ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

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第84話:激怒

「──あっ、転校生っ!! 来てくれたんだ!! コイツどうにかしてよ!! もう許せないっ!!」

「暴れ出しちゃったかぁぁぁー……」

 

 

 

 このままでは作業どころではない。

 しかし、その前にどうしてこうなったのかを問い質す必要があった。

 

「ねえデジー、何をしようとしたの?」

「ちょっと電子頭脳にアクセスしようとするために、頭を切り開こうとしただけなんだよ!!」

「うん、やろうとしてることは分かるけど絵面がヤバい……」

「それと……アンドロイドには勿体ない乳がブラ下がってたから……揉めば御利益にあやかれるかなーって……」

「そっちだよ!! 原因はどう考えてもソレだよ!!」

「思ったの!! 思っただけ!! 思っただけなのにコイツ、ボクの思考を読み取ったの!!」

 

 ウソ臭い話であるが本当である。

 どうやら、エスパータイプの例に漏れず、邪念も読み取れてしまうようだった。

 

「とにかく止めるよっ!! このままじゃ作業どころじゃないっ!!」

「はいはい……」

 

 地面を蹴り、更に刃のような羽根を飛ばしてくるクエスパトラ型のオーデータポケモン。

 しかし、早速ミミロップが”すりかえ”で”こうこうのしっぽ”を押し付ける。

 これで動きは鈍重になり、こちらに追いつけることはなくなる。

 

「鎮圧すれば良いから──キルリア!!」

「りーっ!!」

 

 こうして動きが鈍くなった相手には”さいみんじゅつ”で昏倒させればいい。

 しかし、クエスパトラ側もそれを先読みしていたかのように自身の周囲にバリアーを展開していく。

 

【??????の ミストフィールド!!】

 

 周囲には霧が立ち込める。

 敵味方問わず、地面に脚が付いているポケモンの状態異常を防ぐフィールドだ。

 

「こ、これじゃあ眠らせられない……ッ!! こうなったら……転校生っ! コレ使って!」

「じゃあ、こっちにはコレを!!」

 

 二人はオーカードを投げてその場で交換。そして、それをオージュエルに翳す。

 

「キルリア……オーライズ”ニドキング”!!」

「ミミロップ!! オーライズ”タギングル”!!」

 

【キルリア<AR:ニドキング> タイプ:毒/地面】

 

 キルリアは、紫色のレインコートの如き形となったオーラを纏い、

 

【ミミロップ<AR:タギングル> タイプ:ノーマル/毒】

 

 ミミロップは、腕に毒々しい色の装甲が纏われる。

 

「反撃開始だッ!!」

「オーケーっ!!」

 

 ニドキングのオーカードは、キルリアと相性のいい毒タイプのOワザが登録されている。

 一方、既に”すりかえ”で道具を失ったミミロップは、タギングルの特性を得ることで、脅威の素早さを手に入れる事が出来る。

 部屋中を跳び回り翻弄するミミロップは、クエスパトラのオーデータに反撃させることなく、天井を足場にしてそのまま飛び掛かった。

 

「Oワザ”どくづき”!!」

「くえすぱ!?」

 

 毒を纏わせた強烈な拳が叩き込まれる。

 通じている──機械的な見た目ではあるが、鋼タイプはどうやら複合していないようだった。

 それどころか、毒を受けたことで目の電飾は激しく点滅している。

 効果は抜群だ。

 

「やっぱりフェアリータイプだったか!! キルリア、”ヘドロばくだん”!!」

「くしゃとりゃ──」

 

 ギィン、とクエスパトラの目が光る。

 ”ヘドロばくだん”は空中で静止し、逆にイクサ目掛けて飛んで行く──

 

「しまっ──」

「りーっ!!」

 

 だが、間に入り、壁を展開して受け止めるキルリア。

 最早その姿には危なげというものは全くない。

 受け止めた”ヘドロばくだん”を逆にクエスパトラ目掛けて投げ返す。

 

「くしゃとりゃっ!?」

「りーっ……!!」

 

 一瞬、眼光が走る。

 同じエスパータイプ同士、そしてフェアリータイプ同士、意地が働いたのか、それとも主人を守ろうとする意思がそうさせたかは定かではない。

 キルリアの身体は一瞬極光に包まれたかと思えば──

 

