼロなき世界で彼のような存在が現れたら確かにすがりたくもなるでしょう。
ちなみに絵的には悪っぽさというか、オメガからのイメージを引き継いでいます。あんまり顔つきまで善い者っぽいとヒロイックさが強すぎるかなと。目の部分がダイナモや流星のようなバイザー処理なのは、御顔を隠すベールのような意味も込めています。
それでは次回は本編第2章のあとがきでお会いしましょう!
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コメント
1お楽しみ待っています❤