『私を構成する10枚』マイ名盤を選んでみた
「私を構成する10枚」を選ぶって遊びを急に思い付いてやってみた。
私を構成する40枚とか50枚とかあるけど、それだと多すぎる。まだ「他人」の目を気にしてる、「他人」との共通項を持ちたいって思っちゃってる。
10枚ならそうした煩悩をそぎ落とさざるを得なくなる。
もうこれ以上そぎ落とせないくらい削るとどうなるか。自分の価値観、その本質が見えてくる。
というわけで、ぜひみんなもやってみてください。 #私を構成する10枚 で各種SNSに投稿するとか、もしくはこちらのコメント欄に書き込みしてくれたらうれしいです。
ビートルズもビーチボーイズもキンクスもクラッシュさえ入らなかったことに自分でも驚いている。なんなら世界で一番好きなプリンスやボブディランでさえ.....。
素直に10枚、今の気持ちでとにかく大好きで一生聴いていきたいものを選んだつもり。オールジャンル。本当はジャズやクラシックも入れたかったけど、なんてったって10枚だから。
Los Lobos / La Pistola Y El Corazon
ロス・ロボスの最高傑作はKIKOでもColossal Headでもない。このLa Pistola Y El Corazon(拳銃と心臓)に決まってる。異論は認める。っていうか、次の日には違うこと言ってるかもしれないが(それくらいロス・ロボスは名作だらけなのよ)、でも、本作はいつ聴いても何度聴いても一切魅力が目減りしない。
チカーノ(メキシコ系アメリカ人)ロックとして注目されていたロス・ロボスが、メキシコの伝統音楽(ランチェーラ、ノルテーニョ、ソン・ハローチョ)にガチで取り組んだルーツ探究作。その豊穣なリズムの快楽、デヴィッド・イダルゴの歌が紡ぐ情感も素晴らしい。
9曲たったの30分で終わる。ジャケットも最高かよな一枚。心臓を高く掲げよ。掲げた心臓を......撃ち抜くんだ。
Ravi Shankar / The Sound Of India
インドのシタール奏者にして、あのビートルズの歴史を変えてしまったラヴィ・シャンカールの1968年発表作。誰?って人にはノラ・ジョーンズのお父さん、そう言ったほうが伝わるかもしれない。ビートルズもましてやジョージ・ハリスンすらベスト10に入れてないのにラヴィ・シャンカールかよ!って思うかもしれないが、でも、それくらい偉大な音楽家だよ。みんなラヴィをナメすぎじゃない? ジョージならきっと同意してくれると思う。
ラヴィの音楽はどれも素晴らしいけれど、本作の特徴は「インド音楽講義」形式であること。「ラーガってものがありまして.....」などとインド音楽の概念を説明しながら実演してくれる。インド音楽の「スケール」は上昇するときと下降するときとで変わるとか説明してて、これにまずは頭で「ふむふむ......」などと「お勉強」していると、次第に本格的な演奏が始まり、いつのまにかとんでもなく気持ちいい、忘我の境地まで連れていってくれる。この「お勉強からの快楽」がたまらなく好き。
シタールも最高だけど、これ、タブラもエグすぎやろ。キラキラギラギラ、デコラティブにすら聞こえるし相当複雑なんだろうけど、余計なものがまったくない。遊びとまじめが同居しているといってもいい。レコード持ってるんだけど、A面、B面といつまでも繰り返して聴いてしまう。まったく飽きない。
씽씽 / SsingSsing
シンシン(日本語で言うと「スイスイ」とか「ビューン」みたいな意味らしい)という韓国の民謡ファンクバンド。特徴は.....って特徴しかない(笑)。
추다혜:チュ・ダヒェ、신승태:シン・スンテ 、이문희: イ・ムンヒの3人からなる超絶強力なトリプルボーカル。全員ド派手なドラァグクイーンの恰好してるのだが、その音楽を聴くと、開いた口がふさがらないというか、そのルックスに驚いてる暇がない。自分は詳しくないのだが、韓国民謡のスター3名が結成したチームらしくて。ガチで天下取りに来てる。
3人それぞれのボーカルの個性もすごいのだが、ドラム、ベース、ギターの演奏陣がこれまた激シブでカッコいいのよ。まずはドラム。民謡に合わせてようこんな叩けるわ。それにギターの人なんか、椅子に座ってギター弾いとるし、市場かなんかから適当に連れてきたおっちゃんみたいな風情なのに、激シブなんだよな。ポリバケツににんにくの皮むくようなテンションでギター弾いてる。
たゆたうようなまったりグルーヴから、のりのりアッパーなファンクまでとにかく心地よくて。どんなに落ち込んでるときでも、早朝の街で内臓スープ飲むと、体の底からじわーっとあったかくなる。聴いてるとそんな感じで元気が出る。ほら、今日も元気にメシ食ってクソするぞ!
