ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

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今作も残り2章。結局前作のテング団編と同じくらいの文量で終わりそう……?


第六章:ポケモン廃人と古の文明
第81話:前作ぶりの天丼


 ※※※

 

 

 

「喜べ諸君ッ!!」

 

 

 

 ──出発前。

 アジュガは、高らかに叫ぶ。

 

 

 

「──3人目のキャプテンとの連絡がついたッ!!」

 

 

 

 オシアス地方に残るキャプテンは1人。

 ギガオーライズの手掛かりを探すイクサ達にとっては、数少ない味方である。

 しかし、彼女が本来住んでいるサースドシティは、デジーの故郷。

 それ故に現在、多くの生徒が彼女の捜索を続ける為、あるいは実家に帰ってくる彼女を待ち構える為に厳戒態勢を敷いているという状況だ。

 

「どうやら妙なモノを拾ったらしくてな……デジー少女に解析してもらいたい、とのことだッ!!」

「あーうん、大体分かった」

「身に覚えでもあるの?」

「うん。あの子昔っから機械とか苦手なんだ。どーせまた下らないガラクタの修理でしょ」

 

 イクサの問い掛けに、デジーは呆れたように肩をすくめる。

 

「恩を売って、匿ってもらうようにボクからお願いするよ」

 

 最後の1人、サースドシティのキャプテンは、どうやらデジーと旧知の仲らしかった。

 しかし、幼馴染故なかなか微妙な関係なのか聞いても教えてくれない。

 結局の所、ランデブーポイントに出向いて会うまではどのような人物なのかは分からないのだった。

 

「……此処までありがとうございました、アジュガさん」

「──君達の勝利を願っているッ!! 俺も、クラウングループの事を調べたり、君達の助けになれることを出来る限り、誠心誠意やらせてもらうッ!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──そう送り出されたのも数時間前の事。

 

 

 

「──し、しんじゃう……」

 

 

 

 ポケモンにとっても過酷な自然、人にとっては試される地、オシアス地方。

 道路から外れ、追手が居そうな危険な場所を迂回して辿り着いた場所は辺り一面砂、砂、砂であった。

 太陽が激しく照り付け、周囲には水一つない。これがなかなかに精神に来るものがある。

 此処で倒れれば死ねるという確信が、踏破者たちにプレッシャーを与え続ける。

 それに加えて、砂嵐。これがなかなかに痛い。

 イクサ達は皆防塵ゴーグルをつけていたものの、口の中は既に砂塗れ。これもなかなかに不快極まりないのである。

 極めつけには、この猛暑。これで既にイクサ達の頭は茹だり始めていた。

 目指すはオシアス地方随一のオアシス都市、ファウントタウン。砂漠の中の拠点とも言われている町だ。

 道路で繋がっていないこともあり、学生たちが気軽に訪れるには少々厳しい。

 しかし、行商人にとっては格好の中継地点であり、古くより商業と水で発展してきた町なのである。

 だが道中は当然、この過酷かつ長大な砂漠によって阻まれている。

 

「ああ……あそこでザシアンとカイオーガとグラードンが頂上決戦している……全員捕まえなきゃ……捕まえて、禁伝戦用に育成しなきゃ……グラードンはステロ撒かせてその後にスカーフオーガで殲滅してザシアンの巨獣と石化で全部ブチ抜くんだ……」

「ねえ見てよアレ!! トレイステーション5半額だって!! ボク転売ヤーの所為でアレ買えなかったんだよね!!」

「この子達、だだっ広い砂漠なのに一体何が見えているのかしら……イクサ君に至っては何を言ってるか分からないわ」

 

 イクサの腰からボールをひったくったレモンは、マリルリを繰り出す。

 沸騰した頭を冷やすには、直が一番手っ取り早い。

 

「マリルリ、やっちゃいなさい、手遅れになる前に」

「りーるぅ」

 

 マリルリの口から高圧縮された冷や水がぶっかけられた。強めのお薬である。

 頭に冷たい水がぶっかけられ、冷却されたからか二人の視界からは幻が消えたようであった。もう少しで脳みそが煮凝りになっていたところである。

 

「あ、ああああ!! 僕の禁伝ランクマがァァァーッ!!」

「ボクのトレステ5がーッ!!」

「良かったわね、貴方達。私のおかげでアイツの餌にならずに済んだのよ」

 

