ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

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第91話:騙死合い

 ──チルタリスというポケモンは、綿鳥のような見た目に反し、ドラゴンタイプを併せ持つ。

 龍は、超自然の象徴。不条理と理不尽の権化。

 故に前触れも理屈も全て捻じ曲げた”権能”を行使することが出来る。

 濃霧を発生させ、炎を噴き、そして歌えば全てを微睡みに誘う。

 

「……相手を無防備にし、その隙に甚振る。楽な勝ち方だと思わないか?」

「キィーッ!!」

 

 嘴から漏れ出す煙。

 もくもくと、綿のような羽根からはふわふわの綿毛が固まって浮かび上がっては消えた。

 

「……虚しいなあ、空虚だなぁ。所詮、この世は幻、紛い物。努力も全て水の泡。というわけで……アマツツバサァ!! トドメだ!!」

 

 一気にアマツツバサは降下。

 そのまま、機関砲の狙いを付けて、寝そべったドーブルに向ける──しかし。

 

 

 

「えっ……!?」

 

 

 

 砂地に落ちた墨溜まりの数々。

 そこから、いきなり岩の刃が飛び出し──降りてきたアマツツバサを突き貫く。

 炎/飛行タイプのアマツツバサに岩タイプの技は当然、4倍弱点。

 それを一度とならず二度受けた上に、更に完全に不意を突かれたことで、ぐるぐると回転しながら炎上──そのまま地面に激突して、爆発するのだった。

 

「は、あ? え──?」

「どぅーどぅる」

 

 ツクバネは何が起こったのか分からなかった。

 墨の形を自在に変え、ポケモンの技として射出する。

 それは分かり切っていた事だ。だがしかし、今の今まで眠っていたはずのドーブルに、こんな芸当が出来るはずがない。

 

「ま、まさか、効いてないのか……!? チルタリスのオオワザが……!? 一度喰らったら1週間は起きないんだぞ……!?」

 

 ドーブルの目が赤く光る。

 そして今度こそ、尻尾の筆から大量に墨を吐き出し、自らの身に纏っていくのだった。

 目の前に現れたのは、シルクハットと紳士服を身に纏ったトリックスタァ。

 結果的に、夢は現実のものとなってしまうのだった。

 

 

 

特性:ふみん(ドーブルは眠らない!)

 

 

 

 相手を普通の催眠とは比べ物にならない程長く眠らせる”ナイトバード・ハミング”の唯一の弱点。

 それは、眠らない相手には当然意味を成さないということ。

 だが、ツクバネが知る限りドーブルはそのような特性を持たないし、明らかにオシアス産ではない目の前の黒いドーブルがオーライズを使えるはずもない。

 実際、図鑑機能を搭載したスマホロトムを向けても、目の前のドーブルからはオシアス磁気が検知されない。

 

「じゃあ、なんだ? 最初っから特性が”ふみん”だったのか……!? クソッ!! 最悪の偶然だ──」

「どぅーどぅる」

 

 バク宙したドーブルは、そのままイデア博士の顔元に降り立ち、渾身の”めざましビンタ”を放つ。

 「あだぁ!?」と情けない悲鳴が響いたかと思えば、そのまま彼は起き上がったのだった。

 

「あ、あーあー、ヤバかった……やっぱさっきの歌声はチルタリスのものだったか……まさか歌を聞き取った瞬間に眠らせてくるとはね、恐れ入ったよ」

 

 でも関係無いかな、とイデアは続けた。

 

()()()()()()、特性をね」

「……くそ、起き上がった……!」

「これが、センセイの本領発揮。尻尾から滲み出る墨は、過去にセンセイが取り込んだ他のポケモンの力が生霊になって込められてる」

 

 そして、この墨を用いることで多種多様な技だけではなく、霊気を持った墨を身に纏って他のポケモンの特性も身に纏う事が出来るのである。

 

「こうなったら真っ向勝負で戦うしか──クソ、面倒くさいな……!!」

「おや? 耳が聞こえてないのか? ……つい気持ちよくなって喋っちゃったけど、聞かれてなくて良かったな」

「どぅーどぅる……」

「悪い悪い、センセイ。でもさあ、関係なくない? ……こいつをタダで帰すわけ、ないよねえ?」

「どぅる」

 

