NHK公式【べらぼう】脚本を務めた森下佳子さんが、最終回を前に各話のこぼれ話を振り返ります。#大河べらぼう
べらぼう第48回「蔦重栄華乃夢噺」放送は12/14(日)。15分拡大版です。
第33回 打壊演太女功徳(うちこわしえんためのくどく)
この回もかなり資料に忠実に作りました。初めは秩序立っていた打ちこわしが段々暴徒化していくところ、腰抜けになっている武家が鎮圧できないので平蔵が出動したとか、この辺はまんま、幕府が必要な米の量を試算し、「困ってる人に米の代わりに金を配る」としたのもまんまです。もうびっくりしますよね。今も昔も人のやることってホントに変わらない。前回と今回、私がアレンジしたのは治済まわりと蔦重がどう絡むか、くらいです。でも「蔦重が打ちこわしについてどう考えどう動くか」これがなかなか悩ましくてねぇ。蔦重自身が打ちこわしについて言及したものはないし。悩んだ末、見つけたのが「収めるためにどちらの味方もする」という出口でした。クライマックスのシーンには「皆の腹を満たすことはできない、でも、エンタメにはこういうことはできるはずだ」、そう信じたい私の思いも乗せさせてもらいました。最後に少し新之助のことを。始まった頃には実に秩序立っていたという天明の打ちこわし、そこには「裏で指揮をするリーダーがいたのではないか」と資料にありました。その一文を見て「名前もわからない、でもいたのであろうこの人のことを描きたいな」と思ったのが、新之助誕生のきっかけ。記録には残らない、多分ごく平凡な、でも、隠れた英雄でもあった男の人生、皆様の記憶にほんの少しでも残していただければ嬉しいです。そして記録に残る英雄・長谷川平蔵。「やっとかっこよくなれてよかったです!」とこの回は楽しかったようです。
第34回 ありがた山とかたじけ茄子(なすび)
定信が彗星のように現れ、蔦重が密かに最後の田沼派として生きることを決意する回です。定信の世に変わって、蔦重が出したモノで有名なのは、喜三二先生の『文武二道万石通』というご政道を茶化した黄表紙。でも実は歌麿の超豪華な狂歌絵本『画本虫撰』を出すのも同じタイミングなんですよね。あまり意識してなかったのですが、倹約倹約言われてるところに超豪華な画本……。コレもなかなかなかな挑戦状だなと感じ、その二つを抱き合わせ本編のような仕立てとしました。ところで、この回は意次が完全失脚する回でもあります。意次が最晩年に小さくなった家中で入り札を行っていたこと、これホントのことなんですよ。私、このエピソードがすごく好きでねぇ。もう復活の目はないのに、それでも、こういう仕組みを考えて試さずにはいられない。この人は根っから政の仕組みを考えるのが好きなんだろうなと思ったんです。権力が好きな人ではなく、政が好きな人。とはいえ、尺がきつい中、本筋には関わりないので「削りましょうか」とも言ったのですが、「そういうところは削らない方がいいですよ」と残してもらうことができました。「意次としてきちんと老いていきたい」これは今回意次を演じるにあたり中の方がおっしゃっていたことだったそう。歩き方や話し方、背中、あんなにエネルギッシュだった意次がどんどんおじいちゃんになっていく作り込み。おかげさまで蔦重との最後のシーンは二人の間に年月を感じさせてくれるものに仕上がりました。二人の最初の対面、最後の対面、もう一度味わう時にはぜひ見比べてみてくださいな。
第35回 間違凧文武二道(まちがいだこぶんぶのふたみち)
喜三二先生の『文武二道万石通』が大売れし、春町先生の『鸚鵡返文武二道』が出来上がるまでの話です。この二つ、読み比べてみると『鸚鵡返』の方がはるかに洒落がきついです。定信自身が書いた「鸚鵡の言葉」を盛大に茶化しているのはもちろん、本編にはうまく盛り込めなかったのですが、上様も「ちょっとバカ」として描写している箇所もある。先生方は「これが処分の決定打だったんじゃないか」ともおっしゃってました。定信自身は大真面目に「文武奨励」をやってるわけですから、こりゃもう怒るよなぁ、と、定信に少し同情したりもしてね。もちろん、腹が立ったからって、弾圧していいわけじゃないですが……。ご興味を持った方は是非この二作、読み比べて見てくださいな。ちなみに、この回の凧をあげるシーン、VFXは手間がかかるので、もう実際に上げちゃえ!と実はNHKの駐車場で凧上げして撮影したモノだそうです。「凧を上げれば国が治る」と書いたのは春町先生の『鸚鵡返』。私たちは「凧を上げればスケジュールがおさまる」というところでしょうか。さて、実はこの回、この本筋以外に後につながる伏線が色々仕込まれています。気になる方は、ぜひ、ご確認くださいませ。石燕先生が「その目」で最後に見たものは……。栗山先生のリアクションの意味は……。