 レモンは親指を地面に向かって指差す。

 そこにはすり鉢状に砂が渦を巻いていた。うっかり足を踏み入れたが最後、砂の中に引きずり込まれてしまうというわけである。

 その奥には、ありじごくのポケモン・ナックラーが顔を見せていた。どうやらこのポケモンが張った罠のようである。

 

「あ、危ない危ない……すみません、レモンさん……ちょっとどうかしてました」

「しっかし参ったわね……どうして未だにファウントタウンに着いてないのかしら」

「本来ならとっくについてるはずなんですけど」

「二人共。ボク達は新手のトレーナーの襲撃を既に受けているのかもしれない」

「どうやらまだ頭が茹だってるようね」

「本当だって! 考えてもみてよ。この事態を引き起こした、新手のポケモンが居るに違いないんだ! ちゃーんと思い出せ、思い出せ──ッ!!」

 

 デジーは回想する。

 このような事態に至った原因を。

 あれは、今から数時間前のこと。大砂漠を歩き出して20分程経ったときのことだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

()()()()地方と()()()()って似てますよね、語感が」

「砂の大洋(オーシャン)よりなる大地(アース)。それが訛ってオーシャンアース……オシャス……()()()()地方と呼ばれるようになったと言われてるわ」

「へーえ……そうだったんですね……」

「あくまでも一説だけどね? オアシスが訛ってオシアスになったんじゃないかって説もあるしぃ?」

 

 ──最初こそ()()()()()()和気藹々と砂漠を進んでいた一行。

 しかし、楽しい楽しい大砂漠の行進は、一瞬で地獄の徒競走と化したのだった。

 全ての始まりは足元不注意からであった。

 

「ねえ二人とも──」

「ッ!! 待ちなさいデジー、すぐ逃げてッ!!」

「え?」

 

 

 

 ぎゅむっ

 

 

 

 何か硬いものを踏んだような気がした。 

 そして次の瞬間、砂が持ち上がり──赤い鎧に身を包んだサソリのポケモン・ドラピオンが複数体、現れる。

 

「げぇっ!! ドラピオンの群れーッ!?」

 

 オシアスの砂漠に生息する数少ないポケモンがドラピオンだ。

 アジュガが従えていたぬしの個体のみならず、こうして野生での出現ケースも確認されている。

 砂に埋まっていた仲間達も揃って飛び出し、イクサ達に襲い掛かる。

 1匹だけならまだよかった。2匹、3匹、4匹と続け様に砂から飛び出して来たのである。

 咆哮した蠍達は、イクサ達を敵と認めると、鋏を振り上げて追いかけてきたのである。

 こうして、延々とドラピオン達に追い回されたイクサ達は、車を本来タンデムするはずが大きく進路を外れ、戻るに戻れないまま徒歩でファウントタウンに向かうことになってしまったのである。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ごめんなさいでした~~~~~!!」

 

 

 ──デジーは焼き砂土下座で平謝り。

 

「思いっきりボクの所為なんで、煮るなり焼くなり好きにして……」

「じゃあ逆バニーはどうかしら」

「待って!! それだけは!! それだけはお願い!!」

 

 味方に獅子身中の虫ポケモンが居るというオチであった。

 

「全く、あんなの誰にも予想できるわけがないから怒っちゃないわよ」

「まさかあんなところにドラピオンが居るだなんて思いませんでしたよ……」

「スコルピとドラピオンは、昔から砂漠に一定数住み着いてるわ。此処で生き残っていけるのは、少ない餌で生活できるポケモンだけ。今回は……運が悪かったとしか」

「そして、適応できなかったポケモンは……ああなるってわけですね」

 

 イクサは指を差す。

 白骨化したバクーダの骨が砂の中に埋もれていた。

 

「そうならないようにボクが水源探知センサーを使ってるんじゃん……砂漠の中じゃスマホロトムは圏外だからね……」

 

 こんな事もあろうかと、と用意していたのが空気中の細かな水分の流れを感知して、水の場所を探すデジー特製の機械である。

 だが、本来はこんなものを使わなくても車ですぐに向かえるはずの距離だったはずなのだ。

 

「落ち込まないで、イレギュラーは起きちゃったけど、きっと平気だよ。失敗することは誰にだってあるんだから」

「大丈夫じゃなかったんだよね……君もボクも」

「そうね、珍しく慌てふためく貴女が見れて良かったということにしておきましょうか」

「性格わっるぅ……はぁー……」

 

 水源探知機を掲げながら、デジーは溜息。

 此処最近、全くと言っていい程、良い所が無い。

 ギガオーライズはイクサに先を越され、戦闘では2回も途中で気絶させられて離脱。

 せめて、発明品で挽回しなければ役立たずのお荷物になってしまう、と焦燥が募りつつあった。

 

(……イヤだ。イヤだよ。このままじゃ……ん?)

