ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

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第59話:みんなのうた

 ※※※

 

 

 

「……手痛くやられたわね……!!」

 

 

 ──激戦は続く。フィーナに連絡をした後も、メロディーバを止めるべく奮戦していたレモンだったが、手持ちの体力の消耗は想像以上に激しかった。

 ハタタカガチは戦う力を失い、ギャラドスも音波砲の直撃を受けて倒れてしまった。

 直撃こそ免れたものの、衝撃波だけでレモンも吹き飛ばされてしまい、動けなくなってしまう。

 ポケモン達諸共、レモンが倒れているのを発見したバジルとゼラは、急いで彼女を保護するべく駆け寄る。

 最早、メロディーバを追うどころの話ではなかった。

 

「レモン!! ハタタカガチもしっかりするデス!!」

「ギャラドスも気絶している……あの音波砲を前によくやった……!!」

「……イクサ君は?」

 

 消えそうな意識でレモンは二人に問いかける。

 未だに彼は頭頂部で振り落とされそうになりながらもコックピットへの入り口を探しているのだ。

 

「私は良いから、2人はデジーの救助を……!」

「レモンをこんな所に寝かせておけないデス!」

「イクサに任せるぞ」

「ッ……」

 

 レモンはメロディーバの頭部を見据える。そこでは必死にイクサが食らいついている──

 

 

 

(イクサ君……くれぐれも無茶はしないで……ッ!!)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──その歌声は、ポケモンセンター中に響き渡っていた。

 大いなる祈りを込めた歌だった。

 歌えば、歌う程に、メロエッタと出会った時のことが鮮明に思い出されるようだった。

 

 ──貴女は、メロエッタ様……!?

 

 ──ららるー♪

 

 ──私が、次の聖女……!? 私で良いの!? 私、何も特別な力なんてないよ……!?

 

 ──いいや、あるゥ。次の音の聖女は、このオクターヴがプロデュースするゥ。そうだろう、メロエッタァ。

 

 ──ららるー♪

 

 ──いや、誰ですかおじさん!?

 

 ──許せ嬢ちゃんんん、この話を俺ン所に持ってきたのはメロエッタの方だァ。メロエッタがァ、君の所に俺を導いたんだよゥ。

 

 突如始まったアイドル活動は、あまりにも過酷で手探りで、打ちのめされることも多かった。

 普通の女の子として過ごしていた日々はあっけなく終わりを告げた。

 毎日レッスンか仕事が繰り返される。友人たちとは疎遠になっていく。

 だが、それでも──楽しかったのだ。

 

(思い出した……私の歌を、沢山の人に届けられるのは……私が聖女だから……!)

 

 彼女一人の旋律では、決して大いなる奇跡に到達しない。

 

(私が聖女になったのが今日この日の為なら……私はこの喉が潰れても構わない……!)

 

「~~~♪」

 

 外で待っていたはずのオクターヴが部屋に入り──コーラスに加わる。

 驚いたように目を見開いたフィーナだったが、構わずに続けた。

 オクターヴは元・歌劇団の一員。彼女に即興で合わせるなど造作もなかった。

 

(何故だか分からねェ! だがァ、こうしなきゃいけねェ気がしたんだよゥ!! フィーナちゃん1人にゃ背負わせねぇぜェい!!)

 

(オクターヴさん……!!)

 

 二人の歌は、メロエッタを癒すように包み込んでいく。

 更に、開いた扉から、ポケモンセンターのスタッフも、中に居たトレーナー達も、見知らぬ人も見知った人も含めて飛び込んで来る。

 彼女の旋律は既に、センターに居る人達を引きつけていた。

 

(やっと理解したァ……!! フィーナちゃんが、何でメロエッタに選ばれたのかァ……!!)

 

 かつての聖女は、1人で皆の希望を背負い、メロエッタと共に戦った。

 しかし、ある意味フィーナの歌声はそれとは対極に位置する。

 ありとあらゆる全ての人々を惹きつけ、歌で束ねる力だ。

 人々は皆、フィーナの為、そしてメロエッタの為に声を合わせて歌い続ける。

 不揃いではあった。音も外れていたかもしれない。

 だが、その場の全員が──同じ願いを持っていた。

 音楽に守られてきたメロディーレインを音楽で滅ぼさせやしない、と。

 コーラスは束となり、旋律は実体化し、メロエッタの身体を包み込む。

 その身体は光りだし、ゆっくりとだがベッドから起き上がる。

 

