ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

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第51話:完璧に傾国の”魔女(アイドル)”

「シトラスの所のオヤジとはオシアス行った時に飲んだ仲だァ。最近連絡無かったが、元気してるかァ?」

「……父は亡くなりました。今年の2月に」

「……そうかィ」

 

 事務所ビルの会議室に向かう中、会話を交わすレモンとオクターヴ。

 どうやら彼とシトラス家の前社長──つまりレモンの父──は面識があったらしい。

 しかし、オシアスとメロディーレインはとても遠い。彼もたった今、レモンの父の死を知ったようだった。

 

「頼みは他でもねぇ。音楽祭の日までェ、残り僅かァ……それまで、フィーナちゃんに何かあっちゃァならねェ。お前らを腕利きのトレーナーと見込み、護衛を頼みたい」

「あら。高くつくわよ」

「承知の上ィ。俺はどんな手を使っても、フィーナちゃんを守りたい」

「プロデューサー、私は──」

「黙ってろィ。今は大人の話だァ」

 

 カチ合うオクターヴとレモンの視線。

 彼としては何としても音楽祭までにフィーナを護りたい。 

 レモンとしては、寮生達を極力危険な目に遭わせたくない──

 

「やれやれ──欲しいのは護衛じゃなくて、身代わり……でしょ。良いよ、やったげる」

「デジーさん!?」

 

 自ら「囮」役をデジーは買って出る。

 確かにデジーとフィーナの顔はそっくりだ。イクサとレモンは些細な違いから看破したが、素人目には双子にしか見えない。

 しかし、当の聖女からすれば気が気でない。どんなに自分とそっくりでも、デジーはたまたまそこに居合わせた観光客でしかないのだ。

 

「プロデューサー、私は大丈夫ですっ! デジーさんを巻き込むなんて出来ません!」

「メロエッタの歌でも鎮められなかったようなヤツはァ、確実に炙り出さねえといけねェ。仮に音楽祭までにフィーナちゃんが無事でもォ、その後も襲われねえとは限らねェんだよゥ」

「いけません! ポケモンで人を襲わせるような危険な相手じゃないですか!」

「重機と一緒に襲って来ないだけマシだと思うけどね」

 

 デジーのセリフにギョッとするフィーナ。

 彼女はスカッシュ・アカデミアの悲惨な治安を知らないのである。

 

「そんな、何処の世界に重機とポケモンを使って人を襲う恐ろしい人が居るんですか……!?」

「フィーナさん……残念ながら、この世界なんだよ」

「!?」

「この町って平和だと思うよ? ボク」

 

 イクサとデジーの言葉に衝撃を受けるフィーナ。

 取り合えずこの町が「重機」の「重」の字が出て来ない程度には平和であることは実感できた。

 やはりスカッシュ・アカデミアの治安は終わっていたのである。万歳。

 

「フィーナ、心配しなくても、ボク達は荒事には慣れてるんだよ」

「あんまり自慢できることじゃないのだけど。治安が悪いのって風紀委員にとっては屈辱も良い所なのよ」

「それにボクだって拝んでみたいんだよね。女の子を寄ってたかって虐める卑怯者が……どんな情けないツラしてるのかをね。それで? ボクは何時彼女と身代わりになれば良いの?」

「”明後日の街宣パレード”だァ。音楽祭の事前イベントで毎年やってらァ。聖女様がやる事と言えばァ、民衆に向かって手ェ振るだけの簡単なお仕事ォ、誰でも出来るゥ」

「確かに犯人が聖女様を狙うにはこれ以上ないタイミングですね」

「報酬はたんまり払う……どうだァ坊主共ォ。おじさんと一夏のキケンなアルバイト、やってみねぇかァ?」

「ボクはやるよ。たとえ1人でもね」

 

 デジーはあくまでも決意を変えないようだった。

 

「……このままだと音楽祭もフィーナも危ないよね。皆はフィーナとメロエッタのライブを楽しみにしてたから……邪魔させたくない。それに、ボクと同じ顔の女の子が頑張ってるのも──邪魔されたくない」

「デジーさん……」

「……とゆーわけだから、皆は観光楽しんでっ! これは元々レモン先輩の慰安旅行だしっ!」

「──バカね。そんな事言ったら放っておけるわけがないでしょうが」

「いっ……」

 

