高所得国の出生率は1.5以下に収束

確かに、国の豊かさを1人当たり購買力平価GNI(国民総所得)で見るとすると、GNIが上がれば上がるほど出生率は低下する極めて強い負の相関はあります。が、詳細に所得階級別に比べると、GNI1.5万ドル以下の低所得グループでは出生率3.43(相関係数▲0.7001で強い負の相関)、1.5~5万ドルの中所得グループでは同1.74(▲0.3140でやや弱い負の相関)、日本なども含まれる5万ドル以上の高所得グループでは1.41(▲0.1515でほぼ相関なし)となっています。

高所得グループ以上はどれだけ所得が増えても出生率は上がりませんが、大きく減りもしません。つまり、ある程度の基準を超えると必ず出生率は1.5以下に収束するということでもあります。

【図表2】一人当たり購買力平価GNIと出生率(2023)

むしろ、中南米のコスタリカやアジアの中国やタイなど、GNIがまだそれほど高くなっていないにもかかわらず、急激な少子化が進んでいる最近の現象は、「豊かになる前に少子化が進んでいる」と見たほうがよく、この背景には、かつて出生を支えていた中間層の出生減があります。

「大企業・官公庁勤務」の子供数は減っていない

日本ではそれが顕著ですが、所得五分位階級別に子どもの数の推移を比較すると、少子化とはいえ、第五階級(上位20%)の子ども数は減っていません。減少しているのは、第一階級(下位20%)から第三階級(中間層)まで。

勤務している企業規模別に見ても、大企業や官公庁勤務の上位層の子ども数は減っていないのに、中小企業勤務だけが減っています。各都道府県別にみても、それぞれの中央値年収での未婚率が上昇しています(参照〈地方の中小企業勤務の男性では結婚できない…この10年間で起きた「結婚可能年収のインフレ」という大問題〉)。これは、以前は中央値の年収があれば普通に結婚できていたものが、できなくなっていることを意味します。

【図表3】都道府県別30代未婚男性中央値年収未婚率比較

若者が「結婚離れ」したからでも価値観の変化があったからでもなく、経済成長後の国において「子どもを育てることの高コスト化」が進むためです。一人の子に対する投資選好意識が高まれば当然子育てコストは増え、結果として経済的に余裕がそれほどない中間層が、出産はおろか結婚すらできなくなるという皮肉な状態に陥ります。

中央値で結婚できないなら、それは半分が結婚できないということです。そうして将来的には、経済的に豊かな層しか結婚・出産ができない世界がやってくるでしょう。