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その意思決定、まだ続けるんですか? ~痛みを超えて未来を作る、AI時代の撤退とピボットの技術~(全2記事)

仕事のリスクを早く検知する3つの工夫 “このままだとまずい”を放置しないマネジメント術

【3行要約】
・プロダクト開発において意思決定のブレは成功を阻む大きな課題であり、「ラストマンシップ」と「やりきる技術」が求められます。
・株式会社LayerXの加藤みちる氏は「今はスピードが求められる時代で、事業の進捗は当事者の決断速度にかかっている」と指摘し、具体的な3つのアプローチを提案します。
・PMは「HowではなくWhyにこだわる」姿勢を持ち、自分の思考の癖を知り、直感的な違和感を大切にして課題を深掘りすべきだと提言します。

前回の記事はこちら

リスクを早期に検知する仕組み作り

加藤みちる氏:(スピーディーな意思決定を阻む3つの心理についての話を受けて)これに対処するのが、主にラストマンシップの中のやりきる技術です。これを1個ずつ、「こういう対処をやってますよ」っていうところをご紹介していきます。

1つ目ですね。物を作るのが楽しくなっちゃうというところは、そのリスクを早期に検知したり共有することで、作ることそのものを目的化するのを防止するアプローチを取っています。

おすすめなのが、このプレモーテムっていう仕組みなんですけれども。ポストモーテムは、障害が起きた時の振り返りとかでやったことがある方もいらっしゃるかなと思います。弊社では最近、プロジェクトが開始する時に、このプレモーテムを行うようにしています。

これは何かというと、もしもそのプロジェクトが大失敗してしまったとしたら、それってどういう失敗なのかとか、あるいはどうしてそれが起きてしまったのかをみんなで話し合うものですね。

これで事前にリスクの抜け漏れを検知できたりとか、チームの認識も合ってすごく良いです。個人的には、特にPMはプレモーテムの仕組みを1人でも、AIでできるようにすることがいいなと思っています。

特に新規事業とかをやっていると、事業のフェーズが変わっていくとまた別の不確実性やリスクが新たに出てくるので、私は1ヶ月単位とかでプレモーテムに相談して、リスクを把握しています。

「これが本当だとまずい」仮説もディスカバリーボードで管理

続いては、起きると嫌な仮説みたいなものをディスカバリーボードできちんと管理をしましょうというところです。ディスカバリーボードとは、検証したい仮説リストと結果の一覧で、ちょっと下に貼っているスクショみたいなイメージです。

これのポイントとしては、ポジティブな「こうなったらいいな」っていう仮説だけではなくて、あえて「これが本当だと、けっこうまずい」みたいなものを記載するところが重要かなと思っています。これも、チームの共通認識を作るというのと、あとはリスクがあるけれど過小評価してしまっていたことを防止しやすい施策かなというところです。以上が1つ目です。

2つ目が、「社内で期待されたアイデアで成功したい」みたいな。これはHowにとらわれないアプローチやマインドセットを持つことで対応しています。

まず、そもそも大事なところが、やっぱり特定の仮説だけに頼った1本足打法でやっていくことはできるだけ避けたいかなと思っています。

やはり理想的なアイデアを思いつくと、もうそれでいきたいみたいな気持ちになってしまうんですけれども。それでも一応はプランB、C(など)、複数の選択肢を比較して、一番いいものを選ぶということは徹底してやっています。

「プランBがない状態」を明確にすることの大切さ

弊社の場合、比較の流れとか結論みたいなものはDecision Recordという、みんなが見ることができるNotionみたいなところに置いています。意思決定を行った背景とか、結論みたいなところを、未来のプロジェクトをやる人が参考にできたりするかたちですね。

ただ一方で、「そもそも、プランBとかはないんです」みたいな時もぜんぜんあるかなと思うんですよ。

例えば、新規事業の立ち上げの最初のタイミングとかって、「勝ち筋があるとしても、これ1個しかないな」みたいな、なんだかまだ状況がわからないステータスもぜんぜんあるかなと思っています。

ただ、その時に「今の勝ち筋は1個しかなくて、これがダメだったらちょっとまずいんですよ」っていう背水の陣の状態であることを明瞭にするのが、非常に大事かなと思っています。

なんでかっていうと、本当に当初の仮説が間違っていたら、それで終わっちゃうっていうのがあるんですが。もし、チームメンバーに伝えるとか、さっきのディスカバリーボードに記載することで「今はプランBがないんだ」っていうのって常に意識しやすくなると思うんですよね。

それで自分が思い描いている理想と比べて、ちょっと軽視していたような他のオプションにも気づける確率が上がるので、実は地味に役立つところかなと思います。

PMは「How」ではなく「Why」にこだわる

最後。ちょっとこれはかなり耳タコな話なんですけれど、やっぱりプロダクトマネージャーがHowじゃなくてWhyにこだわるのが非常に大事かなと思っています。

これはやっぱり、プロダクトで実現したいビジョンを信じましょうということです。機能ってやっぱりHowに過ぎないので、結局は実現したい世界観を、どういう機能や構造でやるのか、みたいな話に過ぎません。ビジョン側を大事にしていけば、1つのHowにこだわってしまって、なかなか意思決定が進まないということは避けられるかなと思っています。

