ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

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第58話:メロディーレイン防衛戦

KIEROKIEROKIETESIMAE KIEROKIEROKIETESIMAE

 

 

 

 悲鳴のような歌声を上げながらメロディーバは進撃する。

 スピーカーから放たれるその破滅の音楽に、一行は聞き覚えがあった。

 

「……デジー!? デジーが中で歌ってるのか……!?」

「何で!? 音ォ外れてるデスよ、デジー!! これ以上痴態を晒す前に止めるデスよ!!」

「あの子が自分から敵の利になるようなことをするわけないでしょうが……」

「成程! だからわざと音を外してるんデスね……!」

「いやそれなら最初っから歌わなきゃいいのよ、そうじゃなくてね」

 

 それは──言い換えれば、デジーが自らの意に反して歌わされ続けているのではないか、というレモンの推測だった。

 それがウタノウズメの力か、別の物であるかはこの時点で彼らに分かるはずも無かったが。

 

「アレがデジーじゃなくてフィーナだったらこの時点で終わってるわね。垂れ流しの”悪魔の歌声”で魅了されてお終いだもの」

「不幸中の幸いってやつですね……!」

「まずは重機を止めるわ。イクサ君、行けるわね?」

「ええ勿論! パワーにはパワーをぶつけます! 食い止めて!! イワツノヅチ!!」

「ギャラドス、頼んだわよ!! ”かいりき”!!」

 

 最早、怒り狂うウタノウズメのオシアス磁気のみでメロディーヴァは動いていた。

 巨体が2匹掛かりでメロディーヴァの脚を抑え込む。

 しかし、背面部のスラスターが火を噴き、徐々に二匹を押しのけていく──

 

「力自慢の二匹が、押されてる……!!」

「流石巨大な鉄の塊ね──だけどッ!!」

「そこにポケモンの攻撃も加えるのデース!!」

 

 ハタタカガチがメロディーヴァの装甲を這いずり回りながら”10まんボルト”を連続で放った。

 だが、強靭な装甲は電撃をも弾いてしまう。 

 パーモットも続いて”つっぱり”を装甲に向けて放つが傷ひとつ付ける事が出来ない。

 バジルのデリバードとカクレオンも、”ふぶき”と”いわなだれ”を放つが、攻撃が通る様子が無い。

 

「クワガノン、キングドラ!! 同時攻撃、用意ッ!!」

 

 ゼラも続くようにしてクワガノンとキングドラを同時に繰り出す。

 電撃の弾頭、そして圧縮された水の弾頭が絡み合ってスピーカー部分となっている目を狙う。

 しかし──

 

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 ──スピーカーから放たれた音圧だけで弾頭は掻き消されてしまう。

 更に、音波砲が目から放たれるなり、ギャラドスとイワツノヅチを吹き飛ばしてしまう。

 昨日とは違い、ウタノウズメは自らが放つ音波を全て破壊のみに用いていた。

 その原動力となるのは怒り。激しい怒りが歌姫の機神を突き動かし、ただただ全てを無に帰す破壊に駆り立てる。

 

「はははは!! 破壊的だ!! 実に破壊的コンサートだと思わんかね!? メロディーレインは今日で終わりを告げるのだ!! ははははははッ!!」

「ッ……それなら別の方法で足止めするまでだ!! イワツノヅチ、穴を掘るんだ!!」

 

 以前デジーから聞いた重機の無力化をする方法をイクサは実践する。

 突き進む巨大重機の足元に落とし穴を掘れば、自重で嵌まり込み、そこから抜け出せなくなってしまう──というものだ。

 しかし──

 

 

 

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 ──メロディーバの巨体が音を立てて浮かび上がる。

 ウタノウズメのサイコパワーだけで、200トン以上の質量が浮かび上がっているのだ。

 落とし穴はこの重機には通用しない。そればかりか、音波砲で周囲の木々を薙ぎ払いながらメロディーレインに近付いていく。

 

「ダメ、止まらないわ!!」

「やっぱり弱体化させるしかない……ッ!!」

 

