ウォーキングよりも音楽よりも効果的…「6分でストレスを最大68%軽減する」ゴロゴロしながらできること
■読書の“癒やし効果”のメカニズム そのメカニズムとして、「完全に没頭できる本に集中することで、日常的なストレスから心理的に距離を取れること」があると示唆されています。 この研究は商業的なものであり、参加者が16人という比較的少数の「熱心な読者」に限定されていることなどから、慎重に解釈されるべきだとの指摘もありますが、2009年にアメリカのシートン・ホール大学で行われた研究でも、読書はヨガやユーモア活動と同等のストレス軽減効果を示し、心拍数や血圧を下げることが報告されています。 また2019年のカナダ・マギル大学の研究では、読書習慣を持つ学生は心理的問題が少なく、特に自発的に「読みたい」という動機がある場合には、心理的に安定していることが示されました。 では、なぜ読書はこれほどまでに心と身体を癒してくれるのでしょうか。 その理由の一つは、脳に対するストレス刺激を抑制し、ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌を低下させるためと考えられます。コルチゾールは、本来はストレスから身体を守るために働いています。ところが、この働きが慢性化してしまうと、心身の健康を害する原因になってしまうのです。 読書に集中し、外部からのストレス(情報過多)から一時的にでもいいので解放されることで脳が休まり、私たちは心地よい安らぎを感じることができるのです。特に睡眠前の読書は心理的な緊張の軽減や安眠促進につながるという報告もあります。 ■読書には「単なる娯楽」以上の価値がある また、集中して読書を続けていると、心拍数や呼吸数が自然に落ち着くのを感じる方も多いと思います。それは、自律神経の中でも副交感神経が優位になっている状態です。副交感神経は休息や睡眠をとるときに活性化し、筋肉の緊張を緩和し、血圧を下げる役割を持っています。 読書に伴うこうした反応は、まさにゆっくりと深く息を吐いた後に身体が自然と落ち着いていくのに似ており、副交感神経を介したリラクゼーション効果が得られると考えられています。 以上のように、読書は単なる娯楽を超えて、副交感神経を働かせたり、ストレスホルモンを抑制したりといった、生理学的にも測定可能な効果をもたらし、心理的な安定性を向上させる有効な手段であることが、さまざまな研究を通して明らかになっています。 ---------- 毛内 拡(もうない・ひろむ) 脳神経科学者、お茶の水女子大学基幹研究院自然科学系助教 1984 年、北海道函館市生まれ。2008 年、東京薬科大学生命科学部卒業、2013 年、東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程修了。博士(理学)。日本学術振興会特別研究員、理化学研究所脳科学総合研究センター研究員などを経て2018 年より現職。同大にて生体組織機能学研究室を主宰。専門は、神経生理学、生物物理学。「脳が生きているとはどういうことか」をスローガンに、基礎研究と医学研究の橋渡しを担う研究を行っている。主な著書に、第37 回講談社科学出版賞受賞作『脳を司る「脳」』(講談社)、『面白くて眠れなくなる脳科学』(PHP 研究所)、『「頭がいい」とはどういうことか–脳科学から考える』(筑摩書房)、共著に『ウソみたいな人体の話を大学の先生に解説してもらいました。』(秀和システム)などがある。 ----------
脳神経科学者、お茶の水女子大学基幹研究院自然科学系助教 毛内 拡