イスラエルがソマリランドを国家承認、国連加盟国で初 軍事的関心か
イスラエル首相府は26日、アフリカ北東部のソマリアからの分離独立を訴えるソマリランドを主権国家として正式に承認すると発表した。国連の加盟国で初めての承認となる。イスラエルは、アフリカ大陸東部からアラビア半島に向かって突き出した「アフリカの角」ソマリランドに軍事的関心を寄せているとみられる。
中東、アフリカ見渡す未承認国家
ソマリランドは、イスラエルと敵対する武装組織フーシが活動するイエメンの対岸に位置する。
イスラエルメディアでは、フーシ対策の拠点としてソマリランドの可能性がたびたび言及されてきた。地域情勢に詳しい専門家らによると、イスラエルがソマリランドに軍事拠点を置くことと引き換えに、国家承認をするという見方が強まっていたという。
ソマリランドの西隣には、米国やフランス、中国などが軍事施設を持ち、日本の自衛隊も駐留するジブチがあり、各国が中東やアフリカを見渡す拠点としている。ソマリランドは各国の軍隊がひしめくジブチよりも海岸線の長さが2倍以上あるが、大部分は未開発だ。
イスラエル首相府によると、ネタニヤフ首相とソマリランドのアブディラフマン・モハメド・アブドゥラヒ大統領らが共同宣言に署名した。声明では「イスラエルはソマリランドと農業、保健、経済などでの分野における関係を直ちに拡大する計画だ」としている。
ソマリランドのモハメド大統領はSNSに「これは歴史的な瞬間で、ネタニヤフ首相の承認を歓迎する」と投稿。ソマリランド外務省は声明で承認について「30年以上にわたり存在してきた政治的、制度的現実を反映したものである」と伝えた。
ソマリランドは1991年5月、激しい紛争が続くソマリアからの分離独立を一方的に宣言した。内戦や過激派組織のテロ攻撃に苦しむソマリアとは対照的に、比較的治安は安定している。事実上、独立して自治されており、選挙による政権交代も実現している。
一方、これまで国連加盟国でソマリランドを正式に国家承認した国はなかった。ソマリランド政府が発行する「パスポート」で行ける国は極めて限られており、住民は国際金融からも締め出されている。そのため、国家承認はソマリランドの悲願となっている。
国家承認広がるかは未知数
英BBCなどによると、米国のトランプ氏に近い共和党議員や、イギリスの保守党内でもソマリランドの独立を支持する声もある。ただ、こうした動きが国際社会における幅広い国家承認につながるかは未知数だ。
自国内の独立運動を警戒するアフリカ諸国は、おおむねソマリランドの独立に否定的だ。「独立時の国境線を尊重する」という鉄のおきてがあるアフリカ連合(AU)はかねて、ソマリアの立場を支持している。エジプト外務省によると、同国やソマリア、トルコ、ジブチの外相は26日、イスラエルによるソマリランドの国家承認を非難したという。
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- 【視点】
植民地時代の国境を変更してはならないというウティ・ポシデティス原則は、国際法における一般原則として、そしてアフリカ連合の「鉄のおきて」として知られています。このために、国としての機能を一定程度そなえたソマリランドも、長年、国際的な承認を得ることはありませんでした。しかしここにきて、イスラエルが世界で初めて国家承認を行った実行は、パレスチナ問題の二国家解決に向かわないことと、法的な整合性が取れるのかが疑問です。諸国家による承認の数でいえば、パレスチナは圧倒的に国家性要件のうち、外国との関係構築能力が認められつつあるといえる一方、多くの領域がイスラエルの実質的な占領下にあります。国家・政府機能という実質面だけを考慮すると、ソマリランドは国家性を満たしていると判断したということなのかもしれません。とはいえ、パレスチナの国家機能を制限しているのはイスラエルそのものであるので、このような前提に自国の行為が影響していることから、このようなロジックが成立するとは思えません。このような動きは、ガザ危機を受けてパレスチナを次々と承認した諸国による国家承認の「道具化」を「見習った」動きにも見えます。
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- #中東緊迫
- 【視点】
イスラエルとソマリランドの関係が国際的な注目を集めたのは今年3月でした。トランプ米大統領がガザ住民を域外移住させて「中東のリビエラ」に再開発するとした発言が波紋を呼ぶ中、AP通信が米国とイスラエルの当局筋の話として、送還先候補としてソマリランド、ソマリア、スーダンと接触している、と特報したためです。APの取材に対してスーダン当局者は接触を認めたうえで拒否した、ソマリランドとソマリアの当局者はそれぞれ接触はしていないと否定した、というものでした。 イスラエルがソマリランドを国家承認する真意は分かりませんが、ガザ住民の移送先候補としてソマリランドの名が取り沙汰されてきた経緯を鑑みると、イスラエルの外交的選択肢として一定の現実味を帯びてきているようにも見えます。
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