 イクサはイワツノヅチの頭部に乗ると、そのまま背中を伝わせて頭部まで登らせた。

 こうなれば、内部にある動力源を直接落とすまで。この中でデジーが歌っているならば、彼女を止めればメロディーバ自体も弱体化するはずだと考えた。

 だが、そのためにはデジーが乗り込んだであろうコックピットを探すしかない。

 尚、ウタノウズメを止めるのは現時点では現実的ではないので、一旦保留とする。

 

 

 

「そうか……そうだったのか!! やっとわかったぞ!! そう、音楽と破壊の関係はあまりにも簡単で……!! こうしてメロディーバに乗ることで漸く理解が出来たぞ!!」

 

 

 

「そんな事はどうでも良いから、さっさと重機を止めるんだ!!」

「ぬぅっ!?」

 

 一人、重機の上で高笑いを上げるフォルテに、イクサは対峙した。後に続くようにして、バジルもデリバードにライドして頭頂部に乗っかった。カクレオンも飛び出し、舌をフォルテに巻きつける。影も縛り付けられており、最早フォルテは抵抗できない。

 

「もう此処までデース! 観念しなサイ!」

「バカが、既に暴走していて我々でも止められんよ!!」

「デジーが居る場所を教えろ。頭部の中に居る事までは分かってるんだ。何処から入れば良いか教えるんだ!!」

「わざわざ教えるとでも思ってるのか!? この俺が10年近く立ててきたメロディーレイン破壊計画を止められて堪るか!!」

「Youは本当にこんな事がしたかったんデスか!? 音楽の破壊神って、こういう事じゃないデショ!?」

「はははは、凡人が負け惜しみを言っとるわ!!」

 

 カクレオンの舌に拘束されながらもフォルテは余裕綽々の笑みを浮かべてみせる。

 

「メロディーレインは滅びる!! 愚かな大衆と愚かな進化を遂げた音楽都市は、私の破壊的音楽によって、数百年もの歴史に幕を閉じる──これぞまさに最高のグランドフィナーレと思わんかねぇ!?」

「思わないッ!! あんたは楽な方に逃げただけだ!!」

「何とでも言えい!! どの道お前達には理解出来んよ!! 聞こえているだろう、ウタノウズメ!! 頭の上に居るこいつらをさっさと排除せんか!!」

 

 メロディーバは──答えない。

 それどころか彼を無視して破壊活動を続けるだけだ。

 

「おい、聞こえないのかウタノウズメ!! 散々良い歌をお前には食わせてやっただろう!! 言う事を聞かんか!!」

 

 聞こえてはいる。しかし、最早ウタノウズメにとってフォルテは利用価値が無い物として見限られていた。

 ポケモンと「道具」の違いは何か、と聞かれた時──それは間違いなく、ポケモン側にも自我と主導権があることだ。

 そのポケモンに対して相応しい態度を取れない者は、逆にポケモンに見捨てられるどころか、こうして逆に利用されてしまうのである。

 ポケットに入らないポケモン、つまり制御下を外れたポケモンは只のモンスターだ。本質的にポケモンは人間よりも強い生き物だ。

 最初からフォルテはフルスコア・レコードを利用していたのではない。フルスコア・レコードが──つまり、ウタノウズメがフォルテを利用していたのだから当然だった。

 しかし。

 

 

 

「そうかそうか、ウタノウズメェ……お前を楽器にしていたつもりが、楽器にされていたのは俺の方だったか!! だが、しかし、()()()()()()()!! むしろそれで良い!! お前がメロディーレインを──いいや、世界を破壊しつくせば、それで良いのだ!!」

 

 

 

 たとえ利用されていようとも、利害が一致しているならば本人にとっては何も問題はない。

 どのような関係性であろうとも当人同士が幸せならOKだと誰が言っただろうか。

 狂った破壊への衝動に、最早イクサも何も言えなかった。どんな末路を辿っても、メロディーレインが破壊されればフォルテはそれで満足なのだろう。

 こうなれば、コックピットの入り口を探すしかない。それでも、本体がウタノウズメである以上、何処までメロディーバの力を削げるかは謎だが──

 

