ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

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第57話:其れは完璧で崩国の”歌姫(ディーバ)”

 ※※※

 

 

 

 ──いよいよ、その時がやってくる。

 病院の前で4人は並び立った。目的地は──フォルテが潜伏している隠れ家だ。

 その出発を祈るようにフィーナが見守っている。

 

「さっき──君は自分の事を歌う以外出来ないって言ったけど」

 

 不安そうな聖女の肩に、イクサは手を置いた。

 

「強いて言うなら、信じていてほしい──かな」

「……どうか無事で」

「さあ、行くわよ。時間が無い」

「救出劇の始まりデース!」

 

 ポケモン達にライドし、デジーの残した発信機の反応を頼りにイクサ達は出発した。

 さて、彼女がPCのロックを解除していたことで、発信機と連動したアプリの情報を見る事が出来た。

 その結果、デジーの作成したこれが想像以上に高性能だったことに全員は驚いた。

 発信機の移動した履歴を追うことで、敵の逃走ルートを確実に割り出すことが出来るだけではなく、平面的な座標のみならず高さ・低さといった座標も調べる事が出来る。

 例えば相手がどの時間に、どの位置で地下に潜ったのかも割り出すことが出来るのである。

 

(あの子、ホテルでこの発信機の調整をしていたのね……!! 見上げた根性だわ……!!)

 

 改めてレモンは、デジーが敵でなくて良かった、と安堵した。そして同時に、彼女が想像以上に献身的で健気であったことを思い知らされる。でなければ、あの環境で生徒会の仕事に従事できているはずがない。

 仕える相手が違うだけで彼女は何時も本気だったのだ。

 

(……見直しちゃったわ。連れ戻したら、うんと可愛がってあげようかしら)

 

 町の外れにある地下の隠し扉。どうやらこの場所は、かつて海軍基地があった場所らしく、放棄されていたらしい。

 だが、扉自体は新しく、パーモットが打撃で叩き壊すと、一斉に全員は内部へと突入した。

 当然のようにローブを羽織った信者たちが待ち構えており、メタングやダンバルと言ったポケモン達が通路を塞いでいく。しかし──

 

「邪魔をするなッ!! タギングル、”なげつける”!!」

「きゃいきゃいきゃいっ!!」

 

 初っ端からイクサがタギングルを繰り出し、”くろいてっきゅう”を最初に現れたメタングにぶつけ、一撃でノックアウト。

 ”なげつける”は相手に道具をぶつける技。更に”くろいてっきゅう”を投げ付ければ、絶大な威力の悪タイプ技と化す。

 そして道具を失った事で”かるわざ”を発動したタギングルは、次々にダンバル達を”シャドークロー”で殲滅していくのだった。

 遠くからやってくる敵は、後ろからゼラがスナイプして撃滅。そして、不意を突こうと天井から降りてきたダンバルとメタングを、カクレオンが”ふいうち”で次々に先んじて倒していく。

 だが、騒ぎを聞きつけてやってくるのは、やはり最大のガーディアンだ。

 

「ガッシャァァァーンッ!!」

「ガガガガガーンッッッ!!」

 

 大きな音を立てて、メタグロスが2体も同時に現れる。鋼鉄の脚を踏み鳴らしながら、イクサ達を追い詰めていく。

 更に、後ろからはやはりメタングとダンバル達が迫ってくるのだった。

 レモンとイクサ。そしてゼラとバジルで背中合わせになる。

 

「2体か。強敵だぞ」

「……後ろを頼んだわよ、バジル」

「こっちは任せて下さい、ゼラ先輩!!」

「へへっ、任されたのデスよ!!」

「……了解ッ!!」

 

 選手交代。タギングルを引っ込め、パワーにはパワーを──とイクサはイワツノヅチを繰り出す。勿論、レモンも最大出力のハタタカガチを従え、メタグロスに挑む。

 

「怪獣大決戦がお望みなら、やってやる──オーライズ”マリル”!!」

「最大火力で一気にケリをつけるわ──オーライズ”ピカチュウ”!!」

 

 イワツノヅチの周囲に水玉の装甲が纏われていく。これで、メタグロスから受けるであろう地面技を等倍で受ける事が出来る。そして、等倍の攻撃ならばイワツノヅチはびくともしない。

