NHK公式【べらぼう】脚本を務めた森下佳子さんが、最終回を前に各話のこぼれ話を振り返ります。#大河べらぼう
べらぼう第48回「蔦重栄華乃夢噺」放送は12/14(日)。15分拡大版です。
第21回 蝦夷桜上野屁音(えぞのさくらうえののへおと)
蔦重は狂歌を盛り上げつつ歌麿を売り出しに、その一方で、源内先生の置き土産「蝦夷」が命を吹き返してくる回です。いよいよ吉原と城中も交差し始めます。ここの接点となったのが、意次の下で重用され、南畝先生のパトロンでもあった土山宗次郎、そして、源内先生と行動を共にしていた平秩東作あたり。南畝先生の日記にも大文字屋での「花見の会」のあと蔦重を訪ねた記述が残っています。会の詳細は分からないので、その空白を利用して本編のような仕立てにしてみました。この回は「うた麿大明神の会」が催される回でもあります。こちらの会も内容の詳細は不明とのことで、その場を使って、春町先生の政演(後の山東京伝)への嫉妬が爆発する仕立てとし、今後折りに触れ繰り返される「屁」踊りの初出とさせてもらいました。……なんでいきなり「屁」なのかと思われるかもしれませんが、狂歌の中で「屁」ってやたら詠まれるんですよ。源内先生も「屁」「屁」言うとるし、「屁」にまつわる言説は多い。それも一つの江戸の戯けの息吹かと考えた次第。ちなみに南畝先生の詠む「七へ八へ」はご本人作ですが、智恵内子がええ声で詠む「へぃの勢い〜」は監督が現場でオーダーして先生に詠んでもらったもの。私、コレ、てっきりどっかから引っ張ってきたものとばかり思ってたんですよね。先生、うますぎです!
第22回 小生、酒上不埒(さけのうえのふらち)にて
筆を折ると宣言した春町先生が復活。蔦重のもとで『廓𦽳費字尽』を作る回です。この本、私すごく好きなんですよ。吉原のしきたりや、吉原あるあるを創作文字で表すというもので、ウイットに富んでいて……。ここは一つ自分でもやってみたい!と「屁の中に一人屍」で「一人」とか「恋川春町という男」などの創作文字を作ってみました。これがまぁ楽しくて、春町先生もきっとこの本を作ることで「作る楽しさ」を再認識したに違いない!そんな一体感を持ちながら書きました。この回には春町先生の「酒上不埒」という「狂歌師としての名」が出てきます。政演は「身軽折助」喜三二先生は「手柄岡持」。それぞれの人となりが窺えるものがたくさんあって面白いので、ご興味のある方はお暇な時にでも調べてみてください。ちなみに、この回の宴会を撮り終わった際、監督からPの方に「しばらく宴会やめて!」と申し入れがあったそうです。監督曰く「宴会って合戦より撮るの大変。大人数はもう地獄」なのだそう。この稼業二十数年目にして初めて得た驚愕の知識でした。「宴会は合戦より大変……」「宴会は合戦よりも大変!!」。すなわち宴会だらけのこのドラマは合戦だらけの戦国ドラマに勝るとも劣らない超大作と言うこと!(違う)。さて、誰袖の恋も本格始動。意知に身請けを迫り、交換条件として、蝦夷の間者という役目を果たす。この申し出に、大勢の方から「危ないよ。やめときな」と大勢の方からご心配をいただきました。誰袖を身近に感じてくださってるようで嬉しかったです。
第23回 我こそは江戸一利者なり
蔦重が時の人になる回、そして、日本橋に出ることを決める回です。日本橋は商いの中心地、そこに店を出せれば一流と認められ、商いの幅が広がるという土地。でも、実はこの出来事について、かねてから蔦重の中の方から疑問を頂戴していたのです。それは「蔦重ってなんでわざわざ日本橋に行こうと思ったのでしょうかねぇ」というもの。確かに、そもそも蔦屋は「吉原を盛り立てる」ための本屋であって、細見も独占、他の商いも好調、現状維持で十分なんですよね。けれども史実の蔦重はそうは考えなかったわけで。そこは己の野心の他、「吉原者」の意地、世の中を見返したい気持ちもあったのではないかなぁ……と、いうところから本編のような仕立てとなりました。階段を落とされた蔦重が、初めて階段を上っていくシーン。俺が吉原の誉になるという。突き落とされた奴が這い上がってくる!!ベタですみませんが、私こういうの好きでして……。蔦重、そして親父様方のおかげで胸熱の出来となりました。奇しくも折り返しで主人公が日本橋へ。今までの選択は間違ってなかったんじゃないかと、何の根拠もないけど、そう思ったのを覚えています。ちなみに雨の中の蔦重は台本にはなく、「男前、濡らすともっと男前!」という監督の好みで撮影されたもの。落とされたり登ったり濡らされたり、蔦重、ホントお疲れ様でした。
第24回 げにつれなきは日本橋
蔦重と吉原が日本橋へカチコミ!……って、言葉悪いですが、まぁ、何となくカチコミがしっくりきちゃう、そんな回です。この回、打ち合わせで指摘があったのが「捨てる神あれば拾う神あり」というセリフでした。「神」と「紙」をかけうまくハマった!とお気に入りだったのですが、「場所はお寺。仏様の前で神様の話は良くないんじゃないか。これは先生方からダメ出るよ」というごもっともな意見が出て、「仕方ない、じゃあ別の格言を探すか」と。ところがコレ一向にハマるものが見つけられず、結局、先生方にまで「ここにハマる格言何かないですか!」と聞くハメに。すると先生方からは「いいんじゃないですか?神仏習合はこの頃割とよくあったし」という想定外のお言葉。まぁ、考えてみれば、神様も仏様もそんなケツの穴の小さいことは言うまい!と、ちょいとお貞さんらしくエクスキューズ入れて使うことといたしました。そうそう、この回、もう一つ想定外だったのはお貞さんのビジュがめちゃめちゃ可愛いかったこと。本の虫であり、かつ、とっつきにくそうに見えたいというのもあって、「どんな美貌でも破壊する」と噂の江戸のメガネかけてもらったんですが……。何かお貞さんの場合、フレームがあることで黒目がより強調されて鋭さが減ってむしろ可愛さ増す感じになってる。しかも、それが妙にオシャレにも見えてる。コレ、ただのみんな大好き美人眼鏡っ娘じゃん!まぁ、お芝居だけで十分とっつきにくそうだったから、いいんですけども。破壊されたのは江戸の眼鏡の方って話でした。美貌、恐ろしい……。