「何処だ!? 何処から入れる!?」

「デジーがロボの頭にいるのは、確かなんデスけど……!!」

 

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 メロディーバは最早、こちらには目もくれなかった。

 排除すべき敵とすら見做していない。

 遂に町にまで入り込んだメロディーバは、音波砲を放つと音圧だけで家屋を吹き飛ばす。

 各地で火の手が上がる中、音の精の姿を模したそれは、破滅の歌姫として動き続ける。

 既に避難警報は出ているだろうが、病院やポケモンセンターは退避までに時間が掛かるはずだ。

 何としてもこの巨大重機を此処で食い止めなければならない。今でこそ進路は真っ直ぐだが、いつ方向転換するのか彼らにも分からない。

 

KIEROKIEROKIETESIMAE KIEROKIEROKIETESIMAE

 

 ごぎぎ、とメロディーバの首が回転し始める。周囲に構わず音波砲を放ち始めたのだ。

 その勢いでカクレオンも、イクサも、バジルも振り落とされてしまう。

 イクサはバジルの手を掴もうとしたが──届かない。

 

「バジル先輩ッ!!」

「アウチっ……!!」

 

 転げ落ちるバジル。

 約38メートル下は地面。カクレオンはフォルテを拘束しており、デリバードも勢いよく転落してしまったので助けに行けない。

 何とか引っ掛かりに手を付けようとするが、引っ掛からない。

 

 

 

「──ッ!!」

 

 

 

 思わず目を瞑る。

 重力に引き寄せられながら彼女は手を伸ばす。もうダメかもしれない、と──思ったその時。

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 ごつごつとした太い腕が彼女を抱きとめた。

 

「──大事無いか」

「ッ……ゼラ先輩!?」

 

 バジルを間一髪のところで助けたのはクワガノンで空を飛ぶゼラだった。

 有言実行。万が一の時は受け止めるという言葉を守りに来たのである。

 

「──それでどうなっている」

「ッ……フォルテはカクレオンが拘束してマス。影を縛ってるから、もう動けやしないデスよ──その間はカクレオンも動けないデスけど。今はイクサが頭頂部に居るデス……!」

「コックピットの入り口を探しているんだったか」

「YES!! デジーを救出しないことには、ロボを全力で倒すこともできないデス!!」

「倒せるかは別問題だが……」

「否定できねーデース……」

 

 町を無差別に破壊し続けるメロディーバ。巨体は、ギャラドスとハタタカガチが抑え込んでいるが、サイズがあまりにも違いすぎる。

 音波砲で二匹共吹き飛ばされてしまう。

 それを目の当たりにしていたレモンは退避しながら次の策を練る。だが、ハタタカガチの力すら通用しない怪物を前に、既に彼女は歯噛みしていた。

 

「──膂力が違いすぎるわ……ッ!! 止められない……ッ!! フィーナ達は逃げたのかしら──!?」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

『臨時ニュースですッ!! メロディーレイン北部海岸から突如メロエッタ型の超巨大な重機が現れました、重機は既に町へ侵入しており、住民は続々避難が完了している模様──ッ!! 皆さん、早く避難してください、今日がメロディーレイン最後の日かもしれませんッ!!』

 

 

 

「フォルテェ……これがオメーのやりたかったことなのかよゥ……!?」

 

 

 

 テレビに映るのは──進軍する巨大な重機と、それを食い止めるポケモン達だった。固唾を飲みながらフィーナとオクターヴは見守る。

 そんな中、スマホロトムが鳴り響いた。思わずフィーナはそれを取る。

 

「レモンさん……!?」

『フィーナさん、聞こえる!? 貴女今何処に居るの!? 町からは出たんでしょうね!?』

「ポケモンセンターです、メロエッタを置いて逃げられません!」

『なら進路からは少し外れてるわね……良かった』

「そっちこそ勝機はあるんですか!?」

『無い事は無いけど苦戦してる……! デカすぎるのよ! メロエッタの歌声が弱点みたいだけど──肝心のメロエッタが……』

「ッ……分かりました。何とかしてみます」

『何とかって……ちょっと、フィーナさん!?』

 