 ギロリ、とレモンの鋭い瞳がデジーを睨んだ。

 そして──

 

「犯人をさっさと捕まえて、楽しい旅行に戻るわよ。貴女一人で勝手な真似はさせない」

「レモン先輩……!」

 

 結局──レモンも折れた。

 生半可な覚悟ならともかく、本気の表情を見せたデジーに心動かされたのだろう。

 

「それに、音楽祭を見に来たのに音楽祭が滅茶苦茶になったら本末転倒だもの。許せないわ」

「僕は最初から協力するつもりだったよ。ポケモンを人に嗾けるヤツなんて、どの道ロクでもないからね。ポケモンにはポケモンで対抗する」

「ふ、二人ともぉ~!!」

「フッ、シトラスグループの御令嬢とォ、そのお付きの従者ァ……期待してるぜィ」

「ま、待ってください! 2人共、良いんですか!? 本当に……!? 貴方達はただの観光客で──」

「フィーナさん。事はもう君だけのことじゃないよ」

 

 言ったのはイクサだった。彼は、ポケモンが襲ってくることの恐ろしさを誰よりも理解している。

 故に──

 

「ポケモンを大量に操るような危ないヤツを野放しにしていたら、いずれはメロディーレイン全体が危ない。()()()()()()()()()()だからね」

「そ、それは……」

「それに、君の歌を待ってるファンたちをおかしくした原因も突き止めなきゃいけないよね」

「……」

「大丈夫。安心してよ、もしまたポケモンが出てきても──僕達が蹴散らしてみせる」

「ええ。スカッシュ・アカデミアのトレーナー科は世界一よ。信頼して頂戴」

「幸い、あいつらは君とデジーを間違えた。付け入る隙はあるんじゃないかな」

 

(そして、()()()()()()()()……考えたくないけど、犯人が内部に居ることになっちゃうよね)

 

 既にイクサは犯人の次の出方を考えていた。

 犯行は計画的に行われたものだった。

 犯人が外部犯だったならば、フィーナとデジーを間違えるのは納得が行く。

 しかし、もしも内部犯だったならば仮に身代わりを立てても無駄だ。

 

(犯人はフィーナを傷つけるんじゃなくて、フィーナを攫おうとしていた。目的は誘拐である可能性が高い。でも、誰が? 何のために?)

 

「仕方ないわね。やると決めたからには、音の聖女の護衛任務、確かに引き受けさせていただきます。これは、シトラス・セキュリティズへの正式な仕事と言う事でよろしいからしら」

「え、そんな会社あったんですか……?」

「ええ、うちの民間警備会社よ。シトラス家の経営してる会社は1つだけじゃないの。形式的には、そちらへの依頼と言う事にする。警備を行う5人の人員──つまり私達についての身分書類を作成するわ」

「手が早い!」

 

 流石にいつも書類作業に忙殺されている少女は訳が違った。

 

「話が早くて助かる姉ちゃんだぜィ。そうと決まったらァ、明後日の衣装合わせをやるから──シャープゥ! 二人を衣裳部屋に案内してちょんまげィ」

「はい、畏まりました」

「……衣裳部屋?」

「ええ、明後日のパレードで身に着ける衣装です。それをデジーさんには着て貰わなきゃいけないので」

「えーっ、楽しみ! ボク着てみたいーっ!」

 

 はしゃぐデジー。何処か不安な顔を浮かべるフィーナ。

 二人が会議室を出て行く時、オクターヴはシャープに何か目配せをしたようだった。

 そうして2人が出て行ったのを見届けた後──オクターヴは切り出した。

 

「さァてィ。こっからは内密な話と行こうかァ」

「あら。聖女様には聞かせられない、疚しい話でもあるのかしら」

「さっきお前達は、ファンがおかしくなってたとかどうとか言ってたなァ」

「……ええ、そうですけど」

「そォの原因はァ、お前らも良く知っている相手(あ・い・て)かもしれねぇ」

 

 指を組むと──オクターヴは告げた。

 

 

 

「──()()()()()。フィーナの声が、あいつらをおかしくしたんだよゥ」

「ッ……はぁ!?」

 

 

 

 イクサも、そしてレモンも目を見開いた。

 

