ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

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第68話:きずなリンク

 ※※※

 

 

 

「ねぇー、転校生ー。バトルの前なのにすっごく難しそうな顔してるよー? あの部屋で何があったのさー?」

「何でもないよ……」

「私達の勝利条件はギガオーライズの解明。ぬしポケモンに起こる現象とやらと似てるなら、これ以上ない手掛かりだわ。もっと喜びなさい」

「元気ないならー、ボクが元気付けてあげよっか?」

「ぱもーぱもぱも」

 

 デジーの前に、パーモットがボールから飛び出し、抱き着いてくる。

 

「……ごめんねパモ様。心配掛けちゃったね」

「ぱもぱも」

「むぅー、ズルいんだ……! ボクもポケモンだったら、転校生と合法的に……!」

「バカな事言ってるんじゃないわよ」

「着きましたよ」

 

 訪れたのは図書館の地下の一角。此処にも大量の本棚があるが、古く痛んでしまい、もう表には置けないような本が敷き詰められているらしい。

 何故かご丁寧にバトルコートまで敷かれている。

 どうやらエイパム達のストレス発散用に用意したらしい。

 此処ならば幾ら暴れても、迷惑にならないとはトトの弁である。

 

「……散々人の内面暴いておいて、何も関係無かったら流石に怒るよ」

「まあまあ、時に人間は書籍ではなく己の身で体感するのも大事ですから」

 

 彼女が呟いた途端、何処からともなくペタペタ、と音が聞こえて来る。

 そして──現れたのは二又に別れた尻尾を持つ大きな猿のポケモンだった。

 図書館を守護する猿・エイパム達のボス──

 

 

 

「勝負は1対1。肩の力を抜いて、楽にいきましょう♪ ねえ、エテボース!」

 

【エテボース(オシアスのすがた) おながポケモン タイプ:エスパー/草】

 

 

 

 この猿のポケモンは、発達した二本の尻尾を操るポケモンだ。

 その先端はエイパム同様、手の形に広がっており、これを器用に使って木の上に登ったり木の実を剥くという。

 そして、それはイクサの見たことが無い目の前のリージョンフォームも同じだ。

 オシアスの気候・環境に適応し進化した姿のそれは、全身が銀と緑が入り混じった体毛に覆われており、原種は白っぽい体毛だった部分が黒い毛に覆われている。

 更に、片方の尻尾には木を削って作ったような大きなペンが握られており、その先端からは木の実の汁が漏れている。

 

【器用に樹木を削り、木の実の汁を染みこませてペンを作り出す。落書きは言語のように規則性があり、研究が進んでいる】

 

「──古代の本はかつて、巨大なエテボースが書き記したとされています。それくらい、頭の良いポケモンなんですよ」

 

(エテボースは元々”ねこだまし”が強力なポケモン……だけど、タイプは草とエスパーに変わってるから……主力技も変わってる可能性が高い)

 

 つらつらとエテボースについてトトが語る中、既にイクサはこのリージョンフォームを考察する段階に移っていた。

 エスパーと草タイプで弱点は多いが、こちらのポケモンも弱点を突かれてしまう相手が多い。

 唯一真っ向に対処できるであろうカルボウは捕まえたばかりでステータスが低く、しかもエスパー技がタイプ一致なのでそのまま倒されてしまう。

 パーモットは弱点を突かれる上に一致技が半減で相性が最悪。マリルは草技が弱点となり、タギングルもエスパー技で弱点を突かれてしまう上に素早さが負けている。

 

(あんな弱点だらけの複合に苦しめられる日が来るなんて……!!)

 

 キルリアは防御力が低いのでエテボースと殴り合うには向いていない。となれば唯一、正面から戦えそうなのは──やはりイワツノヅチになってしまう。

 しかし、そのイワツノヅチも一致技で弱点を突けるわけではないのであるが。

 

(あれ? 似たような状況、前にもあったような……)

 

「頼むよ、イワツノヅチ!!」

 

 巨大な岩の大蛇がイクサの投げたボールから飛び出した。とはいえ、イワツノヅチも素早さは決して低いポケモンではない。むしろステータス上ではタギングルと同じ速さである。

 

「……出ましたね、オーデータポケモン。迷宮の遺物の力、どれほどのものか見せて頂きましょう」

 

 体躯、耐久力、火力。

 それに加えてエテボースと比べて少し劣る程度の素早さ。

 普段ならばこちらが圧倒的に有利な状況だ。

 

(オーライズは正直得策じゃない……エテボースに有利を取れるタイプのポケモンが居ない。いや、高い防御力を盾に、マリルにオーライズさせて”ちからもち”一致技で一撃で勝負を決めるのが一番マシまである……?)