「ー♪」

 

 メロエッタは──まだ掠れていたものの、鼻歌でフィーナと合わせ始めた。

 そして、人々を掻き分けて、2人は部屋を出て、ポケモンセンターからもゆっくりと足を踏み出す。

 彼女達に続くようにして、町を逃げ惑う人やポケモンも──彼女の下に集い、同じ歌を唄い始めた。

 即席の合唱団は、気が付けば住民たちやポケモン達を巻き込んで、とてつもない規模となり、巨大な鋼鉄の怪物の前に立っていた。

 その歌のエネルギーは膨大で、メロエッタを癒すには十二分だった。

 皆の願いが籠ったそれを受けると、首の包帯を彼女は外す。既に傷は完治していた。

 

(──私の歌は、希望の歌! 皆の希望を束ねて、願い祈るの!!)

 

 合唱団は──鋼鉄の怪物の前に立ちはだかる。

 自分達の町は、自分達で守る。

 

 

 

(音楽の町は……音楽で守る──ッ!!)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「やっと見つけた……!!」

 

 

 

 後頭部の分かりにくい位置にハッチを見つけたイクサは、パーモットと二人掛かりで鉄板を引き剥がして、中に入り込む。 

 

「パモ様サンキュー!!」

「ぱもぱもっ!!」

 

 中はステージのようになっており、そこで偽りの聖女が歌い続けている。

 

(デジー……!!)

 

 しかし、すぐさま耳を塞いだ。

 音が外れているものの、破滅のメロディは健在だ。聞いているだけで、頭がおかしくなってしまい、イクサも破壊的な衝動に憑りつかれてしまいそうだった。

 すぐさま、楽譜から凄まじい負のオーラが溢れ出ていることに気付いたパーモットは、自ら飛び出してそれをビリビリに破いた。

 だが、それでも中で歌うデジーは止まらない。

 そして彼女が歌う度に怒り狂うウタノウズメによって音波砲が放たれ続け、町を破壊していく。

 イクサは意を決して飛び出し、デジーの口を腕で塞ごうとする。

 しかし、彼女の力とは思えない勢いで跳ね除けられてしまう。

 

「デジーッ!! デジーッ!! しっかりするんだ!! 目を覚ますんだ!!」

「ぱもー、ぱもぱもっ!!」

 

 呼びかけても効果は無い。

 力づくで押さえつけても無駄だ。

 楽譜を破いても、既に彼女は破壊の旋律に抑え込まれてしまっている。

 この間にも、破滅の歌はステージ内を満たし続けている。

 そんな中、ステージに映し出されたメインカメラには──信じ難い光景が広がっていた。

 

「──ッ!? 何だ、あの人だかり──!?」

 

 メロディーバの前に立ち塞がるようにして、人の波が出来ている。

 ぞっとしたイクサは、思いつく限りの最後の手段を決する。

 力づくでもなく、呼びかけでもない。

 しかし、口を塞ぐことが出来る方法だ。

 

(ッ……で、でも、この際仕方ないよね!?)

 

 思い出すだけで顔から火が出そうだった。

 最早羞恥だとかその他諸々一切はイクサは投げ捨てる事にした。

 デジーに人殺しの咎を背負わせるわけにはいかない。

 

「パモ様!! 二人掛かりでデジーを押し倒すよ!!」

「ぱもーっぱもぱもっ!!」

 

 正面から破壊の旋律を受け、頭を壊されそうになりながらもイクサは思いっきり助走を付けてデジーに飛び掛かる。

 虚ろな目をした彼女は抵抗するように腕を振り上げたものの、ステージに倒された。

 だが、それでも尚、少女の口からは破壊の旋律が紡がれ続ける。

 

 

 

(止まれェェェェーッッッ!!)

 

 

 

 それを止めるため、イクサは思いっきり彼女の唇を塞ぐように──自らの唇を重ねた。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 止まることなく放たれていた音波砲が一瞬だけ止まった。

 合唱団のコーラスは、メロエッタの力で倍増し、メロディーバにぶつけられる。

 拮抗していた力関係は一瞬崩れ、メロディーバを音の魔法が包み込む。

 動力炉となっているウタノウズメは、それを聞くなり急に悶え苦しみ始めた。

 すぐさま目の前にいる忌むべき歌姫たちを薙ぎ払おうとするが、もうメロディーバが思い通りに動くことは無かった。

 先頭に立つメロエッタとフィーナの歌声が、人々の歌声と混じり合い、破壊衝動を鎮めていく。

 それはコックピットの中に居たデジーを、破壊の楽章からも解放していく。

 

