12月20日:糾える枝の輪
とりあえず更新です。もう一回くらいは更新キメておきたいところ
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やってくれるぜガル之瀬、アイテムも魔法も使う気配も無しに蘇生からの奇襲だとう……? 幽霊武器も大概だがノーモーション蘇生は流石に肝が冷えた。ていうかなんだアレ、蘇生ってアイテムか魔法の分野じゃないのか?考えられる可能性としては二つ……いや三つ。
一つ、実は盾の裏とかで蘇生アイテムを使っていた。あるいは装備に蘇生効果がついている……いやこれは考えにくいな。
二つ、実は詠唱も魔法の名前も言わずに使える蘇生魔法。いやでも魔法って基本的に名前だけは言わないとダメっぽいんだけどな……詳しくないから分からん。
そして三つ…………そうであって欲しくはないが、しかし一番可能性がありそうな……………あれが、スキルによるもの、という可能性。
正直そんな無法があっていいのか、と言いたくなるがそういう無法が通るスキルカテゴリを知っているだけにあり得ないとは言い切れない。人間一人のジャブで大型車並の大型モンスターを転がせるスキルもどっちかといえば無法寄りだろう。
そうなると気になるのは「あれで使い切らせたのか」だな。普通に考えれば蘇生は一度きりと見ていいが………ガル之瀬の身体を薄く黒い靄が包んでいるのが気になる。アレがデバフなのか「スキルが発動中」なのかが分からない。いや、別のスキルという可能性も捨てがたいか………さっき戦ったRiotも似たような黒い煙で身体を包み込んでいた。あるいは俺が知らないだけであの黒靄が対人必須スキルの可能性もある。
とはいえ、だ。無いものをねだったところで無から生えてくるなんてことはない。それは知識だって同様だ。
無い知識なりに奴を解析していくしかないわけだが…………それは向こうも同じことだろう。
俺とて、今回お披露目する武器防具スキルアクセサリー……初見殺しを鞄一杯に詰め込んできている。この皇金剣だってその一つだ。確かにこいつの能力を全て見せこそしたが………拡張性はまだ見せちゃあいない。それにこいつに関しては切り札もあるわけだが………あれは不可逆だ、出来ればあまり使いたくはない。
薄々感じていたが、ガル之瀬は一見して壁タンク………防御を以って攻撃を耐える壁役のキャラクタービルドをしているように見えるがSF-Zooのタンク衆やジョゼットとは根本的にタイプが違う。
あれはタンクじゃなくて重戦士、だろう。そもそもの運用が違う、奴は背後に誰も立たせない……味方を守る為の盾ではないんだな、あれは。言い方が悪くなったな、要するにあれは単純にめちゃくちゃ防御力が硬い前衛ってだけか。単騎戦闘用構築とも言える。
「勘違いの根っこはそこか……」
元よりアタッカーだった、ってわけだ。俺がそこに速度を求めたように、奴は防御に振ったというだけのこと。
さてさて、それが分かったならどうしてくれようか。こっちの体力は風前の灯……向こうはどうだ? 流石に全回復で蘇生だったら泣けるが。
装備欄を操作しながら、俺はガル之瀬へと話しかける。
「自前蘇生とはな……まさかこっちが驚かされるとは」
「超高速ブリッジで逃げたやつに言われたくはないが……驚いてくれたなら何よりだ。元々は暗殺用だったが………ここで使ってよかったと後で納得できる」
その場で復活する残機ありのめちゃくちゃ固い暗殺者とか考えたくもないな。そういう意味ではここで使わせたのは幸いだったか? いや、戦闘中に発動したスキルのリキャストは戦闘終了と同時にリセットされる。ここで通したらどちらにせよ大差はないか。
………もうちょっと時間稼いだ方がいいかな、俺は回復に時間がかかるんだ。
「全く、驚き桃の木……なんだったか」
「山椒の木か?」
「そうそれ。まさか無詠唱での蘇生とは、な………」
「ふっ……」
オーケー、今の鼻笑いに無性に腹が立ったので多分魔法じゃねーな。アイテムかスキルだ。再誕の涙珠じゃ間に合わないだろう、スキルだな? 不思議と確信したぞテメー。
スキル、スキル、スキルか…………リキャストタイムの踏み倒し手段が無いわけじゃないのが要警戒って感じか。二回三回と蘇生されるのは流石に骨だぞ。となると、取れる手段は二つ。
丁寧に相手のリソースが尽きるまで殴り続けるか。あるいは─────蘇生される前に殴り切るか、だ。
「まぁ別に蘇生するのは構やしないさ………ただし」
体力は三割程度まで回復中、悪くない!
俺は左の中指に嵌められた”指輪”の感触と、その効果にほくそえむ。
確かに俺はこのゲームにおける対人戦に関して、そこまでの知識を持ち合わせてはいない。が、このゲームにおける「強いモノ」に関しては色々と知っているのだ。物もそうだし、者に関してもな。
ので、レベルアップによるステータス及びキャラクタービルドの”完成”に伴って、求めていた物はある者からの情報で今この手にある。
───ふむ。継続的なリジェネ、できればリジェネ一回ごとに回復判定のあるもの………か。私”個人”の知識では少々思いつかないが………うん、クランの中にアクセサリーの解析を好んでいる者がいる。その子から話を聞いておこう。ところで君がやろうとしている例のアレの実証だが……【ライブラリ】から人手を貸し出す、というのはどうかな?
───いや、リジェネ効果に判定とかはよく分からんが………継続回復するアクセサリーってんならポーション詰めて回復する系か単純に回復効果持ちかの二択だろ。てかよぉサンラク、テメェちゃんと仇討人のクエスト進めてんのかよ? 他の奴らが続くんだから情報寄こせよな。
知ってる中では一番このゲームの知識を貯め込んでいそうなネカマと、知っている中では一番このゲームの対人戦に慣れていそうなネカマからの情報を合算し、吟味と実験の末に作成した見た目は枯れ枝を上手いこと円の形に曲げたような細い木の枝で出来た指輪のようなアクセサリー……「豊穣と節制の円環」。
簡単なインベントリになっており、中に収めたポーションを少しずつ消費してリジェネ効果を付与する……サバイバアルやキョージュをして「今更お前に必要かそれ」と言わしめたしょぼいものだが…………
断言できる。このアクセサリーは、俺にとっては百万本の名剣よりも価値のある最強の強化パーツであると。