 ツクバネの耳には高級耳栓が詰まっていた。

 電子式のノイズキャンセラーが搭載されており、設定を弄ることでアマツツバサの技に伴って発生する爆音や、チルタリスの歌声も遮断できる優れものである。

 流石に”ナイトバード・ハミング”は最高設定にしなければ遮る事が出来ないのか、今のツクバネは頭蓋に反響する自分の声以外が聞こえていない。 

 だが、ツクバネは隙が多いオオワザを、もう使うつもりは無かった。

 高級耳栓のスイッチを切り、イデアに相対する。

 

「僕を本気にさせたのは、あんたが初めてだ……ッ!! だけど、そのドーブルもクラウングループに差し出してやるよ、サイゴクの他のヌシポケモンみたいになッ!」

「……あの子達は今何処に居るんだい?」

「知らないね。だけど、クラウングループの忠実な犬になっているだろうよ……ッ!! あの情けないキャプテン共の所で飼われてるよりはよっぽどいい仕事をしてるらしいぜ」

「……」

「アトムから聞いた話じゃあ、向こうのキャプテンはボケ老人とオカマと洟垂れ小僧のガキんちょ共……挙句の果てには()()()()()()()。4人も居て誰一人として使えねえらしいじゃん? そいつらの尻拭いでオシアスまで来て、あんたも大変だな!」

 

 チルタリスの”りゅうのはどう”が辺りを薙ぎ払っていく。

 羽ばたけば”ぼうふう”が吹き荒れ、周囲の家屋の柱が軋み、木々が圧し折れた。

 

「──ははっ、そら見てみろ、やっぱり手も足も出ないじゃないか! あんたらは最初っから、クラウングループに跪いていれば良かったんだ! それが一番楽な生き方なのに……本当にバカな奴らだなッ!!」

「楽な生き方……ね。誇りも故郷も全部捨てて、お前達の言いなりになる生き方が楽、か」

「そうだとも。それが頭が固いキャプテン共は、分かっちゃない!! 分かっちゃないからこうなる!! 涙と鼻水垂らしてクラウングループの前で這いつくばる羽目になる!!」

 

 ぼりぼり、と髪を掻くと──イデアはサングラスを指で押し上げ、決まりが悪そうに「参ったね」と呟く。

 

「……ちょっとだけ、トサカに来ちゃったかなあ。僕の事をとやかく言うのは良い。だけど──彼らを……サイゴクを守るキャプテン達を悪く言うのは許さないよ」

「効いてるなあ!! それで良い、冷静じゃなくなったトレーナーは──今迄みたいには戦えないだろ!? チルタリス、”コットンガード”!!」

 

 もこもこ、とチルタリスの羽毛が膨れ上がり、ありとあらゆる衝撃を吸収するクッションと化す。

 

「そいつが物理技主体なのは分かり切ってるんだ!! 防御力を限界まで上げれば問題……無いね!! 後は安全圏から攻撃を続ければ──」

「……僕はねえ、なりたくってもキャプテンになれなかった側の人間だからさ」

 

 

 

【ドーブルの ストーンエッジ!!】

 

 

 

 嵐の中、風圧すらも無視して岩の刃が、チルタリスの死角から飛び出し、綿に覆われていない場所を的確に突き刺す。

 甲高い悲鳴が聞こえ、チルタリスはふらふらとよろけながら墜落していく。

 幾ら防御力をあげようとも、急所にあたってしまえばその能力上昇を無視した上で大ダメージを受けてしまう。

 

「なっ、チルタリス!! しっかりしろ、形勢を立て直せッ!!」

「クラウングループは本当に良くやったよ。合法的手段を取ることで、キャプテンの実力行使を封じたこと、大雨災害に乗じてサイゴクの社会・経済を蝕んだこと」

「──!!」

「……でも、だからこそ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そっちが殴ってきたなら、こっちも気持ちよく殴り返せるからねえ」

 