「ッ……ん、ぁ、ボクは……」

「デジー!? デジー!!」

 

 ごうん、と音を立てて巨大重機は完全に静止した。目のスピーカーから、音波砲が放たれることも無かった。

 イクサは思わずデジーを抱きしめる。後ろからはパーモットが抱き着いた。

 

「パモ様まで……ボク、どうしたの……!?」

「全部止まった!! 止まったんだよ、デジー!! さっさと此処から出よう!!」

「ッ……そっか、僕、楽譜の力に飲み込まれて……」

 

 デジーの目には、メインカメラの映像が映った。

 そこには、多くの人々の先頭に立って歌うフィーナとメロエッタの姿があった。

 コックピットの中にも、魔法の旋律が聞こえてくる。

 

「……そっか。皆が止めてくれたんだ。転校生も──ありがと」

 

 ふにゃり、と彼女は微笑んでみせる。

 二人はコックピットから飛び出す。

 そして、イワツノヅチに飛び乗ると地上へと降りていく。

 町の人々やポケモンの歓声が二人を包み込んだ。

 

「えっへへ、こうしてると何だか物語の王子様とお姫様みたいだねっ!」

「やめてよ……」

「あれー? 照れてるんだ?」

 

 何処か気まずそうに顔を逸らすイクサに、デジーはいつもの悪戯っ子のような笑みを浮かべてみせる。

 そして、遠巻きから手を大きく振るフィーナに、デジーは思いっきり手を振ってみせた──その時だった。

 

 

 

YOKUMOYATTEKURETANA KUTUJOKUTEKIDA

 

 

 

 怒りと憎悪に満ちた歌声が響き渡る。

 確かにメロディーバは機能停止した。

 故に後に残るのは──元凶たるフルスコア・レコード──つまり、ウタノウズメだけだ。

 

「らららるるるるる……ピピピ」

 

 

 

【ウタノウズメ(ボイスフォルム) オーデータポケモン タイプ:エスパー/フェアリー】

 

 

 

 

「しまった、まだコイツが残ってたのか……!!」

「転校生、気を付けて……! こいつだ! ウタノウズメの所為でフォルテはおかしくなったんだ! 例の楽譜も、こいつがフォルテに()()()()んだ!」

「ッ……何となくそんな気はしてたよ、言う事聞いてなかったからな……!」

 

 ハッチを弾き飛ばし、オーデータポケモンは全身をオシアス磁気の青白い光に包みながら地面に激しく降り立つ。

 周囲がどよめく間もなく、彼女は再びあの失望の歌を奏でる。

 

WAREHASITUBOUOMAETATIHAHIREHUSHITINIHAIYURUSIWOKOU

 

 イクサ達も、住民たちも皆戦意を一瞬で刈り取られ、膝を突いてしまう。

 それほどまでにウタノウズメの歌は絶対的だった。

 そうして、動けなくなったところを纏めて始末する。

 ウタノウズメがもう片方のスピーカーから音をかき鳴らすと、次々にメロエッタの影のような怪物が姿を現し、それが住民たちに向かっていくのが見えた。

 後は、数で蹂躙できる。そして、最大の邪魔者であるパーモットは直々に始末すれば良いだけだ。

 そう思っていたのだが──

 

 

 

ARASHIHAYAMIKUMONOKIREMAKARAHIKARISASU MERODEREINNNIEIKOUARE HEIWANOUTANPAKAGOYOARE

「嵐は消え、雲の切れ間から光差す──嗚呼メロディーレインに栄光あれ、平和の歌の加護よあれ」

 

 

 

 ──メロエッタと聖女の讃美歌により失望の歌は相殺される。

 この世のありとあらゆる全ての歌を再生することができるウタノウズメだが、すぐにそれに対抗する音を作り出せるメロエッタとは、能力面で相性が悪いのだ。

 それでも、フィーナと共に歌わなければ抑え込むことができないくらい、敵の歌は強すぎる。

 だが、歌が相殺されている限り、イクサは戦う事が出来る。讃美歌が響く中、彼は再び立ち上がった。住民たちも、影の怪物たち相手に、ポケモンを投げて応戦していく。聖女であるフィーナを守る為に。

 

(……ありがとう、フィーナさん、メロエッタ。これで……やっと……奴に攻撃が届くッ!!)

