ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

104 / 155
遂に最終章一歩手前まで来ました。書かないといけないことが多いんで、後2章としておきます。


第七章:ポケモン廃人と仮面の獣達
第98話:君のオオワザはブタの技ァ!!


 ──イクサ達が飛行船シャイン・マスカット号に連れ込まれた次の日の事だった。

 

 

 

「君のオオワザは、ブタの技ァ!!」

「ええええええええーッッッ!?」

 

 

 

 ──飛行船の甲板はバトルコートになっている。

 そこにイクサとデジーを呼び出したのは、胡散臭い白衣の博士・イデアであった。

 勿論、それを見届けるべくレモン、そしてシャインもその隅に立っていた。

 

「え、えーと、いきなり罵倒されたんですけど……アレ、パモ様と二人で必死こいて特訓したんですよ」

「オオワザってのはねぇ、文字通り生ける災禍クラスの被害を叩きだす超強力な技だ。威力だけじゃない、追加効果も強力そのもの」

「当たれば相手は麻痺しますよ」

「本場のオオワザは、そんなもんじゃないよ。僕から言わせれば、このオシアスでオオワザを扱いきれているのはアトムしか居ないと思っているね」

「だとしたらヤバ過ぎでしょ、オオワザ……」

 

 デジーがげんなりした顔で言った。

 ──そもそも、オオワザとは何なのか、とイデア博士は語る。

 アローラ地方のZワザ、ガラル地方のダイマックス技に並ぶ超強力な技であるが、その最大の特徴は限られた強力な個体のポケモンにしか使えない点であるという。

 

「その最たるがサイゴクのヌシポケモンさ。彼等は只でさえ強い個体なのに、更にキャプテンに鍛え上げられていること、そしてキャプテンが代々オオワザを伝えてきたことで、絶やさずにそれを受け継いできたからね」

「成程……本来オオワザはそこまでしないと使えない、と」

「ちなむと、1000年近く長生きしているから伝授する必要が無いヌシポケモンも居るんだけど」

「えっ」

「どっちにしても、彼らが繰り出すオオワザというのは時に天変地異を起こすレベルさ。決まれば一撃必殺、ただし──決まらなければ、大きな隙を晒す」

「でも、そんなに強力な技なら、この飛行船で練習しても良いんでしょうか……? ぶっ壊れますよね、この飛行船……」

「……」

 

 イクサの問に、イデア博士は、ちらり、と飛行船の持ち主たるシャインの方を見やる。

 彼は──ふるふる、と首を横に振った。

 

「……ちょっとくらいならオーケーだってさぁ!! さあ、特訓に入ろうかイクサ君!!」

「良い訳ないだろう!? この飛行船は、ビビヨンやキレイハナ、もしくはこのシャイン・マスカットの顔面と同じくらい丁重に扱いたまえッ!!」

 

 凹んだままの顔面で憤慨されても、全く威厳と言うものが感じられないのであった。哀れ。

 

「じゃあ大丈夫ね。安心したわ。二人とも、励みなさい。甲板をブチ抜くくらいに」

「何処にも大丈夫な要素はないが!?」

「よーしパモ様、オオワザの練習頑張ろうね!!」

「ぱもーぱもぱもっ!」

「君だけは良心であってほしかったな転校生ッ!!」

 

(良心から一番程遠いヤツが何か言ってるねー☆)

 

(真面目に言うと、病み上がりのイクサ君にはギガオーライズしてほしくないのだけど……狼狽するシャインが見られたから良しとしましょう)

 

(ぶっちゃけこの人の船だと思うと、罪悪感が毛ほども湧かないんだよな)

 

 ──結局、甲板でのオオワザの使用は禁止となった。まことに残念であるが。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「あーあ、参ったなあ。オオワザを完成させれば、アトム会長打倒に一歩近付くのに」

「仕方ないわよ。飛行船が壊れたら困るのはシャインだけじゃないもの。困るのがシャインだけなら喜んで”やれ”と言ったのだけど」

「折角やる気満々だったのにねえ、イデア博士」

 

 今頃、博士は体育座りで甲板に座っている所である。

 