 

 

「ーっ!!」

 

【サーナイト ほうようポケモン タイプ:エスパー/フェアリー】

 

 

 

 ──ひと際大きく、そして美しき守護精霊となって顕現したのだった。

 

「ッ……此処に来て、進化した……!?」

「サーナイト……!」

「らー♪」

 

 歌うような美しき声がガレージに響き渡る。

 そして半窓から差し込んだ月の光が──彼女に力を与えた。

 未だ戦意を失わぬダチョウの機神目掛けて、月の力を一点に集めた一撃を叩き込む。

 

 

 

「”ムーンフォース”!!」

 

 

 

 直撃。

 それまでに蓄積されていたダメージもあり、漸くクエスパトラのオーデータは沈黙。

 体からプラズマが消え失せたかと思えば、そのままガラガラと音を立てて崩れ落ちてしまうのだった。

 

「……ヤ、ヤバかった……このまま”こうこうのしっぽ”は持たせっぱなしにしておこう」

「そうだね……それと」

 

 美しく、そして強い最終進化を遂げたキルリア──改めサーナイトにイクサは向かい合う。

 

「進化おめでとう、サーナイト!」

「らー♪」

 

 恭しく礼をした後、守護精霊はイクサを抱擁する。

 更に、今の戦いをボールの中から感知していたのか、カルボウが飛び出した。

 

「ボウボウ!!」

「あっ、カルボウだ」

「ボウ……!」

 

 完全に背は追いこされてしまったが──カルボウのサーナイトを見る目は、キラキラと輝いていた。

 

「憧れのお姉さんが、綺麗になったから嬉しいんだぁ♪」

「君もすぐ追いつけるよ、カルボウ」

「ボウボウ!」

「らー♪」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ガレージを一通り片付け、クエスパトラのオーデータをボールに戻した後、デジーは作業再開と言わんばかりに座り込む。

 しかし、そんな彼女の肩をイクサはぽんぽん、と軽く叩く。

 

「ちょっと、何?」

「少し休憩しようよ。お菓子持ってきたんだ。もう朝の4時だよ」

「ウッソそんな時間!? ……あー、やっちゃったぁ」

「バトルもしたしね……疲れたまま続けると失敗するよ」

「……そうだねぇ」

 

 にへへ、と表情を崩すと彼女は詰め合わせのうちからクッキーを取り出して口に放った。

 

「ん、おいし。町で探してたの?」

「作業には甘いものが不可欠でしょ。後君、のめり込むと寝食も忘れるから」

「さっすが転校生! ボクの事分かってるーっ! ん? ……そういえば転校生は何でこんな時間まで起きてたの?」

「ああ、レモンさんと一緒に──」

「あ、分かった! やらしいことしてたんでしょぉ? 違う?」

「違う!!」

 

 にたにたと笑みを浮かべながら、

 

「本当に? ほんとのホントにやらしい事してないの? ……首筋に虫刺されみたいなのが出来てるけど」

「バカだなぁ、()()()痕が残ってるわけないじゃないか……」

「バカはどっちかな転校生」

「あ”……」

「……先輩にナーニしちゃってくれてるのかなぁ?」

「うぐぅ……」

 

 完全にカマかけに掛かってしまった。

 

「ねえねえ、転校生? レモン先輩、どうだった? 可愛かった? 感想聞かせてよう」

「困る……マジで反応に困るからそういうの……」

「ボクを置いてけぼりにしてお楽しみしてたくせに? ボクには何にもナシ? どーせお盛んだったんでしょぉ、さっきも」

「そういうわけじゃあ……大体さっきまで起きてたのは、このアンドロイドの目撃情報をバジル先輩とも協力して探してたからなんだよ」

「え?」

 

 パチパチと目を瞬かせるデジー。

 彼女にこれまでの経緯、そして確認されたアンドロイドの目撃情報について提供した。

 すると、さしもの彼女も一転して真剣な技術屋モードになる。

 バジルから送られてきたレポートや動画も見ると、いよいよ唸ってしまった。

 