 

「……転校生っ、ボク──ポケモンが居ないから戦えなくって……」

「大丈夫だよデジー。此処からは……僕とパモ様で何とかする」

「ぱもーぱもぱもっ!」

「……うん。頑張って!!」

 

 ウタノウズメはスピーカーから失望の歌を奏でながら、臨戦態勢に入る。

 念動弾を摺り抜けながらパーモットはウタノウズメに肉薄する。失望の歌さえなければ、威力は強力だが隙があり、避けやすい弾幕だ。

 更に、後ろから響き渡るメロエッタの歌が、パーモットに常に強力なバフをかけ続けている。

 共に立つイクサにも勇気を振り絞らせている。

 弾幕を全て躱しきったパーモットは、そのまま跳ね上がり、渾身の拳を思いっきりぶつけた。

 

 

 

「──パモ様、”かみなりパンチ”!!」

 

 

 

 思いっきり小さな体は吹き飛んだ。

 しかし、それでも空中で回転すると、華麗に降り立ってみせる。

 

【ウタノウズメの いにしえのうた!!】

 

 周囲に、メロエッタの歌そっくりの楽曲が掻き鳴らされる。

 次の瞬間、ウタノウズメの身体がガコンガコン、と音を立てて変形していく。

 足は鋭利な刃物の如く尖り、そして五線譜が刻まれた髪が巻かれていく。

 

「るらららら……ピピピ……!!」

 

 

 

【ウタノウズメ(ステップフォルム) オーデータポケモン タイプ:格闘/フェアリー】

 

 

 

「フォルムチェンジした……ッ!!」

 

 一気にウタノウズメの動きが変わる。

 それと同時に曲調も徐々に徐々にだが激しくなっていく。

 ポケモンを持たないデジーは、その様を見守るしかなかった。

 失望の歌でのデバフが無くなったとはいえ、格闘戦に特化したウタノウズメは、パーモットと渡り合う程に素早く、そして苛烈に脚技を繰り出していく。

 

【ウタノウズメの インファイト!!】

 

 レイピアのように何度も何度も何度も脚が突き出され、パーモットを打ち鳴らし──大きく吹き飛ばす。

 それをイクサは──抱きとめたが、勢いが強く、共に地面に投げ出されてしまった。

 

「転校生ッ!!」

「うぐぐ……ッ!」

「ぱもぉ……ッ!!」

 

 デジーはイクサとパーモットに駆け寄る。

 しかし、それでもふたりの闘志は消えていない。

 一度負けた相手に、メロエッタの支援もあるのに負けるわけにはいかない、と意地を見せているようだった。

 何より相手は、レモンとデジー、両方の仇のようなものだ。

 

「……大丈夫。勝つよ。僕は……絶対に……ッ!!」

「へ、へへっ……すごいや。こんなにボロボロなのに……何で説得力があるんだろうね……!!」

 

 再び立ち上がるイクサとパーモット。だが、状況は良くない。

 組みかかっても、相手の方が格闘技術も技も何もかもが優れている。

 何度ぶつかっても、ぶつかっても、相手の攻撃が激しく、必殺の一撃をぶつけることができない。

 当のフィーナとメロエッタは、ウタノウズメから常時垂れ流しにされている歌を打ち消すので手一杯。

 一方、ウタノウズメはそうやってメロエッタを抑え込みながら戦う事が出来る──

 

WAREHASITUBOUOMAETATIHAHIREHUSHITINIHAIYURUSIWOKOU

 

 パーモットにじりじりと近付きながら、足を振り上げようとするウタノウズメ。

 フィーナが動揺し、歌を止めようとしたその時だった。

 

 

 

 ──閃光が一瞬、強く強く光り、ウタノウズメの背中を雷光が抉る。

 

 

 

「イクサーッ!! お待たせデース!!」

 

 

 

 後ろから、走ってくるのはバジルとゼラだ。レモンは気を失ったまま、ゼラの背中に負ぶわれているものの、無事である。

 当然、今の長距離射撃を命中させたのは──ゼラのクワガノンだった。

 ダメージこそ大きくなかったものの、ウタノウズメの全身は痙攣し、火花が散っていた。

 麻痺状態だ。動きは一気に鈍りを見せる。

 

(チャンスが出来たッ……!?)