唯一の欠点というか「バカ!!」なところはレコード音源としては4曲入りEPがたった一枚のみだってこと。なので、一応それを「10枚」に選定したけど、本当ならYoutube にアップされているケネディーセンターでのこのライブを「一枚」として選びます。
Prefab Sprout / Jordan: The Comeback
プリファブスプラウトはひょっとしたら一番好きなバンドかもしれない。ほとんどすべてレコード持ってる。Steve McQueen、Protest Songs、From Langley Park to Memphis .....どの一枚にするか、本気で悩んだが、もうこれは答えは絶対に出ないので「今日」の気分で一枚選ぶとしたら、このJordan: The Comebackかなあ.....。
青春の甘酸っぱさを感じさせるけど、どこか「じじくさい」「抹香くさい」「達観してる」ところを感じるのも魅力で、だからこそ自分がどんな年齢で聴いてもすーっと入ってくるしエバーグリーンという、そのあり方が唯一無二ではないだろうか。
キャッチーではっちゃけてるメロディからの抑制されたとにかく落ち着くサビや、ツボを抑えたとしか言いようのない展開、好きな女の子の話がいつの間にか神への祈りになっているシームレスな飛躍。パディ・マクアルーンの曲を聴くと、革新的なものは保守の顔をしてやってくる。そう言いたくなる。
本当に全曲が最高で文句のつけどころがないんだけど、特にレコードで言うとD面は「神がかって」る。One Of The Brokenの、盛り上がれば盛り上がるほど落ち着く、神への崇高な気持ちが高まれば高まるほど、この世の卑小な存在が愛おしくてたまらなくなる、敬虔なフリをしているが、神様がコーラスを歌いだす不敬極まりない茶目っ気ったら。Scarlet Nightの大仰なイントロ、バースから、ウェンディ・スミスのサビでのコーラスも泣ける。
そして何と言ってもDoo-Wop In Harlem。音楽への愛と、「あなた」への愛、そして神への思いが教会にこだましたドゥワップにとけていく。パディ・マクアルーンは、プリファブスプラウトはどんな「悪魔の音楽」であってもそのすべてを神への祈りに変えていく。
Jellyfish / Split Milk
クイーンもエルトン・ジョンもビーチボーイズすら諦めて、オレはジェリーフィッシュを10枚に入れるぞジョジョォ!! だってこんなに完璧なポップアルバムってある? オープニング、Hushでの音圧高い美しいコーラス。からのJoining a Fun Clubでドラムが入ってきた瞬間のゾクゾク。まだだったら今すぐ体験してくれ。
ジェリーフィッシュ版「Lucy In The Sky With Diamondsとでも言いたくなるSebrina, Paste, and Plato(サブリナと糊とプラトン)のパーカッションワーク.....。イントロなしで開始8小節でサビに行くワープ感満載のThe Ghost at Number Oneはフェードアウトでビーチボーイズになるの反則というか犯罪だから誰か法律で取り締まってくれ。
完璧なる構築美、徹底的なつくりこみが「カッチリしすぎてる」とも言われてるみたいだけど、その完全無欠を上回るやんちゃな青臭さがあるからこそ、聴いていてもまったく息苦しくならない。
ニルヴァーナのネバーマインドと同じ年に発売された本作は、まったく売れなかったらしいけど、これだけの名ポップスにもかかわらず、どこかグランジを感じさせるのは、アンディ・スターマーのドラムはじめ、メンバーの演奏が時代の空気を確かに吸っているところ。ポップスがこの世にあるかぎり。決して色褪せることのないマスターピースだけど、でも、同時に「あの時代でないと出てこなかった」とも思えるこの一枚がたまらなく好き。
Manu Chao / Proxima Estacion..Esperanza
「次の停車駅:希望」という意味らしい。ラジオ仕立てのコンセプトアルバムで歌詞は英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語で歌われてるらしいのだが.....正直、歌の内容を全然把握できていない。お恥ずかしいかぎり。でも、大好きなんだよね。