「……ふぅーん、成程? じゃあこの子、大河の迷宮だけじゃなくって、他の迷宮でも出歩いてたってことか……自律稼働式のロボット? でも誰が何の為に? そもそもポケモンがガードに付いてる意味が分かんないし」

「だよね……」

「ただ、気になる事はちょいちょいあるんだよね。この子の体内を組成してる金属なんだけど、信じられないような成分で出来ててさ」

「どういうこと?」

「現代のこの世界には無い合金ってヤツ? どうやって作ったのか、さっぱり分からない! 体表を覆ってる人工皮膚も、内部組織も、原材料は全部ブラックボックス!」

「じゃあ直せないの?」

「いや、そういうわけじゃないよ」

 

 事も無げにデジーは言ってのける。

 

「なんて言うのかなあ。考える事は皆同じってヤツで。この数時間、この子の腹を掻っ捌いて色々調べた結果……オシアス地方でよく使われてる重機と似たような構造で出来てることが分かったんだよね」

「ウッソ!? もうそこまで!?」

「ナメて貰っちゃ困るよ。メロディーレインの事件の後、あのロボット博士の研究室から押収された資料を、向こうの人に頭下げて全部頂いたんだよね。メロディーレインの危機を救った恩人って事で快くオーケー貰ったよ」

「それでか……」

「だって、ボク……ここしか取り柄無いもん」

 

 こんこん、と指で自分の頭を突くとデジーは笑ってみせた。

 何処か切なそうな表情だった。

 

「……少しでも君達の役に立たなきゃ……って思っちゃってね」

「らしくも無い事言うなよ」

「むっ。何さ! 人がオセンチになってる時に──」

「とっくにもう役に立ってるよ。それに、君が底抜けに明るいから──このヤバい状況でも、少しは楽観的で居られるんだ」

 

(……虚勢だよ。バジル先輩が居ないから、ボクだけでも明るくなきゃ……)

 

「それに、君は──僕のライバルだから。負けてられないんだ」

「ッ……ライバル」

「そうだよ。今思えば、あそこまでどんな手を使ってでも倒そうって燃えたのは……君くらいかも。それくらい、鮮烈に君は焼き付いてるんだ」

 

 あの日、全てを奪っていった彼女の姿をイクサは忘れていない。

 

「……転校生は草食系っぽいくせして、やっぱりキザったらしいや」

「キザで悪かったな……」

「そういうので喜ぶのは、レモン先輩だけなんだよっ。そうやって、レモン先輩の事も口説いたの?」

「……かもね」

 

 否定しなかった。正直自覚はあった。

 

「……悪い男だー」

「何とでも言ってよ。僕は欲張りらしいからな。……ポケモンも、皆も、もう奪わせない」

「吹っ切れたね、転校生。うじうじしてたのがウソみたいだよ」

「……うじうじしてて解決するなら、幾らでも悩むさ。だけど……そうも言ってられないみたいだから」

「そっか。やっぱ転校生は……強いね」

 

(いや……レモン先輩が襟元正してくれたのかな)

 

 デジーは──イクサの掌に指を伸ばそうとして──諦めるように、引っ込めた。

 

(……なに、この気持ち)

 

 ずきり、と胸が痛む。理由は何故なのか彼女自身にも分からなかった。失恋したわけでも何でもないのに。

 胸の中には戒めるかのような鎖がじゃらじゃらと音を立てて巻かれていく。

 それを振り払うように、無理に彼女は笑ってみせた。

 

「よーしっ、それじゃあ続き続きっ! クエスパトラが起き上がらないうちに、修理を終わらせちゃうよーっ!」

「えーと、手伝う事とか」

「だーめっ! 素人に出来る事なんて、何にも無いんだからねっ! それと、コイツが瀕死のうちにボールごと部屋から出しちゃってよ!」

 

 そう言ってデジーは、オーデータの入ったボールをイクサに手渡して、部屋から押し出す。

 

「……それじゃあ、後はごゆっくり。先輩と二人で楽しんでて!」

「寝るに決まってるだろ……デジーもほどほどにしてよ。倒れられたら心配になる」

「……余計なお世話っ♪」

 

 ばたん、とガレージの扉を閉めた後──壁に寄りかかり、彼女は溜息を吐く。

 彼が居なくなってくれて──デジーは心底安心した。

 今の自分はきっと酷い顔をしている。彼には見せられない。

 