 一方、ハタタカガチも全身により鮮烈な電撃を纏った。レモンの魂とも言える相棒の鎧、奮い立たない理由は無い。

 

【メタグロスの しねんのずつき!!】

 

 鉄脚を折りたたみ、身体全部でイワツノヅチにぶつかっていくメタグロス。

 しかし──特性で補強されている上に、元々異常に硬いボディはびくともしなかった。

 頭で頭突きを受け止めたイワツノヅチは、今度は自らが長い身体を振り回し、メタグロスにぶつけてみせる。

 

「お返しだ!! 特性”ちからもち”で強化された──”10まんばりき”ッ!!」

 

 ”じしん”は広範囲を巻き込んでしまうが、この技ならば”じしん”とほぼ同等のエネルギーをメタグロスにぶつける事が出来る。

 頭部を振り回し、メタグロスに必殺の一撃を叩き込む。×の字型の正面装甲は見事に砕け散り、目から光を失いながら、鋼鉄の機神はその場で機能停止するのだった。

 一方、ハタタカガチもメタグロスの攻撃をいとも簡単に躱してみせると”へびにらみ”で麻痺させてしまう。

 そして、そのままメタグロスが再び動きだす前に、全身を電光に変えて──突撃した。

 

 

 

「Oワザ──”ボルテッカー”ッ!!」

 

 

 

 極雷がメタグロスを直撃する。その電圧はすさまじく、脳がショートしてしまい気絶したことで自重に耐えられなくなったメタグロスは崩れ落ちるのだった。

 後ろもどうやら、あらかた片付け終わったらしく、もう近くに敵は居なかった。

 進む場所は決まっている。デジーが自分の身体に付けていた発信機を追えば良いのだから。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 一晩、デジーは部屋の中に監禁され、朝になると起こされた。

 手錠が繋がれている上に、腰のモンスターボールは怪しまれないために持ってこなかったので、抵抗する手段はない。 

 そして、相手もこちらの”悪魔の歌声”を警戒しているからか、口枷を嵌められてしまっており、声を出す事すらままならない。

 

(……これは、身投げなんかじゃない。イクサ達が勝つために……ボクが導いた最適解だ。奴らの場所はもう、イクサ達に割れてる……ッ!!)

 

 それは却ってデジーにとっては好都合だった。歌わされて正体がバレることがないからである。

 そもそも、あの格好で丸腰でやってきたからか、誰一人として自分を身代わりだと信じて疑っていない。

 偽聖女はローブ姿の信者たちに連行されながら──辿り着いたのは格納庫のような場所だった。

 そこに黒幕であるフォルテは仰々しく立っていた。

 

「音の聖女──いや、傾国の魔女よ! 早速だが一仕事してもらうとしよう。メロディーレインの破壊的新時代の第一歩だ」

 

(……あれ? あのシャープって人いないの? 正直そろそろバレる頃合いだと思ってたよボク、何でイベントがそのまま進行してんの? 悪質なバグ?)

 

 そのシャープはマイクロバス諸共放り捨てられてしまったので、とっくに捕まった後である。

 おかげで、誰も彼女を見分けられる人間が居ないのだ。すっかり気を良くしてしまっているのか、フォルテも全くこちらを疑う素振りを見せない。

 自分の演技力も機転も捨てたもんじゃないな、と内心デジーは得意げになるのだった。それが顔に出ないように細心の注意を払いながら。

 

(いやしかし、こんなデカい計画を立てられる人が、こんな致命的な所でポカをやらかすわけがないよね。絶対どっかでバレる。その前に転校生たちが来ればベストだけど……最悪の場合は覚悟してるよ)

 

 辿り着いたのは物々しい格納庫だった。

 さっきから歩かされているこの場所は、何処もかしこも鉛色。

 船のドックに似ているなあ、と感じていたが、目の前のそれは想定していた以上に大きい。船の規格ではないな、と経験則からデジーは断じる。

 その中に通され──デジーはいよいよ自分の推測が良くも悪くも全て当たっていたことを確信した。

 

 

 

「ご覧あれ!! これぞ破壊の女神像!! ”メロディーバ”だァァァーッ!!」

 