 

 イワツノヅチの防御力は特性も合わさって圧倒的だ。

 弱点を突かれても一撃では倒れない。

 

「……さーて、お手並み拝見といこうかしら」

「うーん、これ……ボクと初めて決闘した時と似たような構図だなあ」

「そうね。それに加えて、相手にはギガオーライズと同等の力を持つ”きずなリンク”がある。どう戦うのか見せてもらおうかしら」

 

 睨み合う大蛇と、エテボース。

 

「”アイアンヘッド”!!」

 

 すぐさま咆哮したイワツノヅチが身体を分離させようとした瞬間だった。

 先に動いたのはやはりエテボースだった。

 

「”ねこだまし”で動きを止めて下さい、エテボース」

 

(やっぱり!!)

 

 ねこだましは必ず先制できる上に、相手を怯ませる技。その代わり、出てきてすぐでなければ失敗する。

 だが、相手に大きな隙を作らせるには十二分だった。不意打ちでイワツノヅチの顔面を尻尾で叩いたエテボースはその勢いで宙返りしながら尻尾の掌から種を大量にばら撒く。

 

「からの”やどりぎのタネ”です!!」

「なッ!? やどりぎ使えるのかソイツ!?」

 

 種はすぐさまイワツノヅチの身体で発芽し、膨大な量の蔓で球体の身体を絡め取っていく。”やどりぎのタネ”は、相手に植えつけることで体力を吸収し続ける。高い防御力を誇る相手に対する回答の1つ──それが定数ダメージ。幾ら高い耐久力を持つイワツノヅチと言えど、宿り木によって体力を削られ続ければいつかは倒れてしまう。

 更に続けてエテボースは持っていたペンを地面に突き刺した。

 

「自然界ではエテボースは木のペンを落書きのみならず……実がなる木の近くで突き刺すんです。ペンの先端には……植物の成長を急促進させる成分が含まれているので!」

 

 彼女の言う通り、宿り木は更に太く、長く、そして数多く成長していき、イワツノヅチの身体を雁字搦めに拘束してしまった。

 幾ら身をよじっても逃れられる様子が無い。

 

(植物を急成長だって!? やどりぎが超強化されてるのか!?)

 

「分離して逃げるんだイワツノヅチ!」

 

 せめて拘束からは逃れようと、絡みついた宿り木を引き千切りながらイワツノヅチは自らの身体をバラバラにして浮かび上がる。

 だがそれでも──宿り木は絡みつき、イワツノヅチの体力を削り続ける。 

 1対1のこのルールでは、交代することで宿り木を解除することもできない。 

 しかし、拘束され続けるよりははるかにマシだ。バラバラに分離したイワツノヅチは、エテボース目掛けて己の身体全部でぶつかっていく。

 

「”アイアンヘッド”だ!!」

 

 ボール状の身体の節がエテボースを押し潰す。

 並大抵のポケモンが受ければ一溜まりも無い質量爆弾だ。

 しかし、そこに既にエテボースの気配は無かった。

 ケケケケ、と甲高い笑い声が聞こえて来る。

 砂煙が晴れ、イクサは何が起こったのか理解した。

 

「”やどみが”……!!」

 

 ”みがわり”だ。イワツノヅチが攻撃したのは、エテボースが己の体力を削って作りだした”みがわり”だったのである。

 そして、削れた体力はイワツノヅチに絡みついた宿り木によって回収されていく。

 これが俗に言う”やどみが”。これに”まもる”も組み合わせることで、耐久戦の姿勢は盤石のものとなる。

 そうでもなくとも、この世界では宿り木が拘束技の側面を持つため、身代わりの処理をしている間に相手にどんどん体力を回復されてしまうのだ。

 

「こうしてみるとえげつないわね……ナットレイ、エルフーン……これらのポケモンにとっては標準技能と言えるけど」

「くっそ、まさか異世界に来てまで”やどみが”戦法を見るなんて思わなかったんだけど!」

「ですが流石にオーデータポケモンと言うだけあって……しぶとそうですね。ここらで本論を仕上げましょう、エテボース!」

 

 高らかに告げたトトに、エテボースが頷く。

 