あと、それをやる時にアイデアではなくて、お客さまの行動とか、「実際にお金を払ってもらえるのか」みたいなところはかなり大事かなと思っています。一見良さそうなプロトタイプから、本番で価値を提供できるサービスにするまでの距離って、やっぱり思ったよりも大きいなと自分も思っていて。

その道のりをちゃんとくじけずにやっていくとか、逆に途中でやめるみたいなところをちゃんと判断するのにやっぱりそのお客さまの行動をベースに意思決定すべきでしょうというところです。
私も最近新規事業の立ち上げをやっているんですけど、「いや、これって本当に売れるのか?」みたいに思っているものを「これは本当に、お金を払ってでも欲しいです」みたいに言ってもらえるとすごくうれしいので。やっぱりお客さんの行動が非常に大事かなと思います。

自分の思考の癖を知る

(スライドを示して)最後ですね。貢献したい気持ちみたいなところが意思決定のぶれにつながるのをどう削減するかなんですが。こちらは個人の取り組みとして、振り返りの習慣化とか、意図せず感情が意思決定に影響してしまうのを避けるようなことをコツコツとやるのがいいかなと思っています。

私も4行日記っていう、事実と気持ちと学びと宣言の4つに分けて日記を書くみたいなことを6年ぐらいやっているんですけど。やっぱり事実と解釈を分けて言語化すると、自分の思考の癖みたいなものがけっこうわかるようになります。

認知行動療法とかの文脈でも、まずは自分の状態を認識をするのが大事ですみたいな(ことが)けっこう書いてあって。認識すれば、いつか未来の自分が行動を変えられるようになるでしょうみたいな感じです。いきなりアクションを変えるというか、「あぁ、自分はこういう傾向があるな」ってわかるところから始めましょうという感じですね。

というところで、今日のメイントピックだった3つのやりきる技術をご紹介させていただきました。

「圧倒的当事者」であるPMだからできること

ただ最後に、3つのやりきる技術をがんばったとしても、ちょっとコントロールしきれないとか、「いや、やっぱりこれはやめよう」「やっぱりこっちに変えよう」みたいなことを責任を持って言うとか、(方針を)変えるのはPMです。最後はPMの意思がないと難しいかなと思います。

やっぱり圧倒的当事者だからこそ気づけたり、言えたり、変えられることが絶対にあるなと思っていて。誰よりもユーザーさんの声を聞いていたりとか、矢面に立ってるPMが「これはちょっと、思っていたものと違います」みたいなことを感じた時って、だいたい正しい場合が多いですし。

「理論上は正しくても、なんだか違和感がある」みたいな時って絶対に何かのリスクが隠れていたりとか、課題があったりするので。そこを軽視せずにちゃんと深掘りをして、課題のかたちに表出させて解いていくことは、やはりPMでしかできない取り組みかなと思います。

最後は自分で決めるしかない

では、めちゃくちゃ駆け足できたんですけどスピーディに意思決定するのは難しいですが、必要なものはラストマンシップです。これは、やりきる技術と意思によって構成されています。結論としては、もうやりきる技術と意思を持って自分で気づく、自分で決める、自分でやりきる。これに尽きるかなというふうに思っています。

ちょっと厳しい感じの言葉になってしまったんですけど、やっぱり本当にスピードがすごく大事で、いろんな仮説検証したいテーマがめちゃくちゃ出てくる時代になってしまったので、事業を進捗できるかは、結局は当事者の人が早く決められるかどうかに尽きるなって思っています。

そのためには、やっぱり誰かが言ってくれるのが常じゃなくて、自分で決めるしかないので。私も、自分を信じて、自分が信じるビジョンに向かってやり抜くことをがんばります。みんなでがんばりましょう。志を持ってやり切りましょう。未来に挑んで、世界をもっと良くしましょうというところで、発表を終わります。ありがとうございます。

(会場拍手)

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株式会社PeopleX 橘大雅氏ピッチ(全1記事)

「対話AI×3Dアバター」が面接や受付も担当 創業わずか1年半のAIテックが目指す、日本発グローバルプロダクト [1/2]

【3行要約】
・次世代CTOが集結するピッチコンテスト「Startup CTO of the Year 2025」にて、スタートアップの最前線で活躍する5名のCTOが自身の取り組みについて紹介します。
・株式会社PeopleX CTOの橘大雅氏は「生成AIという大きな波こそスタートアップの勝機」と語り、コンパウンドスタートアップからAIテックカンパニーへの転換を決断しました。
・同社は対話AIを軸としたマルチプロダクト戦略で、日本発グローバルプロダクトの実現を目指しています。