 

「水源センサーに感知ありっ!!」

「え!?」

 

 センサーが指し示した方へ走っていく。

 涼しい風が吹き込んだような気がした。

 急いで砂丘を乗り越えると、辺り一面に広がる大きな泉。

 その近くには緑が生い茂っており、更に、遠巻きには町の姿さえ見える。

 

「……あったーっ!! オアシスだーっ!!」

「此処がランデブーポイントってわけね」

 

 

 

【ここはオシアス地方きってのオアシス都市・ファウントタウン】

 

 

 

「……やっぱ何度見てもややこしい名前だな……」

 

 立て看板を見ながら、イクサは肩を落とす。これではいつか間違える人が出てきてもおかしくない字面であった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

『バジルが制御不能すぎる』

 

 

 

『サンダー寮に於いて、確かにバジルは最強かつ最凶です(全盛期レモンを除く)。

見つけたと思っても、すぐに姿を消してしまい、次の瞬間には首にカクレオンの舌が巻き付いていて白い天井を見ることになるでしょう。

また、随伴するゾロアのイリュージョンも非常に厄介で、既にうちの部員たちは3日間森の中を彷徨う幻を見せられています。無事だったのは部長の私だけ。

おまけに、ゼラの狙撃の所為でそもそも近付くことが出来ません。あの二人を組ませるのは、正気の沙汰ではありません。

 

 

 

しかし、地上には更にヤバい生物が存在します。

 

 

 

それは、イカれた鳥・ペリッパーです。

 

 

 

ペリッパーはこの世のものとは思えないような気の狂い方をしているため目の前のものが何でも丸呑みにできると勘違いしており、リキキリンをも丸呑みにしようとしま──』

 

 

 

「──このイカれた報告書を書いたのは誰でしょう?」

「野鳥研究会の部長です……」

「ふっふふふ……生徒会長権限の名の下に即刻廃部にしなさい」

 

 ──数分後。

 アトムの指示の下、生徒会保有のブロスター型重機から小型ミサイルが飛ぶ。

 生徒会が「廃部」と言えばどのような部活も「廃部」。これは絶対である。

 ミサイルは正確に野鳥研究会の部室を窓から射抜き──中から木っ端微塵に破壊した。残念でもないし当然の帰結であった。誰もがそうなるべきであると分かっていたし、そうなるであろうことを理解していた。

 

「……しかし、なかなかにしぶといですねえ、彼らも」

「野鳥研究会がですか?」 

「レモンさんに決まっているでしょう。そして、転校生達」

 

 アトムは報告書を破り捨てると──いつものように、生徒会長椅子に深々と座る。

 彼の目の前には、幹部三人組。グローリオ、マイヅル、ツクバネの3人が勢ぞろいしていた。

 

「……少々見通しが甘かったと言わざるを得ませんね。とはいえ、ゲームである以上、誰にでもチャンスを与えなければいけないのですが」

「どの口が言っているのやら……」

「何か言いましたか? 無様にも転校生に負けたマイヅルさん」

「あれは少々油断しただけですわッ!! 無効試合ですの、無効試合ッ!!」

 

 レモン達の足取りは再び消えてしまった。完全に撒かれてしまったのである。

 おまけに、各地にはレモンやイクサ達が出没しているらしく、出動した生徒達はそれに翻弄されてしまっている。

 その多くが、サンダー寮きってのトリックスター・バジルの策略であることをアトムは理解していた。

 ゾロアの幻影だ。それが、生徒達をかく乱しているのである。

 あたかもそこに居ない人間を見せたり、あるいは居るはずの人間を見せるようにしたり。

 更に、よしんば近付けたと思っても、随伴のゼラが何処からともなく狙撃をしてくるため、誰も彼もバジルを捕らえるには至らないのだった。

 