「させない!! ”ストーンエッジ”!!」

「当たりませんよ?」

 

 不意に現れた岩の刃。それを躱しながら──エテボースの目が光った。

 

 

 

「先祖より与えられた我らが力、貴方にお返しします……”きずなリンク”!!」

 

 

 

 トトの手の甲に紋様が現れる。

 それと同じマークがエテボースの額にも現れた。

 同時に、エテボースの身体が光に包まれていく。

 それは──グローリオの強化版オーバングルが放ったものと酷似した色の光だった。

 エテボースの尻尾は更に肥大化し、更に持っていたペンも蔓が絡みついて巨大化する。

 頭部は蔓が絡み合った冠が現れ、まさに猿の王といった風格と化す。

 

「ほ、本当にギガオーライズみたいになった……!!」

「……ふぅー……さて、と。久々ですが乗りこなしてみせましょうか」

 

 何処か自らを落ち着かせるように、トトは息を大きく吐く。

 

「同調させますよ、エテボース!」

「ッ……イワツノヅチ、アイアンヘッドで攻撃だ!!」

 

 ばらばらになった体をプラズマで浮かび上がらせ、退路を塞ぐかのようにぶつけていく。

 しかし、エテボースはそれを尻尾で受け止め、いなし、地面へと次々に投げていく。

 全くと言っていい程、攻撃が通用していない。

 イワツノヅチは非常に賢いポケモンだ。相手の行動パターンを分析し、その逃げ方を潰すように攻撃を仕掛けたつもりだった。

 だが、その全てがインパクトを最小限に抑えられ、受け流されてしまったのである。

 

「ど、どうなってるんだ……!?」

「これが”きずなリンク”……または”ギガオーライズ”の本質でしょう。今私の精神はエテボースと完全に同化しています。私の景色はエテボースと同調し、エテボースもまた、私と同じ景色を見ている」

「ッ……どうなってるんだ一体……!!」

「そして、私達は二人とも、好奇心というものが旺盛で……興味を持ったもので遊ばなければ気が済まない──という一点で合致しているんですッ!!」

 

 再び大量のタネがイワツノヅチの周囲にばら撒かれる。

 ただし、そのサイズはさっきまでの比ではない。ヤシの実くらいはあろうかというサイズだ。

 そこから生えて来るのは、最早宿り木というレベルではない。御伽噺に出てくる豆の木と同等のレベルだ。

 

「エテボース……オオワザです!!」

 

 仕上げだと言わんばかりにエテボースは、木の実のエキスが染みこんだペンを、地面に突き刺す。

 それが地面にばら撒かれた種たちに栄養を一気に与え、急成長させる。

 

 

 

「欲張りにも相手の生命全てを吸い尽くす魔性の蔓!! 搾り取りなさいッ!!」

 

 

 

【エテボースの アサシングリードヴァイン!!】

 

 

 

 巨大な蔓がイワツノヅチの頭部を拘束する。

 そこからは先程のやどりぎも合わせて、エテボースの身体に一気に体力が吸われていく。

 

「もう()()()()()()()()? あ、1対1だからあまり関係無いんでした♪」

 

(まさか、さっきの”やどりぎのタネ”と重複するのか!?)

 

 通常、”やどりぎのタネ”は重ね掛けすることができない。

 しかしこれを見るに、”アサシングリードヴァイン”の蔓は、やどりぎのタネと合わせて相手の体力を二重に磨り潰していく。

 抵抗を試みて抜け出そうとするイワツノヅチだったが──

 

 

 

「最後に……エスパータイプらしく”さいみんじゅつ”です♪」

 

 

 

 ──エテボースの目がサイケデリックに輝く。

 拘束されていたイワツノヅチはそれを直視してしまい、その場に昏倒。

 そして再び目覚めるよりも前に、体力を完全に吸い取られ、全身のプラズマも消え失せてしまうのだった。

 完封負けであった。蔓や宿り木が消えていくが、イワツノヅチはぴくりとも動かなかった。

 

「……完敗です。ありがとうございました」

「いえ、こちらこそ♪ こうして完封しなければ、力押しで勝てる相手ではなかったので」

 

 流石に年季が長い上に、ぬしポケモンというだけあって攻撃を捌く力も段違いだった。

 ゲームのようには行かないな、とイクサは頭をぽりぽりと掻く。

 