「まっ、昨日の今日だし、束の間の平穏って奴を楽しもうよ!」

「嵐が来るって分かってるのにこれを平穏と呼ぶのかしらねえ、果たして」

「何処かにオオワザの練習ができるような都合の良い場所は無いんでしょうか? 幾らぶっ壊しても誰も困らない場所とか」

「クラウングループの本社とか?」

「生徒会本部とかかしら?」

「僕たまに二人の発想が物騒過ぎて驚くんだよね」

「じゃあ転校生は何処が良いってのさ?」

「アトム会長の実家」

「殺意が籠ってる……」

 

 はぁ、と3人は同時に溜息を吐く。

 なかなか世の中、思うようにはいかないものである。

 

「うーんまあ、ありあわせの材料と諸々で何とかならないことも……?」

「え? 何作ろうとしてるんだよ、デジー……?」

「なーんでもないっ! それをやるにしたって例のロボットの方を済ませなきゃ」

「そう言えば、アレの進捗ってどうなのさ」

「座して待たれよ、だよっ!」

 

(つまり予定は未定って事だな……)

 

「なんか面倒事は全部貴女に任せっぱなしで心苦しいわね……」

「ボクが好きでやってるから問題なしっ! その代わり、転校生を独り占めする権利を──」

「調子に乗らない」

「はいはい、分かってるってば。レモン先輩が可哀想だし、たまには譲ってあげるよ」

「僕は景品か何かか……?」

「拗ねないの」

「別に拗ねてませんけど」

 

(この二人を御せる貫禄って奴が僕には無いんだよなあ……イタズラ兎と、蛇の女王……)

 

 結局、何処までいっても二人からは、どっちかと言えば可愛がられる側に回っているのが、イクサにはどうも気に食わないのだった。

 

(はぁ……この低身長と女顔が恨めしい……イマイチ、威厳ってヤツが無い。おかげで、締める時に締められない……)

 

「とゆーわけで、ボクはこれからしばらく作業するからっ! んじゃーねっ!」

 

 ──件のロボットは、オシアス磁気を纏っていたからか、その反応に釣られたイデア博士によって回収されていたという。

 凡そこれがデジーの修理していた品物と察していたらしく、「こんな所に置きっぱなしは危ないよねえ」と工具諸共回収。そして、いつでも逃がせるように手持ち達に守らせていたらしい。

 結果的にモーモーファクトリーはオオミカボシのオオワザで破壊されたので、胡散臭いのに、肝心なところでファインプレーだけを決め続ける博士であった。

 そんなわけで、デジーは無事、残る作業に取り掛かるべく、空き部屋に籠ることになるのだった。

 

「──オオワザ、ね。そうだわ、適任が居ると言えば居るじゃない」

「ああ、コナツさんか! 疲れてるのか、あまり部屋から出て来なかったけど……あの人もキャプテンだったよね」

「ええ。何か分かる事が無いか見てみましょうか」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「オオワザ、ですかぁ……」

 

 

 

 聞かれると困ったようにコナツは首を傾げた。

 

「……正直、もう完成しているものかと思ってましたぁ」

「いやあ、アレは……」

「やっぱり漫画の必殺技じゃあダメだったかしら」

「あれェ!? 僕らが練習してたアレって、もしかしてとんでもなく適当な代物だったんですか、レモンさん!?」

 

 とんでもない爆弾発言にイクサは目を見開く。

 

「適当とは失礼な! オオワザなんだから多少の突飛さは必要かと……結果的に上手くいきそうだったから”あ、コレで行こう”と思ったのよね。貴方達、見事に習得してみせたでしょ」

「もっと拳法的に法った型式ばったものなのかと!!」

「ぱもーぱもぱもっ!!」

 

 ──それが、このオオワザ”ボルテック・ガンマバースト”の習得秘話であった。

 アジュガとの特訓の時点では結局オオワザは完成させられなかったため、レモンと拳法の特訓をするついでに、必殺技──もといオオワザ──を考えていたのである。

 その時にレモンは自信満々にあたかも一子相伝のオオワザであるかのように、空中からの垂直落下パンチをパーモットに教えたのだった。

 ……その元ネタが自分の好きな少年漫画の必殺技であることを伏せて。

 

「急ごしらえの割にはうまくいったとは思ってるわ。事実、()()()()()()()だもの。それに従えば、落雷の如き拳撃が決め手になるのは当然の帰結でしょうよ」

「当たり前の事をそれっぽく言ったら説き伏せられると思ってませんか!?」

「大丈夫、貴方達なら出来ると信じてたわ」

 

(クッソ……他の面子の濃さで忘れてたけど、そもそもレモンさんも大概ハチャメチャ暴れ野郎だった……!!)