「これだけの生徒を動員しているのに、足取りを掴んだかと思えばすぐに逃げられてしまうとは。聊か生徒の練度というものが足りないのでは?」

「相手は仮にもサンダー寮の最高戦力の集まり。しかも、既にそのうちの1人はギガオーライズにも辿り着いていますわ」

「こうなったのは果たして誰の責任なんでしょうねえ、マイヅルさん。私はキャプテンの拠点に攻撃を仕掛けろとは一言も言ってないんですよ」

「ふんっ、あの駄犬が全て悪いのですわ!」

「……本当にそうでしょうかねえ?」

「うぐっ」

 

 にこにこと笑みを浮かべながらアトムに対し、マイヅルは言葉を詰まらせた。

 あまりにも思い当たる節が多すぎる。

 決して、洗脳が効き過ぎた例の駄犬──元秘書のキャンベルだけではない。

 

「私からキャプテン3人に対して協力を呼び掛けた所総スカン……マイヅルさん、貴女一体何をしたんですか? キャプテンと連携しろとは言いませんが、せめて中立の姿勢を保っていれば、もっと早くに彼らを追い詰める事が出来ていたのでは?」

「わ、私はちょっと無限書庫に押しかけただけで……そもそもキャプテンの協力など無くとも、私の率いる私兵のみで彼女達は捕縛できたはずですわッ!」

「つまり独断でキャプテンの怒りを買い、彼らのギガオーライズ習得を間接的に手助けした……まあ、良いでしょう。ゲームにはハンデというものが付き物です」

 

(これは良いと思っていない時の”まあ良いでしょう”だなぁ……)

 

 対岸の火事とでも言わんばかりにツクバネは笑みを浮かべる。

 誰がどう見ても、アトムの堪忍袋の緒は切れる寸前であった。

 彼自身ゲームは過程まで楽しむタイプだが、無能な部下は嫌いである。

 偏に彼がマイヅルを切り捨てていないのは、それでも自らに次ぐ戦力を彼女が持っているからだ。

 ギガオーライズの実験に耐え、それを習得してみせたこともその証左である。

 

「会長。此処は僕に任せてよ。どっかの間抜けな副会長と僕は違うってところを見せてあげよう」

「間抜け……ッ!?」

「おや、ツクバネさん。貴方から動くのは珍しいですね」

「どうせキャプテンとの協定が結べないなら、もう仕方ないよ。僕特製の狂犬部隊(ラビス・スクワッド)の出番さ」

 

 ざっざっ、と生徒会室に入ってくるのは──黒い鋼の口輪を付けた生徒達であった。

 その中には、かつてはファイヤー寮のトップ・ラズの側近を努めていた男の姿もあった。

 だが、いずれも犬のような唸り声をあげており、目の様子は正気とは言えない。

 

「ガルルルルルルルルル……ッ!!」

 

【ファイヤー寮3年生”寮長側近”カーシス】

 

 その異様な光景を前に、マイヅルは立ち竦む。

 ファイヤー寮の親衛隊クラスの生徒達が皆、ツクバネの忠実なシモベと化していた。

 

「おやおや、これは最早……犬と形容するのも烏滸がましいですねぇ……」

「これは一体……ッ! ポケモンの催眠術ではありませんわね……!?」

「いーっひひひひぃ、ポケモンと人間を洗脳し、忠実な兵士とする特殊ガス……この私が提供させていただきましたぁぁぁぁあ、勿論人体への優しさは保証済みッ!!」

 

 製薬会社の御曹司である彼が得意げに胸を張る。

 どうやらよろしくない類の薬のようだった。

 

「グローリオ貴方!! そんなものがあるなら、私にも渡してくれれば──」

「いやぁ、貴方が自分の力でやると言ったのでぇ」

「くっ……」

「ポケモンは戦う為の道具だー!! なんて言う人が居るけどさ、バカ言っちゃいけないなぁ」

 

 ツクバネは、自らの私兵部隊を一瞥する。

 彼の指示で、狂犬部隊(ラビス・スクワッド)は自らのボールを投げていく。

 デルビルにヘルガー、ガーディといった犬型のポケモン達の口にも口輪が付けられており、目は赤く、妖しく輝いている。

 

「人間もポケモンも、等しく……僕の仕事を楽にするための道具……さ。僕は、アマツツバサの背中でお昼寝しているだけで良い。どっかの誰かのように余計な事をする必要は無い」

「……では、捕えて下さるのですね? レモンさん達を」

「僕は失敗しない。……やるのは僕じゃなくて、彼らだけどね」

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