トランプ米大統領が16日、ベネズエラを出入りする制裁対象の石油タンカーについて「全面封鎖」を命じると交流サイト(SNS)に投稿した。反米マドゥロ政権のベネズエラは世界有数の産油国。世界経済や国際情勢にはどんな影響が出るのか。

 米国は、バイデン前政権とトランプ政権の下で長年、ベネズエラのマドゥロ政権に敵対的な姿勢をとり、厳しい制裁を科してマドゥロ氏に退陣を迫ってきた。

 トランプ政権はベネズエラが麻薬を密輸していると繰り返し非難している。9月以降、米軍はフェンタニルなどの違法薬物を米国に運んでいたとする船舶への攻撃を続けてきている。

 ノーム米国土安全保障長官は20日、大統領命令に基づき米国がベネズエラ沖の国際水域で石油タンカーを拿捕(だほ)したと発表した。ノーム氏は「米国はこの地域の麻薬テロリズムに資金援助するために使用される、制裁対象である石油の違法な移動を追及し続ける」としている。

 米国は最近ベネズエラ北のカリブ海で、空母ジェラルド・フォードを展開し軍事的な存在を強化している。ただし、軍事作戦より経済制裁を優先するとみられている。

 一方、ベネズエラは米国が乗組員を誘拐し船を盗んだと述べた。また、ベネズエラの石油資源を米国が奪おうとしていると非難している。

 米国の石油タンカーの全面封鎖が続けば、日量100万バレル近い供給が失われることになり、原油価格が上昇する可能性もあるとの指摘もある。

 原油価格の動向を見ると、17日に1バレル55ドル程度だったが、その後やや上昇し25日58ドル程度になっている。ただし、最近5年間の長期的な傾向でみると、ウクライナ戦争が始まる直前の2022年初めに110ドル以上をつけたが、その後一時的な上昇があったものの、すう勢的には低下している。

 供給面をみると、サウジアラビアなどOPECプラスはこれまでも日量200万バレルの協調減産を2026年末まで続ける一方、米国ではシェールが増産されている。不動産不況による中国経済の減速が激しく需要減になるので、石油価格は低下傾向だった。

 仮にベネズエラで日量100万バレルの供給停止になっても、世界の原油取引全体では日量1億バレル程度の1%程度に過ぎず、OPECプラスの増産余地もあり、石油価格への影響は限定的だろう。

(たかはし・よういち=嘉悦大教授)

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