 

 

【メロエッタ型広範囲破壊重機”メロディーバ”】

 

 

 

 それは──全長38メートル、重量220トンの鉄の塊。

 メロエッタに酷似した超巨大な重機であった。

 勿論、例によって口に相当する部分は存在せず、目の部分がスピーカーになっている。

 だが、それ以外はメロエッタ……というよりもウタノウズメに酷似している。

 

「破壊的造形だろう……音楽の都の守り神が、音楽の都の破壊神となるのだ! これ以上に愉快な事があるか!?」

 

 

 

(うんっ!! この人バカだ!! 頭のいいバカだ!! きっと!!)

 

 

 

 造形を巨大ロボットにする意味も無ければ道理も無いので、デジーは技術者として激しく突っ込みを入れたくなる。

 そこに合理的な理由が全くと言って良い程見当たらないのだ。大方、彼が傍に連れているオーデータポケモンの出力を拡大するためのスピーカーなのだろうが、それなら正直スピーカー部分だけで良いはずである。

 何故にわざわざポケモンそのままで30メートル以上のロボットを作ってしまったのかが謎だ。

 

(しかもこんな巨大なロボット、どうやって動かすんだよ……帰りたい……別の意味で帰りたい……こんなバカ計画に巻き込まれてる現実を直視したくないーッ!!)

 

「ふぇっふぇっふぇ……聖女には理解出来んじゃろう……ッ!! このフラット博士の天才的ロボット理論はなァ!!」

 

(げっ、何か出てきた)

 

 横からぬるりと現れたのは、こめかみにボルトがぶっ刺さった如何にも怪しい老人だった。

 

「ロボット工学を続けて30年……ついに巨大重機を作り上げる事にワシは成功したのじゃ……ッ! だが完成目前でワシはオシアス学会から追放された──ちょろっと学会費滞納しただけなのに!!」

 

(払えよ学会費、しかもオシアス出身(OB)なのかよコイツ)

 

 真面目に考えるのをデジーはやめた。ひょっとしなくてもスカッシュ・アカデミアが生んだ負の遺産の1つかもしれない。逆恨みで悪党に与するとは技術科の恥部も良い所である。あの学園自体が恥部塗れであることはデジーにも否定しようがないのであるが。

 此処に来たのがフィーナなら、今も怯えていたのだろうが、デジーは目の前のバカ兵器とバカ博士を前にして何もかもがどうでも良くなってしまった。

 なんせ、こんなに巨大なロボットが動くのにどれ程のエネルギーが必要かは想像に難くない。技術者として断言できる。このバカ兵器は──動かない。動くはずがない。

 

「そんな時、ワシを拾ってくれたのがフォルテ様だったのぢゃ!!」

 

(拾うなよこんなヤツ)

 

 どの道ろくでもない奴であることは確かだった。

 

「コイツの動力炉は……他でもないオーデータポケモンであるウタノウズメだ。オシアスの重機はオシアス磁気で動くからな……ッ!!」

 

(無理だ!! このサイズのポケモンに、30メートル超えの重機の動力を賄えるはずがない……!! せめて、会長のオオミカボシくらいのオシアス磁気が無きゃ無理だ!)

 

「おっと? 無理だとでも言いたそうな顔をしているな、聖女様よ。しかし、このウタノウズメが依り代とするオーパーツ”フルスコアレコード”はとんでもない代物でね」

「……?」

「創世以来、この星に刻まれてきたありとあらゆる音の記憶を読み込んで再生することが出来る力を持つのだ。勿論、過去に音の聖女が奏でてきた、歌も! 演奏も! 全て、読み取ることが出来る!」

 

(な、何言ってるんだ……!? 星の記憶……!?)

 

 デジーには到底理解が追い付かない。

 

「無論、この町に眠る歴代聖女たちの奏でる音楽を──”フルスコアレコード”は蘇らせる事が出来る!」

 

(消えた音楽を再生する……!? どんな原理なんだよ……!!)