 

 確かにイテツムクロ相手には効いたのであるが、オオミカボシ相手には結局決定打は与えられていないのである。

 ヌシポケモン達が見せるようなオオワザには到底及ばない。何処までいってもその場凌ぎ、急ごしらえの技でしかなかったのである。

 しかし、その急ごしらえであれほどまでの威力を発揮することが出来るのがギガオーライズの出力の高さなのであるが。

 

(でも急ごしらえに関しては僕も人の事言えないんだよな……ハルクジラに使わせたオオワザも、言ってしまえば物凄い”ひょうざんおろし”みたいなもんだし……)

 

 そもそもハルクジラは”ひょうざんおろし”を習得しない。自らの身体をも凍り付かせる程の冷気が為す力業によるオオワザであった。

 

「オオワザというものは、そもそも一子相伝。キャプテンはその習得のさせ方を親から習うんですねぇ。でも、それを可能にするのはきずなリンクで高まったポケモンのパワーなんですよぉ」

「そもそも論、普通のポケモンが覚えられるものではない、と」

「ええ。だから、イクサさん達のポケモンがオオワザを会得するなら、きずなリンクの代わりとなるギガオーライズを完全に使いこなし、その力の流れを理解し、ゼロから技を作らなきゃいけないんですねえ」

 

 そう考えれば考える程に”クロックワーク・リバース”の恐ろしさが体感として身に染みる。

 アレを完成するのに、アトムがどれ程の心血を注いだのかは想像に難くない。

 無論、オオミカボシそのものに手を加えた可能性も否定できないのだが──

 

(あのプライドの高さだ。きっとあの人は……自力でオオワザを完成させたんじゃないかと思うんだけどな)

 

「だから、私の方から力になれる事はあまり無いんですねえ……私はあくまでも、ヌシ様の専属ですから」

「うーむ、悪かったわ。無理言っちゃって」

「こちらこそ、お力になれずにすみませんっ。一刻も早くヌシ様を取り返す為にも……出来る事を頑張りますねぇ」

「貴女根性あるわよほんっと……成り行きとはいえ、親元いきなり離れてこの飛行船に乗り込むんだから」

「……デジーちゃんが居るから、ですよ」

 

 ぽつり、と彼女は小さく零す。

 

「とにかくっ。美味しいもの沢山作りますからぁ。期待していてくださいな♪」

「ありがとう、くれぐれも無理はしないで頂戴」

「助かるよ、コナツさん」

「いえいえー♪ デジーちゃんの恩人は、私の恩人ですからぁ」

「あ、それと」

 

 イクサは振り向く。

 

「困ったことがあったら何でも僕達に相談してよ。僕らに言えないことならデジーも居るしね」

「……ええ、勿論ですよぉ。イクサさんは優しいですね♪」

 

 部屋を出て行く二人を見送ったのち──コナツは嘆息した。

 親友を、その恩人をも切り捨てようとしたのは果たして一体誰だっただろうか?

 強敵を前に足が竦んだのは、一体誰だっただろうか?

 許せないのは──己の弱さになりつつあった。

 

 

 

「……私だって……」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「……コナツさん、思い詰めてるみたいでした」

 

 

 

 イクサの言葉に、レモンは思わず首を傾げる。

 

「どういうこと?」

「あんまり眠れてないみたいです。後は、初めて会った時のような元気さと違う。あれは空元気ですよ、どう見ても」

「……じゃあ言えば良かったじゃない」

「そうですかね? 差し出がましく思えて……流石にもう少し様子を見ようかと」

 

 他者を観察することに長けているイクサは、嫌でもコナツの異変が分かってしまう。

 あれだけの出来事が重なったのに、疲弊していない方がおかしいのである。

 改めて、この異常事態に慣れ切ってしまっているな、とイクサは考える。

 

「それに、コナツさんは正面から切り込んで素直に話すような人じゃありません。笑顔できっと押し込んで、隠してしまう」

「……そうね」

「頑張ってくれるのは良い。それが悪い方向に転ばないか聊か気掛かりで」

「何とも言えないわね、こればっかりは」

 