 ツクバネは何も言い返せなかった。

 あまりにも、このドーブルは強すぎる。

 能力値や、インチキ染みた能力がどうこうだけではない。

 単純に戦うポケモンとしての経験値が違いすぎる。

 

「……甘い汁を吸って楽な生き方ばっかりしてきた奴が……サイゴクの過酷な自然で育った僕達に勝てると思うかい?」

「くっ、くそ!! それならこちらを狙えなくすれば良い、チルタリス、浮上して”しろいきり”!!」

 

 チルタリスは周囲に濃霧を発生させ、再び姿を晦まそうとする。

 飛行タイプの主戦場は空、地上戦にわざわざ付き合ってやる道理はない。しかし──

 

逃がすな、地面に縛り付けろ(”トラバサミ”)センセイ!!」

 

 ドーブルが地面にばら撒いた墨から、金属製のトラバサミが生えてチルタリスの脚に噛みつき、砂の地面に引きずり下ろす。

 

「マズい、逃げられな──」

「──これは妖であってまやかしにあらず」

 

 ドーブルの尻尾から大量の墨が流れ落ちる。

 歌を歌い、抵抗を試みるチルタリスだったが、そこから現れたポケモンの群れに嘴を押さえつけられ、首は完全に捻じ伏せられてしまうのだった。

 

 

 

「これが現実であることを悔やむんだね。オオワザ──”ちみもうりょう・じごくえず”」

 

【ドーブルの ちみもうりょう・じごくえず!!】

 

 

 

 墨からは無数の怪異の化身が現れ、チルタリスに組みかかっていく。

 だが、流石にそこはギガオーライズの膂力というべきか、すぐさまチルタリスは墨で出来たポケモン達を振り払い、”りゅうのはどう”で薙ぎ払う。

 

「幾ら、蹴散らしても終わらない……クソッ!! こっちもオオワザだ!! ”ナイトバード・ハミング”──」

「はっは、もう囀らせないよ」

 

 取り囲むキノコのようなポケモン達が胞子を振りかける。

 

「キノコのほうし……!?」

「ああ、眠らせたら無抵抗……ポケモン勝負の基本だね」

「ぐぅっ、くそっ……!!」

 

 これで、チルタリスは完全に昏倒し、歌えなくなってしまうのだった。

 完全に身動きが取れなくなったチルタリスを、ポケモン達が蹂躙し、叩きのめしていく。

 その様を見て怯えたツクバネは、もう1つモンスターボールを取り出すと、すぐさまその場から離脱を試みるのだった。

 

「クソッ、アマツツバサもチルタリスもとんだ役立たずだ──ッ!! やってられるかこんな仕事!! ファイアロー、全力で逃げるぞッ!!」

 

 燃え盛る火の鳥のポケモン・ファイアローに跨るツクバネ。

 しかし、飛び立とうとした刹那、ファイアローの脚は地面から凍っていき、完全に縛り付けられてしまう。

 

(氷のアップリューと、タルップル……!?)

 

「呪いの氷だ。もう何をしても溶けやしないよ」

 

 林檎の如き姿をしたドラゴンタイプのポケモン達が凄まじい勢いで冷気を放っていた。

 そうこうしている間に、ポケモン達によってツクバネはファイアロー諸共、地面に引きずり降ろされてしまうのだった。

 

「……まさか君、まだ自分が逃げられるって思ってる?」

「来るな、来るんじゃない!! お前達サイゴクの人間を追いやったのは、クラウングループで、僕じゃない!! 僕がやったんじゃない……!!」

「君個人に恨みはないが……()()()()()()()()()()()()()のはいただけないな」

「ッ……!!」

「お前はサイゴクのキャプテンを情けないって言ったけどねえ……」

 

 ドーブルはファイアローから無理矢理ツクバネを引き剥がすと、筆を振り上げる。

 

 

 

「……ポケモン放って逃げ出すような情けない奴は、ウチのシマには居ないよ」

「ひぃっ、来るな、来るな来るな来るな──ッ!?」

 

 

 

 ──どろどろにポケモン達が溶け落ち、ツクバネの口から、鼻の穴から、どんどん体内に入り込んでいく。

 墨だ。墨が彼の身体に入り込んでいる。

 

