ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

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第93話:天に瞬く星を堕とせ

【生徒会長のアトムが勝負を仕掛けてきた!!】

 

 

 

「……私はね、ゲームが好きなんですよ、ゲームが……今度は逃げたりしないで、私を楽しませてくださァいッ!!」

 

(事実、トレーナーを狙えばすぐに終わりますが……それでは面白くないのでねェ……ッ!!)

 

 

 

 ガチャガチャと歯車を回しながら、直上に瞬間移動すると”サイコイレイザー”を降り注がせるオオミカボシ。

 だが、さっきと同様、ザングースが庇う事でエスパータイプであるこの技は無効化される。

 全身機械であるオオミカボシは、確かに狙いこそ正確無比ではあるものの、小回りが利かないという欠点を持つ。

 視界内の対象に対しては緻密な射撃を繰り出す事が出来るが、埒外から乱入してくるザングースには対応できていない。

 だが故に──今度は、それを計算に加えた上で攻撃を行うのだった。

 

「再補正。次は偏差を掛けなさぁい!!」

 

 ”サイコイレイザー”は周囲の岩場に跳ね返り、パーモットとミミロップを狙って迫りくる。

 しかし、それさえも勘定に入れた反射レーザーを2匹は次々に躱し、オオミカボシに接近する。

 

「ッ……!! そのスピードは……運動能力はァッ!! やはり、やはり!! そこらの3年生のポケモンよりも既に鍛えられてますねェェェッ!! でも、速度はこちらの方が上ですよォッ!!」

 

 瞬間移動し、背後に回り込むオオミカボシ。

 だが、その気配に反応した二匹は一気に足を踏みかえて、オオミカボシがレーザーを射出する前に肘鉄と鉄拳を叩き込む。

 

「ッん、な!?」

「やっぱりだ。オオミカボシはいつでも瞬間移動できるわけじゃない。攻撃の瞬間、あるいはその準備の一瞬が無防備になるんだ」

「じゃなきゃ、今の攻撃は避けられてるよね!」

「所謂初見殺しに特化した性能と言えるけど……見切ってしまえばこっちのもの。後は遠距離から狙撃が出来るなら……どうして()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 もっと言えば、瞬間移動と長距離からの狙撃が両立できるならば、遠距離の安置からレーザーを砲撃し続けることが最適解であるはずだ。

 にも拘らず、それをしなかった理由は何故か。

 

「……ッ!!」

「単純に()()()()()()。オオミカボシの弱点は攻撃の瞬間が無防備になる事。そして、射程があまり長くない。だから、()()()()()()()()()()()、まともに攻撃出来ないんだ」

 

 サイコイレイザーを始めとして、オオミカボシの技は非常に速度と火力が高い。

 しかし、光を使った技であるが故に直ぐに拡散して威力と命中率が減衰してしまうことが弱点だ、とイクサは判断する。

 瞬間移動はむしろ、そう言った弱点を補うためのオオミカボシの能力なのである。

 確かに初見は、オオミカボシの多彩なタイプの技、そして瞬間移動に面食らい、多くのポケモンは対抗できないだろう。

 だが、鍛え上げられ、その動きを見切ったポケモンとトレーナーならば──気付くのである。

 機械仕掛けで”正確に相手を狙いすぎる”が故に発生する、オオミカボシの隙を。

 

「フ、ふふっ……!! そこに辿り着いたところで、並大抵のポケモンならば追いつけませんからねえ。事実、貴方達はオオミカボシに致命的な一撃を与えられていませんッ!!」

「そーだねぇ……速いし、実際硬い。ミミロップもパモ様も、痛がってるよ」

「ぱもぉ……」

「みーみみ……」

 

 拳を摩るパーモットに、ミミロップ。

 頑強な身体に打撃を加えるのは、幾ら格闘戦に特化した二匹と言えど骨が折れる作業のようだった。

 

「だから、やっぱり……その足を奪う事にした」

「!?」

 

 ズシン、とオオミカボシの身体が大きな音を立てて地面に落ちる。

 その身体には”くろいてっきゅう”がいつの間にか括りつけられていた。

 

 

 

【ミミロップの すりかえ!!】

 

「悪戯完了っ♡」

 

 

 

 

 ビキビキビキ、とアトムの額に青筋が浮かんでいく。

 いつの間にと問う間もなかった。今度はパーモットが肉薄して、頬をオオミカボシにこすりつける。

 

「”ほっぺすりすり”!! これで機能停止だ!!」

「──状態異常、更にマイナスアイテムの押し付け──!!」

「弱体化は、ポケモンバトルの鉄則だからね」

「幾ら瞬間移動が使えるって言っても……変化技の”すりかえ”からは逃げられないッ!! そして”くろいてっきゅう”で、そっちの素早さは半分になるんだかんねっ!!」

 

(すごいです、お二人とも──! 一気に主導権を握った──!)