 

WAREHASITUBOUOMAETATIHAHIREHUSHITINIHAIYURUSIWOKOU!!」

 

 だが怒り狂うウタノウズメは、自らの脚を地面に差し込み、巨大な影の怪物を更に作り出す。

 

「バジル、パチンコを持っているか」

「──ッ! 了解デス、アレを使うんデスね!?」

「ああ」

 

 言われるがままにバジルが、自前のパチンコをゼラに渡す。そして──叫んだ。

 

「デリバード、”ふぶき”デース!! 邪魔な奴等をカチコチデース!!」

 

 影の怪物たちは一瞬、猛吹雪によってカチカチに凍結する。

 これにより、射線は通った。

 怪物たちの隙間、そしてウタノウズメの隙間がはっきりとゼラには見えている。

 

「ロック・オンッ!!」

 

 思いっきりパチンコを引き絞り、解き放つ。

 それは、ウタノウズメを掠め、イクサの目の前にサクッと音を立てて突き刺さった。

 金属製の薄く小さなカード──即ち、オーカードだった。

 

「イクサッ!! レモンから託された!! それを使え!!」

「──ッ!!」

 

 迷わずそれを受け取ったイクサは、目の前のウタノウズメを見据えながらオーカードをオージュエルに翳す──

 

 

 

「──オーライズ”ハタタカガチ”!!」

 

 

 

 ──雷光がパーモットを直撃した。電球が冠のように頭から生え、そして全身にオシアス磁気のプラズマが迸る。

 そして、目の前には倒すべき敵・オーデータポケモンが鎮座していることにより、更に磁気は活性化。

 

【パーモットは オーライジングで攻撃と特攻が上がった──!!】

 

 きゅっ、と拳法家の如きポーズを取り、イクサとパーモットは完全に息を合わせ、もう一度ウタノウズメと対峙した。

 

「お前は……此処で止めてみせるッ!!」

「ぱもーぱもぱもっ!!」

 

 麻痺したものの、自らを癒す歌を流して回復していくウタノウズメ。

 すっかり元の速度を取り戻した舞姫は、パーモット目掛けて蹴撃を何度も仕掛ける。

 だが、毒蛇の加護を受けたパーモットに、最早格闘の技は通用しなかった。

 そして攻撃が通らないならば、一瞬で間合いを詰めることができるわけで──

 

「──決めるよパモ様ッ!!」

「ぱもーぱもぱもっ!!」

 

 讃美歌が響く中、失望の歌が響く中、電光が一際激しくパーモットを包み込む。

 この技は他の誰の物でもない。

 これまで積み上げてきたものをぶつける、全身全霊必殺の一撃だ。

 

 

 

「君に恨みはないけど──ッ!!」

「ぱもーっ!!」

「コンサートの時間は……お終いだ!! 全部まとめてブチ込め(”でんこうそうげき”)!!」

 

 

 

 拳を強く強く握り締め、パーモットはウタノウズメに拳を思いっきりねじ込む。

 全身の電気を全て、その一点のみに集中させた、貫くことに特化した鉄拳。

 だがそれでも、反応できない速度ではない。ウタノウズメもその拳を思いっきり握り締めて受け止める。

 

「いっけぇ、パモ様ァァァァーッッッ!!」

「貫けぇぇぇーっ!!」

 

 だが、インパクトを幾ら受け止めようとも、全身を駆け巡る極雷の奔流には敵いはしない。それどころか、声援を受けたことでよりパーモットの電圧が増していく。

 電光はウタノウズメの身体を駆け巡り、内部機関を全て破壊し、遂にはスピーカーをも内側から破壊し尽くしていく。 

 一瞬、舞姫の視界には自分がゴミのように放り投げた電球蛇の姿が浮かんだ。

 そして、このネズミにも一度圧倒的な差を付けて勝利している。

 今更力を束にしたところで勝てるはずがない。勝てるはずが無いと思っていたのだが──

 

「ら、らら、ららら……!!」

 

 視界に映るのは──束になって自分の歌を相殺せしめた歌姫たちの姿。そしてパーモットと共に戦う少年の姿。自分を激怒させた偽聖女の姿。

 メロエッタと聖女だけでは、ウタノウズメの歌を殺しきることはきっと出来なかった。その周囲には雑音と自分が切って捨てた、住民たちの姿があった。

 

 

 

「ら、ら……」

 

 

 

 その時、漸くウタノウズメは理解した。

 一人で音楽を食らい、掻き鳴らすだけのレコードである自分には、ハナからこのパーモットに、そして聖女に敵いはしなかったのだと。

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