「どういうことですか……? 確かに彼女の声は世界的にも認められている程素晴らしいと思いますが」

「世間じゃァ、癒しの声だの奇跡の歌だの言われてるフィーナだがァ、あいつの歌は……文字通り人を魅了するんだよゥ。一度あいつの生歌を聞いたが最後、ずっと虜にされちまう」

 

 指を組んだオクターヴは──

 

 

 

「”悪魔の歌声”……ッ!! 俺は密かにそう呼んでいるゥ」

 

 

 

 ──人を虜にし、狂わせ、破滅させる。

 確かに”悪魔の歌声”だ。聖女という肩書は只の隠れ蓑でしかない。

 

「悪魔って何ですかそれ。仮にも聖女なのに」

「それくらい強い魅了、ってことで良いのかしら?」

「あーあ、そうだァ」

 

 メロエッタに選ばれた当時は、まだ未熟な歌声だった。それでも尚、聞く人々が皆虜になるような歌声だった、とオクターヴは語る。

 しかし、練習を重ねていくうちに彼女の才能は更に開花していった。

 最初は皆から好かれる歌声程度のものが、次第に相手を魅力し、熱狂させる魔性の歌声へと変わっていった。

 もしもフィーナの才能に際限が無い場合、文字通り人を狂わせる歌声に進化しかねない、と彼は語る。

 

「モチ、只喋るだけじゃあ影響は出ねえ。だが何故か旋律を認識して歌を唄った時ィ、あいつの歌に魔力が籠るって寸法よゥ。メロエッタは最初っから全部分かってたのさァ。自分が目ェ掛けなきゃヤバいってなァ」

「で、でも、それだとマズいんじゃないですか……!? 彼女がアイドルだと……大勢の人の前で彼女の声に魅了されて──」

「そこでメロエッタの出番ってワ・ケ・だ──メロエッタの歌は……人を穏やかにする。魅了も解除される。だから、仕事の時も、歌う時も、メロエッタは常に付きっ切りってワケよゥ」

 

 つまり、悪魔の歌声を中和できるのは、メロエッタだけ。フィーナが聖女で居られるのは、メロエッタと共に歌っている時だけだ。

 もしもうっかり彼女の歌声を一人で聞いてしまえば、彼女の歌声に魅了され、憑りつかれてしまう、とオクターヴは語る。

 

「もしかしてメロエッタが音の聖女を選ぶのは……音楽の才能が過ぎるあまり、一歩間違えると人々を狂わせてしまうような人を守るため……?」

「かもなァ。現に、長い長いメロディーレインの歴史上、聖女が居ねえ時代ってンのもあったらしィ。その時は、メロエッタだけが音楽祭で奉納の舞と歌を捧げたァ」

 

 イクサは自分の推測が間違っていなかったことを確信した。

 もしも、これが正しいならば、犯人がフィーナを狙うのは──彼女の悪魔の歌声に目を付けているからだとしか考えられない。

 

「悪魔の歌声に気付いた後……俺はあいつに色んな仕事をやらせて、()()()()()()()()()()した……あいつの歌をコントロールする事にしたんだよゥ。プロデューサーとして、なッ」

「でも、レコーディングの時とか危ないんじゃないですか?」

「そのためのメロエッタってワケよ。あいつが歌うのは自然な事だからなァ」

 

 案の定何度か危ない時があったらしく、音響スタッフが彼女の歌に魅了されてしまい、その度にメロエッタが食い止めていたらしい。

 勿論顛末まで含めてフィーナがそれを知る由はないらしい。つまり、メロエッタが居なければフィーナが歌うのは現時点でも非常に危険なのだ。

 

「成程。唄えば魅了の魔法をかけてしまう聖女と、ごく自然に魔法の解除ができるメロエッタ。これ以上ない完璧なコンビだわ」

「うーん……でも何か引っかかるんだよな」

 

 イクサは腕を組みながら考えた。

 

「生歌じゃないと、魅了は起こらないんですよね? 更にメロエッタが居れば魅了は中和される。なのに、町に居たファンたちがおかしくなってた……これはおかしくないですか?」

「そう、そこは俺も気になってたァ……もしかしたら、フィーナちゃんの歌声がメロエッタの力を上回りつつあるのかもしれねェな。あの子の魅了は確実に、年々強くなってるゥ」

「何か証拠でもあるのかしら?」

「かく言う俺も何度フィーナちゃんに魅了されたか分からねえが……最近だと、あの子の独唱をうっかり聞いちまうと理性がヤベーことになっちまってなァ。幸いメロエッタのおかげで事無きを得てるがなァ」