「まさかこの世界でも”やどりぎのタネ+みがわり”コンボを見るなんて。でも、質問が1つあるんですけど」

「はい、何でしょう?」

「”やどりぎのタネ”って草タイプには効きませんよね? 僕が草タイプや特性”そうしょく”持ちのポケモンを出してたらどうするつもりだったんですか?」

「アサシングリードヴァインは……草タイプの生命力も吸い尽くす最強の蔓ですよ? 作物を弱らせるのは雑草、寄生植物が他の木々を弱らせることもあるでしょう? それに、特性ではオオワザは防げません♪」

 

 通常、草タイプには”ねむりごな”や”キノコのほうし”といった粉塵系の技、そして”やどりぎのタネ”は通用しない。

 しかし、オオワザは規格外。それらの耐性を無視して叩き込むことが出来るらしい。

 

「ただ、アサシングリードヴァイン自体に攻撃力は無いので、タイプ相性で詰められるとジリ貧にはなってしまうでしょうね?」

「すっごく強い”やどりぎのタネ”みたいなものなのか……」

 

 それでも初見の相手にはこうして突き刺さるので厄介極まりない。

 結局の所、イクサの敗因はオオワザをひっくり返す手段が無かったこと、そしてタイプでエテボースに有効打を与える事が出来なかったことである。

 

「それで、女子2人の感想は……いかがでした?」

「確かにオオワザが使える事、ポケモンが強化される事。ギガオーライズと同じだったわね」

「あの光も、グローリオ先輩のオージュエルが放ってた光と同じだ!」

「間違いないわね」

 

 レモンは確信した。ギガオーライズは、オージュエルとオシアス磁気の力で、”きずなリンク”を再現したものだ。

 まだ原理については分からないことだらけだが、一歩前進である。

 

「それにしても……道理で辿り着かないわけだわ。オシアスのキャプテン秘伝の技と類似していただなんて……」

「ねえ、レモンさん、これならギガオーライズにも辿り着けるんじゃないですか!?」

「ダメだよ。結局オージュエル側がどういう変化をしているのかが分からないんだもん」

 

 デジーが口を尖らせた。結局、肝心な事は分からず仕舞いなのだ。

 

 

 

「では、頑張ったポケモンを元気にして……書庫の方へ行きましょう♪」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──改めて、きずなリンクについて書き記した本を1冊、ご紹介しましょう。エテボース!」

「きゃいっきゃきゃいっ」

 

 

 

 すっ飛んで行ったエテボースは、すぐさま本棚の方へ跳びあがり、器用に登っていく。

 そして、1冊の本を尻尾で掴むと、そのまま宙返りしながら彼女の元へ戻ってくるのだった。

 

「これって?」

「オシアスのぬしポケモンは表に出る事が少ないので、公式な資料が少ないんです。これは、その中でも数少ない”きずなリンク”についてまとめたものですね」

 

 表紙には古ぼけた字で『オシアス探検記』と書かれていた。

 

「この本は私も昔読んだことがあるのですが、文体が古いので要約していきますね」

 

 ──曰く。

 きずなリンクは、大昔にぬしポケモンから権能の一部を授かったキャプテンが、一時的にその権能を返すことで起こすことが出来る現象である。

 それは、ポケモンに全く同じオーラを重ねる事で引き起こせるギガオーライズと似通ったものを感じさせた。

 そして”きずなリンク”使用中は、人間側の精神力をエネルギーとしてポケモンは更に強くなっていく。極論、人間側が感情を爆発させれば、ポケモン側にも爆発的な力を与えられる。

 だが、当然代償が無いわけではない。人間側には大きな負担がかかり、無暗に出力を上げ過ぎると肉体が耐えきれなくなるとのことだ。

 出力を急上昇させた状態は、言ってしまえば、水の中に潜っている感覚に近いとされている。

 これらの性質上、きずなリンクは人間側の精神力のコントロール、そしてポケモンとの同調が最重要とされている。

 

「もしもギガオーライズがきずなリンクと同じなら、人間側の精神がポケモンに強く影響を及ぼすはずなんです。特にオオワザは、人間とポケモンの連携が最重要ですから。呼吸が合っていなければいけない」

「ん? でも、それってポケモンと仲良しだったら何にも問題なくない?」

「同調に関してはそれで問題ないでしょう。一番のネックになるのは()()()調()()です。先代が……私のおじい様が言っていたんです」

 

 

 

 ──きずなリンクの際、人間の心は奔流に飲まれる。自らが自覚していない本心に食われるような感覚じゃ。その際、無理に抑えつけようとすると失敗してしまうのじゃ。

 

