“ジブリ風”など…AI隆盛で「アニメ業界」に生じる混乱 絵だけでなく、声やグッズの権利をどう守っていくのか
アニメ業界ではAIが本格的に普及し始めた2年ほど前から、こうした混乱がたびたび生じてきました。そうした中では、AI技術そのものやそれらがもたらしうる恩恵は理解されつつも、アニメに対しAIが悪用されることへの懸念の方が、今は勝り気味となってしまっている印象です。 ■AI技術そのものを排斥したいわけではない ただし、そうした生成AIによる混乱を問題視するファンやクリエイターの多くは「AIの悪用」に反対しているのであり、AI技術そのものを全否定・排斥しようとしているわけではありません。
むしろ、現在のアニメ業界ではAIによる混乱を受け、問題をどう解決し、どのようにAIを活用していけるのかといった建設的な議論や取り組みも積極的に行われています。 近年こうした動きが特に活発化しているのが声優業界です。無断生成AIにまつわる問題の周知として「NOMORE無断生成AI」の動画を公開すると同時に、「声の権利を守りながらAIをどう活用していけるのか」についても、大手声優事務所がAI企業と正式にパートナーシップを結んで模索し続けています。
そうしたAIとの「共存」を目指す取り組みの1つには、声優の梶裕貴さんが主導する音声AIプロジェクトもあります。無断で声を学習/生成されるAI音声に対し、「ガイドラインに守られた、本人公認の高品質ソフト」を用いてAI音声を提供しようとするこの試みは、00年代に動画プラットフォームでアニメの無断アップロードが横行した際の流れも彷彿させる動きです。 動画配信技術が普及し始めた当時は、無断アップロードされたアニメがプラットフォームに溢れていましたが、規約やガイドラインが生まれ、公式配信の体制が徐々に整えられていったことで、今では正規配信がメインストリームとなりました。
この時と同じく、今は急速なAI技術の発達と普及に対応が追いつかず、ガイドラインの制定やステークホルダーの権利を守りながらAI技術を生かす体制が整っていない状態といえます。 しかし10数年かけて、人々が正規の配信でアニメを視聴することが当たり前になっていったように、権利が不当に侵害されることなくAIを活用できる環境を整えていくこともできるはずです。 多くの問題や混乱を抱えながらも、現在アニメ業界がAI技術を全否定・排斥するのではなく共存の道を模索すべく動き始めているのは、そうした未来にたどり着くためでもあるのだと思います。