「……成程確かにそれは本人には聞かせられないですね……」

「俺だけじゃねえ。シャープも、他のスタッフも同じよゥ」

 

 こうしてみると、音の都は確かにメロエッタによって守られていたのだ、とイクサは感じる。

 もしも彼女が居なければ、この町の住民全員がフィーナの歌によって魅了され、誰も彼もが不幸な結末を辿っていたかもしれない。

 

「今でこそまだ成長途上だが、あれがパーフェクトな完全体になっちまったら? あの子1人でデカい会場で歌っちまったら? それこそ文字通り大惨劇(FILM DEAD)の完成、悪い意味で新時代の始まりよゥ」

「うん、言ってることはよく分からないけど大体分かった気がします……」

 

 『完璧で救国の聖女(アイドル)』──と言われるフィーナの実態は、メロエッタのおかげで災禍を振り撒かずに済んでいる『完璧に傾国の魔女(アイドル)』だったというわけである。

 

「だが音楽で人が不幸になる事があっちゃならねェんだよゥ──勿論フィーナちゃんも同じィ。おじさん、不真面目だけどそれだけは守るようにしてんのサ」

「……成程理解したわ。それで? 今の話は、この会社のどれくらいが知ってるの?」

「──俺とシャープだけだァ。後は一部の音響スタッフだぜィ」

「じゃあ、内部犯の可能性も──」

「十二分にあるなァ。ま、ダンバルの数はデンジャラスだったらしいし、何処にそんなに飼ってたんだって話だけどよゥ。だけど、身内は疑いたかねェなァ……理屈じゃねェ、感情としての話だけどよゥ」

 

 人を魅了する悪魔の歌声。

 もしもそれがメロエッタという枷無しで解き放たれたらどうなるか──イクサは考えたくなかった。

 

「この情報は護衛の間に共有しても?」

「……ああ、頼むゥ」

 

(デジーに話すのは……気が重いなあ)

 

 イクサは溜息を吐いた。

 平和な音楽都市・メロディーレイン。

 その実態は、メロエッタによって、紙一重で平和と少女の平穏が守られている非常に危うい町だったのである。

 

(僕は、レモンさんが……皆が気持ちよく旅行を終えられるように……持てる力を持って戦うだけだ)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「わぁぁぁーっ、すごいすごいっ! 本当に私そっくりです、デジーさんっ!」

「えへへへ、そう言われて悪い気はしないなあ」

「ららるー♪」

 

 

 

 化粧をして、純白の法衣を思わせるようなドレスを着て、そして髪を掻き上げると、メディアに現れる音の聖女が姿を現した。

 デジーは少し照れくさそうに笑いながらくるりと回ってみせた。

 明後日はこれを着てパレード車に乗り、往来に手を振るのだという。

 メロエッタが近くを舞うと、本当に写真の通りの「音の聖女」だ。

 

「本当にそっくり……不思議な偶然はあるものね」

 

 シャープは不思議そうに言った。この似ようは、マネージャーの彼女からしても見分けがつかない程だった。

 

「メロエッタ、貴女には違いがちゃんと分かったのよね?」

「らららー♪」

「メロエッタには、私達には分からない何かが感じ取れるのかもしれないですね」

「らるるー♪」

 

 ポケモンだから見分けられるというものでもないらしい。

 現にメタングたちはデジーとフィーナを間違えて追跡していた。

 尤も、追跡させた人間が居るならば、その犯人の方が間違えた可能性が高いのであるが。

 

「ふふっ、こんなにフィーナにそっくりなら学園でもモテモテなんじゃないの?」

「ちょっとシャープさんっ。恥ずかしい事言わないでください……私、聖女になるまではモテたことなんてありませんよ」

「ねえ、デジーさん。この子、アイドルで恋愛禁止だから、ひっそりそういうのに憧れてるのよ。少女漫画とか買いこんでるの」

「へぇーえ……少女漫画ぁ」

「シャープさんっっっ! 余計な事言わないでくださいようっ!」

「ねえデジーさん、何かそういうお話あったりしない? ねえ?」

「えー……モテとは無縁の人生だったかなぁ。ボク、技術科だからさ。1人で発明したりプログラム組んだり……女の子らしい事とは無縁で」

 