 ──成功しやすい人としにくい人が居そうですね、その言い方だと。

 

 ──自分の本心を理性で押さえつけている者ほど、失敗しやすいんじゃ。己の理性と本能のギャップに苛まれてしまう。ポケモンは本能的な生き物、本能の方が大事なんじゃよ。ワシがそうじゃった……。

 

 

 

「成程、では先代のキャプテンは……何故失敗しやすかったのかしら。教えて貰える?」

「ええ、祖父が言うには……」

 

 

 

 ──ワシは自分で言うのもナンじゃが、若い頃は硬派な書生のつもりじゃった……。

 

 ──はぁ、今でも硬派だと思いますけど。

 

 ──だがキャプテンを継承し、きずなリンクで初めて己の本心に直面した時、ワシを襲ったのは……。

 

 

 

 

 ──女の園、両手と両足に花のハーレムじゃった……。

 

 

 

「あ、ギャップってそういうギャップ!?」

 

 デジーは思わず叫んだ。他人事ではないイクサは俯いてしまった。レモンは呆れたように「しょうもないわね……」と一蹴。

 

 

 

 ──本当はモテたかったんじゃ……スポーツやってモテてる連中が羨ましかった!! モテたいという思いが拗れに拗れて……それを押し隠す為に硬派を装っていたんじゃ……。

 

 

 

「と、うちの先代のように理性と本能が乖離している人ほど失敗しやすいんです。でも、もしも秘めたる本能を解放できたならば、ずば抜けた力をポケモンに注ぎ込めるでしょう」

「嫌だよモテ願望を自分のポケモンに注ぎ込むポケモントレーナーなんて」

 

 イクサの言葉に他の二人もこくり、と頷く。

 

「じゃあ僕良いです、一生ギガオーライズ使えなくて……自分のポケモンにそんな汚いモン注ぎ込むくらいなら、カロス地方で炭鉱夫になってメガストーン採掘してきます」

「ちょっ、ちょっと! 早まらなくても良いじゃないですか! 要は己の内心の本音に向き合えってことですよ!」

 

 その本音が問題なのである。少年の理性で押さえつけるにはあまりにも大きすぎる代物だ。

 

「内心の本音ー? ボクは自分に正直だから、簡単だねー♪」

「そうね。私もあまりギャップがあるとは思わないわ」

「いや、貴女達は良いんですけど、そこのイクサさんが問題で──」

「ちょっと!! わざわざ密室で話した意味!!」

「ああすいません、つい口がポロッと滑って」

 

 ぐいぐい、とトトの肩を掴んで揺らす中、デジーは面白そうに近付いてくる。

 

「へえー? 転校生、どんな本音を隠してるの? やらしい本音ー? ボクは全然良いけどねー、にししっ」

「イクサ君、貴方の本性がどんなクソ野郎でも、貴方が私の騎士(ナイト)であることは変わりないと思ってるわ」

「もーう、すぐにややこしい事になるんだから!」

 

 そう言った矢先、ボールから勝手にパーモットが飛び出してくる。 

 そして、彼は無言でイクサの太腿に手を当てると、いつものスマイルのまま首を横に振った。「ドンマイ」と言っているようだった。

 

 

 

(それはひょっとして慰めてるつもりなのか、パモ様!?)

 

 

 

 本音が気になる、とばかりにレモンとデジーは詰め寄ってくる。イクサが困ったように顔を背けたその時だった。

 

 

 

「楽しそうですわね。図書館で女子会かしら?」

 

 

 

 勝手口から甲高い声が聞こえてきた。

 レモンとデジーの表情が一気に凍り付く。

 周囲は一瞬で冷気に包まれた。冷房が効き過ぎていると錯覚するほどに。

 

「──ッ!」

 

 その顔を見た時、恐れは確信に変わる。

 

「よりによって、一番面倒な奴に追いつかれたわね……!」

 

 レモンが歯噛みするように言った。デジーも頷く。生徒会本部で幾度となく顔を合わせた相手だ。

 

「確かこの人は……!!」

 

 イクサは思い出す。新たにフリーザー寮の寮長の席に座った女子生徒である。

 

 

 

「改めましてごきげんよう。生徒会副会長マイヅルが直々に貴方達を捕えに来ましたわ!」




エテボース(オシアスのすがた) おながポケモン エスパー/草
進化条件:エイパム(オシアスのすがた)にリーフのいしを使用。
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