「おごっ、げっ、ごほっ、ごぼぼぼ──!?」

「何、安心したまえ。体に傷は付けないさ。でも、この授業……寝てやり過ごせるモンなら、やり過ごしてみせなよ」

「ごぼぼぼぼぼぼっ──!?」

 

 この日、ツクバネは一生分の恐怖を脳の髄まで叩き込まれる事になる。

 脳裏に叩きこまれるのは、百鬼夜行、禍群の衆──

 

「ッ……!? ど、何処だ此処は!? ──ヒッ!?」

 

 異形のポケモン達に追いかけ回される夢を文字通り見せ続けられることになるのである。

 

「あ、あああああ!? ポケモンは!? モンスターボールは!? な、何も無いッ!? や、やめろ、来るんじゃない──ッ!?」

 

 百鬼夜行の群れに放り込まれたツクバネは延々と逃げる羽目になった。

 だが、人間の身体能力でポケモンから逃げられるはずもなく。

 

「ひぎっ、やめっ、腕が引き千切られ、いだっ、ひぎゃあああっ!? やめろ、目玉を突くな!! か、身体が凍ってぇぇぇ!?」

 

 そして、追いつかれても、体中を食い尽くされても終わることはない。

 

「やめろ!! もう、いっそ殺してくれぇぇぇーっっっ!! 助けてくれェ、チルタリスゥゥゥーッ!!」

「パラララララッ!!」

「ノットリィィィーッッッ!!」

「たるるるるーっぷるっ!!」

「あっぷりゅりゅりゅーっ!!」

「カッパババァ!!」

 

 これが現実ではなく、夢や幻であることを、ツクバネは悔みながら終わらぬ鬼ごっこに興じる事になるのだ。

 

「──ってカンジの夢を今頃見てるんだろうねえ、彼は」

「どぅーどぅる」

「安心しなよ、せいぜい効果は1時間程度。墨はセンセイの身体に戻らなければ勝手に消滅する。ま、でも……体感時間はそれより遥かに長いだろうけどねえ」

「どぅ」

「……せいぜい、一緒に居てくれるポケモンの有難みを思い知るんだね」

 

 びくん、びくん、と身体を痙攣させ、白目を剥いたまま体中のありとあらゆる穴という穴から体液を噴き出させ続けるツクバネを後目に、博士は不敵な笑み。

 アマツツバサの入っていたモンスターボールと、腕に付けられた黒いオージュエルを手に取り、鞄に入れた。

 

 

 

(確かにポケモンは自分の代わりに戦ってくれる。だけど……その戦いを、身体を張ってでも見届ける覚悟があるかどうか……それがトレーナーの資格、じゃないかなあ)

 

 

 

 ”めざましビンタ”で真っ赤に腫れた頬を摩りながら、イデア博士は向こうの空を見やった。

 残るは──この町に強襲したであろう強大なポケモンの気配だ。

 

「……さあて、可愛い生徒を助けに行こうか」 

「どぅーどぅる……!!」

「おっと、解除解除! ダメだよ、興奮しっぱなしは……! しばらく大人しくしてな、センセイ!」

 

 ドーブルの身体の表面から墨が流れ落ちていき、尻尾へ吸い込まれていく。

 確かに無敵とも言える全解放形態ではあるが、ドーブルの身体そのものとも言える墨を体外に放出する以上、消耗も非常に激しい。

 故に、継続して使い続けていられるのは数分が限度。それ以降は、特性を自在に変え、オオワザを行使する力は失われるのである。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「な、何で会長が此処に──!?」

「……この人が、アトム……!」

 

 

 

 オオミカボシを従え、現れた生徒会長を前にデジーもコナツも驚愕の表情を隠せない。

 一つだけ言えることがあるとするならば──今の手持ちの戦力では、オオミカボシに勝つことなど夢のまた夢ということだ。

 加えて、アトムの背後には、口輪を嵌めた生徒やポケモン達が唸り声をあげながらこちらの喉笛を狙っている。

 

「──ッ! 生徒会長様が直々にこっちに来るだなんて、随分と豪勢じゃんか」

「幸い、彼等が貴方達の居場所を追って動いていたので、探すのは楽でしたよ」

 