 すっかり衣装室は恋バナで盛り上がってしまっていた。

 しかし、その場を無難にはぐらかそうとするデジーに、フィーナが切り込んだ。

 

「でも、好きな人は居るんですよね?」

「え”っ」

「本当に? いるの? デジーさん」

 

 耳までデジーは真っ赤になった。「ヒュー」とシャープが口笛を吹く。

 フィーナの顔は笑っていた。目は笑っていなかった。

 さっき、デジーがイクサについて言及し損ねた所為で演技がバレたことを根に持っているのである。

 

「なぁにぃ、お姉さんに聞かせてよぉ。どんな子なの?」

「さっきも居たでしょう、あのイクサって男の子ですよ」

「ああ、あの可愛い顔と声した……へぇー。ああいうのが好みなんだあ」

 

 シャープは納得したように言った。こっちの人間から見ても、イクサは「女の子のよう」という認識のようだった。

 

「ち、ちがっ、いや、違くないけどっ! フィーナ、酷いよっ!」

「ねえ、何でイクサさんの事が好きなんですか? 私まだ、ちゃんと話せていないけど」

「ねえ、それ本当に言わなきゃダメ?」

「それで迂闊な事をした件は許してあげます。貴女がちゃんとイクサさんの事を言わなかった所為で大恥搔いたんですから」

「だってぇ……!」

 

 本当に良い性格してるな、と思いながらも──席に座りこんだデジーはぽつりぽつりと語った。

 

「うう……ボクが自業自得で酷い目に遭った時、転校生──いや、イクサは身を挺してボクを守ってくれて……それ以降好きになっちゃって」

「すごーい! 王子様みたいじゃんっ!」

「でもッ! ……きっとイクサはボク相手じゃなくても同じ事してたと思う。それに、イクサには好きな人が居て……その人は、イクサの事が好きなんだ」

「両想いの恋仇がいるってわけね」

「うん……」

 

 此処最近のイクサの様子を見ても、それは明らかだった。

 レモンとの距離は確実に縮まっている。自分とも親しくはなっているが、あくまでも女友達として、だ。

 

「正直、勝ち目なんて無いんだよね。だって、その子ってボクも惚れちゃうくらい良い女の子でさ……強くてカッコよくて完璧なようで……でも、弱い所もあって守ってしまいたくなる子なんだ」

 

(それにボクの所為で、現在進行形でイクサは家無しアウトドア生活だし……)

 

 未だにポケキャン△は継続中だった。そんな事情まで知る由もないフィーナとシャープは、デジーの話で盛り上がる。

 

「いやー元気っ子の恋する顔、良いなぁー!」

「はいっ……これが、恋する女の子の顔、なんですね……!」

「言わないでよ、恥ずかしい……」

「青春だねー……フィーナ、どう? 今の話、新しい曲に出来たりしない?」

「ちょっと!? 人の恋を歌詞にしたら許さないよ!?」

 

 完全に他人事であった。ショックを受けるデジー。

 しかしフィーナは彼女の肩に手を置いて、

 

「……デジーさんの恋は、険しくてすっごく辛いものだと思うけど……人を好きになることは、素敵な事だと思うから。自分の気持ちにウソは吐いてほしくないと思います」

「それって、さっき言ってた少女漫画の引用?」

「ギクッ……何で分かったんですか」

「だってそれ有名な漫画でしょ。ネットでセリフが取り上げられてたよ。ボクの趣味、オンゲとネットサーフィンだから」

「うぐぅ……」

「やーれやれ、漫画のセリフを借りちゃうなんて、フィーナって意外とおこちゃまなんだなぁー。やっぱり恋を経験してる分、ボクの方がオトナなんだね」

「おこちゃまじゃありませんーっ! ……背は私の方がちょっとだけ高いです」

「胸はボクの方が大きいもん!! あー、キツい! 胸がキツいなーっ!」

「なっ……!! 私の方が大きいです!! 成長期ですからっ!」

「ボクも成長期だよっ!!」

 

 張り合っているが、悲しい事に双方身長もスリーサイズも大差はない。衣装がピッタリだった時点でどちらも同じである。

 その様を見てシャープは苦笑し、メロエッタに笑いかける。

 

「負けず嫌いな所は、確実にそっくりじゃないのかなぁ……」

「ららるー♪」

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