チルく、そして、エモい。体の輪郭がもわーんとぼやけてくんだけど、しみじみじわじわとエネルギーが溜まっていくような.....。チープなリズムマシーンやサンプリングを使ったであろうドラムはスッカスカなんだけど、そこにパンク、スカ、クンビア、フォーク、ヒップホップ、レゲエ.....闇鍋におもちゃ箱をひっくり返したかのようなごった煮音楽はそりゃもう純音楽としか言いようがないし、アートワークからコンセプトから、何から何までこんなにDIY精神が横溢した作品は他にない。
世界中の音楽が、多様な文化が、人間が、考え方が。すべてがマヌーという個人の人格の中で天衣無縫のワンピース。つながってる。世界中を旅しながらも、そこがどこであっても。自分が今いるこの場所こそがマイホーム。自宅なのだ。宅録バックパッカーが「世界という自宅」から届ける音のポストカードは、ふれるといつだって少しだけあったかい。
Booker T Jones / The Road From Memphis
10枚だけだと言っているのにこの作品を入れて大丈夫か、少し迷った。というのもBookerTを入れるならMG'sじゃねえのかよと。知名度も決して高い作品じゃないだろうし。でも、なんでしょうね。自分の一番の愛聴盤を選んだらこれになっちゃいました。
なんだか内容がよくないかのような書き方になっちゃったけど、逆。内容はクッソいい。音楽ってこうだろ!っていうど真ん中っていうか、見栄とか衒いとか飾りとかそういうものがまったくない。かといって剥き出しのこのハートをさらけだして.....みたいな暑苦しい、押し付けがましい感じでもなく。あくまで粋で洒脱なインスト中心なのが素晴らしい。
ブッカー・T・ジョーンズ本人のオルガンがたまらなくいいのは言うまでもないことなんだけど(一音一音の情報量がハンパない)、やっぱりこの作品はドラムがすごい。このドラムのグルーヴだけで飯何杯でもいけるやろ.....ってクレジット見てみると、なんとザ・ルーツの?uestlove(クエストラブ)が叩いてる。往年のStaxサウンドのスターが人力ヒップホップ連中と切り結んだ、タイトル通り「メンフィスから(現在今ここまでの)道」としか言いようのない一枚なのだ。
ローリン・ヒルの名曲Everything Is Everythingのカバーも最高だし、MetersファンクなDown in MemphisでのブッカーTのボーカルの味わいったら.....。Lou Reedはじめゲストも豪華&適材適所。いつまででも聴いていられる。
Khruangbin / The Universe Smiles Upon You
クレイジーケンバンドの横山剣が以前「この一年クルアンビンばっかり聴いてた」とどこかのインタビュー だか記事で語っていたけど(ミュージックマガジンの年間ベスト記事だった気がする)、その気持ちめちゃくちゃわかる。自分もこのファーストから3枚目くらいまでを延々ずっと無限に聴いていた時期があった。
いつでも、こちらの気持ちやコンディションがどんな状態でも、すっと自然に入ってくるひとなつっこさと、一度味わうと抜け出ることができない中毒性の高いグルーヴが同居している。いつの間にか部屋にいるヒモみたいだ。いなくなるなんて耐えられない。
1枚目と2枚目。どちらも本当に捨てがたいのだけど、どこかアジアの架空の「ワールドミュージック」を彷彿とさせる懐かしいけど聴いたことのない不思議なメロディ満載のこのファーストで。
「いつでも聴ける」のは音数が少ないから。余計な音がないトリオ編成だから、本当にまったく聴きづかれがしない。目立たないわけではまったくないが、前に出てくるわけでもない、ばっちり調整されたベースの音色が素晴らしい。ギターのトーンと合ってるから、聞き苦しいところがまったくないし、最小限の音数で三人の存在感がきちんとある。
「いなきゃいないでさみしいが、いればいたでウザすぎる」というのが、どうやら自分の価値観の「コア」のようなのだが、見た目からしてキャラ立ちしまくってるし、どこまでも個性の塊なのに、こちらが音楽を聴かなくても怒られなさそうというか.....まったく耳を傾けず、隣で飯食って酒飲んでダベって完全無視しても、淡々といつも通り演奏してくれてそうな、そのたたずまいがいい。