 

 ザングースも後に続く。

 体中に毒を帯びた血を駆け巡らせて、目は赤い残光を残してオオミカボシに肉薄した。

 麻痺に加えて”くろいてっきゅう”を押し付けられたことで大幅に素早さが下がったオオミカボシは、最早瞬間移動をするどころではない。

 ただ動くだけで精いっぱいだ。

 

「これは痛いですよう!! メガトン級”じしん”パーンチッ!!」

 

 地鳴りを起こす程の掌底による殴打。

 それが、オオミカボシに叩きつけられる。

 効果は抜群──

 

「ハグルルルルルルル!?」

「ッ……バカな、押されている……!? 寮長達ならばいざ知らず、有象無象の混じった貴方達に、オオミカボシが押されているというのですか!? この私が、こんなカス共に──ッ!?」

「よしっ、このまま火力を集中させれば──」

 

 パーモット、ミミロップ、ザングースの3匹が同時に拳を、膝をオオミカボシに向けて飛び掛かる。

 しかし。

 

 

 

「──と、私が狼狽えるとでも……思ったんでしょうか?」

 

 

 

 カッ、と一瞬オオミカボシの身体が光る。

 ギガオーライズの煌めきだ。溢れ出るオシアス磁気に気圧され、ザングースもパーモットもミミロップもそれ以上近付くことが出来ない。

 

「この光は──!」

「……恒星の如く燦然と輝き続けなさい、オオミカボシ」

 

 

 

【オオミカボシ<ギガオーライズ> 鋼/エスパー】

 

 

 

 星雲が溢れ出し、オオミカボシの目が不気味な残光を残す。

 アトムの余裕綽々な態度の正体。それは、不滅の星神の奥の手である。

 

(ギガオーライズした……レモンさんが言ってた、オオミカボシの本気──ッ!!)

 

(あの激ヤバなオオワザを打開する方法が未だに思いついてないんだけどーッ!!)

 

(あ、あわわ……! 姿が変わっちゃいましたぁ……!)

 

「……此処からが私達のハイライトです。オオミカボシよ、時さえも貴方の玩具ですッ!! 弄びなさいッ!!」

 

 麻痺しているはずのオオミカボシの歯車が慌ただしく回り始める。

 それを見たパーモット、ミミロップ、ザングースは敵のオオワザが発動する前に急接近、最高火力の技を叩き込む。

 ”じしん”、”とびひざげり”、”かみなりパンチ”──しかし、それを全て受けて尚、オオミカボシは倒れる様子が無い。

 

(硬い──ッ!? やっぱり特性”オーライジング”で耐久が上がってるからか!?)

 

「おやおや、良い攻撃ですねぇ……しかし、どんなポケモンも時の歯車には敵いませんよ?」

 

 がちゃん、がちゃん、と音を立てて歯車が噛み合った時──世界は大きく変わる。

 

 

 

【オオミカボシの クロックワーク・リバース!!】

 

 

 

 オオミカボシの周囲の空間が歪み切ったかと思えば、歯車が逆回転していくと同時に損傷した箇所が修復されていく。

 まさに時計の針を逆に戻すかの如き時間への挑戦であった。

 その身体は、戦闘開始時にまで完璧に修復されていく。

 代償にギガオーライズも解除されたが──アトムの黒いオージュエルは赤熱していないままだ。

 そして、周囲に居たパーモット達は、虚脱したかのように地面に手を突いてしまっている。

 

「ああ、しっかりしてミミロップ!!」

「どうしたんですか、ザングース!?」

 

(ギガオーライズを此処で切らなくて正解だった……!! もし使ってたら僕も……引きずり込まれてた)

 