 彼女はそこで通話を切った。そして、オクターヴの方に向き直る。

 

「敵の弱点は……メロエッタの歌声だそうです!」

「待てィ、フィーナちゃん……メロエッタはまだ毒が抜けてねェ……喉も潰れたままだァ!! どうするつもりだァ!?」

「オクターヴさん。本当に私には何も出来ないんですか……!?」

「フィーナちゃん……」

「じゃあ何で私は聖女に選ばれたんですか!? メロエッタの歌には力があるのに、彼女に選ばれた私の歌には……本当に、何も力が無いんですか!?」

 

 彼女は──悔むように続けた。

 

「歌で町を破壊するなら、逆の事も出来るはず……初代聖女様は、その歌声で傷ついた人やポケモンを癒し、荒ぶるポケモンを鎮めたと言います……私にだって……メロエッタに選ばれたからには、何かあるはず……ッ!!」

「フィーナちゃん……あんたの歌はァ……」

「ほらやっぱり! オクターヴさん、知ってて何か隠していたんでしょう!? メロエッタは旋律の化身、私の歌で癒すことだって出来るはず──」

「──フィーナちゃん、済まねえ……フィーナちゃんの歌に……そんな力はねぇんだ」

「ッ……」

 

 オクターヴは──堪え切れなかったのか、ぽつりと呟いた。

 

「フィーナちゃんの歌は……人を魅了する歌だァ……問答無用で人の心を掴んじまう歌なんだァ…………!!」

「──なーんだ、あるじゃないですか……!!」

「え──!?」

「私の歌にも力が、あるなら……ッ!!」

 

 フィーナは──笑みを浮かべてみせる。

 オクターヴは言葉を失う。目の前の少女は、自分が思っていた以上に強かったのだ。

 

「歌は……願いです。音楽祭の奉納だって、平和を願う為じゃないですか……私の願いをメロエッタに乗せれば……!」

「成功する保障なんで何処にもねェ!! ……それでもやるんだなァ、フィーナちゃん」

「イクサさん達が教えてくれた……やらなくて後悔するくらいなら、やって後悔した方がマシだって……私、やってみます!!」

 

 彼女は階段を急いで駆け降りる。

 向かうのはメロエッタが眠る個室だ。当然関係者以外は立ち入り禁止で、係員に止められたが、オクターヴの一言で中に入ることができた。

 魅了が掛からないように、オクターヴは係員たちにその場から離れるように促す。

 成功するかは分からないが、

 喉に包帯を巻き、点滴を繋がれて横たわるメロエッタの手を握り──フィーナは彼女に呼びかける。

 

「メロエッタ、聞いて──助けたい人達が居るのっ!! この町を……守りたいのっ!!」

「……?」

 

 掠れた声で、メロエッタは力無くフィーナのことを呼んだようだった。

 

「私ね……貴女に選んでもらった時、とっても嬉しかった。でも、その後はいきなりアイドルとしての活動が始まって、困惑して、辛い事だらけで……貴女を恨んだよ……? 何で私は自由に歌えないの? 貴女は何で自由に歌えるの? って……!」

「……」

「でもね──貴女と出会っていなければ、2人で歌う楽しさは分からなかった……!」

「……」

 

 こくり、こくり、と頷くメロエッタ。可愛い妹を見るような目だった。

 

「それに、何度も私を守ってくれたよね、メロエッタは……! 今回だって……!」

「……」

「私ね、メロエッタが思ってるような良い子じゃないよ。自分勝手でワガママな、普通の女の子だよ……? それでも……私ともう一度歌ってくれる?」

「……」

 

 彼女もまた、強くフィーナの手を握り返す。

 

 

 

「……ありがとう。貴女の為に……歌うね」

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