デジタルヒューマンのあいさつからスタート

司会者:持ち時間は6分間でございます。それではよろしくお願いします。

橘大雅氏(以下、橘):よろしくお願いします。では、まずはこちらをご覧ください。

(動画が再生される)「はじめまして。私はデジタルヒューマンの黒須ミライです。本日は、(Startup)CTO of the Year 2025にお越しいただきありがとうございます。それでは、PeopleXの発表をどうぞご覧ください」



:ご紹介にあずかりました、PeopleX CTOの橘です。先ほどの動画は、私たちの対話AIにおけるデジタルヒューマンとして活躍している黒須ミライさんからのあいさつでした。今回のピッチは、「技術を深めて、事業を広げる」。これをテーマに発表させていただきます。

まず、この数字をご覧ください。1.5兆円。これはSaaSの国内市場規模。48兆円。これはトヨタ自動車の2024年度の売上です。自分自身、共同創業するにあたり、「なぜスタートアップをするのか」を自問自答し続けました。今日はその答えを発表します。

1年半前に創業してから、毎月のようにプロダクトをローンチする。事業を開始する。時には企業を買収する。そんな慌ただしい日々を送ってきました。もともとPeopleXは5年で20プロダクトを作り、あらゆるHRの困りごとを解決する、壮大なコンパウンドスタートアップとして始まりました。

コンパウンドスタートアップからAIテックカンパニーへの転換理由

:しかし、創業から1年。AIテックカンパニーへの大きな転換を行います。それはなぜか? 生成AIという大きな波。このゲームチェンジこそ、スタートアップ最大の勝機だと考えているからです。

AI以前を思い返せば、YouTubeはたった3人で創業し、1年で世界の覇権を取りました。生成AIでは「Cursor」が数十人の従業員で評価額は1兆円を超え、世界の開発を支えている。いつの時代もスタートアップがゲームチェンジャーとなり、大きな市場を切り拓いてきました。

私たちPeopleXは、「AI面接」を最初のAI事業として参入し、結果としてリリースから5ヶ月で、市場認知ナンバー1(※1)を獲得するに至りました。そこに至る技術的な軌跡をご紹介します。

マイクロサービスからモノリスへ。通常は逆のルートをたどる。では、なぜこれを選んだのか? コンパウンドスタートアップを始めた時、CEOから「5年で20プロダクトを作ってほしい」というオーダーが来て、創業から1年経たずして、こうした複雑なマイクロサービス構成となりました。

市場を制覇するサービスのコアバリューはシンプル

:しかし、AIプロダクトはどうか? 非常にシンプル。マイクロサービスがいいか、モノリスがいいか。決してそんな二元論ではない。私は、アーキテクチャは市場が決めるものだと確信しています。新世代のプロダクトが出てきた時は、コアバリューが際立ち、機能はシンプルです。

思い返せば、みなさんが使っているLINEやInstagramが登場した時も、コアバリューに特化していた。最初から複雑な機能もアーキテクチャも必要ありません。生成AIのようなまったく新しい市場だからこそ、そう感じています。

私たちは価値のセンターピンを面接体験と捉え、海外の製品でもやらないような3Dアバターを組み込み、ビッグテックの対話AIを使わず、自前の対話AI制御を行っていく。こうした取り組みは、GMO AI&ロボティクス(商事)さまの対話エンジンに採択されるほど高い評価をいただいています。

CTOとして最も大事にしているのは、「技術を深めて、事業を広げる」。こうした相矛盾する2つの概念を両立させること。そして、それが企業の競争力を作っていくと考えています。

対話AIを軸にしたマルチプロダクト戦略の狙い

:対話AIを軸としたマルチプロダクト化を進め、「AI受付」「AIロープレ」と、次々とプロダクトをローンチし、ユースケースが広がることで対話AIがより深く進化していく。そして、これが事業を強くし、新たな事業を生み出していく。

CTOとは、「技術と経営の好循環を生み出していく」ことこそが最大の技術戦略であると考えています。そして、PeopleXの行動指針。「歴史に残る偉大な成功を目指す」。今年(2025年)10月にはベトナム進出を決め、すでに販売を開始しています。日本スタートアップの悲願であるグローバルプロダクト化を目指し、強くて深いプロダクトにするため、技術的な挑戦を続けています。

あらためて、なぜスタートアップをやるのか? その答え合わせです。生成AIという、ゲームチェンジを切り拓く存在。技術を深めて、事業を広げる。その矛盾を解決する。スタートアップの悲願、グローバルプロダクトを目指す。こうした挑戦は大企業ではなく、自ら会社を立ち上げ、開発組織を作り上げたからこそできるチャレンジです。

これからもPeopleXは、技術を深めて、日本社会をワクワクさせるような未来を作り上げる技術者集団であり続けます。ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

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