 ”クロックワーク・リバース”はオオミカボシの時間を巻き戻して完全回復するだけではない。

 敵対する者達の時間を進める事で戦闘経過による疲労を蓄積させるオオワザだ。

 その過重負荷はすさまじく、今この瞬間もパーモットとミミロップはまともに歩くことさえ叶わないようだった。

 ザングースに至っては体を駆け巡る毒が仇となって瀕死になる寸前である。

 

「……お終いです。じっくりと一匹ずつこんがりと焼いて差し上げますよ」

 

 上空へ瞬間移動したオオミカボシが、雨のようにビームを降らせる。

 最早起き上がる気力もない3匹を、3人は一度ボールに引っ込めて、手元に戻した。

 が、このままではじり貧は避けられない。アトムのオージュエルは再びギガオーライズが出来る状態。

 このままでは、幾らあの体力を削り切ったとしても、全回復される上に、こちらのポケモンは大きなデバフが付くも同然。

 

「一旦引きましょうッ!! ザングースちゃん、”すなあらし”!!」

「にゃぁ……」

 

 明らかに気迫が無いザングース。

 だがそれでも僅かに時間稼ぎをするべく、オオミカボシが苦手な砂嵐の壁を周囲に展開する。

 二度同じ手がアトムに通用するとも思えないので、時間的猶予は一切無いのであるが。

 

「ねえ、なんか控えのポケモン達もバテてるんだけど!? おかしくない、あのオオワザァ!!」

 

 半透明のボールの中身では、ポケモン達がぜぇぜぇと息を切らせている。

 クロックワーク・リバースの影響はこちらにも影響しているのかもしれない、とイクサは考える。

 とはいえ、現在トレーナーである自分達には疲労の効果が見えないのを鑑みるに、ポケモン限定で作用するのかあるいは──

 

「もしかして()()()()()()()()()()()()()()んじゃないの? あるいは会長が人間には手を出さないようにしてるとか?」

「どっちも有り得るな……オオミカボシの性格の問題か、会長のプライドの問題か。トレーナーを攻撃したら、この楽しいゲームが直ぐ終わるのを分かってるだろうし」

「幾ら攻めても、あのオオワザを使われたら、きりがありません……!」

 

 時間を弄ぶオオミカボシへの対抗策など、イクサも考えていない。元より考えるつもりもない。

 反則技を捻じ曲げる方法などあるならば彼が知りたいくらいだ。

 だが──幸い、レモンから聞いた敵のオオワザの詳細によって、今のパーモット達が陥っている状況については理解していた。

 

「無い事は無いんだけど……コナツさん」

「えぇっ!? 私ですかぁ!? 幾らザングースちゃんでも、あんなの受けたらヘロヘロになっちゃいますよぅ!?」

「相手がインチキ回復をするなら、こっちも同じことをすれば良いんだ。……()()()()()()()()()()()敵に回した事、後悔させてやろうよ、コナツさん」

「ふぇえ!? 何をするんですかぁ!?」

「賭けだけどね。もしかしたら効くかもしれないくらいに考えてよ」

「……それって策とは言えないんじゃ……」

「勝負ってのは使えるもの全部、効率的に使えた方が勝つものだ」

「当然のことを今更言わないでよ」

「アトム会長も僕もゲームが好きだけど、生憎こっちは向こうの土俵に乗ってやるつもりは最初から無い。土俵をぶん投げたのは向こうが先だからさ」

 

 虚勢であった。

 しかし、此処で張らずして何時張るのか。イクサは勝負に出る。

 

「どんなにみっともなくて惨めでも、どんなに情けなくても、勝ちは勝ちだよ」

「勝てればねぇー……負けたらみっともなく惨めったらしくボクらが這いつくばるだけ」

「君はどうする、デジー?」

 

 差し伸べられた手をデジーは迷わず取った。

 

「前に言ったでしょ? ボクが何とかしてあげる、って。転校生の無茶な戦術、ボクが現実にしてあげる」

「わ、私も──イクサさんに賭けてみますっ」

「皆もこう言ってるし、もう少し頑張ってくれるかな、パモ様」

 

 ふらふらだが──それでもパーモットは腕を振り上げ、サムズアップ。いつものスマイルで頷いたのだった。

 

 

 

「……さあて、()()()()の時間だ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「エンペルト、”あまごい”ですッ!!」

 

 

 

 ”すなあらし”を書き換える手っ取り早い方法。

 それは後から天候を変える技を撃つことだ。

 

(時間稼ぎでしょうか? ああ……どんなに戦ったところで、”クロックワーク・リバース”の前では勝ち目がないというのに!)