Frank Zappa And The Mothers Of Invention / Cruising With The Ruben And The Jets
フランク・ザッパ、だいたいほぼ全作品をCDで購入したくらい大好きなんだけど、結局一番繰り返し聴いているのは本作かもしれない。カル・シェンケルのジャケからして最高な本作は、ザッパがラジオ局でかけてもらうために、「ルーベン&ザ・ジェッツ」と名乗って発表したもので、ジャケットにはご丁寧に“Is this the Mothers of Invention recording under a different name in a last-ditch attempt to get their cruddy music on the radio?”(これは「マザーズ・オブ・インヴェンション」が、別の名前でレコーディングして、自分たちのひどい音楽を何とかラジオで流してもらおうとする、最後のあがきなのか?)なんて文字まで記載されている。
実際、マザーズとは気づかずに「いいじゃんいいじゃん」とラジオでかけてしまったDJもいたとかいないとか。人は本質ではなくラベルで判断する生き物なのだ。悲しい気持ちが一瞬するが、ザッパの本作のことを考えると痛快だ。
ジャズ、現代音楽、ブルース、ロックなどを高度なレベルで融合させた独自の超絶技巧音楽。ザッパ音楽のイメージはそういうものだろうけど、全曲「定型の」ドゥワップに徹した本作は、たぶんザッパのディスコグラフィー的には「外れ値」というか、「まずはここから聴きましょう」の真逆にあるかもしれない。が、極論を言ってしまえば、結局ザッパも、ラブソングも、本作に尽きる。そう言いたくなる。
ラブソングなんて「自分がいかにバカなのか」(How Could I Be Such A Fool?)を陶酔しながら社会に公開するという愚かな社会的自殺の推奨アイテムでしかない。結局のところ、それが本質だ。だからその本質だけで構成された本作は、自分が思うに皮肉ではなく最もピュアな作品なのだ。
基本、音質とか音盤とかあまり気にしないタイプなんだけど、この作品に限ってはどのバージョン聴くかで印象が本当にまーーーっったく違う。2016年のBernie Grundmanのマスタリングでできれば聴いて。てか、そうじゃないのも聴いて。それで違い実感して。
OKI / TONKORI
人生の10枚を選ぶという遊びだけど、もし10枚どころか、たった一枚しか選べないないとしたら。自分はOKIのTONKORIを選ぶ。それくらいの一枚。癒される。「癒し」というと「癒しブーム」のようなイメージがあるから「なんだよ癒しって」「ふざけんなよ」と言いたくなるかもしれないが、本当の癒しは英語にすればEmpowermentである。傷が癒え、疲れが消え、自律神経が整い、頭からノイズが消え、勇気がわいてくる。明日も戦えそうだ。
OKIはアイヌのトンコリ奏者。トンコリはアイヌの弦楽器。5弦しかないし、フレットもなければ弦をおさえる構造にもなっていないから、音程を途中で変えることはできない。事前にチューニングはできるものの、ガチで「5つの音程」しか基本的には出せないという、非常に制約が多いというか、制約だらけの楽器なのだが、しかし、それなのになんでこんなにかっこいいんだ、気持ちいいんだ、謎すぎる。
使用されている楽器も、主にはムックリ(アイヌの口琴)くらいでかなり制限されている。何度も何度も同じ音程の同じトンコリの同じ弦の響きが「戻ってくる」のだが、そこにあるのは「同じ」なのではなくて、ただ差異と反復なのだという、なんかガラにもなくドゥルーズっぽいこと考えてしまう。「同じ」とか「繰り返し」なんて幻想なんだよな。
サブスクにはないようなので、同じ音源も入ってる、ワールドワイドで成功したこちらの編集版のリンクを。
というわけで、人生の10枚、いかがでしたか。40枚とか50枚とかいうと、みんなペットサウンズ入れるでしょ。ビートルズ入れる。でも、10枚までそぎ落とすと、本当に自分にとって大事なものが何なのか、その価値観、自分の「すき」が見えてくる(その結果ペットサウンズがやっぱり入ることは当然ある)。というわけでぜひみなさんの「10枚」も教えてくれ。
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