 

 

(ねえ、転校生。レモン先輩)

 

 

 

(ボクは本当に──二人の隣に立っていて、良いのかな)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 二人は遅い朝食──時間的には最早昼食だったが──を摂る為に「モーモーファクトリー」に足を運んでいた。

 人目に付かないように、他の客が居ない個室に案内され、そこでコナツに昨晩の事を話す。

 

「──と言う訳で何とか抑えつけたんです。しばらくボールの中からは出て来れやしませんよ。まあ、クエスパトラ? には少し悪い事しましたけど」

「驚いたわ。二人掛かりとはいえ、オーデータを鎮圧したのね」

「こいつについても分からない事が多いですから」

「はーい、ランチセットメニューをお持ちしましたぁー♪」

 

 そう言って、ウェイトレス姿のメイドたちがハンバーグのサンドウィッチを持ってくる。

 軽食メニューも充実しており、この町にいる間はこの店に居れば食べるものには困らなさそうだった。

 

「ん、うまい! 少し癖はあるけど──」

「そりゃあもう、オシアスミルタンクのお肉ですもの。他所の地方では珍味として有名よ」

「……聞かなきゃよかった」

「何でよ」

 

 未だに慣れない、この感覚。食べなければ腹は膨れず、腹が膨れなければ力が出ないので仕方ないのであるが。

 一緒の席に座っているコナツが、何枚にも重なった山盛りのハンバーグを一口で食べているのを見ると──結局腹が空いてしまうのだった。

 

(こんなに食べるから大きいのかしら……?)

 

「コナツさん、クエスパトラはまだどこにも解析に出してないんだよね?」

「はいー♪ オシアス地方でも未知のオーデータと思われます♪ ……ただ、大きい声では言えないのですが、研究機関はクラウングループの息が掛かってるみたいで」

「……そう言えば言ってたわね。クラウングループには黒い噂が絶えない。今に始まった事ではないけど、貴女のお父さん経由で何か知ってることがあるのかしら?」

「はい……ポケモンに酷い実験をしていたり、ライバル企業を接収するためには手段を択ばなかったり……すべてはCEOの意向なんだとか」

「あー……それなら私も聞いたことあるわ。やっぱあそこ評判悪いのね」

「……じゃあ、シトラスグループの買収も、アトム会長の独断じゃなくって、最初からCEOの狙いって可能性もあるのか」

「でも、肝心の目的が見えて来ない。一体何をしようとしてるのかしら」

 

 オシアスの有力な企業の買収。

 そして、オーデータポケモンの集結。

 挙げれば挙げるだけキリがない。

 だが、その全てがアトム──ではなく、その上に居る「最高経営責任者(CEO)」が元々企んでいた事であることは確かであろう。

 

「何処かに、クラウングループの利害とは関係が無さそうな、研究者でも居れば良いんですけども」

「例えば他所の地方からの出向で来てる人とかかしら? 確かに元がその地方の研究機関に所属してるなら、利害はあまり関係無さそうね。都合よくその辺に落ちてたりしないかしら」

「メイド喫茶なんかに居る訳がないじゃないですか……そんな偉そうな博士が……」

「それもそうね」

 

 食事が終わった後、外の窓から店内を見回すイクサ。そんなに簡単に見つかったら苦労はしないのである。

 しないのであるが──

 

 

 

「やれやれ──サイゴク地方(あのクソ田舎)にもメイド喫茶の1つや2つあれば良いのに……眼福眼福っと……」

「どぅーどぅる」

「おっと、分かってるってぇ、センセイ。これはあくまでもフィールドワークの一環だからね。とりま、帰ったら嫁さんにコレ着て貰おうかなあ」

「どぅーどぅる……」

 

 

 

 ──めっちゃ居たぁぁぁーっ!! 他所の地方から来てる博士が居たぁぁぁーっ!!

 

 その声が聞こえた途端、イクサは二度見した。

 見覚えしかないチャラそうな博士とドーブルが近くの席に座っている。

 

(居てくれて助かったけど、何でこんな所に居るんだこの人……ッ!!)

 

 

 

【オシアス特別研究顧問”ポケモン博士”イデア(休暇中)】

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