12月20日:証明完了
もう11月中旬に迫りつつあるって流石に冗談ですよね?体感まだ10月なんですが
◇
戦士が二人、対峙している。
戦士達は互いに相手を見ていた。
戦士達は互いに同じものを見ていた。
戦士達はそれぞれが違う思いを抱いていた。
戦いの根源などその程度、どれ程に平和を謳い志したところで……私がいて、貴方がいて、それ以外がいる限り、意見は食い違い、争いは起きる。
ただ一つ、違う点があるとするなら……二人は、互いに相手の主張に理解を示した上で、それでも譲れない主張のために戦っているということだ。
「……………」
片や一切の肌の露出をなくす鎧を纏い、身の丈程ある巨大なメイスを構える重厚なる漆黒の鎧騎士。
「……………」
片や身体の半分以上を外気に晒した半裸ながらもその身に竜骨を纏い、劫火漲る剣を構える異形の骸戦士。
「意見を変える気は無いのかよ、戦友よ……」
「……生憎だが、こればかりは……無い!」
最後通牒の突きつけ合い。あるいは親友になれたかもしれない二人は、痛いほどにわかる共感をそれでも押さえつけて、己の得物を構え直す。
その様子を固唾を飲んで見守る観戦者達がどよめく。
幾度となく行われてきた激突の中、二人の戦士の偉業を誇示するかのように現れる影。
それが今この瞬間、己こそがより困難で偉大な試練であったのだと敵手の背後にゆらめく幻影に吠える。
片や肉体の詳細が分からないほどに黒い体躯を持ち、生物が持つ機能美と言うにはあまりにつるりとし過ぎた……例えるなら道具を使って一寸の狂いもない直線、曲線がそのまま生物として動いているかのような流線形のフォルムを持つ異形にして四足の竜が巨躯を捻ってあり得ないほどに巨大な翼を広げる。
片や肉体の殆どが刃、凶器、武の装い。ただ生まれ落ちるだけでは決して叶わぬ筈の「鍛」と「研」を生まれながらにして備えた摂理の異形とでも言うべき、凶刃にして強靭なる二足の竜が轟々と燃え盛る焔の中に幻影として立ち刃の鱗を逆立たせる。
「俺が勝ったならば……協力してもらうぞ、同胞!」
「負けても恨みっこ無しだ、未練を捨てる準備をしておけ……戦友!」
因縁は決着によってのみ、終わる。ただ一人の女性を巡り、二人の戦士はぶつかり合う。その魂にかけて……叫ぶその名は、
「竜魂解禁……」
「真説解炎……」
大いなる竜の、真なる名前。
「───【ガリバー】!!」
「───【トマホーク】!!」
◆
それは、ハッタリの武器だ。
新品の「竜殺しの武器」なんてちゃんちゃらおかしい話だが、確かにそれは「竜殺しの槍」として生み出され………そしてどういう経緯か、でけぇ蛇にささくれのように突き刺さっていた。
それを抜いて、拾って………なんかヤバい蝶々(炎属性)の炎で鍛え直して、鍛えて、鍛えて、進化だったか真化だったかして……リビルドだっけ? まぁいいや、とにかく修理と強化を繰り返して。
かつての輝きと熱さを取り戻したそれは、色竜というドラゴンというより同姓同名の別存在が偶然竜という名前で呼ばれてただけ、みたいな面白生物やらなんやらを斬った張ったの大活躍。その果てに真に”竜”と呼ばれる存在を打ち倒すに至った。
故にその名は、かつて「朽ち果てた」とまで落魄れたそれは朽ち灯り、修復され、再構築され、槍焔剣を冠し、真説となり………今ここに、その名を冠するに相応しい姿に至った。
「輝槍証明アラドヴァル」。
非実在の槍を目指した仮説が、そこに至ったという証明。
高らかに告げよ。ブリューナクとは、燃え盛る灼熱の焔である。(フレーバーテキストより抜粋)
きっとこれが現段階での最終派生、アラドヴァルという武器の到達点。真なる竜を撃ち倒した、という偉業を踏まえた上で辿り着いた高み。
ただ揺らぐ竜の幻影を出すだけの竜滅装備とは違う……炎で竜を象るそれは、武器に竜を模するだけの力があるということ。
輝槍証明の効果を確認した時、もしやと思ったが俺の予想は当たっていたようだ。
竜滅装備は真竜討滅者とセットで運用される。ジョブと装備が紐づいているが故に、どちらかが欠けるとシナジーが破綻するピーキーな……しかしそれに見合うだけの出力、すなわち打ち倒した竜の力を扱える。それこそが真竜討滅者最大の強みだ。
ガル之瀬が倒した真竜がどんな奴かは知らないが、あの盾とメイスの効果を見ればなんとなく察せられる。サイズ可変かつ磁力で金属武器を吸い寄せる……あるいは反発させる。ほとんどの武器が水晶巣崖の鉱石由来の俺からすると天敵と言っていいかもしれない。
武器のサイズがコロコロ変わる、竜の力無くしては実現しないそれは奴のジョブが真竜討滅者たる何よりの証拠だ。
だが……だからこそ、俺の推測が当たっていた事が証明された。
───アラドヴァル最大の強みは、ジョブの縛りを無視して竜滅装備として扱えることだ。
にぃ、と思わず笑みが溢れる。半信半疑だった推測を根拠に組み上げたキャラクタービルドが、その実ガッチリハマっていたという喜び。全部裏向きのカードで勝負をして、表向きにしたらロイヤルストレートフラッシュだった気分だ。
「さぁて……」
最強の矛を気取るつもりはないし、向こうが最強の盾とも思わないが………あのタワーシールドとその使い手の防御を貫くにはどうしたものか。
その答えは既にこの脚に。
「見せてやるよガル之瀬!これがシャンフロ最前線のシナジーだ!」
ヒュン、と軽く投げたアラドヴァル。その刀身が円を描きながら落ちてきたその瞬間に……サッカーボールの如く敵を目掛けて蹴り飛ばす。
蹴武「リボルバー・キックショット」。
武器を蹴飛ばすそのスキルはそれ単体でも扱えるが……"蹴武術師のジョブに就いている者"が使うときこそ、真の力を発揮する。
貫けアラドヴァル、槍の如くに!!
実はガル之瀬戦で既に「エフェクトが発生しているディストーツトリガーを使っている」というほんのりとした伏線