 

「然り然り!! そして、このレコードは読み込んだ音の記憶に応じて力を増していくのじゃ! それが素晴らしいものであれば、あるほど良い!」

「メロディーレインで、過去の聖女が奏でてきた素晴らしき()()()()を読み込み続けた”フルスコアレコード”は、オシアス磁気を大量に増幅させ──遂に”メロディーバ”を真似てポケモンの姿を取るまでに至った。まあその過程でレコードから発せられる楽器の音が、町中でウワサになっていたようだがね」

 

 デジーは、思わずウタノウズメの方を見た。

 他のオーデータポケモンは発見当初からポケモンとしての姿を顕現させていたが、フルスコア・レコードは最初からポケモンとしての姿を持っていたわけではないらしい。

 それが後天的にポケモンの姿を得たということは、彼らの言うように、音楽をエネルギーとして貯蓄していたオシアス磁気を増幅させることができるのは事実のようだった。

 

「事実、あの小娘の蛇も、出力10%程度で一捻りだったからな……!! 全くとんでもないポケモンに成長してくれたよ、ウタノウズメは……!!」

 

(出力10%でハタタカガチを瞬殺……!? じゃあ、このメロエッタもどき、実際は相当な量のオシアス磁気を溜め込んでいるの……!?)

 

 レモンの上に覆いかぶさり、機能停止していたハタタカガチをデジーは思い出した。

 このポケモンは──存在してはいけない、と彼女は判断する。さっきの話が本当ならば、単純な磁気量だけならオオミカボシに並ぶ代物だ。

 

「そこに、当代の聖女であるお前の歌声をウタノウズメ(フルスコア・レコード)に直接読み込ませる──ッ!!」

 

 ──フルスコア・レコードは過去のありとあらゆる音楽を読み込み、自らの養分とすることはできる。

 しかし、最大の栄養価となるのは、()()()()()()()()()()だ。

 彼らが求めているのは、メロエッタ無しの純然たるフィーナの生歌であった。

 

「メロエッタの歌声が混じると、フルスコア・レコードは何故か出力が鈍ってしまうのじゃ……! 音楽を生み出すメロエッタと、読み取ることしかできないフルスコア・レコードは何処までも相いれない存在なのか……!」

「だが、この俺が作り上げた()()()()()を当代聖女であるお前が歌う事で、メロディーバは動き出すのだーッ!!」

 

 

 

(じゃあ多分一生動かないな、このロボット……)

 

 

 

 渋々楽譜を受け取ったデジーは、口枷を外されて頭部の空洞に立たされる。

 そこは、アイドルの舞台のようになっており、ご丁寧にマイクまである。

 いきなり楽譜を渡されて歌えと言われても歌える気がしない。

 楽譜の読み方は心得ているつもりだったが、もう何年まともに歌っていないか分からない。

 そう思いながら楽譜を手に取った瞬間──彼女を破壊的な衝動が襲う。

 

「ッ……な、何……!?」

 

 ──壊したい。

 

「何だ、何なの、これ……!?」

 

 ──壊したい、壊したい。全てを壊したい──ッ!! 

 

(これは、フォルテの──いや、違う。もっと悍ましい何か……!? まさか!!)

 

 楽譜から漏れ出す妄執にも似た何か。

 そして、浮かび上がるのは──ウタノウズメの不気味な顔だった。

 

(そう言えば、フォルテがおかしくなったのは、オシアスで骨董品を買ってから──!!)

 

 もしもその骨董品が、例のフルスコア・レコードだったとすれば、と嫌な推測が過る。

 

(今ボクが手に握っているのが、オクターヴさんが歌詞を付けるのを渋った曲だとすれば……!?)

 

 ウタノウズメの虚像がデジーの身体を掴む。その度に、彼女を嫌な衝動が覆っていく。

 

 

 

「くくくっ、逆らえまい音の聖女よ!! 破壊への衝動に!! その楽譜を握れば、誰もがそれを歌わずにはいられない!!」

 

(フォルテは……最初からウタノウズメ(フルスコア・レコード)に踊らされていて──ッ!!)