 自分がそうだったからか、レモンは渋い顔で答えた。

 

「……何をするか分からない。だから、目付役が必要ってこと?」

「そこまでは言いませんけど……いや、でも、本音を言うと、デジーに近くに居てほしい気持ちはあります」

「……でも、当のデジーは作業中」

「それに、コナツさんも意図的にデジーと接触するのを避けているフシがあります。やっぱり……先の件が尾を引いているんでしょうか」

「引いてるでしょうね。私なら合わせる顔が無い」

 

 一度、クラウングループの脅しに屈してしまったとはいえ、デジーを襲撃したことを彼女自身も引きずっているのは誰の目から見ても明らかだった。

 

「……でも無茶が今、一番祟ってるの実は貴方なのよ」

「いやあ、僕は大丈夫ですよ。ギガオーライズの負荷だって、もう慣れましたし。ヘーキヘーキ」

「私は貴方が一番心配なのよ」

「子供じゃないんですから、大丈夫です」

「……好きな子の心配をしたら悪い?」

 

 そう言われ、イクサは口を噤んでしまう。

 

「以前の自分を客観視してるみたいで、胸が痛いのよ。私は──傍からは、こう見えていたのね」

「ッ……今は僕が頑張らないと──」

「それで貴方が壊れたらオシマイよ」

 

 イクサの手を握ると──レモンは呟く。

 

「……お願いだから、これ以上私の前から誰も居なくならないでほしいの」

 

 胸に渦巻くのは無力感。自分が一番大事なものを、一番肝心な時に守れないことがどれほど悔しいか。

 身を以て分かっているつもりだ。

 今の彼女には、何も無い。自らの最愛である相棒も、そして手塩にかけて育てた手持ち達も。

 彼らを守ってやれる権力も無い。

 イクサは──分かっていた。

 レモン・シトラスの本質は何処まで行っても、寂しがりな只の年相応な少女なのだったと。

 

「貴方にはしかるべき時に働いてもらう。それまではキッチリ休む」

「……分かりましたよ。他でもないレモンさんの頼みですから。でも、しかるべき時ってのは──」

「今、この船はエナメルシティ……クランベリグループの本拠地に向かってるのは知ってるわよね?」

「ええまあ」

「……シャインは、クランベリグループと同盟を組むつもりよ。その為に、交渉要員として私も連れていく」

「ってことは──」

「ええ。クラウングループに対抗するための、実質三社同盟といったところかしら」

 

 無論、締結されれば私達シトラスグループも裏からクラウングループ解体に向けて動けるわね、と彼女は続ける。

 

「すごい! そんな事が──」

「でも、向こうは1つ条件を提示してるの。それが達成されない限り、私達がクランベリグループを味方に付けることはできない」

「一体どんな無理難題を吹っ掛けてきたんですか?」

「……」

 

 レモンは眉間を摘む。

 

「……ラズよ」

「へ?」

「行方不明の御曹司、ラズ・クランベリを家に連れ帰すこと。それがクランベリグループが吹っ掛けてきた条件だったの」

 

 

 

(何やってんのあの人ォォォーッッッ!?)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──沿岸部・エナメルシティの地下には、メタルレジデンスと呼ばれる地下街が存在する。

 そこには、治安が悪く、無法者や荒くれ者、果てにはトレーナーが逃がして野生化し、繁殖したポケモンが生息しており、都市問題と化している。

 

 ──そこに、夏休みのオーデータ・ロワイヤルにて腹心たちから反旗を翻される憂き目に遭い、以来学園から行方を晦ませていた、ファイヤー寮の寮長・ラズの目撃情報が上がったのだという。

 

 ──驚いたことに、このラズという男、学園どころか実家からも姿を晦ませていたらしく、一族も会社も大騒ぎ。そこに上がったひと筋の光明、縋らないわけにはいかない。

 

 ──しかし、メタルレジデンスは見ての通り凶悪なトレーナーやポケモンの巣窟。更に、警察はクラウングループと繋がっているので頼ることも出来ない。

 

 ──故に彼らは考えた。

 

 

 

 ”せや!! 協力の条件で、先方にラズ様連れ戻すの手伝って貰えばええんや!!”──と。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。