 私はそれを追いかけるだけで良かったですから、とアトムは続ける。

 

「とはいえ、私も予定外の仕事だったんですよ。我らの新しい傘下の働きぶりを視察せよ、とCEO……つまり私の父から直々に言われましてね」

 

 しかし、その新しい傘下を示すかのように彼の指は──コナツに向いていた。

 

「……モーモーファクトリーはクラウングループの傘下となり、キャプテンである貴女は誠意を示す……と言う話だったはずですよ、コナツさん」

「ッ!?」

 

 デジーは思わずコナツの方を見やった。

 彼女は首を横に振る。

 

「……敵対的買収を受けたんです。うちの会社は」

「で、でも、そんなにあっという間に手続きが進むなんてことある!? どうしてそんな──」

「……ヌシ様を、人質に取られたんです」

「ッ!!」

 

 ヌシ様──つまり、キャプテンが世話をしている”大河のヌシポケモン”を指す。

 

「私が帰った頃には、()()()()()いて……ッ。父も、逆らえなくって……」

「そんなの犯罪だ! 脅迫だよっ!」

「さて、コナツさん。誠意とは、仕事の為ならば私を捨てて奉公することだ、と説かれたはずですよ」

「……」

 

 彼女の顔が青くなっていく。

 

「今こうしてデジー君を捕らえられていないということは……残念ながら誠意を示すことは出来なかったということですね」

「ッ……」

「教育が必要ですね。勿論、デジーさん、貴女にもね」

「まさか、アトム会長──」

「いやいやあ、私自らが出るとすぐに幕が下りてしまうのでイヤだったんですよ。しかし……致し方ありません。ああでも、レモンさんの居場所を教えるなら見逃してやってもいいですよ」

「誰が教えるかッ──」

「……ポケモンを奪われて今この瞬間も引き籠っている臆病者を、どうして庇えるんでしょうねえ?」

「も、元はと言えば──」

「おや、どうして”元はと言えば”だなんて言葉を貴女が使えるのでしょう」

 

 ずきり、とデジーの胸が痛む。

 思い起こされるのは、これまでの自らの所業だった。

 

「……我が身可愛さに私の指示を聞き、転校生とレモンさんを陥れたのは間違いなく貴女でしょうに……」

「ッ……」

「デジーちゃん……?」

 

 自分にはアトムを糾弾する資格など無い、とデジーは痛感する。

 過去の事と言えど、間違いなく自分は彼の悪行に加担していたのだから。

 

「技マシンの生成も助かりましたよ。おかげで、オーデータポケモン一強のパワーバランスも崩壊。結果的に、寮長達の絶対性は崩れた」

「……」

「ねえ、どういうことなの、デジーちゃん……?」

「コナツさん、聞きなさい。そこの彼女は……私に与して仕事をしていたのですよ。勿論、過去の話ですが……彼女の開発した数々の発明のおかげで、今の我々は大いに助かっています」

「ボ、ボクは……」

 

 言い訳も、弁明も許されない、と彼女は分かっていた。

 

「ねえデジーちゃん教えて!! 貴女はクラウングループに──ッ」

「ボクは……っ」

「……まあ良いでしょう、二人まとめて処分といきましょう」

 

 オオミカボシの歯車が音を立てて鳴り始める。

 そして次の瞬間、その鋼の巨体は一瞬で姿を消し──

 

 

 

「オオミカボシ、”ラスターカノン”ですッ!!」

 

 

 

 ──空高い直上から、レーザー光が放たれる。

 避ける間も、ポケモンを出す間も無かった──

 

 

 

「──パモ様、”マッハパンチ”だッ!!」

 

 

 

 ──だが、撃たれる直前に巨体が僅かに傾いた。

 その技は相手がどんなに素早くとも先制する事が出来る。

 光は大きく逸れ──そのままモーモーファクトリーの建物の壁を焼き切り、炎上させる。

 デジーとコナツが呆気に取られて放心する中、アトムは愉快そうに口角を上げた。

 

 

 

「──来ましたか、転校生」

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