 

 

 

 全てを確信した時は遅かった。

 既にフォルテは、メロディーバの頭部に登り、立ち上がっていた。

 彼がそこに立つ意味は特には無いのだが、メロディーレイン崩壊の日を当事者視点で目の当たりにすることに意味があった。

 操縦は必要ない。後は、ウタノウズメと歌姫が衝動のままに全てを破壊し尽くすからだ。

 次の瞬間、格納庫からは凄まじい量のオシアス磁気が漏れ出した。

 巨大な女神像は青白い光を放ちながら、スピーカーから破滅の楽章を奏で出す。

 そして、それを読み取った内部のウタノウズメもまたバックミュージックとして、同じ曲を流し始める。

 既にメロディーバの頭部内のデジーは、楽譜を取り落とし──虚ろな目で破滅の曲を歌い始めていた。

 

「──KAKINARASEYO DOUKOKUNO SAKEBI WO

 

 スピーカーから音楽が流れだすと共に、破壊の女神は動き出す。

 天井のハッチが開き、メロディーバはごうんごうんと音を立てて地上へ姿を現していく──しかし。

 

「……ん? 何だ? 何だこの歌は? 本当に聖女の歌なのか?」

 

 スピーカーから放たれる破滅の音は、素人耳でもところどころ音が外れている拙いものであった。思っていたのと違う、と確信したフォルテは叫ぶ。

 

「……何か違くね? 聖女の歌声じゃないよねコレ──聖女、こんなに音痴じゃないよね!?」

「フォルテ様ァァァーッ!! 各種出力が暴走しておりますじゃーッ!!」

「じゃあまさか、コイツは──例の囮かァ!?」

 

 ──青白かったメロディーバの眼は、徐々に赤く変質していた。

 聖女の歌声という極上の御馳走が来ると思いきや、やってきたのはよく似た赤の他人のヘタクソな歌声。

 高級料理を食そうとしたら、残飯を顔面に投げ付けられた所業に等しかった。

 無論、それが音楽を喰らって力を増していくウタノウズメの逆鱗に触れたのは言うまでもない。

 技芸の神は自分が持っていたオシアス磁気全てを放出する勢いで、メロディーバを暴走させたのである。

 

「いやでも、暴走してるならそれはそれでラッキーなのか? 破壊的に結果オーライ!?」

「今遠隔で止めてるけど止まりませんのじゃ、ぎゃああああ!?」

 

 次の瞬間、格納庫の扉が爆ぜ飛んだ。

 真っ先に切り込んだのは、拳に電撃を溜め込んだパーモットだった。

 そして、後に続くようにして、イクサ達がやってくる。

 

「な、何だあれ……!?」

 

 痛む肩を押さえながら彼は叫ぶ。

 無理もない。強力なオシアス磁気の反応を追ってやってきたのが、今にもハッチから外へ出ようとしている鉄の怪物だったからである。

 すぐさま、腰を抜かしながらタブレットを庇う妙な老人を、ゼラが抱き起し、凄んで問うた。老人の後頭部にはクワガノンが電磁砲をチャージしている。

 

「……アレは何だ。答えろ」

「ひ、ひぃぃぃーっ! 簡単に言うと聖女とウタノウズメの歌がエネルギーとなって動く超巨大重機ですじゃーっ!! ああなったが最後、もうメロディーレインを破壊し尽くすまで止まりませんのじゃーっ!!」

「はぁぁぁーっ!? 超巨大重機ィ!?」

「いけない、もう外に出ていくわ……ッ!!」

 

 ごうん、ごうん、と外へ飛び出そうとしている重機。

 必要な情報を聞き出すため、ゼラがクワガノンを突きつけながら博士を尋問する。

 

「……止める方法はないのか」

「止まりませんのじゃーっ! 中に入っているのが聖女じゃなかったからか、ウタノウズメが怒って暴走したのですじゃーっ!」

「待てよ、では中にはデジーが……弱点は!?」

「あのサイズの重機に対抗するなら重機しか……強いて言うなら、ウタノウズメはメロエッタの歌声が苦手なくらいですじゃ……!」

「あいつを放置するとどうなる」

「スピーカーから放たれる音波砲が辺り全てを蹂躙しますのじゃ……メロディーレインはお終いですじゃーっ!!」

 

 舌打ちしたゼラは自らもクワガノンにライドし、重機の後を追う。

 何としても町に到達する前に、あの鉄の怪物を止めなければならない。

 

「……ゼラ先輩、早くっ!!」

「ああ、すぐに行く……ッ!!」




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