 

 相も変わらず余裕綽々の様子で砂嵐が晴れるのを眺めるアトム。

 後には疲れ切ったポケモン達と、絶望しきったトレーナー達が残るだけ。

 回復したところで体に蓄積された過重負荷はそう簡単に消えやしない。交代しても控えまで満身創痍になっているところを見て絶望するところまでがワンセットだとアトムは考える。

 

「さあ、見ていますかァ、レモンさんッッッ!! 貴方の騎士(ナイト)が、オオミカボシに這いつくばる所を、早く見せてやりたいですねェェェーッ!!」

 

 

 

【──パーモットの かみなりパンチ!!】

 

 

 

 ──雷が落ちたようだった。

 ペンギンのような姿をしたポケモン・エンペルトは、直上から降り注いだそれをまともに受け、全身が黒焦げになって昏倒してしまう。

 それを一瞥したアトムは、信じられないものでも見るような目でイクサ達を睨んだ。

 

「……あの砂嵐の中で何をしたんですか?」

「企業秘密さ」

「ぱもーぱもぱもっ!!」

 

 全身から雷光を迸らせる冠を被ったパーモット。

 そして、黒い輝きを放つオージュエル。

 オオワザが発動すれば全てがひっくり返り、疲労が蓄積し続け、いずれは動けなくなるだけのこの状況で──身体に過剰なブーストを掛けるそれは悪手そのもの。

 否、そもそも──”クロックワーク・リバース”を受けて肩で息をしていたパーモットが技を撃てるようになるほど回復しているのかが疑問であった。

 だが、考えている場合ではない。パーモットの動きはさっきのそれより遥かに速いどころか、電光そのもの。

 瞬間移動をするオオミカボシに真っ向から追いついている。

 

「電光雷轟のギガオーライズ……ッ!! ハタタカガチと同じですかぁ!!」

「転校生だけじゃないもんねっ! ゴビット、”のろい”攻撃!!」

 

 デジーが繰り出したゴビットが、自らの身体に巨大な五寸釘を撃ちこむ。

 それと同時に、オオミカボシの歯車にも五寸釘が打ち込まれるのが見えた──

 

「しまっ……いけません!! この……害獣(イタズラウサギ)めッ!!」

 

【オオミカボシの サイコイレイザー!!】

 

 一瞬でゴビットの正面に現れたオオミカボシは、火力を集中させ、ゴビットを射抜く。

 ”のろい”によって体力を半分に削っていたゴビットはそれで力尽きてしまう。

 だが、デジーに降りかかる弾頭は庇うように躍り出たザングースが全て受け止める。

 

「デジーちゃんを虐める人は……誰が相手でも許しません……!!」

「サンキュー、コナツ……!」

 

 悪タイプのザングースに”サイコイレイザー”は通用しない。

 タイプ相性が先程からずっとアトムとオオミカボシの無双を阻止しているのは明白であった。ザングースを目下最大の障害と認定したオオミカボシは、今度はザングースを排除するべく”はどうだん”を撃ちこむ準備を始める。

 だが、それを許すイクサとパーモットではない。

 

「阻止しろ”かみなりパンチ”ッ!!」

 

 背後から電気を全身にチャージしていたパーモットが、オオミカボシの背後から襲撃する。

 猛る雷光が一直線にオオミカボシを貫いた。攻撃の瞬間は、得意の消失マジックも使えない。

 だが──流石に特性を発動しているオーデータポケモンは堅固そのものであった。

 損傷して歯車こそ零れ落ちているものの、倒れる様子が無い。

 しかしアトムとしては座視できない状態であった。ゴビットが倒れても尚、”のろい”の効果は続く──

 

(いけません、”のろい”は自らの体力と引き換えに、時間経過でポケモンの体力を削る技──ッ!! 此処で一度リセットですッ!!)

 

「ギガオーライズです、オオミカボシ!! そしてオオワザ……”クロックワーク・リバース”!!」

 

 

 

 時空が歪む。

 歯車が音を立てて逆回転を始めた──

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